わが国では人が亡くなると、火葬をしてから遺骨を墓や納骨堂に安置するという流れが一般的です。この火葬の際に、火葬場に提出するのが火葬許可証です。
火葬許可証がなければ、絶対に火葬を執り行うことができませんので、確実に取得をし、当日まで大事に保管をしなければなりません。
将来、身の回りの方が亡くなった際に慌てることのないよう、火葬許可証の取得方法について詳しく解説をしていきます。
目次
1. 火葬許可証とはなにか

火葬許可証とは、故人の火葬について市区町村長が許可したことを証する書類です。
「墓地、埋葬等に関する法律」では、「火葬を行おうとする者は、市区町村長の許可を受けなければならない」と定められており、火葬許可証を火葬場に提出することで、初めて火葬が執り行われることになります。
法律上、火葬する期限は定められていません。しかし死亡届が、死亡の事実を知った日から7日以内に提出することとされているため、これに併せて火葬許可申請書を提出します。
書類に不備がなければ、火葬許可証はその場で火葬許可証が交付され、特に申請は必要ありません。
死亡届の届出人となれるのは、親族、同居人、家主などですが、役所の窓口に提出するのは、代理人でも問題はありません。実際に、近年では葬儀社の従業員が提出するケースが多くなっています。
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1-1 火葬許可証と埋葬許可証との違い
埋葬に関係する書類として、火葬許可証の他に埋葬許可証があります。火葬許可証との違いについて説明をしていきます。
埋葬許可証とは、後日、焼骨を墓や納骨堂などに納骨するために必要な書類です。
死亡届提出と同時に「死体埋火葬許可申請書」あるいは「死体(埋葬・火葬)許可申請書」といったように、火葬許可と埋葬許可が一枚の申請書になったものを提出しているため、改めて申請する必要はありません。
火葬の際に提出した火葬許可証に「火葬執行済」の印が押されて返却された書類が「埋葬許可証」になります。
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2. 火葬許可証の発行手続きの流れ
ここでは、火葬許可証を発行してもらうまでの手続きの流れを解説していきます。
STEP1. 死亡診断書をもらう
死亡診断証は、死亡届と一体の書類です。臨終に立ち会った医師あるいは遺体を検案した医師に、必要事項を記入してもらいます。
STEP2. 死亡届を記入する
死亡届に次の事項を記入します。
- 死亡届を提出する日付と提出先の役所名
- 故人の氏名と生年月日、性別: 氏名は戸籍に登録されているとおりに記入します。死亡年月日は元号で記入します。生後30日以内の人は、出生時刻も記入します。
- 死亡時刻と死亡場所: 死亡診断書の内容を書き写します。
- 故人の住所と世帯主の氏名: 住民登録がある住所を記入します。
- 故人の本籍: 外国人の場合は、国籍を記入します。
- 故人の配偶者の有無(有の場合はその年齢): 入籍している場合に限り記入します。
- 世帯帯の主な仕事・職業: 列記されているものから選んでチェックを入れます。
- 故人の職業・産業: 5年に一度の国勢調査が実施される年のみ記入します。空欄でも問題はありません。
- 届出人: 届出人となれるのは、親族、同居者、家主、地主、家屋管理人、土地管理人、後見人、保佐人、補助人、任意後見人です。
STEP3. 役所に提出する
戸籍法により、死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内に行うよう定められています。正当な理由がなく届出が遅れた場合には、5万円以下の過料支払いが命じられます。
届出先は、故人が亡くなった場所か故人の本籍地、届出人の居住地のいずれかの市区町村役場です。故人の住所地は提出窓口ではないので、気を付けてください。
STEP4. 役所で火葬許可証を発行してもらう
死亡届の提出に合わせて「死体火葬・埋葬許可交付申請書」を提出します。記載事項に不備がなければ、その場で火葬許可証が発行されます。
3. 火葬許可証の提出先

ここでは、発行された火葬許可証の提出先に関して解説をしていきます。また納骨するときに必要となる埋葬許可証の扱いについても併せて解説します。
3-1 火葬許可証は火葬場に提出する
火葬許可証は、火葬を執り行う火葬場の管理事務所に提出します。この書類がないと火葬を行うことができませんから、葬儀当日まできちんと保管し、火葬場へ向かう際には必ず持参するよう心がけましょう。
万が一にも失念しないために、死亡届の提出を葬儀会社に代行してもらうという方法も選択できます。この場合、葬儀会社がそのまま火葬許可証を預かり直接火葬場へ提出します。
火葬後、遺骨を骨壺に納める収骨が完了すれば、提出した火葬許可証に「火葬執行済」の印が押されて返却されます。この書類が、墓地に遺骨を納骨する際に必要となる「埋葬許可証」となります。
火葬許可証は、納骨の日までしばらく日数が空くため、遺骨と一緒に大切に保管をしておきましょう。
3-2 分骨するときはどうするか

火葬する時点で遺骨を分骨することが決まっている場合は、火葬場に「火葬証明書(分骨用)もしくは分骨証明書」を分骨先の数だけ発行してもらいます。
先述した「火葬執行済」の印が押された「埋葬許可証」とは異なります。火葬場によっては発行に時間を要することがあるので、分骨が明らかな場合は、事前に火葬場に確認をしておいた方がいいでしょう。
「火葬証明書(分骨用)もしくは分骨証明書」の発行には手数料を要します。金額は、火葬場を管理している自治体によって異なりますが、1通300円が一般的です。
3-3 火葬許可証の再発行はどうする?
火葬許可証を紛失すると、葬儀や火葬に甚大な影響を及ぼすことになります。
このため肌身離さず持参しておくという配慮が必要ですが、万が一火葬許可証を紛失してしまった場合には、再発行の手続きを速やかに行うことで解決できます。
火葬許可証の再発行には、最初に火葬許可証を発行してもらった自治体に届出をしますが、届出人は故人の祭祀継承者、または直系の遺族とされています。
他の自治体では火葬許可証の再交付ができませんから、異なる自治体で葬儀を行う場合は、細心の注意が必要です。
埋葬の場合、四十九日のタイミングで行われることが一般的ですが、埋葬先の準備が整っていないなどの理由で、一周忌や三回忌などの法要の際に行うケースも少なくありません。
火葬から時間が経つと、埋葬許可証の保管場所を忘れてしまい、どこにあるのか分からないという事態も想定できます。
万が一埋葬許可証を紛失した場合は、火葬許可証を発行してもらった自治体に再発行を申し出ます。最初の火葬許可証発行から5年以内であれば、問題なく再発行が可能です。
火葬許可証の発行から5年以上経過している場合は、火葬した火葬場で「火葬証明証」を取得した後に、死亡届を届け出た市区町村役場に申請する流れになります。
火葬許可証の再発行に際しては、次の書類等を準備します。
- 申請者の本人確認書類と認印
- 火葬証明証: 死亡後5年以上経過している場合
- 故人との関係がわかる資料: 死亡届の届出人以外が申請する場合
4. まとめ
火葬許可申請書は、死亡届を提出する際に併せて市区町村役場に提出します。書類に不備がなければ、その場で火葬許可証が交付されます。
これらの手続きは親族等が届出人になりますが、葬儀社の従業員が代理人として窓口まで持参することも可能です。
火葬許可証を火葬場の管理事務所に提出することで、火葬が執り行われることになります。火葬が終了すれば、提出した火葬許可書に「火葬執行済」の印が押されて返却されます。
この書類が埋葬許可証になりますので、納骨まで大事に保管しておきましょう。
予め分骨することが決まっている場合は、一般的な埋葬許可書とは別に「火葬証明書(分骨用)もしくは分骨証明書」を分骨先の数だけ火葬場で発行してもらいます。
万が一、火葬許可証や埋葬許可証を紛失した場合は、最初に証明書を発行してもらった市区町村役場の窓口で再発行してもらうことができます。

田中 良男
行政書士。地方公務員として建築主事や都市計画法関連業務などに従事した経験を有する。現在は、行政書士事務所の代表として各種行政手続をサポートしている。またライター・作家として活動をしており、文芸誌の編集委員を務めている。特定行政書士、終活カウンセラー。
この記事の執筆者:つぐなび編集部
この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
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