みなし相続財産とは?みなし相続財産の遺産分割もわかりやすく解説

更新日:2023.12.11

みなし相続財産とは?みなし相続財産の遺産分割もわかりやすく解説

遺産分割でもらったわけではないものの、相続税申告の時には「みなし相続財産」として課税対象となることがあります。

死亡保険金の受け取ったり、亡くなった人に預金を積み立ててもらったりしていた人は、申告漏れに注意しましょう。

みなし相続財産を見落としたまま相続税申告を進めると、追徴課税を免れられなくなる恐れがあります。本記事では、相続財産とみなされるものを的確に判断して対処できるよう、具体例や遺産分割での取扱い方を紹介します。

1. みなし相続財産とは?わかりやすく解説

みなし相続財産とは、民法の分野で定義から外れてしまうものの、課税上は相続財産と「みなされる」ものを言います。

民法、つまり遺産分割すべき対象やその権利について規定する法律では、相続財産を「被相続人に属する権利義務」と定義しています。

税法もこれにならい、あくまでも相続開始まで亡くなった人の所有だった財産につき、申告・納付義務を課すとしています。

実のところ、死亡に際して親族が取得する財産の中には、書類上だと被相続人の所有ではないものが複数あります。加えて、節税目的での「生前のうちに親族名義に変えておく」といった手法が認められるかどうかの問題もあります。

相続税の課税は、上記のような実情・考え方から、実態を重んじて対象が決められます。

つまり、書類を確認する限り被相続人に属していたわけではない権利義務(=財産)も、相続財産とみなされる場合があるのです。

2. みなし相続財産の7つの具体例

みなし相続財産だとされるのは、相続開始直前の名義がどうであれ、実態として亡くなった人の収入・出資分等で形成されている財産です。財産の具体例は7つ挙げられ、それぞれ以下のような解釈で相続税の課税があります

2-1 死亡保険金(生命保険・保険金)

被相続人が加入していた生命保険は、その支払いを受ける権利につき「受取人固有の財産」として扱います。

つまり、民法の分野では遺産として扱われず、受取人以外の相続人と分け合う手続きも原則不要です。

ただし、被相続人自ら保険料を支払っていた場合は、相続財産とみなして税の申告・納付義務が課せられます。

なお、受取人が保険料を支払っていた場合は所得税被相続人と受取人以外の人が支払っていた場合は贈与税とのように、掛金(保険料)の流れに応じて課税種類が変わります。

2-2 死亡退職金

死亡退職金は雇用契約に基づいて支払われるもので、遺産分割を必要としません。民法の分野では、相続財産として扱わないのです。

ただし、給与・賞与と同じく生前の労働の見返りである点等を考え、課税の分野では相続財産と見なします。

相続税が課税される範囲は「死亡後3年以内に支給が確定したもの」に限られますが、3年経過後に支払われたものも所得税・住民税の課税対象として確定申告が必要です。

関連して、お葬式の前後に贈られることの多い弔慰金、花輪代にも要注意です。その金額が過剰なら、死亡退職金として取り扱われます。

2-3 生命保険契約に関する権利

生命保険契約に関する権利とは、約款等に基づき、加入先保険会社から解約返戻金や満期保険料を受け取ることができる権利のことです。

保険契約では、相続人が死亡した時に保険金支払いを行う内容であるものので、毎月の保険料の支払いについては、世帯主として被相続人の口座から引き落とす場合がよくあります。

このように加入者と掛金負担者が異なると掛金負担者が死亡した場合、相続人が解約返戻金や満期保険料を請求する権利を引き継いだとされ、相続税の申告・納付義務が生じます。

2-4 定期金に関する権利

定期金とは、加入契約に基づき保険会社が支払う個人年金など、一定の間隔で金銭の給付を受け続ける権利です。

このうち、被相続人の掛金の負担に基づいて履行されるものは、死亡に伴って引き継がれる点も踏まえ、相続財産とみなして課税されます。

なお、国民年金の遺族基礎年金や厚生年金の遺族厚生年金は、相続税の課税対象ではありません

2-5 債務免除

債務免除とは、債権者と合意し、今後の返済義務を消滅させる行為をいいます。

相続開始後に債務免除を受けると、本来返済するはずの金額につき、相続人は経済的利益を得たと解釈されます。

上記の解釈に沿って、被相続人から相続人への贈与と見なされるのです。したがって、免除された債務分の金額はみなし相続財産として、原則として相続税が課税されます。

2-6 亡くなる前の3年以内に行った生前贈与

被相続人が亡くなる3年以内に贈与された相続財産は、相続税の課税対象になります。

厳密にはみなし相続財産ではなく「生前贈与加算」といわれるものですが、相続税の計算の際に相続財産に組戻して計算されることになります。 

これは、過度な贈与による多額の課税逃れを防止するための規定です。

2-7 その他のみなし相続財産

上記以外にも、みなし相続財産にあたりうるものは色々あります。

例えば、低額譲受による利益があります。すなわち、遺言によって著しく低い対価で財産を譲り受けた場合の時価との差額分は、遺贈によって取得したものとみなされるため、相続税の課税対象になります。

ほかには、特別縁故者への財産分与があります。内縁の妻や事実上の養子のように、法律上の身分関係にとらわれずに被相続人と特別な関係を持っていた人は、法定相続人がいない場合に「特別縁故者」と呼ばれます。

特別縁故者は相続権を持ちませんが、相続人不存在が確定した場合に限り、家裁の決定で遺産を取得できます。こうして利益を得た場合には、その取得した財産につき、相続税が課税されます。

【関連記事】非課税となる相続財産についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:相続税が非課税になるのはどんな時?適用になる財産について解説

3. 相続財産とみなし相続財産の違い

相続財産とみなし相続財産は、課税される点で共通しているものの、取得する権利については明確な区別があります。以降、両者の違いを改めて押さえましょう。

3-1 みなし財産は相続放棄をしても受け取れる

相続放棄とは、相続財産を一切承継しない旨の相続人の意思表示のことをいいます。相続放棄をした相続人は、民法上、土地や預金など一切の「相続財産」を受け取ることができなくなります

みなし相続財産はあくまで税制面で相続財産と同様に扱われているものにすぎず、民法上の「相続財産」には含まれません。

みなし相続財産を取得する権利は、相続放棄で対象になる権利とは別に存在するのです。そのため、相続放棄をした相続人であっても、生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産は問題なく受け取ることができます。

3-2 みなし財産は遺産分割の対象外となる

人が亡くなると、死亡者に属する一切の権利義務、つまり財産は「相続人の共有」になります。

これを解消してそれぞれ自己判断で利用できるようにするため、通常は全ての財産につき、遺言もしくは遺産分割協議で取り分を決めなくてはなりません。

ただし、みなし相続財産は受取人の固有の財産です。他の相続人との共有にはならず、遺言執行または遺産分割協議で分け合う必要はありません。

もっとも、高額な死亡保険金を得た者がいるときなど、不公平が生じてしまうことがあります

そこで、保険金受取人が被相続人の介護に貢献していたかどうかや、各相続人の生活状況などを考慮して、「特段の事情」が認められる場合には、死亡保険金等の金額も相続財産に含めて計算すべきとした最高裁判決があります。

4. みなし相続財産には相続税はかかるの?

みなし相続財産は課税対象になると言っても、その全体が対象になるとは限りません。一定の非課税枠があり、申告額を低く抑えられる可能性があるのです。

5. みなし相続財産の非課税枠

まず、みなし相続財産を含めた遺産全体につき、3,000万円+600万円×法定相続人の数の非課税枠(基礎控除額)があります。

例えば、Aが死亡し、妻Bと子C・Dがいる場合の法定相続人は3人ですから、非課税枠は

  • 3,000万円+600万円×3人=4,800万円

となります。

取得した財産の価額が非課税枠に満たない場合、相続財産には課税されません。

法定相続人の数が多いほど基礎控除額が高くなることから、相続税の計算上有利となります。

【関連記事】相続税の基礎控除についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:相続税の基礎控除はどのくらい?その求め方を徹底解説

5-1 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠

みなし相続財産は税法上相続税の課税対象となるのが原則ですが、生命保険金と死亡退職金を受け取る場合に限り、一定額までは非課税となっています。

具体的には、非課税限度額は以下のようになります。

  • 生命保険金の場合 500万円×法定相続人の数
  • 死亡退職金の場合 500万円×法定相続人の数

受取金額が上記の限度額を超えた場合には、超過分に限り課税対象となります。

ただし、相続人ではない人が保険金・退職金の支払いを受ける場合、上記の非課税枠はありません相続放棄をしている場合も、非課税枠は適用されません。

5-2 法定相続人の計算方法

法定相続人とは、原則的には民法で定められた相続人のことをいいます。

配偶者は常に相続人となるため、被相続人に子がある場合には、子と配偶者、被相続人に子や孫等の直系卑属がない場合には親、祖父母等の直系尊属と配偶者、被相続人に子および直系卑属がなく、直系尊属も死亡している場合は兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。

これが、民法上の原則です。

ただし、相続税法における法定相続人の数は、民法に規定されているものと一部異なります。

例外として大きく次の点を押さえる必要があります。

・相続放棄した人も、放棄がなかったものとして扱う

・養子も法定相続人にあたるが、基礎控除額に算入する人数は制限される(下記参照)

    被相続人に実子がいる場合 1人

    被相続人に実子がいない場合 2人

【関連記事】法定相続人の人数の確定についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:相続税の控除額は?基礎控除の改正や相続税の計算方法を解説!

6. みなし相続財産は遺産分割協議書に記載するべき?

みなし相続財産は取得者の固有の権利である点から、遺産分割協議書に記載する必要はありません。

ただし、共同相続人に黙って受け取った・取得する金額が大きい等の理由から、不公平だと指摘する人が現れてトラブルになる場合があります。

みなし相続財産も遺産分割の基礎に入れるべき特段の事情あるのなら、各人の取り分や遺留分について検討し、遺産分割協議書にも記載しなくてはなりません。

7. みなし相続財産があるときの注意点

みなし相続財産の課税額は、相続の状況が原因となり、類似事例と比べて増える可能性があります。
具体的な注意点として、以下の2つが挙げられます。

7-1 相続放棄すると一部の非課税枠がなくなる

みなし相続財産の取得者が相続放棄しても、左記財産だけは受け取れる他、基礎控除の額にも影響はありません。

ただし非課税枠に関しては、死亡保険金・死亡退職金を対象とするもの等、相続の状況に応じて使えるものが適用できなくなる可能性があります。

相続放棄の目的は、高額債務や損耗の激しい不動産等といった「負の遺産」の取得を回避することです。

「名義変更手続きが面倒」等の理由で行えばかえって損になるとして、これから放棄しようとする場合は慎重に考える必要があります。

7-2 みなし相続財産も2割加算の対象となる

相続税の2割加算とは、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人が相続財産を取得した場合に、その人の課税額に20%上乗せする制度です。

みなし相続財産は取得状況の要件を満たしませんが、2割加算の対象にはなり得るため注意が必要です。

2割加算の対象者に関しては、以下が理解のポイントです。

・実子と異なり、養子は2割加算の対象になる

・孫(=代襲相続者/子から死亡等の理由で相続権を承継した人)は、2割加算の対象にならない

8. みなし相続財産について悩む場合は税理士に相談

みなし相続財産は通常の遺産分割手続きを経ずに取得できることから、相続税の課税対象であるという認識が低くなりがちです。

課税の基本理解がないままだと、後になって修正申告のための余計な手間がかかる他、追徴課税も被りかねません。

また、控除の対象となる範囲も見極めが難しく、揃えるべき書類も多いため期限内に手続きを済ませるには大変な労力がかかってしまいます。

▼みなし相続財産の理解のポイント

  • 亡くなった人の収入・出資で形成されているものは、原則として全て課税対象になる
  • 申告時に一定の非課税枠が使える(死亡保険金・死亡退職金を対象とする500万円控除等)
  • 他の相続人とのトラブルを回避するため、遺産分割協議書に記載する場合がある

相続税の申告や納付手続は、相続開始後10か月以内に行う必要があり、期限を過ぎると延滞税が課せられてしまいます。

こうした思わぬ損をしてしまうことのないよう、税の計算や申告は、ぜひ専門家である税理士にお任せください。

監修者プロフィール
遠藤 秋乃(えんどう あきの)
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

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