相続税が非課税になるのはどんな時?適用になる財産について解説

更新日:2023.11.29

相続税が非課税になるのはどんな時?適用になる財産について解説

相続税には基礎控除をはじめ、さまざまな控除があります。相続税がかかってしまう場合でも、控除を適用して相続財産を一定の金額以下に抑えれば、非課税となります。目安としては相続財産が3,600万円以下なら基礎控除の範囲内となり、相続税はかかりません。

さらに相続税がかからない非課税財産を知っておけば、相続財産の総額を減らすことができるため、節税につながります

3,600万円の基礎控除を超えた場合でも、各種の控除や特例を併用すれば相続税を0円にできるケースもあります。合わせて解説しましょう。

相続財産が3,600万円以下なら相続税は0円!

相続財産がどんなに多くても、基礎控除額内におさまっていれば非課税です。まずは基礎控除額を計算してみましょう。

基礎控除額は一律ではなく「3,000万円 + (法定相続人の数)×600万円 」で計算して求めます(つまり法定相続人の数が分からないと算出できません。

法定相続人については後述します)。法定相続人が1人増えるごとに、基礎控除額は600万円ずつ加算されます。 

【関連記事】相続税の基礎控除についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:相続税の基礎控除はどのくらい?その求め方を徹底解説

【基礎控除額の早見表】

法定相続人 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円
6人 6,600万円
7人 7,200万円
8人 8,000万円
9人 8,600万円
10人 9,200万円

例えば、子どものいない夫婦で遺されたのが妻だけなど、法定相続人が1人の場合、相続財産が3,600万円以下なら非課税、すなわち相続税は0円となり、相続税の確定申告も不要です。

同じように法定相続人が10人いれば、相続財産が9,200万円以下なら非課税で、申告不要となります。

法定相続人とは?

民法で定められた相続人を「法定相続人」といいます。法定相続人になれるのは、故人の直系血族と配偶者に限定されています。

相続税の基礎控除を計算するためには、法定相続人の人数を確定することが必要です。

配偶者は常に法定相続人になります。そのほかの法定相続人の人数を確定する際に、重要になるのが相続順位です。先順位の人が1人でもいる場合、後順位の人は相続人にはなれません。

例えば、故人に配偶者と子どもがいた場合、故人の親やきょうだいは法定相続人になりませんが、故人に配偶者がいて子どもがいない場合、配偶者と故人の父母もしくは祖父母が法定相続人となります。

故人の両親や祖父母がすでになくなっている場合は、配偶者と故人のきょうだいが法定相続人となります。

父と母、きょうだいなど、同順位の人が複数いる場合は、全員が法定相続人となります。

【法定相続人の基本的なルール】

順位 相続人  
第1順位 死亡した人の子ども

・子どもがすでに死亡しているときは、その子どもの直系卑属である孫が相続人となる

・子どもと孫も順位が決まっており、死亡した人により近い世代である子どもが優先

第2順位 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

・父母、祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代の父母が優先される

・第2順位の人は、第1順位がいない際に法定相続人となる

第3順位 死亡した人の兄弟姉妹

・もし兄弟姉妹が死亡していたら、その兄弟姉妹の子どもである甥や姪が相続人となる

・第1順位と第2順位がいない際に法定相続人となる

遺産分割の割合は「法定相続分」で決まる

法定相続分とは、民法で定められている各相続人の遺産の取り分のことをいいます。法定相続分は以下のとおりで、相続できる割合が決まっています。 

【法定相続分】

配偶者と子どもが相続人である場合

配偶者1/2 

子ども(2人以上のときは全員で)1/2

配偶者と直系尊属(父母や祖父母)が相続人である場合

配偶者2/3 

直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者3/4 

兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

例として、遺産が1億円あった場合の法定相続分について見てみましょう。

 ケース1:法定相続人が配偶者のみ

100%の1億円が配偶者の法定相続分です。

ケース2:法定相続人が配偶者と子ども1人の場合

法定相続分は、配偶者は2分の1、子ども2分の1となり、各5,000万円ずつとなります。

ケース3:法定相続人が配偶者と子ども2人の場合

法定相続分は、配偶者は2分の1で子どもたちは全員で2分の1となります。

つまり配偶者は5,000万円、子ども①2,500万円、子ども②2,500万円です。 

ケース4:法定相続人が配偶者と故人の母の場合

法定相続分は、配偶者が3分の2、父母は3分の1となります。

つまり配偶者は約6,700万円、母は約3,300万円(故人の両親とも存命の場合は、3分の1を均等に分け合うため、それぞれ6分の1ずつとなります)。

ケース5:法定相続人が配偶者と故人の兄弟姉妹の場合

法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1となります。

つまり配偶者は7,500万円、兄弟姉妹2,500万円(複数いる場合、ここから均等に割る)

上記のケースで挙げたように、子ども、直系尊属(父母または祖父母)、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分け合います。ただし法定相続分は、必ずこのとおり分けなければいけないという決まりではありません。相続人間で遺産分割の合意ができていれば、遺産の分け方は自由です。

相続税がかからない4つの非課税財産とは?

相続税は基本的に相続財産すべてにかかりますが、相続税がかからない財産があることをご存知でしょうか。相続税がかからない財産のことを「非課税財産」といいます。

相続税がかかる課税財産を非課税財産に変えておくことで、相続税がかかる遺産の総額を減らすことができます。つまり非課税財産を知ることで、節税対策が可能になるのです。

ここでは、相続税のかからない4つの非課税財産について解説しましょう。

仏壇やお墓など日常礼拝をしているもの

信仰している宗教で日常的に礼拝の対象になっているものには、相続税がかかりません。具体的には庭内神しや神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、墓地、墓石などが挙げられます。

ただし金の仏像や仏鈴など、換金性の高いものや美術品・骨董品的価値のあるものは、相続税の課税対象になるケースもあるので注意が必要です 

相続人が公益法人等に寄付をした遺産

相続人が、相続によって得た財産を公益法人等に寄付した場合、その財産の相続税が非課税となります

寄付は相続税の申告期限である10カ月以内に行い、寄付先は、国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う法人または認定NPO法人など、認知されている団体や組織であることが重要です。

また、財産をそのままの形で寄付することが要件となります。例えば有価証券を現金化して、お金を寄付する場合は対象外で、有価証券のまま寄付をすれば非課税の対象となります。

被相続人の死亡によって受け取る生命保険金

相続財産には、被相続人の死亡によって受け取る生命保険金も含まれます。生命保険金には他の財産とは別に一定額の非課税枠があり、これは「 法定相続人の数 × 500万円」の算式で計算します。すべての相続人が受け取った保険金の合計額が、この算式で計算した非課税限度額を超えた場合、超える部分が相続税の課税対象になります。

例えば生命保険金が1,000万円で、法定相続人が1人の場合「1人×500万円=500万円」を差し引いた500万円が課税対象となります。

同じ生命保険金が1,000万円でも、相続人が2人なら「2人×500万円=1,000万円」で相続税は非課税となります。

ただしこの控除が受けられるのは、被相続人が保険料の負担をしていた生命保険のみとなります。

被相続人の死亡によって受け取る死亡退職金

被相続人の死亡によって受け取る死亡退職金にも、一定額の非課税枠があります。死亡退職金の控除額は、生命保険金と同様に「法定相続人の数 × 500万円」の算式で求められます。

退職金の支給が確定した時期で、かかる税金の種類が変わるので注意が必要です。

・被相続人の生前に支給が確定していた退職金:被相続人の所得税(退職所得)

・被相続人が死亡してから3年以内に支給が確定した退職金:相続税(みなし相続所得)

・被相続人が死亡してから3年経過後に支給が確定した退職金:相続人の所得税(一時所得)

相続税の申告期限の10カ月を過ぎて死亡退職金の支給が確定した場合、死亡後3年以内なら相続税の修正申告を行いましょう。

借金やローンは相続財産から控除できる

相続財産には、預貯金や現金、有価証券といったプラスの財産だけでなく、団体信用生命保険で補填されない住宅ローンの残高債務や未払い金、保証債務といったマイナスの財産も含まれます。

これらのマイナスの財産がある場合は、相続財産から差し引いて計算できることを覚えておきましょう。

相続税がかからない財産は、上記で説明したもの以外にもあります。気になる方は国税庁のHPで確認してください。

参考URL

国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」

相続財産が3,600万円以下なら申告は不要!ただし相続税0円でも必要なケースも

相続財産が3,600万円以下なら、相続人が1人でも基礎控除額を下回るため、相続税の確定申告は不要です。

相続人が複数いる場合も「3,000万円+法定相続人の数×600万円」以下ならば、同様に基礎控除額が下回るため、原則、相続税の申告は不要です。

相続財産が基礎控除額を上回った場合も、他の控除や特例の適用を受けることで相続税が0円にできるケースがあります。

さまざまな控除や特例がありますが、今回は最もよく利用される配偶者控除と、知っておきたい小規模宅等の特例について解説します。

【関連記事】相続税がゼロの申告についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:相続税がゼロでも申告が必要な5つのケースとは?申告不要な場合も紹介

「配偶者の税額の軽減」なら相続税が実質0円に

配偶者の税額の軽減は、被相続人の配偶者が相続をした際に、相続税が大幅に軽減される制度です。配偶者が相続する場合、次の金額のどちらか多い金額までは相続税がかかりません 

(1) 1億6,000万円

(2) 配偶者の法定相続分相当額

(1)は1億6,000万円までは相続税がかからないということです。(2)は、配偶者の法定相続分に相当する金額までは課税されないということです。

例えば相続人が配偶者と子どもで4億円の遺産がある場合、配偶者の法定相続分である2分の1、つまり2億円までは相続税がかからないことになります。

なぜこのように配偶者の相続税が優遇されているのかというと、残された配偶者の生活保障や、ともに故人とともに財産を築き上げたという実績を考慮してのことです。

またこの制度は、法的な配偶者のみが対象で、いわゆる内縁の妻には適用されません。

大きな節税効果がある制度ですが、利用には少し注意が必要です。例えば妻と子のある人が亡くなった場合を考えてみましょうこの制度を利用する目的で妻が財産のほとんどを相続した場合、相続税は節税できます。

しかし将来妻が亡くなり相続が発生したときには、財産が一気に子ども世代に引き継がれ、大きな税負担を強いられることになります。

このように両親のどちらかが亡くなり、配偶者と子どもが相続人になることを「一次相続」といい、その配偶者も亡くなったあとに子どもによって相続することを「二次相続」といいます。一次相続において節税対策を考える際には、二次相続での対策も合わせて考えておくことが大切です

【関連記事】二次相続についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:数次相続(二次相続)とは? |数字相続での遺産分割協議書の書き方も紹介

住んでいる自宅は「小規模宅地等の特例」で評価額を80%下げられる

相続財産に土地がある場合、その土地が現金に換算していくらになるかという「評価額」をもとに相続税額を計算します。つまり土地の評価額を下げることが節税対策となり、なかでも節税効果が高いのがこの「小規模宅地等の特例」です。 

小規模宅地等の特例は、被相続人の住んでいた土地(または事業、賃貸用として使用していた土地)を配偶者または同居親族が相続し、引き続き居住する場合所得税の課税評価額を最大80%減額するという特例です。

例えば、自宅の評価額が1,000万円の場合、最大で1,000万円×80%=800万円の減額となり、適用後の評価額は200万円になります。

この特例は、相続財産が自宅しかない人が、相続税を支払うために自宅を売却して納税しなくても済むよう、また相続したことによって相続人の生活を脅かすことがないように作られたものです。

この特例を受けるには、土地が一定の面積以下であることや、基本的には一緒に住んでいることなど細かい要件があります

また、本来なら小規模宅地等の特例の適用条件に当てはまらない、被相続人と相続人が別に住んでいる場合も、相続人がマイホームを持っていないなどの要件を満たせば適用できる可能性があります(家なき子特例)。

家なき子特例は、空き家対策などが目的とされていましたが、本来の趣旨とはずれた主旨での適用が多く、平成30年度の税制改正によって適用条件が厳しくなりました。

大きな節税効果が期待できる小規模宅地等の特例ですが、適用条件が複雑かつ添付書類も必要なため、利用の際には専門家に相談しながら手続きを進めることをおすすめします

【関連記事】小規模宅地の特例についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:小規模宅地の特例とは?相続税が減額される要件や必要書類を解説

基礎控除を超えなければ相続税は非課税!特例も上手に活用して節税しよう

原則として相続財産が3,600万円以下、あるいは「3,000万円+法定相続人の数×600万円」以下の場合は、相続税は非課税となり、相続税の確定申告の必要はありません。

また、もともと相続税がかからない財産を相続財産から外して計算すると、最終的に相続税がかからなくなったり、大きな節税効果があったりします。

もし相続税がかかるラインを超えてしまっても、紹介した配偶者控除や小規模宅地等の特例のように、併用できる控除や特例があり、それらをうまく活用して相続税を節税することが可能です。

ぜひ検討してみてください。

この記事の監修者

新井智美/トータルマネーコンサルタント

・ファイナンシャルプランナー(CFP®)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・DC(確定拠出年金)プランナー
・住宅ローンアドバイザー
・証券外務員

コンサルタントとしての個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)や、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師のほか、大手金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績 は2,000本を超える。

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