死亡共済金の相続税はいくらになる?非課税枠や計算方法、5つのメリットについて紹介

更新日:2024.06.21

死亡共済金の相続税はいくらになる?非課税枠や計算方法、5つのメリットについて紹介

死亡共済金を受け取った際、「相続税は必要?」「非課税枠はいくらになる?」という疑問を持つ人も少なくありません。

故人から受け取った大切な財産ですから、できるだけ手元に残したいものですよね。

死亡共済金の相続税や非課税枠は、受取人の立場によって変わってきます。

今回は、死亡共済金が相続となるケースや非課税枠の計算方法、死亡共済金のメリットについて解説しましょう。

1. 死亡共済金にかかる税金は受取人に合わせて種類が異なる

死亡共済金にかかる税金には、相続税・所得税・贈与税の3種類があります。

どの税金がかかるかは受取人の立場によって異なるため、あらかじめ種類を確認しておかなければなりません。

では、どのような立場の受取人にどんな税金がかかるのか、ケース別にご紹介しましょう。

1-1 死亡共済金に相続税がかかる場合

死亡共済金に相続税がかかるのは、契約者と被共済者が同一の場合です。

このケースの場合、契約者が亡くなると死亡共済金の受取人も故人になるため、受け取るお金は故人の遺産になります。

遺産は相続対象ですから、金額に応じて相続税がかかるのです。

たとえば亡くなった夫が死亡共済金の契約者で被共済者、受取人が妻となっている場合には、金額によって納税しなければなりません。

受取人が子である場合も同様で、もし夫の死亡時に子が未成年だった場合は、親権者(未成年後見人)が代理で手続きを行います。

1-2 死亡共済金に所得税がかかる場合

死亡共済金の契約者と受取人が同一で被共済者だけが異なる場合は、所得税・住民税の課税対象になります。

契約者は掛け金を負担しており、満期・解約時の払戻金はすべて契約者の財産です。

死亡共済金も同様で、契約者が負担した金額を契約者が受け取るわけですから、形式的には一時的に所得を得たと判断します。

つまり死亡共済金の契約者と受取人が同一である場合、被共済者が亡くなっても相続対象とならず相続税も掛かりません。

所得税は必要ですが、契約者が払い込んだ金額分は差し引いて考えるため、税金が必要ないこともあります。

1-3 死亡共済金に贈与税がかかる場合

死亡共済金の契約者・被共済者・受取人がそれぞれ違うケースでは、死亡共済金に贈与税が掛かります。

たとえば契約者が父・被共済者が母・受取人が子の場合、子への贈与と捉えられるため贈与税が課せられるのです。

少し難しいイメージしづらいかも知れませんが、父親が払い込んだ金額が子へ渡されたと考えるとわかりやすいかと思います。

このようなケースが意外に多いため、混乱する人も少なくありません。

2. 死亡共済金の相続税には非課税枠がある

死亡共済金の相続税には、非課税枠と呼ばれる控除金額があります。

非課税枠は相続税の課税対象外になるため、相続税がかかる場合は非課税枠を確かめておくことが大切です。

死亡共済金の非課税枠は、次のような計算で求められます。

 

500万×法定相続人の数※=非課税枠の金額

※法定相続人の数には養子も含まれますが、数に制限があります。実子がいる場合は1人だけ、実子がいない場合は2人までしか算入できません。

 

仮に、死亡共済金が2,000万円・法定相続人が2人として計算してみましょう。

非課税枠が500万×2人で1,000万円になりますので、2,000万円から1,000万円を差し引いて、残り1,000万円が課税対象です。

もし法定相続人が3人の場合、非課税枠が500万×3人で1,500万円となり、2,000万円から1,500万円を差し引いて500万円が課税対象となります。

非課税枠の金額は相続人の人数で変わってきますので、計算する際には相続人の人数を確認してから行ってください。

3. 死亡共済金の相続税の計算方法

死亡共済金の相続税は、あらかじめ決められた計算方法で算出されます。

しかし実際に行ってみると、あれこれ考えてうまく算出できないという人も多いことでしょう。

続税の計算方法は、具体的な例があると自分のケースに当てはめて考えやすくなります。

この項では母・子2人が2,000万円の死亡共済金を相続すると仮定し、相続税の計算方法をステップ順にご紹介していきます。

STEP1. 死亡共済金の金額を計算する

まず最初に行うのは、受け取る死亡共済金の金額です。

相続人が1人なら死亡共済金の全額を対象にすればいいのですが、母・子2人だと法定相続人が3人で受け取る割合も変わります。

したがって、それぞれが受け取る死亡共済金の金額を割り出さなければなりません。

死亡共済金の全体金額が2,000万円、法律にしたがって割り振ると母が1,000万円、子2人はそれぞれ500万円です。

誰がいくら受け取るのかはそれぞれに違いますので、自分の金額をしっかり把握しましょう。

STEP2. 死亡共済金の課税金額を計算する

次に行うのが、死亡共済金の課税金額を計算する作業です。先に解説したとおり、死亡共済金には非課税枠があります。

まずは受け取る金額から非課税枠を割り出し、その分を引いて課税金額を算出しなければなりません。

法定相続人は母と子2人で3人なので、基本となる非課税は以下の金額です。

500万×3人 =1,500万円

次に、それぞれの相続人が受け取る死亡共済金に合わせた非課税枠を割り出します。

被相続人の配偶者は1,000万円、子は500万円ずつ、計2,000万円受け取るとすると、計算式は次のようになります。

▼配偶者受取分の非課税限度額

1,500万×(1,000万÷2,000万)=750万円(非課税枠)

課税対象となる金額=1,000万円-750万円=250万円

▼長子の非課税限度額

1,500万×(500万÷2,000万)=375万円(非課税枠)

課税対象となる金額=500万円-375万円=125万円

▼次子の非課税限度額

長子と同じ

STEP3. 死亡共済金以外の課税遺産の総額を計算する

死亡共済金の課税金額が確定したら、次に行うのがその他の課税遺産の総額を確認・計算する作業です。

課税対象となる遺産は、預貯金だけではなく有価証券(株やFXなど)・不動産・高級時計や宝石も含まれます。

これらすべてをお金に換算し、課税遺産の総額を割り出さなければなりません。

預貯金などは最初から金額がはっきりしていますが、土地・建物の不動産は価値がわかりづらく、個人で調べることも難しいでしょう。

とくに不動産や高級時計などの場合、購入した際の金額を差し引いたりしなければならず、自力では手に負えないこともあります。

難しいと感じたら無理をせず、税理士に相談するなどの対応をしましょう。

STEP4. 債務・葬式費用などを遺産総額から引き、課税遺産総額を計算する

死亡共済金まで含めた遺産総額がわかったら、そこから債務・葬式費用などを差し引いて課税遺産総額を計算します。

債務とは被相続人名義の借入残高です。

払い残しの税金やローンの清算などがこれにあたり、遺産の中からこれらをすべて支払い残った分が相続対象となります。

故人の葬式にかかった費用も、遺産総額から差し引かなければなりません。

例えば遺産総額が1,000万円あったとき、葬儀費用で200万円必要だったとします。

1,000万円から200万円差し引いて、残った800万円が相続税の課税対象です。

申請の際には領収書などが必要となりますので、必ず事前に用意するようにしてください。

STEP5. 基礎控除額を差し引く

基礎控除額とは、遺産の中から相続税を控除される金額のことです。

基礎控除額は次のような計算式で算出されます。

3,000万+600万×法定相続人の数=基礎控除額

ではこの式にモデルケースを当てはめてみましょう。

法定相続人は母・子2人の3人ですから、3,000万+600万×3で基礎控除額は4,800万円になります。

仮に遺産総額が死亡共済金の2,000万円だけだったとすると、基礎控除額を下回る(合計250万円+125万円+125万円=500万円)ので相続税が掛かりません。

逆に死亡共済金も含めて遺産総額が5,000万円だった場合は、基礎控除額を差し引いた200万円が課税対象になります。

基礎控除額は法定人の人数によって左右されますので、漏れがないように確認してから計算しましょう。

STEP6. 相続人ごとに相続できる遺産総額を計算する

基礎控除額まで差し引いたうえで遺産を分配したら、次に行うのが各相続人ごとの遺産総額の計算です。

こちらもモデルケースでみていきましょう。最終的に残った遺産が800万円の預貯金だったとします。

法律に定められた割合で分配すると、母が2分の1で400万円、子が4分の1でそれぞれ200万円です。

この金額に死亡共済金の課税金額を足すと、母が650万円、子2人がそれぞれ325万円になります。

相続できる遺産の割合は法律でも定められていますが、正式な遺言書が遺されている場合もあるため一概には言えません。

遺産総額を計算する前には遺言書などがないかをよく確認し、法律に乗っ取って遺産総額を計算しましょう。

STEP7. 配偶者の税額軽減や未成年控除などの特例、贈与税額控除などを入れて納税額を計算する

相続税には、配偶者の税額減税や未成年控除、贈与税控除といった特例があります。

これらの控除を申請すると納税額が減税されるため、当てはまる人は必ず考慮して計算することが大切です。

モデルケースの母に当てはめた場合、配偶者は法定相続分の2分の1までは相続税がかかりません。

さらに2分の1を超えたとしても、1億6,000万円以下なら納税義務は発生しないのです。

もし子が未成年だった場合は、成人するまでの年数×10万円が控除されます。

つまり相続する段階で15歳なら、成人するまでの5年×10万円で50万円が控除額です。

このような特例を知っておくと、相続税の対策に役立ちます。

死亡共済金を含め、相続の際にはこのような特例もよく調べておきましょう。

4. 相続税の節税対策にもなる?死亡共済金の5つのメリット

いざというときに遺族を支える死亡共済金。故人亡きあとの支えとして契約している人も多いですが、死亡共済金のメリットはそれだけではありません。

相続の際にもさまざまなメリットがあるため、節税対策として契約している人も数多くいらっしゃいます。

では具体的にどのような点で役立つのか、死亡共済金の5つのメリットをご紹介しましょう。

メリット1. 非課税枠があるため節税対策にもなる

死亡共済金で1番多く支持されているのが、非課税枠があるので節税対策になるという点です。

非課税枠は課税対象にならない金額ですから、その分の金額が遺族に残るのはありがたいメリットですよね。

もう少し積極的な節税対策をしたいという人の中には、法定相続人から逆算して契約する人もいます。

例えば母・子2人で法定相続人が3人場合、非課税額は1,500万円です。

もし死亡共済金を1,500万円で契約し500万円ずつ割り当てたら、それぞれの非課税枠が500万円なので課税されません。

死亡共済金のこのような仕組みを利用して、多くの人が節税対策に役立てています。

メリット2. 現金で支給されるため分配しやすい

死亡共済金は、すべて現金で支給されます。

現金は金額がはっきりしているため分配がしやすく、揉めにくいというのもメリットの1つです。

相続といえば不動産や有価証券などもありますが、それ自体に価値があっても現金ではないためわかりにくく、相続の段階で悩む遺族も少なくありません。

さらに不動産や有価証券は価値が変動しますから、もらっても困るという相続人もいます。

現金支給される死亡共済金なら、割合だけ決めておけば支給後の分配もスムーズで揉めにくくなります。

すぐに分けられる遺産を残したいという人には見逃せないメリットと言えるでしょう。

メリット3. 現金で支給されるため納税資金になる

相続税の納税には現金が必要ですが、死亡共済金なら現金支給なので納税に困りません。

不動産や有価証券なども立派な遺産ではありますが、すぐに売れる算段がなければ現金化はできません。

納税にも期限がありますので、間に合わない場合は延滞税が加算されたり、物納(税金の代わりに相続財産それ自体を納めること)が必要になったりします。

死亡共済金を現金支給されていれば、納税資金にも困らず他の遺産を手放す心配がありません。

納税資金にもなる死亡共済金は、不動産を多く所持している人にとって見逃せないメリットです。

メリット4. 相続放棄をした場合でも受け取れる

死亡共済金には、相続放棄をした場合でも受け取れるというメリットがあります。

本来相続はすべての遺産が対象になるため、1つの相続権を放棄したら他の遺産を相続できません。

しかし、死亡共済金はあらかじめ受取人を指定していますから、たとえ他の相続権を放棄しても受け取ることができます。

ただしこのメリットを活用する場合は、必ず受け取ってほしい人を受取人指定しておくのが絶対条件です。

この点をクリアすれば相続放棄をした場合でも死亡共済金を受け取れますので、気になる人は契約条件を見直しておきましょう。

メリット5. 遺留分の対象にならないため、渡したい人に渡せる

遺留分とは、遺産相続における最低限の取り分のことです。

故人の配偶者や子・孫、父母・祖父母に請求権が認められており、相続人が分配に不服を持ったときに行使されることがあります。

もしこのような相続問題が起こってしまったら、特定の人に多く遺産分配したくてもできないかも知れません。

このようなケースを回避できるのが、死亡共済金のメリットです。

死亡共済金の請求権は受取人固有の財産であるため、遺産分割の対象とならず、他の相続人が遺留分を満額受け取れない時の侵害額請求の対象になりません。

つまり、多く遺産を渡したいという人を受取人にしておけば、遺留分と認められず十分な遺産を残せるのです。

遺産相続問題では、このような問題で揉めることも少なくありません。

遺留分の対象にならないというメリットを利用して、渡したい人に確実に渡せるよう準備してみましょう。

5. 死亡共済金や死亡保険金の相続税についての相談は税理士まで

死亡共済金や死亡保険金で相続税がかかるのは、契約者と被共済者(被保険者)が同一であるときです。

非課税枠があるので節税対策にも役立つことから、多くの人が死亡共済金や死亡保険金を検討しています。

相続税の計算は少し複雑ですが、非課税枠の計算や控除額などをしっかり抑えれば、個人で算出することも可能です。

しかしその一方で、法定相続人が多かったり複数の控除を考慮しなければならなかったりすると、計算が難しく悩むケースもあります。

そんなときに頼りになるのが、税の専門家である税理士です。

受け取り金額や遺産の総額、法定相続人の人数など必要な情報をまとめておくと、相談もスムーズに進みます。

死亡共済金や死亡保険の相続税について悩むときには、1人で悩まず税理士に相談してみましょう。

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執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。
 
 

この記事の執筆者:つぐなび編集部

この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
2020年04月のオープン以降、専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように
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