遺産分割の【割合はいくら?】|遺産相続時の遺産分割の割合を解説

更新日:2024.02.14

遺産分割の【割合はいくら?】|遺産相続時の遺産分割の割合を解説

遺産を相続したら、相続人全員参加して「遺産分割」しなければなりません。遺産分割とは、相続財産を各相続人で分け合うことです。

今回は相続人となる人の範囲や相続割合、遺産分割の方法や流れ、協議を行っても話しがまとまらないときの対処方法など、遺産分割について必要な知識を紹介します。

相続における遺産分割とは

遺産分割概要

遺産分割とは、各相続人がどの遺産を取得するかを決める手続きで、相続発生時に法律では「誰が相続人になるか」は決まっていますが、「誰がどの遺産を受け取るか」までは決まっておらず、相続人同士が話し合って各取得分を決める必要があります。

遺産分割の期限

遺産分割には、期限がありません。ただし「相続税の申告納税期限」に注意が必要です。

相続税は「相続開始を知ってから10カ月以内」に申告納税しなければなりません。

そのときまでに遺産分割ができていなければ、とりあえず「法定相続分」で相続税を申告納税し、後から還付請求や追加払いをしなければならないのです。

相続税の申告納税までに遺産分割ができていないと余計な手間がかかるので、できるだけ「相続開始を知ってから10カ月以内」の相続税申告納税の期限までに遺産分割を済ませておくべきといえます。

なお、相続財産が相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人数×600万円)以下の場合には相続税が発生しないので、上記の「相続開始を知ってから10カ月以内」の期限を気にする必要はありません。

法定相続人とは

次に遺産相続権を持つ「法定相続人」についてご説明します。法定相続人とは、民法で「相続人になるべき」と定められている人です。

具体的には以下の人が法定相続人になります。

  • 配偶者(夫や妻)は常に法定相続人

配偶者以外の法定相続人には順序があります。

  • 子どもが第1順位

子どもが先に死亡していれば孫、孫も先に死亡していればひ孫が相続人になります。

  • 親が第2順位

親が先に死亡していれば祖父母、祖父母も先に死亡していれば曾祖父母が相続人になります。

  • 兄弟姉妹が第3順位

兄弟姉妹が先に死亡していたらその子どもである甥や姪が相続人になります。

遺産分割の割合の目安(法定相続分)

それぞれの法定相続人には民法によって「相続割合」が決められています。その割合を「法定相続分」といいます。

  • 配偶者と子どもが相続: 配偶者が2分の1、子どもが2分の1
  • 配偶者と親が相続: 配偶者が3分の2、親が3分の1
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続: 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

子どもや親、兄弟姉妹が複数いる場合には頭割り計算します。例えば子どもが3人で相続する場合には3分の1ずつになります。

遺産分割の3つの手続き

遺産分割には、以下の3種類の手続きがあります。

遺産分割協議

「遺産分割協議」は、相続人同士で話し合い合意して遺産分割の方法を決める手続きで、法定相続人が全員参加する必要があります。一人でも欠けると無効になってしまうので要注意です。

遺産分割協議が整ったら「遺産分割協議書」を作成し、それを使って不動産の名義変更などの手続きを進めます。

遺産分割調停

「遺産分割調停」は、遺産分割協議が整わないときに家庭裁判所で遺産分割方法を定める手続きです。調停では、家庭裁判所の「調停委員会」が当事者の間に入って調整を行います。

話し合いを「調停委員」が仲介してくれるので、もめている相続人たちが自分たちで話し合うよりまとまりやすくなります。

調停委員会から「遺産分割案」を提示してくれるケースもよくあります。

遺産分割審判

遺産分割調停をしても合意できない場合には「遺産分割審判」になります。遺産分割審判は、審判官(裁判官)が遺産分割の方法を決める手続きです。

当事者が納得しなくても、審判官が遺産分割の方法を指定します。

審判官は当事者の主張内容や提出された書面、証拠などによって遺産分割方法を決定するので、希望を通したければ適切な書面提出や主張を心がけなければなりません。

対応が難しいので、弁護士に依頼する方が良いでしょう。

遺産分割における4種類の対処方法

遺産分割の際には、基本的に以下の4種類から対処方法を選べます。

現物分割

現物分割は、不動産や車などの相続財産を「そのまま分け合う」方法です。例えば不動産と株式、車と預貯金がある場合、「長男が不動産」「次男が株式と車」「三男が預貯金」を受け取ると「現物分割」となります。

換価分割

換価分割とは、相続財産を売却して売却金を相続人同士で分け合う方法です。

例えば3,000万円の不動産があって子ども3人が相続するケースにおいて、不動産を売却した代金を3分の1ずつ、1,000万円ずつ受け取ると「換価分割」となります。

代償分割

代償分割とは、特定の相続人が相続財産を受け取り、他の相続人に「代償金」を支払う方法です。

例えば3,000万円の不動産があって子ども3人が相続するケースにおいて、長男が不動産を受け取るとします。

このとき長男が次男と三男に対しそれぞれ1,000万円ずつの「代償金」を渡して解決すると「代償分割」となります。

共有

遺産相続するとき「共有」にもできます。共有は、分割ではなく相続人が相続財産を共同所有する方法です。

例えば不動産を子ども達3人が相続するとき、それぞれが3分の1ずつの持分を取得して3人で共同所有し続けるのが「共有」です。

ただし財産を共有のままにすると、将来トラブルの元になります。共有物件を活用・売却するには他の共有者の同意が必要なので、意見が合わないともめてしまいます。

また共有者が死亡するとさらに相続が起こって共有持分が細かくなり、誰が共有者かわからなくなる事例も少なくありません。

こういったリスクを考えると、遺産分割時には共有にせずに「現物分割」「換価分割」「代償分割」のいずれかの方法で分けるべきといえるでしょう。

遺産分割を行う流れ

遺産分割の流れをみていきましょう。

遺言書の有無を確認

相続が発生したら、まずは遺言書を探しましょう。自宅などに自筆証書遺言が保管されていないか確認し、公証役場で「検索」を利用して公正証書遺言が残されていないか確認しましょう。

相続財産の確認

次にどのような相続財産があるのか、明らかにする必要があります。金融機関で預貯金の残高証明書を取り寄せたり、役所で「名寄せ帳」を取得して不動産の情報を確認したりして、相続財産調査を進めましょう。

相続人の確定

遺産分割協議を始める前提条件として、誰が相続人か確定する必要があります。亡くなった人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本類を取得して、相続人を漏れなく調べ上げましょう。

遺産分割協議を行う

相続財産と相続人が確定したら、相続人が全員参加して遺産分割協議を行います。

話し合った内容を遺産分割協議書にまとめる(サンプル付き)

相続人全員が合意できたら、話し合った内容を「遺産分割協議書」にまとめましょう。以下にサンプルを用意しましたので、参考にしてください。

遺産分割協議書(サンプル)

本     籍  東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番

最後の住所    東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号

被 相 続 人    田中太郎 (2020年〇月〇日死亡)

被相続人田中太郎の相続人妻田中花子と相続人長男田中俊夫は被相続人の遺産分割協議を行った結果、次の通り分割することに同意した。

1.相続人妻田中花子は次の遺産を取得する。

【土地】

所   在  東京都〇〇区〇丁目

地   番  〇番〇

地   目  宅地

地   積  100.00㎡

【建物】

所   在  東京都〇〇区〇丁目

家屋番号   〇番〇

種   類  居宅

構   造  木造瓦葺2階建

床 面 積   1階  80.11㎡

2階  70.00㎡

2.相続人長男田中俊夫は次の遺産を取得する。

【預貯金】

○○銀行○支店 普通預金 口座番号00000000

【株式】

○○株式会社 普通株式  100株

3.相続人田中花子は第1項記載の遺産を取得する代償として、相続人田中俊夫に2022年〇月〇日までに、金3,000万円を支払う。

4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人田中花子がこれを取得する。

以上のとおり遺産分割協議が成立したので本協議書を2通作成し、相続人全員が署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

2020年〇月〇日

【相続人田中花子の署名押印】

住所

氏名           実印

【相続人田中俊夫の署名押印】

住所

氏名           実印

遺産分割協議がまとまらない場合

遺産分割協議がまとまらない場合には、遺産分割調停を行います。

遺産分割調停とは

遺産分割調停は、先にも説明した通り家庭裁判所で調停委員会を介して遺産分割方法を話しあう方法です。

遺産分割調停申立に必要な書類

  • 申立書
  • 被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 遺産に関する資料など

上記の他にも戸籍謄本類が必要になるケースがあります。

申立てにかかる費用

  • 被相続人1人について1,200円の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手(数千円分)

弁護士を調停の依頼をした場合の費用

弁護士に調停を依頼すると、着手金と報酬金がかかります。着手金は30万円程度、報酬金は獲得できた相続財産の額によって異なります。

高額な遺産を相続すると報酬金も高額になります。だいたいの目安として、獲得できた利益の10~15%程度を見ておきましょう。

遺産分割審判とは

遺産分割審判は、裁判所が遺産分割の方法を決定する手続きです。遺産分割調停が不成立となったら自動的に遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判に必要な書類、費用

遺産分割審判は遺産分割調停が不成立になると自然に始まるので、申立は不要です。

弁護士に審判の依頼をした場合の費用

遺産分割審判の弁護士報酬体系も、基本的に遺産分割調停と同じです。獲得できた相続財産が高額になると弁護士報酬も上がります。

遺産分割終了後に遺言書が出てきた場合

遺産分割終了後に遺言書が出てきても、相続人全員が合意した内容に納得していたら遺産分割協議は有効なままです。遺言書通りに手続きをやり直す必要がありません。

ただし「遺言書を知っていたら協議に合意することはなかった」場合や、「相手方が故意に遺言書を隠していた場合」などには遺産分割協議が無効となる可能性があり、その場合には遺言書通りに手続きを進めます。

遺産分割におけるトラブル例

遺産分割時には、以下のようなトラブル事例が多いので注意しましょう。

生前に被相続人の介護等をしていて遺産を多く要求

生前、被相続人を献身的に介護していた相続人には「寄与分」が認められる可能性があります。介護していた相続人が「寄与分」を主張しても他の相続人が認めなければ、遺産分割協議でもめてしまいます。

相続人の中に生前に財産をもらっている人がいる

ある相続人が生前に財産をもらった場合、「特別受益」となってその相続人の遺産取得分を減らせます。

ただ贈与を受けた相続人が贈与を否定したり、「いくらを特別受益と評価するか」などで他の相続人と意見が合わなかったりしてもめてしまうケースが多々あります。

連絡のとれない相続人がいる

連絡の取れない相続人がいると、遺産分割協議を進められないので家庭裁判所で調停をするしかありません。

不動産が多く、遺産が分けられない

遺産に不動産が多いと、それぞれ現物分割、換価分割、代償分割のどの方法で分けるか、誰が取得するかなどを決めないといけないので、遺産分割協議がまとまりにくくなります。

被相続人に内縁の妻がいる

内縁の妻には遺産相続権が認められません。相続人となった子どもが内縁の妻に自宅の明け渡しなどを要求するとトラブルになる可能性が高まります。

遺言書があるが、その内容に従いたくない

遺言書が特定の相続人に不利な内容になっていると、不利益を受ける相続人が「偽物だ」などと主張してトラブルになるケースが多々あります。

遺産分割トラブルを防ぐ方法

遺産分割トラブルを防ぐ、あるいは解決するには以下のように対応しましょう。

遺産分割で損をしないために

遺産分割で損をしないためには、法律の正確な知識が必要です。

誰にどのくらいの相続権があるのか、どういった分割方法が適当か、相手の提案を受諾すべきかどうかなど、それぞれの場面で正しい判断を要求されるからです。

自分で法律知識を得るのに限界があれば、専門家に相談しましょう。

遺産分割は専門家なら誰に依頼すればよいか

遺産分割を相談できる専門家には弁護士や司法書士、行政書士があります。

ただ司法書士や行政書士は基本的に「トラブル解決」ができません(司法書士は140万円までの案件の交渉権がありますがそれ以上の案件に対応できず、遺産分割調停や審判などの代理権を持ちません)。

相続人調査や相続財産調査、また自分たちで協議をまとめることができれば「遺産分割協議書」を作成してもらえますが、「相手と揉めてしまったときの解決」は任せられません。

トラブルになったときに代理人として交渉や調停を依頼できるのは弁護士だけです。相手ともめそうな雰囲気を感じる場合、当初から弁護士に相談するようおすすめします。

遺産分割を弁護士に依頼するメリットと費用感

弁護士に遺産分割協議や調停等の対応を依頼すると着手金と報酬金が発生します。着手金はだいたい30万円~、報酬金は獲得できた金額の10~15%程度が相場です。

当初の相談時に報酬体系をしっかり確認し、費用感を把握してから依頼すると良いでしょう。

遺産分割がもめごとになってしまうと、数年経っても解決できず親族付き合いも断絶してしまう事例が多々あります。

まずは正しい知識を身に付けて他の相続人と遺産分割協議を行い、困ったときにはすぐに弁護士に相談してアドバイスを受けながら進めましょう。

執筆者プロフィール

福谷陽子
元弁護士のライター。弁護士時代には遺産相続案件に積極的に取り組んでおり、多数解決した実績を持つ。取扱い事件として離婚や債務整理、企業案件や刑事事件なども。現在はその経験を生かして遺産相続を始めとする他分野の法律ライターとして、多くのメディアで執筆している。

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