運転免許証を持っている方が死亡した場合、免許証を返納しなければいけないのか悩む方も多いでしょう。
ご家族が亡くなられた時、まず最優先として葬儀を行い、その後手続きや各種届出などを行っていきます。
遺族にはやらなくてはいけないことがたくさんあるので、返納義務があるのであれば返すタイミングなども気になるところです。
今回の記事では、免許証を所持している人が亡くなった場合の手続き方法やタイミングなどについて詳しく解説していきます。
併せて運転経歴証明証も返納すべきなのか解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. 死亡後、運転免許は返納すべき?
現在多くの方が運転免許を所有しており、高校卒業と同時に親にすすめられて取得するという人も多く見られます。
法的な身分証明書としても使うことができるので、パスポートなどの証明証よりも身近で使う機会も多いのではないでしょうか?
これだけ多くの人が所持し社会で活用されている運転免許証ですが、もし免許証を持っている人が亡くなった場合も、死亡によって免許証の効力が自動的に無効となりません。第三者が証明として悪用することができます。
これを防ぐため返納することになりますが、所持していた本人はすでに死亡しているため、本人が返納することはできません。
こういった場合は遺族に返納義務があるのか解説していきましょう。
1-1 遺族に返納義務は発生しない
所持者が亡くなっている場合は、遺族によって返納の手続きをすることが可能になります。
「所持者が亡くなった場合、免許証を返納しなければ罰則があるのか」と不安に感じてしまうかもしれませんが、遺族に返納義務はなく返納しなかったからといって何か罰則を受けてしまうこともありません。
ただし、運転免許証には有効期限があるため、満了になっていない場合には運転免許証更新連絡等の通知が届くことになります。
そういった通知を停止するためにも、手続きはしておいた方が良いでしょう。
道路交通法107条でも運転免許証の交付を受けている者が死亡した場合には、すみやかに免許証を返納しなければならないという規定があります。
1-2 個人情報が悪用される可能性はある
返納する義務はないので、「処分すればいい」と思う人もいるかもしれません。
しかし、身分証明書として使うことが多い免許証を適当に処分してしまうと、悪用されてしまう恐れもあります。
運転免許証には、顔写真や住所、生年月日などの個人情報が記載されています。
そのまま捨ててしまい、誤って誰かの手に渡ってしまえば悪用されてしまうリスクがあるのです。
運転免許証で悪用されるパターンは主に銀行口座の開設や携帯電話の契約、クレジットカードの発行などが挙げられます。
そうならないためにも、遺族に返納する義務がないとしても亡くなった所持者に代わって返納の手続きをすることをおすすめします。
もしどうしても自分で処分・保管したいという場合は、パンチ穴を開けて使えないようにしておくと良いですが、最近はインターネットで免許証の写真を使って手続きするサービスもあるため、100%の防御策とはなりません。
1-3 死亡届を出せば問題ない?
人が亡くなった際は遺族が市役所などの自治体に死亡届を提出します。
死亡届を出せば免許証の情報も無効になると考える人も多いですが、実際には免許証を管理する国家公安委員会と死亡届などを管理する自治体で情報共有はしていないので注意してください。
警察署やと市役所の間では、人の生死に関する情報を共有しているわけではないので免許証を所持していた人が死亡したという事実は分かりません。
そのため、遺族が免許証所持していた人が死亡したことを証明するために死亡診断書や死亡したという事実が記載された戸籍謄本を免許証と共に警察署や免許センターに提出し、手続きを行わなければいけません。
2. 返納するならいつまでに行った方が良い?
そもそも返納しないと罰則があるというわけではないため、返納する時期は明確には定められていません。
しかし、悪用などのリスクがあるためできれば早めに手続きを行った方が良いでしょう。
家族が死亡した時は葬儀や様々な手続き、各種届出があるため、現実的には速やかに手続きを済ませることは難しいかもしれません。
返納を忘れてしまっていた場合、更新手続きをしなければ自動的に免許証は失効となるので免許証としての機能はなくなります。
有効期限が切れていて免許証としての役割はないとしても、「顔写真付きの身分証明書」として利用できてしまうので、有効期限が切れている場合でも返納手続きはするようにしましょう。
3. 運転免許証の返納手続きの流れ
運転免許証を返納しようと考えた場合、どこで手続きを行えば良いのでしょうか?
最近では高齢者の自動車運転事故が増えているため、自主返納する人も増えています。
返納する理由は様々ですが、どのような場合でも返納方法は同じです。
ここからは、返納の手続きをする際の必要書類や窓口について詳しく解説していきます。
3-1 必要書類などを準備する
返納手続きを行うためには、必要書類を準備しておかなくてはなりません。
運転免許証を所持する人が死亡した場合、手続きに必要となる書類は以下のとおりです。
・免許証
返納する免許証を用意してください。
・死亡診断書
返納する理由を証明するために死亡診断書が必要になります。
死亡診断書は病院で死亡した場合や通院していた場合は主治医から発行されます。
事故で即死した場合は警察の指定医が死体検案書を発行します。
・戸籍謄本の写し
死亡した人の戸籍謄本を用意してください。
死亡届を提出し、手続きが終了した時点のものが必要になります。
提出する際、戸籍謄本(写しでも可)が必要になることを一緒に伝えると手続きもスムーズにいきやすいです。
戸籍謄本を手に入れるには、市区の戸籍交付申請書、死亡した人の家族だと証明できる戸籍謄本、本人確認書類、印鑑が必要になります。
また、家族以外の人が請求する場合は、家族からの委任状を用意しなくてはなりません。
・身分証明書
申請をする人の身分証明証を用意してください。
・認印
申請をする人の印鑑を用意してください。
この他に必要となる「運転免許証返納届」は、受付の窓口に用意されています。
あらかじめ用意しなければいけないのは「死亡診断書」と「戸籍謄本の写し」です。
死亡診断書に関しては、運転免許の返納手続き以外にも使う機会が多いので何枚かコピーを取っておくと良いでしょう。
主な必要書類は以上となりますが、窓口によってはまた違う書類が必要になることもあります。
窓口に申請に行く前にあらかじめ電話などで確認しておきましょう。
3-2 警察署または運転免許センターの窓口に書類を提出
必要書類を揃えたら、警察署か運転免許センター(国家公安委員会)の窓口を訪問しましょう。
上記2つの窓口であれば、どちらでも手続きを行うことは可能です。
原則として、手続きは遺族が行うこととされています。
窓口を訪れたら、上記でも説明した窓口に用意されている「免許証返納届」を記入し、必要書類と共に提出します。
書類がしっかりと準備できていなかったり、不備があったりすると手続きも勧められなくなってしまうので、きちんと準備をしてから訪問するようにしてください。
地域によっては、自宅の近くに警察署または運転免許センターがないというケースもあります。
そういった場合は、地域の駐在所や交番などでも返納手続きの受付をしてくれることもあるので、近くの駐在所や交番に返納の手続きができるかどうか問い合わせてみてください。
家族が死亡した時は様々な手続きがあって大変なので、近くで済ますことができるのであればなるべく手間がかからない方法で返納の手続きを進めてみてください。
3-3 免許証を遺品として残しておきたい場合
免許証には顔写真が印刷されているので、遺品として残したいという遺族もいます。
「返納」というと、免許証自体も手放すことを想像する人もいるはずです。
しかし、免許証自体を返納しても手元に残しておくことは可能です。
返納するからといって、免許証自体を返さなければいけないという訳ではありません。
無効を証明するためにパンチで穴を開けた状態にはなりますが、希望すれば返してもらうことできます。
効力がなくなった後でも免許証自体を返さなければいけないという訳ではないので、遺品として残しておきたい人は返納の手続きの際に残しておきたい旨を窓口で伝えましょう。
4. 運転経歴証明書も返納すべき?
高齢になり運転技術の衰えを自覚したり、家族からすすめられたりすることで運転免許証を自主返納する人も増えてきています。
運転をしないとしても、身分証明書の代わりになっていた運転免許証がなくなることで不便な生活になってしまいます。
そういった場合、代わりに「運転経歴証明書」が発行されます。
運転経歴証明書では、以前に運転免許証を持っていて車を運転していたということを証明できる書類です。
免許証の代わりに身分証明書として利用できる場合もあります。
この運転経歴証明書も亡くなった人が持っていた場合、返納が必要になります。
運転経歴証明書は運転免許証と違って有効期限などがありません。
ただし運転経歴証明書にも個人情報が含まれるため、悪用されないように早めに返納しておきましょう。
5. まとめ
今回は、運転免許証を所持している人が死亡した場合の手続きなどについて詳しく解説してきました。
ご家族が亡くなった場合、悲しみに暮れる暇もなく手続きや各種届出などの対応に追われることになります。
そのため、運転免許証の返納手続きまで手が回らないという人も多いですが、亡くなった方の情報が悪用されないためにも返納の手続きを行うようにしてください。
族に返納義務はありませんが、速やかに返納手続きをした方が悪用されるリスクも減ります。
万が一返納の手続きを忘れていた場合でも、更新の手続きが行われなければいずれ失効します。
しかし、免許証が無効になったとしても悪用されるリスクはあるので、返納することが望ましいです。
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この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。