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相続人・財産の確定法–戸籍収集のコツや調査法、費用を司法書士が解説

更新日:2020.04.17

相続人・財産の確定法–戸籍収集のコツや調査法、費用を司法書士が解説

被相続人に関する「相続人」や「相続財産」を調査して確定するためには、正確な知識と的確な方法をもって行う必要があります。それらの知識と方法について、ここでは説明します。

相続人の確定

相続人を確定させる方法

相続人を確定するためには、まず「法定相続人」の範囲を知っておく必要があります。法定相続人とは、民法で定められた「法律上相続人となるべき者」です。民法では、「誰が、どのような順番で」相続人になるかが次のように定められています。

まず、被相続人の子、またはその代襲相続人である直系卑属(孫等)が、第一順位の相続人となります(民法887条1項2項)。代襲相続とは、被相続人が死亡する前に子が死亡している場合に、その死亡した子に子(つまり被相続人の孫)がいるときはその孫が相続人となる、という規定です。なお、「子」は、「実子」であるか「養子」であるかを問いません。

次に、被相続人の父母など、被相続人の直系卑属が、第二順位の相続人となります(民法889条1項1号)。被相続人に子や直系卑属(孫等)などの第一順位の相続人がいない場合に、被相続人の直系卑属(父母等)が相続人となるのです。

最後に、被相続人の兄弟姉妹が、第三順位の相続人となります(民法889条1項2号)。つまり、直系卑属(第一順位)、直系尊属(第二順位)がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるわけです。

上記とは別に、被相続人の配偶者は常に相続人になります(民法890条)。被相続人に配偶者がいる場合、第一順位者がいるときは第一順位者と配偶者が、第一順位がいないときは第二順位者と配偶者が、第一、第二順位者がいないときは第三順位者と配偶者が、被相続人の相続人となるのです。

なお、配偶者は「法律上の配偶者」であることが必要であり、事実上の配偶者(内縁の配偶者)は、相続人とはなりません。事実上の配偶者(内縁の配偶者)は、特別縁故者として財産分与を受けられる可能性があるに過ぎません(民法958条の3)。

以上の法定相続人を理解したうえで、相続人を確定するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍を調査することになります。戸籍謄本等から被相続人の親族関係を確認し、誰が法定相続人になるのかを調査するのです。被相続人の死亡時から出生時までの戸籍を収集し、被相続人の親族関係を確認して、その中から法定相続人を探し出していきます。

戸籍収集で躓くパターン

戸籍収集して調査するためには、戸籍をある程度読み解く必要があります。戸籍は作成された年式により記載方法が異なり、また、古いものは手書きで記載されているため判読が難しいものもあります。しかし、記載方式などが分かれば、ある程度は読み解くことができるでしょう。

まず、戸籍には「3つの種類」があることを理解しておくと良いでしょう。3つの種類とは、「現在戸籍」「除籍」「改製原戸籍」です。

「現在戸籍」とは、今現在の状況を示している戸籍であり、現在使用されている戸籍です。

「除籍」とは、戸籍に記載されていた全員が「婚姻」「転籍」「死亡」などを理由にその戸籍から除かれ、結果、その戸籍が閉じられてしまったものです。いわば、「過去の戸籍」です。「現在戸籍」に記載されていない過去の情報を取得する為に、この「除籍」を確認する必要があります。

「改製原戸籍」とは、法律の改正に伴って新しく戸籍が作り直された場合の、従前の古い戸籍のことをいいます。この「改製原戸籍」も、過去の情報を取得する為に「除籍」と同様に必要となるのです。

戸籍に3つの種類があることが理解できたら、次は「戸籍を見るときのポイント」を説明します。

戸籍を見るときのポイントは、その戸籍が「いつ作られて、いつ閉じたか」を見ることです。戸籍の種類で説明したとおり、除籍と改製原戸籍は過去のものです。これら除籍と改製原戸籍は、被相続人の出生時までに「複数」作成されている可能性があります。そのため、一つひとつの戸籍の「いつ作られて、いつ閉じたか」を見て、戸籍と戸籍との繋がりを確認し、被相続人の出生時まで戸籍を遡っていくのです。

例えば、「現在戸籍」が「平成10年1月1日」に作られたものだとしたら、「平成10年1月1日」以前の戸籍を探す必要があります。現在戸籍が「平成10年1月1日」に作られた理由が、「婚姻」「転籍」などであれば、「平成10年1月1日」以前の情報は「除籍」に記載されており、現在戸籍が「平成10年1月1日」に作られた理由が「法律の改正」によるものであれば、「平成10年1月1日」以前の情報は「改製原戸籍」に記載されているわけです。そして、その「除籍」または「改製原戸籍」を確認し、それらが「平成10年1月1日」に閉じているが確認できれば、これらの「除籍」等と「現在戸籍」とが繋がったことが確認できます。この作業を、被相続人の出生時まで行っていきます。

なお、次のようなケースは、相続人の確定が難しくなります。

Case1:被相続人に子供がいない場合

被相続人に子供がいない場合は、その相続人は配偶者の他、第二順位者の直系尊属、または第三順位の兄弟姉妹が相続人になります。この場合、まず直系尊属が生存しているかどうかを調べるために古い戸籍を遡っていきます。直系尊属が生存していないことが分かったら、今度は被相続人の兄弟姉妹の戸籍を取得しなければなりません。兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合には、その兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が相続人となり、その戸籍も必要となります。つまり、被相続人に子供がいない場合には、調査すべき戸籍の範囲が広くなりますのでご注意ください。

Case2:被相続人が再婚している場合

被相続人が再婚している場合、再婚後の子供の他、再婚前の子供も相続人となりますので、それらの戸籍も調査が必要です。なお、前配偶者と離婚している場合には、離婚した前配偶者は相続人とはなりません。

Case3:養子縁組をした被相続人の場合

被相続人が養子縁組をしている場合で被相続人が養親の場合、実子に加え、その養子も相続人となります。逆に、被相続人が養子となる養子縁組をしている場合で、その被相続人に子や直系卑属がいない場合には、直系尊属に加え、養親も相続人となります。

Case4:被相続人が認知をしている場合

被相続人に認知された子供がいる場合、その子供も相続人になります。戸籍を調査する際、認知の情報は見落としがちです。ご注意ください。

「出生から死亡までの連続した戸籍」を上手に収集する方法

以上の通り、被相続人の「出生から死亡までの連続した戸籍」を収集する必要があるわけですが、それらを上手に収集する方法をご紹介します。

まずは、被相続人の本籍地の役所で「この役所にある被相続人の死亡から出生まで遡る全ての戸籍等」を請求します。その請求で取得した最も古い戸籍が「作られた日」を確認し、その日が被相続人の出生日より前であれば、戸籍の収集は終了です。

しかし、取得した最も古い戸籍の「作られた日」が被相続人の出生日より後であれば、その戸籍の前の戸籍を取得しなければなりません。この場合、その戸籍が「作られた」理由(婚姻・転籍・家督相続・分家など)を見ると、「年月日、●県●市●●から転籍」と言った具合に、前の戸籍地の表示が記載されているはずです。そこで、今度はその前の戸籍地の役所で、「この役所にある被相続人の死亡から出生まで遡る全ての戸籍等」を請求することになるのです。この作業を繰り返していけば、被相続人の「出生から死亡までの連続した戸籍」を取得できるでしょう。

相続人を確定させるタイミング

さて、相続人を確定させるタイミングですが、被相続人の死亡後、なるべく早めに行うべきです。少なくとも、遺産分割協議を行う前には、相続人を確定させなければなりません。遺産分割協議は、「全て」の相続人で行わなければ「無効」となってしまうからです。例えば、相続税の申告などのために遺産分割協議が必要な場合は、急いで相続人を確定しなければなりません。前述の通り、被相続人の戸籍の収集にはある程度の時間が掛かりますので、その点ご注意したほうがよいでしょう。

相続人の確定にかかる費用

相続人を確定する作業は、前述の通り戸籍の収集により行います。「現在戸籍」の謄本の取得は1通450円、「除籍」「改製原戸籍」の謄本取得は1通750円です。さらに、郵送で取得する場合には、郵便小為料、郵送費(返信分も必要)も必要です。

なお、弁護士や司法書士等の専門家に相続人確定作業の依頼をする場合には、個々の専門家に手数料をご確認ください。

相続財産を確定する

相続財産の種類

いわゆる相続財産には、大きく分けて次の三つがあります。「相続財産」「みなし相続財産」「祭祀財産」の三つです。以下、それぞれご説明します。

相続財産とは、相続が開始した時に、被相続人から相続人へ承継される財産のことをいいます。被相続人名義の不動産・預貯金・有価証券・自動車等や、被相続人が所有していた動産、被相続人の債権などがあります。

なお、被相続人の債務(負債)も、相続人に承継されます。

みなし相続財産とは、民法上は相続人固有の財産とされながら、税法上は相続税の課税対象となる財産のことをいいます。例えば、受取人が特定の相続人に指定された被相続人の生命保険金請求権などがみなし相続財産に該当します。ただし、生命保険金請求権の金額が多額で他の相続人との間で不均衡が生じる場合には、民法上も「相続財産とみなされる」可能性があります。生命保険金請求権がある場合には、それが税法上のみなし相続財産に留まるのか、それとも民法上も「相続財産とみなされる」可能性があるのか、専門家に相談することをおすすめします。

祭祀財産とは、墓地、仏壇、位牌、家系図などをいいます。祭祀財産は、祖先の祭祀主宰者に帰属するとされ、遺産分割協議の対象とはなりません(民法897条)。祭祀の主催者は、第一に被相続人の指定により、第二に慣習により、第三に家庭裁判所の審判により定まります。

相続財産の有無と内容の調査

相続財産を調査するには、「何が、どれくらいあるのか」を調査する必要があります。調査の方法としては、被相続人の通帳、権利証、証書等の重要書類や郵送物等をチェックし、「何があるのか」を確認するといったものです。貸金庫がある場合は、貸金庫内の書類等を確認します。その後、通帳や証書等から判明した銀行や証券会社等に連絡し、「どのくらいあるか」を調査していきます。

用意しておいた方がいいもの

金融機関等への相続財産調査のために用意しておいた方がいいものを、次の通り説明します。

  1. 戸籍書類: 被相続人が死亡していること、調査する者が被相続人の相続人であることを証明するための戸籍謄本や除籍謄本等です。
  2. 本人確認証明書: 調査する者の本人確認証明書として、運転免許証、マイナンバーカードなど、顔写真付きの公的証明書を所持しましょう。
  3. 印鑑: 銀行等で手続きをする場合、必要書類に押印を求められる場合があります。
  4. 遺産の資料: 通帳・証書・通知書等、相続財産が存在することを確認できそうな資料を持参します。

預貯金の調査方法

通帳、金融機関からの通知などを参考にして、それらに記載された金融機関の支店にまず電話で連絡します。必要書類等を確認し、それらを準備したうえでその支店に行きます。予約が必要なこともあるので、事前に確認しておきましょう。

不動産の調査方法

権利証(登記識別情報通知)、納税通知書などで不動産の所在地を確認し、管轄法務局で登記事項証明書を取得して調査します。なお、登記事項証明書を取得する際には、必ず「共同担保目録付」で請求しましょう。この請求をすると、請求した物件以外の共同担保物件が芋づる式に発見できる場合があります。

また、役所で被相続人の名寄帳を取得すると、その役所の管轄にある被相続人名義の不動産が確認できる場合があります。

株式会社、FX、国債の調査方法

被相続人の証書等を確認するほか、証券会社等の郵便物を確認してください。また、通帳の入出金欄から証券会社等の利用実績が確認できる場合もあります。

財産調査をしないとどうなるか

長期間放置していると、調査の足掛かりとなる通帳や証書、通知書等を紛失してしまう可能性があります。

また、相続財産中に負債がある場合、一定期間を経過すると相続放棄ができなくなり、負債を承継しなければならなくなることもあります。

被相続人に関する相続が開始した場合には、なるべく素早く、そして正確に、相続財産を把握することが重要です。

相続人・財産の確定を専門家にお願いするなら

弁護士、司法書士等の専門家に相続人・財産の確定を依頼する場合、まずその費用の概算や計算方式を確認するとよいでしょう。あとでトラブルにならないよう、不明点等を解消し、納得の上で依頼するようにしてください。

また、依頼する際、相続税の申告の必要があるなど、急いで相続人・財産の確定を行わなければならない事情がある場合には、必ず前もってそれらの事情を伝えておきましょう。

相続人・財産の確定で専門家にしてもらえること

相続人・財産の確定を弁護士・司法書士に依頼すると、戸籍の収集、被相続人の相続財産内容を記載した「相続財産目録」を作成してもらえます。また、依頼すれば被相続人の法定相続人を証明する「法定相続証明情報」の発行手続を、管轄法務局で行ってくれます。なお、「法定相続証明情報」とは、被相続人の出生まで遡る戸籍等を管轄法務局に提出し申請することで、「1枚の証明書」により被相続人の法定相続人を証明できるものです。各金融機関等に「戸籍の束」を出すことなく、「1枚の証明書」を出すことで足りるようになるため、手続きの簡便化が期待できます。

相続人・財産の確定で専門家に依頼するメリット

相続人や相続財産の確定を専門家に依頼すると、その分費用は掛かりますが、迅速で正確な確定作業を期待できます。

また、弁護士や司法書士は、その職務上、自らの職権で戸籍を取得することが認められています。一般の方々は、自らの戸籍、直系尊属(父母)の戸籍等は自分で請求できますが、兄弟姉妹等傍系親族の戸籍は、兄弟姉妹等の委任状がなければその戸籍を取得できません。相続人が兄弟姉妹等になる場合で、遠方・疎遠等を理由に「委任状」の取得に時間が掛かる場合などには、弁護士や司法書士に依頼すると、委任状なしでも兄弟姉妹等の戸籍を取得できます。

相続放棄について

もしも被相続人の相続財産中の債務(負債)があるなど、被相続人の財産を承継したくない場合には、被相続人の住所地の家庭裁判所に「相続放棄の申立」を行う必要があります。

相続放棄は原則として「被相続人の相続が開始したことを知った時」から3カ月以内に申立をしなければなりません。ただし、家庭裁判所に「期間伸長の申立」を行い、これを裁判所が認めた場合には、伸長された期間が満了するまで、相続放棄をすることができます。相続放棄をすることができるのかどうか、不明な場合には弁護士・司法書士等の専門家に相談してみてください。

被相続人の相続人やその相続財産を調査するためには、戸籍の収集を行い、重要書類を確認したうえで各金融機関へ行くなど、一定の時間と労力を要することになります。

また、その調査が正確でないと、遺産分割協議が無効になってしまうことや、相続放棄ができなくなるといった不利益を被ることがあります。

さらには、相続税の申告や準確定申告など、一定の期日内に遺産分割協議を行う必要がある場合などには、迅速な調査が必要です。

相続人や相続財産を調査する場合は、正確な知識をもって、時には専門家を利用しながら、正確かつ迅速に行うことを心掛けていただければと思います。

執筆者プロフィール
山下晋広
司法書士。2000年、司法書士試験合格。2004年、司法書士事務所を開業。所属する東京司法書士会では、調停センター運営委員、広報委員を担当。大学では文学部にて東洋哲学を学び、博物館学芸員を志しつつも、諸事情にて転身。現在、司法書士として研鑽を積む。主な業務は相続手続・不動産登記手続・企業法務・成年後見業務。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

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