【兄弟間相続のトラブルや増税の回避にも】兄弟間の相続税はいくら?相続税の計算方法等を解説!

更新日:2023.11.28

【兄弟間相続のトラブルや増税の回避にも】兄弟間の相続税はいくら?相続税の計算方法等を解説!

兄弟間で相続を行う場合、相続税はいったいどのくらいになるのかと疑問に思うこともあるでしょう。

法定相続(法律で遺産の取得が認められる際の規定)は複雑で、誰がどのくらいの割合で遺産をもらい受ける権利を持っているのか、分かりにくくなっています。

相続人同士で意見の食い違いがあれば、相続トラブルに発展してしまうこともあるでしょう。

実際に、裁判所がまとめた家事事件の概況によると、遺産分割事件の新受件数は、平成8年からの20年間で5割以上のペースで増加しています。

この記事では兄弟間相続における相続税や法定相続分の具体的な計算方法、また遺留分についても解説しています。兄弟間での相続に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

兄弟に相続が行われる3つのケース

法律上、兄弟や姉妹が相続できる可能性があるのは、原則として被相続人(=亡くなった人)の直系の家族がいない場合です。

関係しているのは、続柄ごとに権利取得の優先順位を決める「相続順位」と呼ばれる規定です(下記参照)。

  • 第1順位:子(亡くなっている場合は孫・ひ孫等の直系卑属)
  • 第2順位:直系尊属(父母や祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)

実際に兄弟に相続権が回ってくる状況として、これから紹介する3つの状況が挙げられます。

1.第1順位・第2順位ともに相続人がいない場合

兄弟が相続できる状況として最初に挙げるのは、第1順位である子どもがおらず、第2順位である父母・祖父母も既に亡くなっているケースです。

相続人かどうか判断する上でのポイントは、亡くなった人と戸籍上の夫婦である人(配偶者)には必ず権利が生じる点です。

つまり、死亡時点で既婚なら配偶者と兄弟姉妹が、離婚済・未婚・内縁のいずれかであれば兄弟姉妹だけが、各状況で相続人として扱われます。

2.第1順位・第2順位の人々が相続放棄をした場合

第1順位・第2順位の人が生存していても、彼らが必ず遺産を相続するとは限りません。

相続放棄で権利を失っていれば、子や直系尊属が始めからいなかったものとして、兄弟姉妹が相続人になります。

相続放棄とは、負債が大きく不動産や預貯金などプラスの資産を上回る場、その債務を含めて遺産を一切受け継がないことを選択する手続きです。

いったん相続放棄すると、今回の相続につき、孫・甥・姪等の「代襲相続人」も遺産承継できません。

3.遺言で兄弟に相続されている場合

最後に挙げるのは、遺言書で「自分の兄弟姉妹に財産を譲る」と意思表示されているケースです。

法律上の権利取得の規定は、必ずしも遵守すべきものではありません。亡くなった人が遺言していれば、その内容が優先されます。

裏を返せば、そうする必要がある場合にきちんとした遺言書が残されていないと、兄弟が遺産をもらい受けられるチャンスはありません。

兄弟が法定相続人になった場合の法定相続分

もし兄弟が法定相続人となった場合は、いくらくらいの遺産を相続できるのでしょうか。それぞれのパターンに分けて、詳しく見ていきましょう。

法定相続人が兄弟のみの場合

相続人が兄弟のみである場合、遺産全体が兄弟全員で取得できます。弟・妹……とのように兄弟が複数人いる場合、遺産全体を頭数で割った分が、各人の法定相続分です。

たとえば遺産が1億円で相続人が兄弟4人のみの場合、兄弟1人当たりの法定相続分は1億円÷4人で2,500万円となります。

法定相続人が配偶者と兄弟の場合

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者の法定相続分は遺産の4分の3で、兄弟の法定相続分は遺産全体の4分の1です。

兄弟が複数人いる場合は、遺産の4分の1を頭数で割ります。

たとえば、遺産総額が1億円、法定相続人は配偶者と兄弟4人となったケースを考えましょう。

この場合、配偶者の法定相続分は1億円×4分の3で7,500万円です。そして兄弟1人あたりの法定相続分は、1億円×4分の1÷4で625万円となります。

法定相続人が兄弟と甥・姪の場合

法定相続人が兄弟と甥・姪になった場合は、法定相続人が兄弟のみの時と同じく、各々同じ割合の法定相続分が認められます。

甥・姪に関しては、既に亡くなった親、つまり存命なら遺産分割に加われる法定相続人の取得分を「そのまま引き継ぐ」と考えるからです(=代襲相続)。

兄弟間で相続した場合、代襲相続は1代まで

代襲相続について補足すると、亡くなった兄弟姉妹の取得分をその直系卑属が引き継ぐ場合、あくまでも1代限りとされています。

つまり、甥・姪は相続権を得ますが、その子ら(又甥・又姪)が親の死亡によって権利を得ることはありません。

兄弟間での相続時に、相続税の計算で注意すること

兄弟で相続人となる場合は第1順位・第2順位の方々とはまた違った注意点があります。

ここでは兄弟間で相続する際の注意点について確認しておきましょう

【関連記事】法廷相続人の優先順位についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:法定相続人と遺言で優先されるのはどっち?法定相続人や遺言書に関して、相続放棄時の注意点も徹底解説!

1.法定相続人の場合は基礎控除の人数に含める

遺産を相続した際には、その財産額に応じて相続税を申告・納付しなければなりません。

ただし、基礎控除額と呼ばれる所定の金額を超えない範囲なら課税されず、上記の手続きは不要になります。

現在の税制下での基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。

つまり、法定相続人の数に応じ、1人あたり600万円ずつ起訴控除額が上がります。

兄弟が法定相続人となった場合も、この基礎控除の人数に含まれます。

2.2割加算される

注意したいのは、兄弟姉妹の相続税額には2割加算がある点です。例えば、配偶者と兄弟姉妹が共に遺産を取得したとしましょう。

配偶者が負担するのは、所定の計算方法で算出した課税額です。

一方、今回の相続で一緒に税申告する兄弟姉妹に関しては、その課税額に1.2を掛けなくてはなりません。

兄弟が相続をする場合の相続税の計算方法

では実際に、兄弟が相続をする場合の相続税を計算してみましょう。

【関連記事】実際の相続税額についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:【相続税計算シミュレーション】どのくらいかかるのか計算!

今回は被相続人の弟と妹が法定相続人になったケースで説明します。

STEP1.課税遺産総額を計算する

相続税について計算するには、まず課税遺産総額を計算しましょう。

そんなに資産がないと考えていても、計算すると意外と大きな額になりがちです。

遺産は預貯金や株式などの金融資産だけではなく、自宅などの不動産やゴルフの会員券までも財産額に含まれます。

ここでは課税遺産総額を5,000万円として、計算を進めていきます。

STEP2.基礎控除額その他の非課税枠を差し引く

課税遺産総額が算出できたら、最初にそこから基礎控除額を差し引きましょう。

今回の法定相続人は2人なので、3,000万円+600万円×2人の4,200万円が基礎控除額です。

課税遺産総額は5,000万円なので、5,000万円-4,200万円の800万円が基礎控除額を引いた金額になります。

他にも、債務、葬式費用、死亡保険金の非課税枠等を差し引けますが、ここでは簡単に「基礎控除以外に差し引けるものがなかった」と考えます。

STEP3.課税価格を法定相続分に沿って割り振る

Step2で計算した課税価格は、税率から相続税額を計算する前に、法定相続分に沿って各人に割り振ります。

今回の法定相続分は弟と妹で2分の1ずつとなるため、それぞれ400万円です。

STEP4.各人の課税額を計算する

次に、各人の課税価格に相続税率を掛けます例示しているケースでは、各人の税率は10%(区分1,000万円以下)です。

つまり、400万円×10%で、いったん課税額=40万円ずつと判断できます。実際には、遺産分割協議の結果、法定相続分とは異なる割合で遺産を取得するケースもあります。

当てはまる場合は、上記の計算で行った「法定相続分の課税額」をいったん合算し、現実の取得割合で按分して負担します。

STEP5.2割加算して納付税額を計算する

兄弟姉妹の相続税の計算は、以上で終わりではありません。2割加算後の金額が納付税額となる点で、計算結果に1.2を掛ける必要があります。

その結果、遺産を法定相続分に沿って分割したとすると、納付税額は48万円となります。なお、2割加算後の金額には、障害者控除・未成年者控除等が適用できます。

各種税額控除の要件に当てはまれば、積極的に活用したいところです。

【関連記事】遺産の税金についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:遺産にかかる税金はいくら?|遺産の税金計算方法を徹底解説!

兄弟が相続人の場合、遺留分はどうなる?

遺留分とは、相続人が最低限取得できる遺産の割合を意味しています。

遺言や生前贈与で相続人の遺留分が不足するなら、その原因になった遺産の取得者に対し、金銭で補填するよう求められます(遺留分侵害額請求)。

では、亡くなった人の兄弟姉妹が遺産相続で不利な状況に置かれた場合、自分の遺留分を主張して解決することは認められるのでしょうか。

ここでは兄弟が相続人の場合の遺留分の扱いについて説明します。

法定相続人が兄弟のみの場合

遺留分が認められている人物は、被相続人の配偶者と直系尊属・直系卑属に限られます。

兄弟姉妹は遺留分が認められておらず、それに伴って遺留分侵害額請求権もありません。

例えば、兄弟姉妹が法定相続人であるにも関わらず、その権利が遺言で無視され、内縁の妻や介護施設に贈与されたとしましょう。

この場合、遺言無効確認訴訟等で「遺贈に効力がない」と認められない限り、兄弟姉妹は何も得られません。。

法定相続人が配偶者と兄弟の場合

では、法定相続人が被相続人の配偶者と兄弟のみであった場合はどうなるのでしょうか。この場合も、万一遺言書に配偶者が全財産を相続する旨が明記されていれば、兄弟は何も得られません。

どうしても不満が残るのなら、遺産分割協議に応じてもらうよう配偶者を説得するか、あるいは遺言の無効を主張するか、いずれかで対抗する他ないでしょう。

兄弟間での相続税に関するトラブルが起きる原因・例

兄弟間では、相続税というより、その前段階である遺産分割でもめがちです。

遺産相続においてはたとえ遺産が少額であったとしても、骨肉の争いにまで発展してしまうことは少なくありません。

近い年齢かつ家庭内で同じ立場として過ごしてきただけに、生前の生活にどれだけ寄与したか、あるいはどのくらい恩恵を受けてきたのか、言い合いになりやすい関係にあるのです。

相続法には、上記のような主張が認められた場合に「寄与分」あるいは「特別受益」として扱い、それぞれの遺産の取得分で配慮するとの規定があります。

トラブルになった場合は、上記規定に沿って取得分を見直せるかどうかが争点になります

▼寄与分(取得分の増加)を巡って争うケース

  • 晩年に生活費を援助していた兄弟が、援助額分の取得を主張する
  • 生前同居していた兄弟が、別居する兄弟に対し介護負担の見返りを希望する
  • 無報酬で家業を手伝っていた兄弟が、給与の代わりに遺産分割での優遇を求める

▼特別受益(取得分の減少)を巡って争うケース

  • 被相続人に生活費を援助してもらっていた人がいる
  • 結婚や住宅購入の際、特定の兄弟だけが資金援助を受けている
  • 特定の兄弟が起業する際、被相続人に出資してもらっていた

相続税そのものについて起こる兄弟間トラブルとしては、納税資金関連が考えられます。税のトラブルが起こりやすいのは、収益不動産や会社があるケースです。

土地建物や自社株式は、基本的にその運用を続けるべき人が相続するでしょう。これらの財産は高額化するため、「預貯金は全て他の兄弟へ」とのように円満に手続きを終えたいところです。

ただ、高額資産には相応の課税があります。

そこで、これから運用するはずの資産を分割するか、あるいはいったんもらい受けて一部または全額を売却するか、二者択一に迫られるリスクがあります。

兄弟間の相続税に関するトラブルを回避するには遺言書の作成が効果的

では、兄弟間の相続税に関するトラブルを防ぐためには、一体どうすれば良いのでしょうか。

遺産相続に関するトラブルを回避するには、遺言書の作成が最も効果的です。

独身で子供もいないという方の中には、遺言書の作成など必要ないと考える人がいるかもしれません。

しかし前述の通り、たとえ相続人が兄弟のみの場合であっても遺産相続トラブルは起きかねないのです。

それを避けるためにはあらかじめ遺言書を作成し、兄弟に分与する遺産を指定しておきましょう。

そうすれば遺産の取り分をめぐり兄弟間で争うことや、遺産分割が全く進まないといった事態を後々回避することができます。

兄弟間の相続に悩んだ場合は税理士に相談

兄弟が法定相続人となった場合、法定相続分や相続税の計算方法なども他の相続人とは異なります。

兄弟が相続人の場合は遺留分が認められず、また遺留分侵害額請求の権利もないため後々トラブルになってしまうことも考えられます。

たとえ遺産が少額であっても、相続トラブルにより裁判にまで発展してしまうことも。

しかし、きちんと効力のある遺言書を作成していれば、そのリスクを軽減することができます。

もし兄弟間の相続で悩んでおられるなら、まずは税理士に相談してください。

税理士であれば兄弟間の相続であっても的確なアドバイスをすることが可能です。

兄弟間の相続に悩んだ場合は、ぜひお近くの税理士に相談してみましょう。

【関連記事】兄弟間の相続についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:【兄弟間の相続】相続税はいくら?基礎控除の計算方法や、3つの注意点を解説

 
監修者プロフィール
遠藤 秋乃(えんどう あきの)
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

 

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