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株の相続、評価方法と相続手順、名義変更、放棄方法をすべて解説

更新日:2021.01.19

株の相続、評価方法と相続手順、名義変更、放棄方法をすべて解説

親が亡くなり、遺産を調べていたら株が見つかった。このようなケースでは、今後どのような手続きをすればよいのでしょうか。上場株式と非上場株式のケースに分けて解説します。相続手順や売却方法に加え、株の相続を放棄する場合の方法も説明します。

故人の財産に株が! どうすればよい??

被相続人の相続財産の中に株があった場合、どのような手続きが必要となるでしょうか。今回は、被相続人の相続財産中に株式があった際の、相続人による株式の相続手続きについて説明します。

株式の相続手続きをする際、最初に行うべきことは、その株式が「上場株式」であるのか、それとも「非上場株式」であるのかの確認です。上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式のことをいいます。証券会社や信託銀行などで管理されている株式です。これに対して非上場株式とは、上場していない株式ということになります。

上場株式の場合

上場株式である場合は、まず窓口となる証券会社や信託銀行に対して、名義人が亡くなり相続が発生したことを伝えてください。そうすると証券会社等から相続手続きに関する書類等が送付されてきます。送られてきた書類をチェックして、その上場株式の内容を確認してください。その際、「取引残高報告書」の発行を請求すると当該上場株式の詳細が分かります。なお、窓口となる証券会社や信託銀行を調べるには、被相続人の郵便物をチェックするのが良いでしょう。

非上場株式の場合

非上場株式の場合には、証券会社等が管理しているわけではないため、株式を発行した会社に対し直接問い合わせる必要があります。株式を発行した会社の所在地が移転などにより不明確である場合は、法務局でその会社の履歴事項全部証明書を取得するとよいでしょう。その会社の新所在地が判明するはずです。

株式を発行する会社の連絡先が確認できたら、その会社に株式名義人が亡くなったことを連絡します。当該発行会社から、相続手続きに関する書類等が送付されてくることと思います。なお、当該発行会社から相続人であることや相続したことの証明書を求められた場合には、戸籍謄本や遺産分割協議書などを提示しましょう。この場合、戸籍謄本や遺産分割協議書は他でも使う可能性があるため、原本を返却するよう伝えます。

株を相続した場合の評価方法は??

相続財産を複数の相続人で分割して取得する場合には、その前提として財産の価値を把握しておく必要があるでしょう。財産価値が分からなければ、どのように分割すべきか判断が付かないからです。例えば、現金と株式とがある場合、現金が1000万円で株式の価値が1000万円であれば、一方の相続人が現金を、もう一方の相続人が株式を取得するといった遺産分割協議があり得るでしょう。しかし、現金が1000万円で株式が200万円の価値であれば、一方の相続人が現金600万円を取得して、もう一方の相続人が現金400万円と株式を取得する、といった遺産分割協議になるかもしれません。遺産分割協議をするには、事前に株式の評価額や評価方法を知っておく必要があるのです。

つまり、相続財産中に株式がある場合には、株式に関する評価方法を明確に理解しておく必要があるわけですが、注意すべきことは、「上場株式」と「非上場株式」とではその評価方法が異なるという点です。以下、詳しく見てみましょう。

上場株式の評価方法

上場株式の場合には、以下の4つの価額のうち、もっとも低い金額で計算するのが原則です。

  1. 相続があった日の終値
  2. 相続があった月の終値の平均額
  3. 相続があった月の前月の終値の平均額
  4. 相続があった月の前々月の終値の平均額

なお、上場株式が複数ある場合には、それぞれの株式ごとに最も低い金額で評価します。全てが同じ時期で評価する必要はありません。

また、相続のあった日が土曜日、日曜日、祝日など証券取引所が休みの日である場合には、当然ながら相続があった日の終値は出てこない、ということになります。この場合には、相続発生日に最も近い日における終値を「①相続があった日の終値」として計算します。例えば、日曜日が相続発生日であれば、翌日の月曜日の終値を「①相続があった日の終値」とします。

非上場株式の評価方法

非上場株式の場合、その株式の評価額を確認することはかなり大変な作業となります。非上場株式の場合には、上場株式のように客観的な数値が明示されていないからです。この場合、国税庁が作成する「取引相場のない株式の評価」を参照することになります。ちょっと難しいですが、順を追ってご説明いたします。

まず、非上場株式を発行する会社を、その規模に応じて「大会社」「中会社」「小会社」に区分します。そして、区分に応じた評価方式を用いることになります。

  • 大会社: 「大会社」の場合には、原則として「類似業種比準方式」という方法で評価します。類似業種の株価を基に、その会社の一株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額(簿価)の三つで比準し評価する方法です。
  • 小会社: 「小会社」の場合には、原則として「純資産価額方式」により評価します。純資産価額方式は、会社の総資産や負債などから相続税評価額を基に正味財産価額を算出し、これをもって株式を評価するという方法です。
  • 中会社: 「中会社」の場合には、原則として大会社の評価方法と小会社の評価方法を併用して評価することになります。

なお、休業中の会社や清算中の会社など、営業状態が特異な会社の場合には、上記の原則とは異なる評価方法が定められております。以上のように、非上場株式の評価方法はとても難しいので、税理士への確認をおすすめします。

株を相続する際の手順は?

株式を相続するための手順を、以下ご説明します。

遺言書の有無を確認

まずは遺言書の有無を確認しましょう。遺言書の内容により、原則として相続財産の処分方法が決定されるからです。遺言書は公証役場や法務局で、その有無が確認できる場合があります。遺言書があるかどうかの調査方法の詳細に関しては、司法書士等に相談してみて下さい。

相続人の調査

相続財産についての相続手続きを行う際には、「誰が相続人になるのか?」という調査が必要です。あなた自身が相続人であるか、あなた以外に相続人がいるのか、それが明確にならなければ相続手続を進めることはできません。相続人の調査は、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を、その出生まで遡って取得することで確認できます。

上場株式か非上場株式かを調査

相続人の調査ができたら、次に相続財産の調査を行います。相続財産中に株式があった場合には、その株式が上場株式であるのか、非上場株式であるのかを確認します。上場株式である場合には、証券会社等から定期的に通知が来ているはずです。被相続人の郵便物を確認してみるとよいでしょう。

株式を相続するか放棄するか判断

その株式を相続により取得するのか、それとも取得しないのかを判断します。なお、ここでいう「放棄」は、相続財産の全てを取得しないという「家庭裁判所における放棄」と、その株式は取得しないが他の財産は取得したいという「遺産分割協議における分割方法」の二つの意味があります。株式を含めた一切の相続財産を相続したくないと言う場合には、「家庭裁判所における放棄」を行う必要があります。なお、「家庭裁判所における放棄」は、原則として相続開始を知った時から3カ月以内といった要件がありますのでご注意ください。

準確定申告を行う

被相続人が確定申告をしていた場合など、被相続人の確定申告が必要であるときは、相続人は相続開始を知った日の翌日から4カ月以内に、被相続人のための準確定申告をしなければなりません。ただし、家庭裁判所における相続放棄をした場合には、準確定申告は不要です。なお、準確定申告をすると、家庭裁判所における相続放棄ができなくなるおそれがあります。この点はくれぐれもご注意ください。

遺言書がない場合は遺産分割協議を行う

被相続人が遺言書を作成していない場合、相続人全員で相続財産の処分に関する協議をすることができます。この協議を遺産分割協議といいます。例えば、相続財産が不動産と預貯金と株式であった場合、一人が不動産を取得し、もう一人が預貯金と株式を取得するといった協議などが可能です。ただし、遺産分割協議を行うためには全相続人がその協議に参加していなければなりません。一部の相続人間で協議しても、その協議は無効です。遺産分割協議をする前提として、相続人の調査が重要になるのはこのためです。

株式の名義変更を行う

株式を取得する相続人は、その株式の名義を被相続人から自分名義に変更してもらう必要があります。上場株式の場合には証券会社等に連絡をして名義書換のための必要書類を送付してもらいます。非上場株式の場合は、その株式を発行する会社に連絡をして、相続による名義書換手続をするようお願いして下さい。

相続税が発生する場合は相続税の申告を行う

相続財産の内容や相続人の状況により、相続税が発生する場合があります。相続税の申告時期は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内となっております。なお、納付期限も申告期限と同じです。申告は期限内にしたが納付は期限を過ぎてしまった、というようなことにならないようご注意ください。

相続した株式を売却するには?

相続した株式は、相続手続が完了次第、売却することができます。上場株式であれば、証券会社等に売却したい旨を伝えれば手続きをとってくれます。非上場株式の場合には、自分で買主を探さなければならなかったり、売却に際して株式発行会社の承認が必要になったりすることもあります。まずは株式発行会社に売却をしたい旨を伝え、当該会社が買い取るのか、他の株主が買い取るのか等、当該会社と連絡を取り合いながら進めていくとよいでしょう。

株の相続手続きをしないとどうなる?

株式の相続手続きを行わないと、その株式は相続人間での準共有状態となってしまいます。準共有状態になると、相続人のうちの一人を当該株式に関する権利行使者と定め会社に通知する必要があったり、株式配当を受け取るたびごとに相続人間で分配手続きをしたりしなければなりません。準共有状態にある株式の権利は不安定であり、手続きも煩雑になりがちです。なるべく早めに相続手続きを行った方がよいでしょう。

税理士や司法書士への依頼も検討する

相続手続きは専門的知識を要することが往々にしてあります。相続人の調査や遺言書の内容確認等については、司法書士や弁護士に確認したほうが安心かもしれません。また、非上場株式の評価額などは税理士に確認しないと難しいかもしれません。少しでも分からないことがあった場合には、あやふやに処理したり親族だけで無理に対応しようとしたりはせず、司法書士や税理士など相続に強い士業に相談することをお勧めします。

執筆者プロフィール
山下晋広
司法書士。2000年、司法書士試験合格。2004年、司法書士事務所を開業。所属する東京司法書士会では、調停センター運営委員、広報委員を担当。大学では文学部にて東洋哲学を学び、博物館学芸員を志しつつも、諸事情にて転身。現在、司法書士として研鑽を積む。主な業務は相続手続・不動産登記手続・企業法務・成年後見業務。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

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現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

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