家族など身近な人が亡くなったときには、悲しみに包まれた中で様々な手続きをこなさなければなりません。
身近な人の死についてはあまり考えたくないものですが、いつかは訪れるそのときに備え、基本的な知識を持っておくことは大切です。
亡くなった後最初にしなければならない手続きが、死亡届の提出です。死亡届を出さなければ、その他の手続きもできないので、速やかに提出をすませるようにしましょう。
ここでは死亡届について、提出方法や提出先、提出期限など、覚えておきたい基本事項を中心に説明します。
死亡届提出後速やかに行わなければならない手続きについても触れていますので、参考にしていただければ幸いです。
目次
1. 死亡届とは
死亡届とは、人が死亡したことを法的に明確にするために役所に届け出る書類です。人が亡くなったときには死亡届を出す必要があり、死亡届を出せば、戸籍上も死亡したことになります。
1-1 死亡診断書との違いは?
死亡届と似たものに、死亡診断書があります。死亡診断書は医師が医学的に死亡を確認して作成する書類で、死亡届とは別のものです。
ただし、死亡届を提出するときには死亡診断書が必要になるため、両者は一体化した書類となっています。
死亡診断書は、臨終に立ち会った医師もしくは死亡を確認した医師が作成します。
なお、変死や事故死の疑いがある場合には、警察に連絡しなければなりません。
この場合には、警察が死亡診断書の代わりに、死体検案書を作成します。死亡診断書と死体検案書の書式は同一になっています。
海外で亡くなったときには、原則として現地の医師に死亡診断書を書いてもらい、大使館や領事館に死亡届を提出します。
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2. 死亡届を出すには
死亡届は死亡診断書と一体になっており、A3サイズの用紙の左側が死亡届、右側が死亡診断書(死体検案書)というレイアウトになっています。
死亡届は亡くなった後速やかに提出しなければなりませんから、提出期限や提出先を確認しておきましょう。
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2-1 誰が出すの?
死亡届を出さなければならない人(届出義務者)は、法律により、亡くなった方の同居親族、親族以外の同居者、家主・地主または土地家屋の管理人と定められています。
また、同居していない親族や後見人、保佐人、任意後見人も届出を行うことができるとされています。
2-2 いつまでに出す?
死亡届は、死亡した日あるいは死亡を知った日から7日以内に提出しなければなりません。
国外で死亡したときには、その事実を知ったときから3か月以内に出す必要があります。死亡届は、役所には24時間提出可能です。
ただし、時間外窓口に提出した場合、地域によっては開庁時間内にもう一度訪問しなければならないケースがあります。
2-3 どこに出せばいい?
死亡届は、亡くなった方の本籍地、死亡地、届出人の住所地のいずれの市区町村役場に提出してもかまいません。
ただし、死亡届を本籍地以外の役所に提出した場合、死亡の旨が戸籍に記載されるまで若干時間がかかってしまうことがあります。
本籍地がそれほど遠くなければ、本籍地の役所に提出するようにしましょう。
2-4 必要なものは?
死亡届を出すときには、死亡診断書が必要です。死亡診断書がなければ死亡届は受理されませんから、医師の死亡診断書の手配ができてから提出しましょう。
役所に死亡届を出しに行くときには、届出人の印鑑と身分証明書(運転免許証等)も持って行きます。
印鑑は認印でもかまいませんが、スタンプ式の印鑑、いわゆるシャチハタは使えません。
3. 死亡届に記入すること
死亡届はペンや万年筆を使って書きましょう。鉛筆や消えやすいインキで書くことはできません。死亡届に記載するのは以下のような事項になります。
- 亡くなった方の氏名、性別、生年月日: 氏名等を正確に記入します。
- 死亡日時、死亡場所: 死亡診断書の通りに記入します。
- 亡くなった方の住所及び本籍: 住所は住民登録をしているところを書きます。本籍がわからなければ、役所で本籍の記載がある住民票を取得すれば確認できます。
- 亡くなった方の配偶者の有無と年齢: 亡くなった方に配偶者(夫または妻)がいる場合には、配偶者の年齢も記入します。
- 亡くなった方の職業や世帯の状況: 業種や世帯の状況を選択肢から選んでチェックを入れます。
- 届出人の住所、本籍、氏名、生年月日: 届出を行う方の住所、本籍、氏名、生年月日を記入し、押印します。届出人の本籍がわからない場合には、事前に住民票などで調べておきましょう。
4. 死亡届を出さないとどうなるか
死亡届を出さないと、法的に死亡が確定しません。死亡届を出さなかった場合、具体的にどんな問題が起こるのかを知っておきましょう。
4-1 埋葬・火葬ができない
亡くなった方のご遺体は、火葬または埋葬しなければならないことが法律で定められています。役所に死亡届を提出するときには、火葬(埋葬)の許可申請も同時に行います。
死亡届を出すことにより火葬(埋葬)許可証が交付されるしくみになっているので、死亡届を出さなければ火葬・埋葬ができないことになります。
なお、火葬・埋葬は法律により死亡後24時間経過しなければできないため、死亡の翌日以降でないと火葬・埋葬の許可は出ません。
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4-2 各種手続きができない
死亡届を出すことにより、戸籍に死亡の旨が記載されます。
死亡に伴って世帯主変更、年金や健康保険の手続き、生命保険金の請求、相続手続きなどさまざまな手続きが発生しますが、これらの手続きのために死亡届の記載事項証明書や戸籍謄本が必要になります。
死亡届を提出しないと、死亡を証明する書類を出すことができないため、すべての手続きに取り掛かることができません。
5. こんなときの死亡届はどうするか
死産をしたときやペットが亡くなった時も大きな悲しみの中、行わなければいけない手続きはあります。通常の死亡届とは異なりますので、どんな流れになるのかを知っておきましょう。
5-1 死産した場合
妊娠12週以降の胎児を死産した場合には、死亡届ではなく死産届が必要です。
死産後7日以内に、父または母(やむを得ない場合には同居者や死産に立ち会った医師・助産師等)が、届出人の住所地か死産した場所の市区町村役場に死産届を提出します。
死産届は、病院で渡される死産証明書または死胎証明書と一体になっています。死産届が出されると、火葬(埋葬)許可証が発行されます。
5-2 ペットが死んだ場合
死亡の届出が必要なペットは、犬の場合です。
狂犬病予防法にもとづき、飼い犬が死亡した場合には、飼い主は市区町村役場に死亡届を提出しなければなりません。
飼い犬の死亡届の提出期限は、死亡から30日以内となっています。飼い犬の死亡届を出す際には、鑑札及び注射済票を返却します。
6. 死亡のときに必要なそのほかの手続き
死亡届を出した後も、まだまだやらなければならないことはあります。死亡後間もない時期にやるべき手続きについても、知っておきましょう。
6-1 世帯主変更届
世帯主が亡くなって、残る世帯員が2人以上の場合には、市区町村役場の窓口で世帯主変更届(住民異動届)を書いて提出する必要があります。
世帯主変更届の期限は、世帯主死亡の日から14日以内となっていますが、通常は死亡届提出と同時に手続きすることになります。
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6-2 健康保険・介護保険
健康保険については、死亡後の手続きは次のようになります。
【亡くなった方が国民健康保険の加入者だった場合】
亡くなった日から14日以内に、市区町村役場で「国民健康保険資格喪失届」を出します。
国民健康保険被保険者証及び国民健康保険高齢受給者証(70~74歳の方)の返却も必要です。
亡くなった方が世帯主でその家族も国民健康保険に加入していた場合には、世帯主を書き換えた新しい保険証を発行してもらいます。
【亡くなった方が勤務先の健康保険に加入していた場合】
通常は勤務先で手続きを行ってくれます。勤務先に確認の上、健康保険証を返却しましょう。介護保険の手続きが必要になるのは、
- 亡くなった方が65歳以上の場合
- 亡くなった方が40歳以上64歳以下で要介護・要支援認定を受けていた場合
です。上記①②の場合には、市区町村役場で「介護保険資格喪失届」を提出し、介護保険被保険者証を返却します。
6-3 後期高齢者医療制度の資格喪失
75歳以上の人は後期高齢者医療制度の被保険者になっています。
そのため、75歳以上の人が亡くなった場合には、市区町村役場で「後期高齢者医療制度資格喪失届」を提出し、後期高齢者医療被保険者証を返却する必要があります。
6-4 国民年金の死亡届
年金を受給している人が亡くなった場合には、年金受給を停止する手続きが必要になります。年金は亡くなった月の分まで受け取ることができます。
もし手続きが遅れて余分に年金が支払われてしまった場合には、返還しなければなりません。
年金の受給停止の手続きは、受給権者死亡届(報告書)を年金事務所または年金相談センターに提出して行います。
添付書類として、年金証書及び死亡の事実が記載されている書類(戸籍謄本、死亡届の記載事項証明書等)が必要です。
ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば、受給権者死亡届(報告書)の提出は不要とされています。
なお、亡くなった後にまだ支払われていない年金(未受給年金)がある場合には、請求により受給資格のある遺族に支払われることになっています。
7. まとめ
身近な人が亡くなったら、医師に死亡診断書を書いてもらい、役所で速やかに死亡届を提出しなければなりません。
死亡届の提出は、実際には葬儀社に代行してもらえるケースが多くなっていますが、基本的な流れを知っておくとスムーズです。
死亡時には、健康保険や介護保険、年金についても手続きが必要です。役所に何度も出向くのは大変なので、まとめて手続きできるようにしておきましょう。
森本 由紀
行政書士、ファイナンシャルプランナー。大学卒業後、複数の法律事務所に勤務してパラリーガルの経験を積んだ後、2012年に行政書士として独立。離婚や相続など身近に起こる問題をサポートする際には、書類の作成のみにとどまらず、相談者の気持ちに寄り添ったカウンセリングを重点的に行っている。知識と経験を活かし、各種サイトでの法律記事・マネー記事の執筆や監修も担当。