遺族は葬儀や告別式を終えると悲しむ暇もなく、様々な手続きに追われます。
数ある手続きの中で今回ご紹介するのは「埋葬許可証(埋葬許可書)」の準備です。
埋葬許可証とは、人が亡くなった際に必要になる書類の一つです。
今回は、埋葬許可証の発行方法や提出先、紛失してしまった場合の対処法などについてご紹介します。
今後、このような場面に立ち会う機会があった際には、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
1. そもそも埋葬許可証とは?
冒頭でも説明した通り埋葬許可証とは、火葬した個人の遺骨をお墓に収める際に必要になる書類です。
本来、埋葬とは遺体を土の中に埋めるという意味があるのですが、日本では火葬を選ぶ遺族がほとんどです。
遺骨を焼骨したとしても、遺族が許可なくお墓へ納めることは禁止されているため、あらかじめ発行しておかなければいけません。
万が一、許可なしに行ってしまった場合、「墓地、埋葬等に関する法律」の罰則規定に加えて、刑法第190条の「死体破壊・遺棄罪」の罪に問われる可能性もあります。
また、お墓を移動、改葬、分骨する際にも必要になる書類だということを覚えておきましょう。
2. 火葬許可証とは違う?
日本では焼骨した遺骨を墓地に埋葬する習慣があるため、火葬許可証と埋葬許可証が同じものであると思っている人も少なくありません。
しかし、2つの書類は目的が異なるため、混同して考えないように注意しましょう。
火葬許可証とはその名の通り、亡くなった人の遺体を火葬する際に必要になる書類です。
火葬許可証は市区町村役場が発行する証明書であり、死亡を知った7日以内に提出しなければいけない死亡届とは違い、特に提出期限は定められていません。
ただ、ほとんどの場合、葬儀の日に火葬を行うため、死亡届と共に発行するのが一般的です。
期限が定められていないからと言って死亡が確認されている遺体を放置しておくと死体遺棄となってしまうため、なるべく早く手続きを行うようにしましょう。
また、火葬が執り行えるのは死後24時間が経過している遺体であることと法律で定められています。
書類を発行する際には、故人の本籍地、現住所、火葬場などを記入します。
3. 埋葬許可証発行の流れ
葬儀や告別式を終えると、遺族は様々な手続きをしなければいけません。
納骨する際に必要となる埋葬許可証ですが、取得するためにはどのような手続きを行えば良いのでしょうか?
ここでは、埋葬許可証をする場合の主な流れについてご紹介します。
今後、書類を発行する機会があるという人は、ぜひ参考にしてみてください。
3-1 火葬許可証の交付手続きをする
書類を取得するためにはまず、先ほどもご紹介した火葬許可証を市区町村の役場で発行する必要があります。
もちろん、葬儀社へ書類発行の手続きを依頼することも可能ですが、その場合、手数料が含まれていることがほとんどであるためしっかり確認しておきましょう。
国内で死亡が確認された場合は死後から7日以内、海外で死亡が確認された場合は死後3カ月以内に死亡届を提出しますが、この際火葬許可証を発行するとスムーズに手続きが行えます。
万が一、正当な理由もなく定められた期限を過ぎてしまった場合、5万円以下の過料支払いを命じられるため注意しましょう。
取得後は間違いのないよう用紙に必要事項を記入し、押印をして役場に提出してください。
火葬許可証、埋葬許可証には、故人の本籍、現住所、氏名、性別、出生年月日、死因、死亡年月日、死亡の場所、火葬または埋葬の場所、申請者の住所・氏名・故人との続柄の10項目を記入します。
基本的には親族や同居人、土地の管理人などが申請者となりますが、委託状があれば代理人が申請したり、葬儀会社の人が申請をしたりしても問題ありません。
しかし、死亡届は親族、同居人または土地の管理人・成年後見人など限定的な人が申請できる書類であるため、同時に発行したい場合は死亡届の申請者に該当する人が役場に行くのが望ましいです。
死亡届が受理されて初めて火葬許可証が交付されます。
交付された書類は火葬の際必ず必要になるため、しっかり保管しておきましょう。
また、火葬する時点で2ヶ所以上に分骨することが決まっているのであれば、分骨をする場所の数だけ書類を発行する必要があります。
場合によっては発行まで時間がかかってしまう場合があるため、分骨することが分かっているのであれば早めに火葬場へ確認しておきましょう。
分骨用の証明書を取得する際は、手数料が発生することも覚えておくと良いです。
3-2 火葬許可証を提出する
ここでは、役場で発行した火葬許可証の提出先についてご説明していきます。
書類は、実際に遺体の火葬を執り行う火葬場の管理事務所に提出しなければいけません。
この書類がないと火葬を実行できないため、葬儀の日まで大切に保管しておきましょう。
喪主本人が保管しているのであれば、当日忘れずに持参するようにしてください。
また、喪主本人以外の親族や葬儀社へ依頼している場合は、あらかじめ誰が提出するか決めておくとスムーズに進みます。
葬儀当日は他にもしなければいけないことがたくさんあるため、事前に念入りな準備を行っておくことが非常に重要です。
3-3 火葬後に火葬許可証に“火葬済み”の印が押される
市区町村によって名称は異なりますが、火葬許可証を火葬場へ提出すると「火葬済み」の印が押された状態で返されます。
押印がされた書類は埋葬許可証となり、焼骨した遺骨をお墓に埋葬することが許可されます。
4. 埋葬許可証の提出先は?
焼骨された遺骨はほとんどの場合、骨壺と一緒に桐の箱に収めて遺族の元へと返ってきます。
埋葬許可証の提出先は、墓地・霊園の管理者となっており、納骨する際は骨壺と一緒に持っていきましょう。
納骨する時期は特に決められていませんが、日本では一般的に四十九日の法要明けのタイミングでお墓に納骨されます。
寺院墓地であればお寺の住職、市営霊園であれば市または委託を受けている管理会社です。
ただし、墓地埋葬法が施行されたのは1948年のことであるため現在、墓地の管理者が不明になっている場合もあります。
霊園や寺院であればそのようなことは滅多にありませんが、古くからある墓地であれば管理者がすでに明確ではないこともあります。
共同墓地といった多くの遺骨が納められている墓地であれば、許可もなく埋葬している可能性がありますが、法律に違反しているため今後一切その墓地に埋葬できなくなるかもしれません。
遺骨を移動または改葬したいと考えたとしても、法律で禁じられてしまえば埋葬できなくなるため、管理者が明確になっているかどうか役場へ確認しておくことが大切です。
また、墓地・霊園には納骨する際に受理した埋葬許可証を5年間保管しておくことが義務付けられています。
5. 埋葬許可証を紛失してしまった場合の対処法
仏教では四十九日を忌明けとし、四十九日の法要と同じタイミングで納骨を行うのが一般的です。
また、それまでに間に合わなければ、一周忌や三回忌などのタイミングに合わせる場合もあります。
本来であれば納骨の日まで大切に保管しておかなければいけませんが、火葬後から納骨までには日数があくため、書類を紛失してしまう人がいるかもしれません。
万が一、何らかの事情によって埋葬許可証を紛失してしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
ここでは、書類の再発行ができるかどうかについてご紹介します。
5-1 再発行は市役所でできる
結論から言うと、埋葬許可証を紛失してしまった場合、書類を再発行することは可能です。
再発行の手続きは市区町村の役場で受け付けています。
手続きの際には、申請書、本人確認書類、印鑑が必要になるため、必ず忘れずに持参してください。
役場で火葬許可申請書が保管されていれば、その場ですぐに再発行してもらえます。
しかし、役場によって保管期間は異なるため、書類があるかどうか事前に確認しておきましょう。
また、埋葬許可証を紛失した時点で死後5年以上経過している場合、再発行する際には火葬許可証が必要になるため十分注意しなければいけません。
その際には、役場ではなく火葬を執り行った火葬場に申請し、発行してもらう必要があります。
その他にも考えられるのは分骨証明書を紛失してしまうケースです。
再発行をする際は、火葬場または市区町村の役場へ問い合わせてみましょう。
このように、紛失した場合でも埋葬許可証を再発行することは可能ですが、手続きは有料であり、全て完了するまでに時間がかかる可能性があるため、紛失することがないように骨壺と一緒に保管しておくのがおすすめです。
5-2 再発行の申請が申請できるのは?
では、書類を再発行するための申請を行えるのはどのような人物が対象となるのでしょうか?
死亡届を受け取った人、故人の直系の親族、祭祀継承者が書類の再発行を行える対象者となっています。
基本的には親族であれば問題ありませんが、死亡届を受け取った人以外が申請を行う場合、住んでいる市町村によって委託状が必要になることもあります。
そのため、代理人に依頼するのであればあらかじめ役場に確認しておくのがおすすめです。
また、手続きの際には、申請書、本人確認書類、印鑑が必要になるため、必ず忘れずに持参してください。
6. まとめ
今回は、埋葬許可証の発行方法や提出先、紛失した場合の対処法などについてご紹介してきました。
人が亡くなると死亡届の提出や通夜、葬儀、告別式、火葬、納骨など、遺族が行わなければいけない手続きや式典がたくさんあります。
悲しみに暮れる暇もなく様々な手続きに追われるため、つい埋葬許可証の発行が後回しになってしまうかもしれません。
しかし、この書類がなければ墓地・霊園へ納骨することはできないため、早い段階で用意しておくことが非常に重要です。
当日になって、「書類が手元にない」といった事態を招かないためにも、しっかり準備しておきましょう。
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この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。