家族や親族はもちろん、身寄りのない人の埋葬や葬儀を引き受ける時、悲しみに暮れながらも経済的な負担を懸念している方は多いのではないでしょうか。
そんな時に受給できる給付金があり、それらを「葬祭費」、や「埋葬料」といいます。
葬祭費と埋葬料を混同してしまう方がいますが、実は明確な違いがあります。
今回は、そんな葬祭費と埋葬料の違いや、両方受け取ることは可能なのか?などの疑問を解決していきます。
後半では、どれくらいの給付金が受給できるのか、申請方法はどのようになっているのかなども解説します。
身寄りのない人の埋葬・葬儀を引き受けることになって困っている方も、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. 葬祭費とは?
葬祭費とは、亡くなった人が国民健康保険の被保険者もしくは被扶養者であった場合に支給されるお金です。
他にも、後期高齢者医療制度に加入していた場合などに対象となります。
支給されるのは葬儀を行うにあたって、かかった費用の1部です。
葬祭費は、市区町村によって、「葬祭料」などと表記されることもあるのでしっかりとチェックしましょう。
ここで注意したいのが、葬祭費は期限を過ぎると申請ができなくなってしまうという点です。
葬祭費を申請したい場合は、葬祭を行った日を含む2年以内に手続きを行ってください。
また、死亡した原因が第三者にあった場合(交通事故など)は、第三者から葬祭費用の賠償を受けるケースがあります。
そのような時も、葬祭費については支給の対象になりませんので覚えておきましょう。
2.葬祭費と埋葬料の違いとは?
葬祭費は、国民健康保険が関係していましたが、埋葬料はどのような場合に支給されるお金なのでしょうか。
ここからは、「葬祭費と埋葬料の違い」や、「葬祭費と埋葬料はどちらも受け取れるのか」について解説していきます。
2-1 埋葬料について
埋葬料とは、国民健康保険とは異なる健康保険の被保険者であった場合もしくは全国健康保険協会(組合けんぽ)に加入していた場合に支給されるお金です。
葬祭費と違う点は健康保険についてだけでなく、支給条件も異なります。埋葬料は、被保険者が亡くなった時点で支給されるのです。
たとえ葬儀を行っていなくても、今後葬儀を行う予定がなくても、申請すれば必ず支給されます。
もちろん、被保険者の収入で生活している家族が亡くなった場合も「家族埋葬料」として支給されます。
埋葬料及び家族埋葬料については、被保険者が会社を退職して資格を喪失した場合でも支給されるケースがあります。
支給される条件は、資格喪失後3ヶ月以内に亡くなった場合です。
また、葬祭費と同様、期限を過ぎると申請ができなくなってしまうため、期限内に申請するように注意しましょう。
期限は葬祭費と異なり、「埋葬を行った日の翌日から2年以内」となっています。
2-2 葬祭費と埋葬料はどちらも受け取れる?
葬祭費と埋葬料は支給条件が異なるため、どちらももらえるのではないかと考える方は多いでしょう。
しかし、これらのお金は加入している保険組合から受け取るシステムになっているので、受け取れるのは片方の給付金だけになります。
もとより、これらの給付金は葬儀や埋葬を行うにあたって必要となる費用の1部を負担するという目的であるため、2重で受け取ることはできません。
申請する時は、亡くなった人が国民健康保険と社会保険のどちらに加入しているのかを確認しておきましょう。
先ほどもご紹介したように、資格を喪失した後でも亡くなったのが3ヶ月以内であれば「埋葬料」が優先になるため、申請時は注意してください。
3. 葬祭費や埋葬料といった給付金を受け取れる人
葬祭費や埋葬料といった給付金を受け取れるのは、喪主となっています。喪主とは遺族の代表者のことを言い、葬儀や葬式の主催者であることが多いです。
配偶者はもちろん、子どもや親が喪主となることもあります。
しかし、場合によっては喪主以外の人が申請せざるを得ないこともあるでしょう。
そのような時は委任状を用意し、申請と受け取りを代理で行うこともできます。
また、身寄りのない方が亡くなった時、その人の葬儀や埋葬を引き受けた場合は、親族でなくても葬祭費や埋葬料などの給付金を受け取れます。
身寄りのない方の葬儀を引き受けた場合は、他にも「葬祭扶助制度」を利用できる可能性があります。
葬祭扶助制度は、遺族以外の方が葬儀を引き受けた時や経済的に困っていて生活保護を受けている人が対象となる制度です。
自治体が葬儀費用を負担してくれるため、経済的な心配があっても安心できます。
ただし、葬祭扶助制度で受給できるのは直葬と呼ばれている火葬のみなど、最低限の葬儀費用だけの支給となります。
自治体によって基準額は異なりますが、大人であれば206,000円以内、子どもであれば164,800円以内程度の給付金が支給されます。
身寄りのない人の葬儀を引き受けた場合でも、焦らずにこのような制度を利用してみてください。
4. いったいいくら受け取れるの?
葬祭費と埋葬料の違いが分かったところで、どれくらいの給付金がもらえるのかを見ていきましょう。
支給される額や上限が分かっていれば、葬儀などの費用についてじっくりと考えられます。
受給できる給付金の種類を把握し、受け取れる金額もしっかりと覚えておいてください。
4-1 故人が国民健康保険に加入している場合
亡くなった方が国民健康保険に加入している場合に支給されるのは葬祭費です。
支給される金額は市区町村によって異なることが多く、10,000~70,000円前後とかなりの差があります。
後期高齢者保険に加入している場合も同様で、支給される金額は10,000~70,000円前後となっています。
葬祭費についての問い合わせは、亡くなった人の住民票がある市区町村役場の国民健康保険課です。
4-2 故人が社会保険に加入している場合
亡くなった方が社会保険に加入している場合に支給されるのは埋葬料です。
埋葬料には基本的に50,000円が支給されます。
しかし、埋葬を行ったのが被保険者の家族以外だった場合、埋葬にかかった費用分が支給されることになっています。
その場合、支給上限が定められており、上限は50,000円です。
ただし、労災などが原因で亡くなった場合は上限が50,000円以上になることが多いです。
埋葬料についての問い合わせは、被保険者が加入している保険事務所です。
4-3 故人が国家公務員共済組合に加入している場合
亡くなった方が国家公務員共済組合に加入している場合は、葬祭費が支給されます。
支給額は各組合によって異なるため、加入している共済組合に問い合わせてみてください。
5. 葬祭費の給付金が支給される流れ
葬祭費の支給を受ける場合は、死亡届書を提出し、手続きが終了後から申請が可能になります。
主に必要とされるのは
・亡くなった方の保険証
・葬儀を行った方の本人確認ができる書類(マイナンバーカードや免許証、保険証など)
・葬儀を行った方の預金通帳
・葬儀を行った方の氏名が確認できる書類(会葬礼状や葬儀に関する領収書など)
などの書類です。
喪主以外の方が申請・受領する場合は、葬儀を行った方の印鑑が必要なので注意してください。
また、亡くなった方の保険証の返却が済んでいる場合は不要になります。
埋葬料の申請に必要なものは、主に以下の通りです。
・健康保険証
・健康保険埋葬料支給申請書
・火葬許可証、埋葬許可証、死亡診断書のいずれか
・葬儀費用の領収書など
埋葬料は、死亡届書の提出が済んでいなくても申請が可能です。
健康保険埋葬料支給申請書は、健康保険組合が用意している申請書で、ウェブサイトからもダウンロードできます。
火葬許可証や埋葬許可証、死亡診断書に関しては、原本ではなくコピーしたもので問題ありません。
6. 葬祭費や埋葬料に関するよくある質問
次に、よくある質問について詳しく解説していきます。
特に支払われるタイミングや受け取る方法などは、忙しい喪主にとって重要でしょう。
また、葬祭費や埋葬料以外に受給できるお金についても触れていきます。
6-1 葬祭費や埋葬料が支払われるタイミングは?
葬祭費や埋葬料は、申請がスムーズに進んだ場合約2~3週間程度で支払われます。
給付金の申請には多くの書類が必要になるため、スムーズにお金を受け取るためには入念なチェックが必要になります。
また、給付金の申請を行うタイミングで資格喪失届を提出しておくのも忘れないようにしましょう。
6-2 支払い方法は?
給付金は、口座振り込みで支払われるのが一般的です。
給付金の申請を行う時に指定した振込口座に支給されるので、申請の際に亡くなった人の名義の口座を記入しないように注意しましょう。
亡くなった事実が分かると、その人の口座が凍結されてしまい、引き下ろすことができなくなります。
必ず申請者の名義の口座を記入してください。
6-3 他になくなってからもらえる公的なお金はある?
葬祭費や埋葬料について詳しく解説してきましたが、その他にも遺族が申請できる給付金はいくつかあります。
例えば、国民年金に加入していた場合「遺族基礎年金」が支給されます。
遺族基礎年金は、18歳未満の子どもを持つ遺族を対象としているのが特徴です。
厚生年金や共済年金に加入していた場合は、「遺族厚生年金」が支給されます。
遺族基礎年金とは異なり、子の有無に関わらず受給できるのが特徴です。
「死亡一時金」や「寡婦年金」といったものもあります。
それぞれ必要な書類が異なるため、確認漏れがないようにしてください。
7. まとめ
今回は、葬祭費と埋葬料の違いに加え、申請方法や受け取り方などをご紹介してきました。
葬祭費と埋葬料は、加入しているのが国民健康保険なのか、それ以外の健康保険なのかで支給される種類が異なります。
どちらも必要書類を用意し、期限内に申請を行うことで受給できます。
期限はどちらも2年以内となっていますが、細かい違いがあるのを覚えておきましょう。
注意したいのは、亡くなる3ヶ月前に会社を退職し、国民健康保険に切り替えていた場合です。
資格を喪失して3ヶ月以内であれば、申請するのは葬祭費ではなく埋葬料になります。
申請先も異なるため、亡くなった人が退職した時期などを把握することも大切です。
また、申請時に記入する口座番号についても注意しましょう。
亡くなった人ではなく、必ず喪主や受給を受ける人の口座番号を記入し、スムーズに給付を受けられるようにしてください。
葬祭費や埋葬料について悩んだ時は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。