あまり考えたくはないですが、人生はいつどうなってしまうか誰にも予想できないため、家族を養っていた人が突然亡くなってしまうようなこともあります。
そうした場合、収入が大きく減ってしまうため今後の生活に不安を抱えることも多いはずです。
そこで押さえておきたいのが、公的な支援として受け取れる「遺族基礎年金」についてです。
今回は、遺族基礎年金の仕組みや受け取り条件、手続き方法、注意点などについてご紹介します。
制度概要を知ることによって、仕組みを正しく理解できる他、受給できるかどうかが分かります。
今後、誰の身にも起こり得る可能性があるため、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
1. 遺族基礎年金とは?
これまで家族を養っていた世帯主が亡くなった場合、今後どのように生活していけば良いか分からず路頭に迷ってしまう遺族は多いはずです。
それが何の前触れもなく突然だった場合、当然ながら準備はしていないため、葬儀や遺品整理、各種手続きなど、様々なことに追われます。
収入自体も大幅に減ってしまうため、残された遺族は不安が募る日々を送っているかもしれません。
そんな事態を未然に防ぐために、国の制度として設けられているのが遺族基礎年金です。
遺族基礎年金とは遺族年金の一種であり、国民年金に加入していた人が亡くなった場合、「子のある配偶者」または「子」に対してお金が支給される制度です。
従って、「子のない配偶者」は受け取りができないようになっています。
亡くなった配偶者が国民年金に加入していればサラリーマンや自営業など職業を問わず全ての人が対象となります。
また、厚生年金に加入している人であっても、受給要件を満足していれば支給されるため、制度の仕組みをしっかりと理解しておきましょう。
しかし、配偶者が亡くなったとしても必ず支給されるわけではなく、要件を満たさなければいけません。
制度についての理解を深めることによって、受け取れる遺族基礎年金があるかどうかわかります。
2. 遺族基礎年金の支給条件や対象者
残された家族の生活を支援する目的で支給されている遺族基礎年金は、お金を受け取るための条件が定められている他、受給の対象者にも決まりがあります。
では、実際にどのような場合にお金は受け取れるのでしょうか?ここでは、遺族基礎年金を受給するための条件や対象となる人についてご紹介します。
詳しい情報は日本年金機構のホームページに記載されているので、ぜひ目を通してみてください。
2-1 支給条件について
日本年金機構のホームページをまとめると遺族基礎資金の支給条件は、国民年金に加入していた人が亡くなった時、国民年金に加入していた人で国内在住の60歳以上65歳未満である人が亡くなった時、老齢基礎年金を受給できる権利がある人が亡くなった時、老齢基礎年金の資格期間を満たした人が亡くなった時です。
2-2 受給対象者について
ここで注意しなければいけないのは、配偶者の保険料の支払い状況によって、受け取れない可能性があるということです。
受給対象者には一定以上の保険料を支払ってきたことが求められるため、「子のある配偶者」だからといって必ずしも受給できるとは限りません。
遺族基礎年金を受け取れるのは、「子のある配偶者」「子」となっていますが、配偶者の前年度収入が850万円を超えている場合は要件を満たしていないことになるため、受給対象外となります。
また、養子縁組をしていない配偶者の子の場合は、受給対象外となります。
後者は事実上婚姻関係となりますが、連れ子がいた場合は事実上認められていないため、亡くなった人の実子または届け出が提出されている養子でなければいけません。
受給対象者である「子」は、18歳の年度末を超えていないことが条件です。
遺族基礎年金は他にも、障害年金の障害等級1級または2級の子どもやその配偶者が対象となっている場合、通常18歳のところ20歳になるまでであれば受給権を保持していられます。
障害を抱える子どもが20歳を超えた場合は、通常通り過ぎた時点で権利が消滅します。
また、亡くなった時点で配偶者のお腹の中に子どもがいるのであれば、その子どもも受給対象者となります。
受給の権利は基本的にお腹の中から出てきた時点で発生するので、妊娠中の遺族年金の請求は対象外と定められています。
3. 遺族基礎年金の受給額は?
制度を利用する上で重要なのは、実際に受け取れる金額は一体どれくらいなのかということではないでしょうか?
遺族が実際に受け取れる金額は、受給対象者の状況によって異なります。
法律の規定により、令和3年4月分からの年金額は、令和2年から原則として0.1%の引き下げとなります。
基本額780,900円に子の加算額を加えた数字となっており、「子のある配偶者」の場合は「780,900円+子の加算額」、「子」の場合は「780,900円+2人目以降の加算額」です。
また、遺族厚生年金を受ける場合は、遺族基礎年金に上乗せして支給されます。
4. 遺族基礎年金の手続き方法
制度を利用するためには一体どうすれば良いのでしょうか?
遺族基礎年金は亡くなった人の遺族を対象とした年金制度ですが、お金を受け取るためには自ら手続きを行わなければいけません。
死亡したからといって自動的に支払われるわけではないため、十分注意しましょう。
以下では、手続きの際に必要になる書類や提出先についてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
4-1 必要な書類
手続きをする際に必ず必要になるのは、年金手帳、戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し、世帯全員の住民票の写し、死亡者の住民票の除票、請求者の収入を証明する書類、子の収入を証明する書類、死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書、受取先金融機関の通帳などの書類です。
また、死亡した原因が事故・事件といった第三者の行為によるものであった場合、第三者行為事故状況届、交通事故証明または事故が確認できる書類、確認書、被害者に被扶養者がいる場合は扶養していたと証明できる書類、損害賠償金の算定書が必要になります。
また、必要に応じて年金証書や合算対象が確認できる書類などを持っていくようにしましょう。
どれも重要書類となるため、忘れることのないよう持参してください。
4-2 提出先
遺族基礎年金の請求書を記入したら、それぞれの市区町村の役場の窓口に書類を提出しましょう。
しかし、死亡した日が国民年金第3号被保険者期間中の場合、市区町村の役場では手続きが行えないため、各地域の住まいの近くにある年金事務所または年金相談センターへ請求してください。
5. 遺族基礎年金に関する注意点
ここまで、遺族基礎年金の受給に関する条件や手続き方法などについてご紹介しましたが、遺族基礎年金は永久に受け取り続けることはできません。
所定の事由が生じた場合、支給は打ち切りになりますが、その事由とは一体何でしょうか?
ここでは、遺族基礎年金が打ち切りになるケースと、その他に受け取れるかもしれない年金制度をご紹介します。
5-1 子どもが全員18歳になる年度末を過ぎると打ち切りに
遺族基礎年金は18歳までの子どもを抱える遺族に対しての年金制度であるため、受け取っている配偶者の子ども全員が18歳の年度末を過ぎると支給は打ち切りになります。
複数の子どもを抱えている場合は、一番下の子どもが18歳の年度末を過ぎるまでは受け取りの権利があります。
しかし、子の加算についてはそれぞれの子の18歳の年度末を過ぎると減額されるため、注意しなければいけません。
また、障害等級1級または2級の状態にある人は、20歳の年度末を過ぎると支給が打ち切りになります。
永久に支給される年金ではないことを把握しておきましょう。
5-2 老齢基礎年金は打ち切り後も受け取れる
遺族基礎年金を受け取りたいと考えていても、制度には支給条件や受給対象者が日本年金機構で定められているため、条件を満たしていなければ受け取りは不可能です。
では、そのような場合他にどのような選択肢があるのでしょうか?
ここでは、遺族基礎年金以外にも受け取りが可能な年金制度についてご紹介します。
故人が亡くなった時点でその配偶者にあたる人が60歳またはもうすぐで60歳になるという場合、老齢基礎年金を繰り上げて受け取るという選択肢があります。
老齢基礎年金の受け取りは原則として65歳からとなっていますが、希望すれば60歳からでも受け取りが可能です。
しかし、ここで注意しなければいけないのは、繰り上げ支給の請求をした時点に応じて、年金が減額されていくということです。
また、減額率が今後変動することはありません。
老齢基礎年金の繰り上げ受給は選択肢の一つとしてありますが、年金が減額されるという側面もあるため、慎重に検討してください。
6. まとめ
今回は、遺族基礎年金の仕組みや受給に関する知識、注意点などについてご紹介してきました。
遺族基礎年金についてまとめると、国民年金の被保険者が死亡した場合、支給条件を満たした「子のある配偶者」または「子」が受け取れる年金制度であることが分かりました。
また、18歳に満たない子供を抱える家庭にも非常に有益な制度となっているため、今後の生活への不安も少しは解消されるのではないでしょうか?
世帯主が亡くなってしまったことで不安に感じる人はたくさんいると思いますが、日本年金機構では今後の生活に役立つ制度が設けられているため、ぜひ一度ホームページに目を通してみてください。
ただし、遺族基礎年金は自動的に支払われるわけではないため、手続きを忘れてそのままにしておくと時効が消滅してしまいます。
遺族は葬儀や告別式が終われば悲しみに暮れる暇もなく、様々な手続きに追われます。
今回ご紹介した遺族基礎年金も早いうちに手続きを済ませておけば有効的に活用できるため、忘れず行うようにしましょう。
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この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。