固定資産税評価額や相続税評価額と聞いて皆さんはどのようなことを想像するでしょうか。
実はこれらの評価額をある程度理解しておくかしないかだけで、将来の皆さんが受けとる資産に大きな違いが生じてしまうかもしれません。
相続の際などに不利益を被らないようにするには、これらの評価額の確認・算出方法の概要を押さえましょう。
目次
1. 固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額とは、固定資産税や不動産取得税の計算に使用される非常に重要な数字です。
不動産(主にマイホーム等)を建てたり購入したりした後には、この「固定資産税」と付き合わなくてはなりません。
固定資産税については、以下のような計算式で算出されます。
固定資産税額=固定資産税評価額×1.4%
このことからも、固定資産税評価額が固定資産税と密接な関係にあるのがお分かりだと思います。この「固定資産税評価額」につきましては、各自治体がそれぞれ個別に決定します。
決定に当たっては、「固定資産評価基準」に基づいて行われ、建物の場合は築年数や規模・構造などを、土地の部分に関しては立地条件や面積などを考慮して決められています。
2. 相続税評価額とは?
そもそも相続税とは、相続を受けた分の財産から「課税価格」を算出し、そこから基礎控除額を差し引いたものです。
この「課税価格」については、その計算の方法について「相続税財産評価に関する基本通達」で定められています。
この通達では、相続を受ける財産ごとに細かく評価方法が謳われています。通達に基づくと相続税の評価については、いわゆる「時価」で為されることになっています。
この「時価を基本としてた相続税」を評価する上では、評価基準が必要となってきます。
まさしくこれが「相続税評価」であり、これによって算出された課税額が相続税評価額となります。「相続評価」の要領については、相続する資産によって異なります。
3. 固定資産税評価額と相続税評価額の違い
「固定資産評価額」と「相続税評価額」の違いはなんでしょうか。
計算する際に、結果として同じような金額になってしまうことも多々ありますが、そもそも固定資産税評価額が固定資産税算出の基準になるものに対して、相続税評価額は相続税算出の根拠となるものであるために、性質は全く異なるものです。
以下に主な違いを表にまとめましたので参考にして下さい。
区分 |
固定資産税評価額 |
相続税評価額 |
利用される税金 |
固定資産税、土地計画税等 |
相続税、贈与税等 |
評価主体 |
市町村 |
国税庁 |
評価頻度 |
3年に1回 |
毎年 |
価格水準 |
公示価格の70%程度 |
公示価格の80%程度 |
4. 相続時に被相続人の土地や家屋・建物の固定資産税評価額を確認する方法
いざ土地や建物などの資産を相続するとなった際には、固定資産税評価額を確認しておく必要があります。この確認を怠ると、相続した後で想定外の税金を納めることになってしまうので注意して下さい。
固定資産税評価額を確認するには、固定資産税課税証明書、固定資産評価証明書、固定資産課税台帳のいずれかの確認が必要となってきます。
4-1 固定資産税課税明細書を確認する
土地や建物等を保有していると、市町村などから毎年のように「助定資産税の納付通知書」が届きます。
この通知に添付されているのが「課税明細書」であり、この明細書の中に「固定資産税評価額」が明記されています。通常は明細書の右上あたりに記載されています。
この明細書には固定資産税評価額の他に、都市計画税に関する数字も記載されているので一緒に抑えておくようにしましょう。
4-2 固定資産評価証明書を確認する
固定資産税台帳の記載事項を確認する目的で、固定資産評価証明書を取り寄せることもできます。この証明書には、台帳に正規登録された評価額や所有者および所在地が記載されています。
前述した課税証明書でも固定資産税評価額を確認することは可能ですが、「課税明細書が手元にない」または「課税明細書とダブルチェックすることで、経理ミスを防ぎたい」などと言う時に、この方法はより効果的です。
固定資産評価証明書を受け取るには、運転免許書などの本人確認書類等を持参してし市町村の担当課に対面で申請する方法や、郵送で申請する方法もあります。
4-3 固定資産課税台帳を確認する
前述した固定資産税評価証明書の元となるのが、今回紹介する「固定資産課税台帳」です。この台帳には、総務大臣が定める「固定資産評価基準」によって各市長村長が決定した評価額が記載されています。
すなわち、この台帳に記載されている評価額が正式な「固定資産税評価額」となります。台帳ですから、こちらについては明細書や証明書とは異なって郵送での対応は行なっておりません。
そのため、台帳を確認するためには各市町村市役所の担当課に赴いて閲覧することになります。誰でも閲覧できるというわけではなく、閲覧者は固定資産税納税義務者、相続人、借家人等に限定されていますので注意して下さい。
5. 土地・建物の相続税評価額の計算方法
ここでは相続した不動産の評価額の計算方法について簡単に解説します。土地と建物ではそれぞれ評価方法が異なりますので注意が必要です。
5-1 土地の相続税評価額の計算方法
土地の相続税の計算方法には、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類が存在します。また、「路線価」については「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つがありますのでその関係性についても簡単に触れていきたいと思います。
路線価方式
この方式では、「道路等の各路線に紐付けされた価格(相続税路線価)」と「土地の面積」を掛け合わせた値に、各種補正率を考慮して算出します。このうち、相続税路線価は国税庁から毎年7月に最新のものが公表され、国税庁のホームページで閲覧できます。
土地の面積については、先ほど紹介した固定資産税の納税通知書等で確認してください。またここで言う「各種の補正」とは、「道路から離れて奥に行くほど低く評価する」や「土地の形状が歪な場合は、若干低く評価する」などといったことです。
倍率方式
倍率方式では、固定資産税の金額を用いて計算します。具体的には、固定資産税評価額に各市町村の地域や用途で定められている一定の倍率を掛けて算出します。
ここでいう「一定の倍率」については、前述した路線価の場合と同様に国税庁のホームページで確認することができます。
相続税路線価と固定資産税路線価の関係性
固定資産税評価額と相続税評価額は金額自体は若干異なるものの、両者には強い相関関係があります。相続税評価額を倍率方式によって算出する際は、前述したように固定資産税評価額がその計算に用いられます。
一方で地価に0.7を掛けるとおおよその固定資産税路線価に、0.8を掛けるとおおよその相続税路線価になります。
したがって、固定資産税評価額から、大まかな相続税評価額を知ることができると言うわけです。一例として、固定資産税評価額が2,000万円の土地の場合、相続税路線価格は以下のようになります。
20,000,000 ÷ 0.7 × 0.8 ≒ 22,857,142
もちろんこの数値は「各種補正」を考慮していないものですが、それでも大まかな値を捉えることはできます。
5-2 建物の相続税評価額の計算方法
建物の相続税評価額の計算は、土地の場合と比較すると比較的簡単です。
相続される建物について、被相続者が利用していたのかそれとも第3者に貸し出していたのかによって価格が異なり、概ね下の表のように計算されます。
建物の利用状況 |
相続税評価額の計算 |
被相続者が恒常的に利用 |
固定資産税評価額×1.0 |
第3者に貸し出し |
固定資産税評価額×(1.0−借家権割合) |
賃貸アパート等として利用 |
固定資産税評価額×(1.0−借家権割合×賃貸割合) |
上の表で言う賃貸割合とは、建物の総面積における賃貸部分の割合です。総面積100㎡の建物のうち40㎡の部分をアパート等として運用していた場合は、賃貸割合は0.4となります。
6. 相続した財産の固定資産税は誰が負担する?
基本的には相続を受けた者が支払うのが原則です。親が亡くなり、財産を兄弟2人で分割相続する場合はどうでしょうか。
この場合、遺産分割の手続きが完了しているかいないかが分岐点となります。
遺産分割の手続きが完了し、兄が8割、弟が2割分割することが正式に決定されたら、兄は固定資産税合計の8割を、弟は2割を支払う義務が生じます。
もし、手続きが完了していない場合は、兄弟で半分ずつの固定資産税を支払います。
この場合、弟の方が「俺は将来に渡って全く相続するつもりがない。」といっても弟の固定資産税の支払いは基本的に免除されません。
7. 遺留分の計算をする際には相続税評価額ではなく時価で計算する
国では、「相続する権利を最低限保証する」ということを定めています。この最低保障されている権利(金額)のことを遺留分と呼びます。
この遺留分を計算するには一つの鉄則があります。それは「相続税評価額ではなく時価を用いて算出する」ということです。
これを守らずに相続税評価額で遺留分を計算してしまうと、法律的に誤った相続が行わることになり、最悪の場合は裁判沙汰に発展してしまうことがあるので、ぜひこの鉄則は守るようにしてください。
遺留分を正確に計算するためには時価が必要ですので、早めに不動産の時価を把握するようにしましょう。
8. 固定資産税評価額や相続について悩んだ場合は税理士に相談
固定資産税評価額や相続について理解しようと思っても、個人の努力ではどうしてもある程度のところで限界がきてしまいます。
そこで個人で勉強してもどうしても不明な点や解決できない悩み事があれば、税金のプロである税理士に相談することをおすすめします。
税理士の場合、内容によっては無料で相談できる場合もあります。固定資産税評価額や相続について悩んだ場合は税理士に相談してみましょう。
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。
この記事の執筆者:つぐなび編集部
この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
2020年04月のオープン以降、専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように
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