仏壇や仏具を生前に購入しておくと、相続税の節税になることをご存知でしょうか。
生前のうちに仏壇を買うなんて、なんだか気が進まないと思われるかもしれません。
しかし、生前に購入することで相続税の節税ができるだけでなく、遺された人の負担を減らすことができます。
今回は、仏壇や仏具と相続税の関係、節税の具体的な方法について解説します。
目次
1. 仏壇やお墓など、仏具の購入は課税対象ではないため相続税の節税になる
仏壇や仏具、お墓などの祖先をまつるための財産を、法律上「祭祀財産(さいしざいさん)」といいます。
祭祀財産は、民法上、土地家屋や預金などの区別されていて通常の相続財産に含まれず、税法上も、課税対象から除外されています。
そのため、現金の形で残しておくよりも、生前に仏壇等を購入しておくほうが課税対象となる全体の相続財産が減るため、相続税の節税につながります。
1-1 日常礼拝をしている物は相続税がかからない
祭祀財産は課税対象から外れるといっても、何がこれに該当するのかいまいち判然としません。
具体的にどういったものが非課税となるのでしょうか。
法律上の定義としては「墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの」とされています(相続税法12条1項2号)。
この定義の意味について、国税庁は「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」は相続税の非課税財産である祭祀財産に該当するとの解釈を示しています。
そもそも、法律上、仏具等に相続税を課さないとされる趣旨は、故人を弔うための道具に課税されてしまうことに対する国民感情に法が配慮したためです。
その趣旨からいえば、非課税とされるためには、その仏具等を、故人を弔うための日常礼拝の道具として使用していることが条件になるのです。
趣味、観賞用あるいは投資の対象として所有しているものについては非課税とされないため注意が必要です。
1-2 相続税がかからない仏具の具体例
相続税がかからない墓所、霊びょうの具体例としては、以下のようなものがあります。
- 墓地
- 墓石
- 墓碑
- 墓標
- 御霊屋(先祖の霊などを祭っておく建物)
- 埋棺
このほかにも、以下のような祭具についても相続税がかかりません。
- 庭内神し(屋敷内にある神の社や祠)
- 神たな神体(不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷など)
- 神具
- 仏壇
- 位牌
- 仏像
- 仏具
- 古墳等
これらに該当するというだけではなく、上述の通り、日常礼拝に使用されていることが必要です。
観賞用に大切にとっておいた仏具などは該当しないため注意しましょう。
2. 仏壇や位牌などの仏具が相続税対策にならない・控除されないケース
前項で見てきた通り、仏具等は原則として相続財産とはならず、相続税の負担もかかりません。
しかし、この規定を例外なく維持すると、亡くなる直前に高額な仏具を購入したり、純金を購入して仏具に加工したりするなどして、不当に課税回避しようとする者が現れるおそれがあります。
そこで、形式的にみれば仏具等に含まれる場合であっても、税法の趣旨に照らして、非課税の対象から除かれる場合があります。
以下では、仏具であっても節税対策にならない例として、代表的な3つを紹介します。
2-1 純金や骨董的な価値があるなど換金性が高く、祭祀財産と認められない場合
仏具等の祭祀財産に該当しても、骨とう的価値があるなど、投資の対象や商品として所有しているものには相続税がかかります。
こうしたものは、故人を継続的に弔うための道具というよりもむしろ、換金性の高い財産と捉えられるためです。
そのため、例えば相続税対策として、純金を購入して仏具に加工するなどしても祭祀財産とは認められにくいといえます。
2-2 被相続人の死後に購入したり、ローンを組んだりしている場合
被相続人が亡くなり、相続が開始した後に仏具を購入しても、相続開始時点では未だ課税対象である金銭の状態のままである以上、通常の相続税がかかります。
また、亡くなる前に購入したとしても、ローンを組んでしまうと、残債は相続税の債務控除の対象外のため、非課税の恩恵を何ら受けられなくなってしまいます。
相続税対策の視点でいえば、仏壇やお墓の購入は、被相続人の生前になるべく完済する計画で進めたいところです。
2-3 あまりにも高額すぎる場合
日常礼拝用に使用するもので、かつローンの残債務がないような場合であっても、実情を見て、税務当局が課税対象として判断することがあります。
例えば、不必要に広大な墓地や、社会通念上の常識を超えるような高額の価値が認められるものについては課税対象とされる可能性があります。
3. 仏壇やお墓などの仏具で相続税対策をする場合は「生前」に購入することが重要
生前に自分の仏壇やお墓を購入しておけば、購入した仏壇やお墓は、相続税の課税対象になりません。
また、出費した購入費分につき全体の相続財産を減らすこともできるため、結果として節税することができます。
一方、生前に仏壇等を購入しないまま被相続人が亡くなった場合、遺族が相続したお金で祭祀財産を購入したとしても節税はできません。
相続したのは、仏壇等ではなくあくまでお金であるため、出費した購入費についても本来の相続税がかかります。
したがって、節税の観点でいえば、仏壇やお墓は、被相続人となる者が生前に購入しておくことが大切です。
なお、生前に購入したとしてもその代金の支払いを終えていない場合、残債務は債務控除に算入することはできないため、生前に全て清算しておくようにしましょう。
4. 仏壇や仏具以外の相続税の節税対策を行う場合は税理士に相談
今回は、仏壇や仏具と相続税の関係、節税の具体的な方法について解説しました。
被相続人となる人が生前に購入することで将来の遺産額を減らし、節税に繋げることができます。
ただし、投資目的での購入や高価すぎるものは非課税の対象とならないため注意が必要です。
亡くなった後では、遺された人は葬儀の準備や遺産分割などに追われるため、限られた期間のなかで仏壇や仏具まで選ぶとなると、遺族のご負担が大きくなります。
相続税の節税対策を行う場合は税理士に相談して、将来損のない相続を実現しましょう。