亡くなった人の遺した”マイナスの遺産”が相当に大きいケースでは、死亡3か月以内に「相続放棄」の手続きに踏み切ることで承継の負担から解放されます。
ただし、安易に「どうせ資産なんてないから」「遺産の名義変更手続きが面倒だから」という理由で放棄を決断するのは考えものです。
遺産の内訳を確認した上で本当に放棄すべきか検討し、煩雑な手続きや債権者対応を適宜行わなければなりません。
相続放棄とはどのような行為なのか、他の選択肢や手続きの内容まで掘り下げて解説します。
目次
相続放棄とは
「相続放棄」とは、亡くなった人に属する財産と権利義務について、法律で定められる相続人の取り分の一切を放棄する手続きです。
そもそも遺産とは、本来なら権利者の生活保障や利益につながるものです。
にもかかわらずやむを得ず放棄しようとする場合は、相続人本人が家庭裁判所での手続き(=申述)を行い、遺産状況等について審理を経なければなりません。
審理後に放棄が受理された時点で、申述者は相続人の地位を失います。
このとき、本来必要であった遺産承継に必要な手続きから解放され、相続税申告も不要になります。
相続放棄のメリット
相続放棄の件数は年々増加しており、わずか10年で年間約6万件の増加(2008年は約15万件→2018年は約21万件 / 司法統計年表家事編より)が見られます。
これほど増加したのは、高齢化社会に伴って下記のメリットが注目されていることが背景です。
メリット1: 被相続人に属する負債・義務から解放される
最大のメリットは、相続財産に含まれる債務を承継せずにすむ点です。
被相続人(亡くなった人)の生活ぶりにより借金や損害賠償義務がかさんでいる場合、相続放棄が適します。
メリット2: 面倒な相続手続きが不要になる
2点目に注目されるメリットは、長期化しやすく面倒な相続手続きから解放される点です。
人が亡くなると、その遺産を承継するために①遺言書の捜索・②遺産分割協議への参加・③金融機関や法務局での名義変更手続き・④相続税申告とのように、全体で短くとも3か月以上もの時間(目安)を費やさなければなりません。
このように手間暇をかけて相続することにメリットを見いだせない相続人にとって、相続放棄は魅力的です。
メリット3: 相続税の基礎控除に影響しない
3点目のメリットは、共同相続人の一部が放棄をしても、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)額には影響しない点です。
遺産を受け継ごうとする相続人の金銭的負担は変化せず、放棄の選択について家族の理解を得やすいのがポイントです。
相続放棄のデメリット
最初に述べたように、相続放棄は「一切の財産と権利義務」を捨てる手続きです。
放棄の仕組みに伴い下記のデメリットがあることは、申述前に念頭に置かなければなりません。
デメリット1: 相続人にとって有益な”プラスの財産”が承継できなくなる
相続財産には、不動産や預貯金などの「プラスの財産」・借金等の「マイナスの財産」の2種類が含まれます。
“一切”の放棄とは、プラスの財産も得られないことを意味します。
デメリット2: 生命保険金・死亡退職金の非課税枠が使えない
死亡に際し給付された生命保険金や死亡退職金には、相続税の賦課時に法定相続人1人につき500万円の「非課税枠」が適用できます。
各給付金は相続放棄した後も受け取れますが、例外的に「みなし相続財産」として課税される上、非課税枠の適用対象外となってしまいます。
以上の点を押さえると、安易に「相続放棄すればいい」と考えるのは禁物です。
個別のケースで放棄のメリットとデメリットをよく比較して、専門家の意見を交えながら決めるべきです。
相続放棄の注意点
相続放棄の長所・短所を理解した上でなお手続きに踏み切ろうとする前にも、いったん立ち止まって下記の点に留意しなければなりません。
注意点1: 相続放棄は取り消せない
申述受理の効果は永久的なものであり、取り消すことはできません。
万一「実は負債を上回る財産があった」と後日判明しても、それを相続人として承継することはできないのです。
注意点2: 放棄分は他の相続人に移転する
「相続放棄の申述」は相続人が個別に行い、相続権を失ったことで宙に浮いた取り分(法定相続分)は放棄しなかった他の相続人へと移転します。
つまり、負債から解放されることを目的に放棄する場合は、全相続人が一斉に家庭裁判所で手続きしなければなりません。
以上の点から、1人が早まって相続放棄を決断するのもやはり禁物です。
明らかに放棄したほうが良いと思われる場合でも、よく財産調査を行い、遺産の全容を把握した状態で共同相続人と相談しなければなりません。
相続放棄と限定承認
負債を免れる目的で相続放棄するのなら、他にも「限定承認」という手段が考えられます。
限定承認とは
限定承認とは、相続財産に含まれる負債の清算を条件に「プラスの財産」が受け取れる手続きです。
プラスの財産より負債が多いケースでは、清算後に残った債務を相続人が負う必要はなく、承継できる財産はゼロとなります。
負債の清算は家庭裁判所の主導で行い、換金の必要がある遺産(不動産など)は鑑定人による査定の上で競売にかけられます。
相続時の3つの選択肢
- 単純承認: 一切の財産と権利義務を承継する(通常の相続手続き)
- 相続放棄: 一切の財産と権利義務を放棄する
- 限定承認: プラスの財産の評価額を限度として負債を承継する
※ほかにも「財産放棄」という方法もありますが、民法で規定されていないためここでは省略します(詳細は後述)
相続放棄と限定承認の違い
限定承認を相続放棄と比べた時の最大の特徴は、相続権を失うことはないため、清算の結果少しでも財産を手元に残せる可能性がある点です。
それ以外にも、競売にかけられようとする資産を相続人のポケットマネーで買い取ることのできる「先買権」(民法第932条)があるのも、限定承認にしか認められない特徴です。
他方で、清算手続きのために時間と費用がかかるのは、相続放棄にはない限定承認のデメリットです。
相続放棄と財産放棄
相続放棄・限定承認以外にも、遺産承継を回避する方法として「財産放棄」があります。
財産放棄とは
財産放棄とは、遺産分割協議で「財産は承継しない(自分の取り分をゼロとする)」と意思表示し、他の相続人と合意する行為を指します。
同様に「自身の全相続分を特定の別の相続人に譲り渡す」という内容で合意に至った場合も、財産放棄が成立します。
相続放棄と財産放棄の違い
同じく”放棄”と呼ばれる2つの手続きの違いは、法律上の性質にあります。
相続放棄が「公的に相続権喪失を宣言するもの」であるのに対し、財産放棄は「当事者だけで私的に取り分をゼロとする約束を交わしているだけ」のものなのです。
この違いが影響するのは、債権者に対して返済義務のないことを主張する際です。
財産放棄では法律上の相続権そのものは存続するため、主張の法的根拠が弱く、督促が継続する可能性があります。
一方の相続放棄は、相続権とともに一切の債務が失われていることが明白です。
債権者としては、相続放棄の申述に関する証明書を提示されれば、引かざるを得ません。
相続放棄を選択すべきケース
遺産承継を回避するための方法のなかでも「相続放棄」を選択すべきなのは、①明らかに負債が多いケース・②負債は少ないものの相続のメリットが薄いと判断できるケースの2パターンに分かれます。
明らかに負債が多い場合
同居家族が知る暮らしぶりから見て、明らかに被相続人が多額の負債を抱えていると分かるケースは少なくありません。他には「連帯保証人」として契約に参加している場合も、相続放棄を検討すべきです。
連帯保証人は主債務者(借入を行った本人)と同様の地位にあり、主債務者の返済が滞ると債務履行に応じなければならない義務があるからです。
明らかに負債が多い相続事例
- 晩年生活に苦しみ、銀行や消費者金融から多額の借金をしている
- 被相続人を連帯保証人とする契約があり、残債が相当額に及ぶ
その他の場合
相続事例のなかには、金銭・時間・心理の3つコストの観点から「承継しても取り立ててメリットがない」というケースも少なからず存在します。
相続の金銭的コストが大きい典型例は、農地や不整形地(形状が歪な土地)などの「売却しにくくメンテナンス費や固定資産税ばかりかかる資産」が遺産の中心を占めるケースです。
他方、時間と心理面のコストが大きい例として、遺産総額がそれほどないにも関わらず相続人同士が争っているケースが挙げられます。
こうした事例は調停・審判等でいずれ解決に至りますが、決着まで時間がかかるほど金銭では取り返しのつかないもの(時間や人間関係など)を失ってしまうでしょう。
負債は少ないが相続のメリットも薄い相続事例
- 有益な資産(不動産・預貯金・有価証券など)がほとんどない
- 遺産のほとんどを「査定額が低く買い手がつきそうにない財産」が占める
- 遺産評価額が低いにも関わらず相続人が争っている
相続放棄を選択すべきないケース
遺産にたとえ1点でも「必要とする資産」があれば、相続放棄は選択すべきではありません。
心当たりのあるケースでは、下記のように限定承認も視野にいれながら検討するのがベストです。
限定承認が有効な場合
相続人の生活に不可欠な財産は、限定承認で先買権を駆使して現物を取り戻しながら、返済中のローンを清算できる可能性があります。
手元に残したい資産が明確でなくとも「負債がプラスの財産を上回っている」と断定できないときは、ひとまず限定承認を選択するのも一手です。
特に価値変動幅の大きい資産がある場合は、清算時に負債をカバーできるほど上昇している可能性に期待できます。
限定承認が有効なケース
- 住宅ローン支払い中の居住用不動産を何とか残したい
- 被相続人の死亡に伴い事業承継が予定されている
- 今後宅地として需要増加が見込まれる土地が遺産に含まれる
限定承認の条件
限定承認では「相続人全員の同意」と「財産目録の作成」を前提に手続き(申述)を行います。
また、所得税申告を要する可能性も事前に理解しておきましょう。
- 全相続人が共同申述する: 分割前に相続人全員が限定承認することに同意し、共同で家庭裁判所へ必要書類を提出しなければなりません。
- 申述時に財産目録を提出する(民法第924条): 負債清算の手続きのため、あらかじめ遺産の内訳を明記した財産目録を作成・提出する必要があります。
- 遺産承継が発生したときは譲渡所得として扱う: 限定承認後の残余分は遺産の値上がり益と認識され、みなし譲渡所得として課税が発生する。残余分を受け取った翌年の2月~3月の確定申告の際、申告書に記載して税を納めなければなりません。
相続放棄の手続き
検討の結果「相続放棄するしかない」と決心したときは、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。以下では、申述先や必要書類などの実践的な解説を行います。
相続放棄の申述先
相続放棄の申述を行うのは、被相続人の最後の居住地(住民票がある場所)を管轄する家庭裁判所です。
事前に必要書類を収集し、記載されている死亡時点の住所から裁判所公式サイト内ページで確認するとスムーズです。
相続放棄に必要な書類
相続放棄に必要な書類は、申述人によって異なる部分と、共通部分があります。
まずは共通の書類を解説し、そのあとに申述人ごとに必要な書類を説明します。
【共通】相続放棄の必要書類
- 記入済の相続放棄申述書: 申述人・法定代理人・被相続人の各情報とともに、審理材料となる「申述の趣旨」「申述の理由」を記入します。「申述の理由」には相続財産の内訳欄があり、大まかで構わないもののできるだけ正確に記入します。
記入例・申述書PDFのダウンロード先:裁判所公式サイト内ページ
- 被相続人の戸籍附票または住民票除票: 死亡を確認するために必要です。被相続人が本籍地とは異なる場所に住んでいる場合、住民票除票の取得が手ごろです。
- 申述人の戸籍謄本: 相続関係があることに加え、本人確認のために必要です。
- 申述人別の相続関係を証明する添付書類(戸籍謄本一式): 詳しくは後述します。
- 収入印紙+返送用の郵便切手: 手数料として800円分の収入印紙を申述書に張り付け、申述人あてに書類送付してもらうための郵便切手を納めます。切手代は管轄裁判所で確認可能です。
なお、被相続人1人につき2人以上相続人が放棄しようとする場合、重複する添付書類は1通で構いません。
必要書類の中の「申述人別の相続関係を証明する添付書類」は、申述人の血縁関係別に下記表の組み合わせで揃えます。
【申述人別】相続関係を証明する添付書類
(必要書類\申述人に記載の続柄は、それぞれ被相続人との関係を示しています)
必要書類\申述人 | 配偶者または子 | 孫 | 父母 | 祖父母 | 兄弟姉妹 | 甥・姪 |
被相続人の死亡記載がある戸籍謄本 | 〇 | 〇 | ― | ― | ― | |
被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本 | ― | ― | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
子の死亡記載がある戸籍謄本 | ― | 〇(※) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
配偶者の出生から死亡までの全戸籍謄本 | ― | ― | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
父母の死亡記載がある戸籍謄本 | ― | ― | ― | 〇 | 〇 | 〇 |
兄弟姉妹の死亡記載がある戸籍謄本 | ― | ― | ― | ― | 〇 | 〇(※) |
※申述人の親にあたる人物のもの
相続放棄にかかる費用
なお、相続放棄の申述でかかる費用項目とその金額は下記の通りです。
相続放棄の1件あたりの費用
- 相続放棄の手数料:800円
- 返送用の郵便切手代:~1,500円程度
- 戸籍謄本の交付手数料:450円または750円/1通
- 住民票除票の交付手数料:300円/1通
- 専門家報酬:相談料+3万円~5万円
意外にかさむのは、申述人の血縁関係により多くの部数を要する「戸籍謄本」の交付手数料です。
交付申請時に間違って不要なものの交付を受けないよう、はじめに必要書類は丁寧に確認しなければなりません。
相続放棄手続きの流れ
費用・必要書類の準備を含め、相続放棄の手続きは次の流れで行います。
- 他の相続人に放棄することを知らせる: 相続放棄の意思を固めたことを知らせ、放棄分が他の相続人に移転することを説明します。
- 管轄家裁に必要書類を提出: 前項解説の必要書類と費用を揃え、管轄の家庭裁判所に提出します。提出方法は来所・郵送のどちらでも構いませんが、郵送の場合は事前に宛名の確認を取りましょう。
- 照会書の受領・返送: 書類提出から2週間程度で、申述理由と相続放棄への理解度をチェックするための「照会書」が家裁から申述人へ送付されます。内容を確認し、記入したものを返送しましょう。
- 相続放棄申述受理通知書の受領: 審理に問題なければ正式に申述が受理され、その通知が申述人に届けられます。
「相続放棄申述受理通知書」について
手続きの最後に届く「相続放棄申述通知書」は大切に保管しましょう。
その後の問い合わせに必要な情報(受理日・事件番号・申述人の情報など)が記載されているためです。
ただし、本通知書は対外的な証明力をもたないため、どこかに提示する際は以下の書面が必要です。
「相続放棄受理証明書」について
先述の通知書とほぼ同じ内容が記載された「相続放棄受理証明書」は、債権者への提示や、遺産承継した相続人による名義変更手続きなどに活用するものです。
本証明書の取得は、通知書を受け取った後に改めて交付申請する必要があります。
申請書は管轄裁判所で取り扱っており、手続き時は本人確認書類のほかに「申述時と転居先との住所の繋がりを示すもの」(住民票等)の追加書類が必要になる場合があります。
相続放棄の期限
相続放棄の手続きはいつでも始められるわけではありません。
相続法では、単純承認・相続放棄・限定承認の3つの方法から選択すべき「熟慮期間」の定めがあるからです。
相続放棄の期限は原則3カ月
熟慮期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に相続放棄しなければならないと定められています(民法第915条1項)。
しかしながら当然、相続放棄するかどうかはすぐに決められません。
もしも財産調査等の事情で決断まで3か月以上の期間を要するなら、家裁へ「熟慮期間の伸長」を申し出て考える期間を延長できます。
3カ月を過ぎた場合
もしも熟慮期間内に何ら手続きできなかった場合、単純承認したものとみなされます。
ただし、やむを得ない事情がある場合はこの限りではありません。
期間内に手続きできなかった理由を「陳述書」にまとめて家裁に報告することで、例外的に放棄申述が受理される場合もあります。
一方で「陳述書」の作成は専門知識を要します。過去の判例を加味し、裁判所の価値基準に沿った記述をしなければならないからです。
万が一熟慮期間内に申述できなかった場合、家裁への理由報告を適切に行うため、専門家へのサポートを得ましょう。
相続放棄が認められないケース
熟慮期間内でも「相続財産を利用する行為」があれば、相続放棄は認められず、単純承認の扱いになります。
該当するケースのうち最も多いのは、負債を一部返済してしまうケースです。
返済行為は法律上の「債務の承認」にあたり、ひいては債務の承継を認めたことになってしまうのです。
相続放棄できないケース
- 債権者に督促されて一部返済してしまった
- 相続財産に属する不動産を売却してしまった
- 相続財産に属する預貯金を自分の生活費に使ってしまった
相続放棄の可能性があるのなら、遺産には手を付けず、債権者からの連絡にも応じないようにしましょう。
とはいえ、後者については相続人自身では防ぎきれません。
執拗な督促に悩まされないよう、弁護士と速やかに受任契約を結び、連絡があったときに取り次げる状況にするのも一手です。
相続放棄の疑問
下記では、よくある相続放棄の誤解や疑問に対して回答しています。
相続開始していないと相続放棄はできない?
遺言等で生前に相続放棄を指示することはできません。
「相続が開始されていること」を前提に、相続人が自由意思で決めるべき事柄であるからです。
生前にやっておくとよいのは、財産目録の作成です。
遺産の内訳や評価額・負債の存在などを明確にしておけば、死後の判断の助けになります。
相続人全員が相続放棄をしたら?
相続人全員が遺産を放棄しても、自動的に国庫に属するわけではありません。
国庫に属する前にいったん相続法人に属し、放棄した相続人には「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」遺産管理を継続する義務(民法第940条1項)が残されます。
管理のコストから解放されるには、財産管理・清算・国庫帰属の各役割を担う相続財産管理人の選任申立をしなければなりません。
相続放棄、自分でする? 依頼する??
最後に残るのは「相続放棄は自力ですべきか、それとも専門家に依頼すべきか」という疑問です。
まずは自力で行うケースの長所・短所から解説します。
相続放棄を自分でする場合のメリットとデメリット
相続放棄の申述はあまり専門性を求められる場面がなく、相続人の独力による手続きは十分可能です。
一方で、次のメリットとデメリットには留意しましょう。
メリット: 費用を抑えられる
相続放棄のコストの大半を占めるのは専門家報酬であり、自力なら8,000円~1万円程度まで費用を抑えられます。
デメリット: 書類収集に手間がかかる
必要書類は各地の役場で交付申請しなければならず、亡くなった人と遠距離別居している家族にとっては負担です。
書類収集の過程でミス(書類不足や取り違え)が生じる可能性も否めません。
コスト最重視であれば自力で進めるのがベストですが、手続きミスや仕事への支障が生じてかえって損失が出る恐れがあります。
また、相続放棄するか判断する際に財産調査が必要であることも考慮しなければなりません。
以上の点から、迅速さと確実性を重視するのであれば、専門家に調査・アドバイス・手続きの全体を任せられるのが適切です。
相続放棄を専門家に依頼する場合
相続放棄の手続きは、弁護士・司法書士のどちらでも依頼先として選べます。
ただし「うっかり熟慮期間を過ぎてしまった(過ぎてしまいそう)」「債権者から督促がある」等の難しいケースは、判例知識に長け訴訟代理権を持つ弁護士に依頼するのが最適解です。
相続放棄のサポート内容(弁護士・司法書士共通)
- 相続財産の調査
- 相続方法の診断とアドバイス
- 必要書類の職権取得
- 代理人による申述
- 熟慮期間後の相続放棄(弁護士への依頼推奨)
- 相続放棄しなかった場合の各種手続きサポート
相続放棄を弁護士or司法書士に依頼した際の費用感
報酬相場も弁護士と司法書士とのあいだにそれほど差はありません。
無料相談に対応できる専門家も士業問わず多数おり、コストを抑えることも可能です。
弁護士と司法書士の費用相場(筆者の調査による)
士業\費用項目 | 相談料 | 報酬※ |
弁護士 | 0円~5,000円 | 5万円前後 |
司法書士 | 0円~5,000円 | 2~4万円 |
※自力で行った場合の最低手数料は除く。
相続放棄のポイントまとめ
「負債が多すぎる」「負債はあまりないものの相続するメリットが薄い」等のケースでは、相続放棄が適しています。
放棄の手続きが視野に入ったときは、まずは以下のポイントを押さえて今後の対処を検討しましょう。
- プラスの財産(不動産や預貯金など)も承継できなくなる
- 死亡3か月以内に手続きを開始しなければならない
- 必要書類が多いため、自力で手続きする場合は時間にゆとりを持つ
- 債務の不存在証明・他の相続人の遺産名義変更手続きの際は「相続放棄受理証明書」の交付を受ける必要がある
相続放棄すべきかどうかの判断を含め、日常生活に集中しながらスムーズに手続きを終わらせたい場合は専門家への依頼が適しています。
ひとまず弁護士・司法書士のいずれかに相談し、アドバイスを求めましょう。
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。
この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
2020年04月のオープン以降、専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように
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