iDecoの相続|60歳になる前に死亡したら【無駄になる!?】

更新日:2023.12.20

iDecoの相続|60歳になる前に死亡したら【無駄になる!?】

高齢化が急速に進み、老後の資金が足りるどうか不安になる方は多いです。公的年金以外にも、自分自身でお金を準備して老後に備える必要があります。

そこで、注目を集めているのが「iDeCo」です。毎月お金を積み立て、掛金を運用して老後の資金をつくるのを目的とした年金制度です。

今回は、iDeCoについてや遺産相続、死亡後の手続き等について解説していきましょう。

1. iDeCo(イデコ)とは?

誰もが一度は耳にしたことありますが、詳細はあまり知られていません。まず、iDeCoについて詳しくご紹介していきます。

1-1 iDeCoの概要

iDeCoとは、自分が決めた額の掛金を支払い、運用、資金を貯める年金制度です。個人型確定拠出年金とも呼ばれており、年金法に基づき行われています。

【年金の受領までの流れ】

①掛金の設定・拠出

掛金をいくらにするのかを自分で決めます。

限度額は自分の職業等によって異なるので、範囲内で金額を決め毎月積み立てていきます。

②運用

どのように運用するのかを選択します。運用方法として、定期預金や投資信託、保険商品などが挙げられます。

③年金の受領

いくら年金を受け取れるのかは、始めに決めた掛金額や運用の結果によって異なります。

原則20歳から60歳未満の方が加入できる制度ですが、加入の区分によっていくつか条件があります。

【加入条件】

第1号被保険者

日本在住の20歳から60歳未満の自営業者、学生などです。しかし、農業者年金の加入者や国民年金の支払い責任を免除されている方は対象外になります。

第2号被保険者

60歳未満の方で、厚生年金へ加入しているサラリーマンや公務員の方です。しかし、勤務先で企業が提供する確定拠出年金に入っている方は基本的に加入できません。

規約によって個人型にも加入しても良いと記載されている場合に限っては、iDeCoにも加入可能です。

第3号被保険者

20歳から60歳未満の方で、厚生年金被保険者の扶養の子どもや配偶者です。また、加入者によって掛金の上限額が決まっています。

自分が当てはまるのは下記のどの区分なのかを知る必要があります。

【掛金の上限】

・第1号被保険者

上限は、月額6.8万円です。

国民年金基金と付加保険に加入している場合は、それぞれの掛金の合計額の上限です。

・第2号被保険者

勤め先に企業年金がない場合は月額2.3万円、企業が提供する拠出型の年金制度に入っていると月額2万円です。

更に確定給付企業年金にも入っている、または企業年金のみに入っている、その他公務員等は月額1.2万円が上限となります。

・第3号被保険者

上限は月額2.3万円となります。

1-2 税制におけるメリット

iDeCoは、公的年金とは別の老後資金を作ることを目的とした制度なので、税制の優遇があります。

積み立てた金額は所得控除の対象となるので、月々給与から引かれている所得税と住民税の支払い額が減少します。

毎年の税金が少なくなることで手持ちのお金は増え、積立金にプラスして効率的に資金増加が見込めるのです。

1-3 iDeCoの注意点

積立・運用で効率的に資金を増やせる制度ですが、いくつか注意点があります。

まず、老後の資金作りを目的としたものなので、60歳になるまで受給ができない点です。

他の金融商品であれば希望したタイミングですぐに現金化可能ですが、iDeCoの場合はできません。

あくまでも「老後の資金」という使い方になります。また、加入した年齢によっては60歳になっても受け取れないこともあります。

10年以上加入していれば60歳から受け取れますが、10年よりも短いと受け取れる年齢が先になります。

始めるのが早ければ早いほど運用の利益も見込め、60歳から受け取れるのでスタートは早いに越したことはありませんただ、運用の結果次第によっては元値よりも低くなることもあります。

積み立ておけば勝手に増えるのではなく運用して増やすものなので、最適な運用方法を探す必要があります。

2. iDeCo加入者が受給前に死亡したら?

iDeCoは60歳にならないとお金は受け取れないと説明しました。では、万が一加入者が60歳前に亡くなってしまった場合にはどうなるのかを解説しましょう。

2-1 貯めた資産は遺族が受け取れる

受取年齢である60歳よりも前に死亡した場合、遺族の受け取りが可能です。

積立口座の実績に基づいて、「死亡一時金」として遺族へ渡されます。また、死亡一時金として受け取るには死亡後5年以内に申請をする必要があります。

2-2 死亡一時金は誰が受け取る?

加入者が60歳未満で亡くなった際には、遺族に死亡一時金を受け取る権利があります。

しかし、受け取れる権利を持つ順位が法律によって定められています。

1位:配偶者

2位:子ども、父母、孫、祖父母または兄弟。なお、死亡時に加入者の収入で生計を維持していたことが条件

3位:上記以外で、死亡時に加入者の収入で生活していた人

4位:子ども、父母、孫、祖父母または兄弟で2番以外の人

2番と4番については、その中でもさらに順位があり、一番順位が高いのが子どもでその後に父母、孫と続きます。

もし対象となる子どもが3人いる場合には、3人で均等に分けることになります。また、生前に一時金の受取人を指定することも可能です。

対象となるのは、配偶者や子ども、父母、孫、祖父母または兄弟です。また、事実婚であった場合でも配偶者として受取人にすることもできます。

3. 死亡一時金を受け取るための手続き

加入者が60歳前に亡くなってしまった場合に、遺族が一時金を受け取るには手続きが必要です。手続き方法と必要な提出書類について解説します。

3-1 死亡一時金を受け取るには?

iDeCoの加入状態や相続先によって少々手続きは異なりますが、一般的には同じ流れとなります。

iDeCoの口座がある金融機関や会社に連絡します。

加入者が死亡した旨を伝え、受取の手続き書類発送を依頼します。

②提出の必要な戸籍謄本などを準備します。

裁定請求書等の必要事項を記載し、準備した必要書類と一緒に提出します。

④提出したものに間違いがなければ、提出後1~2ヶ月ほどで受け取れます。

3-2 手続きに必要な書類

次に、どんな書類が必要なのかを詳しく解説します。受取人が誰かによって必要な書類は異なるので、しっかり確認する必要があります。

共通して必要なもの

・受取人の印鑑証明

もし、複数人が受け取る場合は全員分が必要です。

・受取人のマイナンバーが記載された書類

個人番号カードや通知カードです。

印鑑証明と同様で、受取人全員のものが必要になります。

・裁定請求書

金融機関などの書式です。

【追加書類:複数人が受け取る場合】

・代表受取人選任届」

なお、届け出には受取人全員の名前記入、実印押印が必要です。

【追加書類:生計維持の関係だった親族が受取人の場合】

・生計維持関係を示す書類

生計維持の状態によって求められる書類が異なるので、詳細は加入元へ確認しましょう。

【追加書類:生計維持の関係にない同じ順位者または優先度の高い親族がいる場合】

・対象者の非生計維持証明書

・対象者の印鑑証明書

複数人いる場合は、全員分必要です。

◎戸籍関係書類

【受取人が配偶者の場合】

・加入者の死亡が確認できる戸籍謄本

【受取人が指定されている場合】

・加入者の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本

・加入者との関係がわかる戸籍謄本

他に、受取人が子ども孫なのか、祖父母なのかによって必要書類は様々です。

加入者と自分がどういう関係なのかによって準備する書類は異なるので、インターネットで調べたり、加入元に確認したりするのが良いでしょう。

3-3 どこに問い合わせればいいか分からない場合

どこの口座なのかが分からない場合には、下記の記録関連運営管理機関に問い合わせましょう。

・日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T)

電話番号 045-650-2525

・日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社(NRK)

フリーダイヤル 0120-985-401または028-307-5030(有料)

主に上記の会社へ委託する管理機関が多いです。

もし問い合わせても分からなかった場合は、「SBIベネフィット・システムズ株式会社」や「損保ジャパン日本興亜DC証券株式会社」にも確認してみましょう。

金融機関によっては、取り扱いがあることもあります。

4. iDeCoと相続について

4-1 死亡一時金は遺産分割の対象になるのか?

死亡一時金は、遺産分割の対象にはなりません。

年金法によって受取人の優先順位が決まっているためです。

ただし、死後5年の間に請求者が誰もいない場合には「相続財産」となります。つまり、遺産分割の対象となるのです。

その場合には、不動産や預貯金などの相続財産と同様、全相続人から請求または遺産分割の話し合いによって誰がどのくらい受け取るかを決定します。

5. まとめ

今回は、iDeCoについてご紹介しました。運用益や節税、非課税対象になるなど多くのメリットがある制度です。

しかし、運用方法を確立しなければ結果的に損失になる危険性や60歳にならないと受け取れないなどの注意点もあります。

60歳になるまでに亡くなる可能性もあるからとiDeCoを避ける方もいますが、万が一亡くなった場合でも遺族が受け取れるので心配はいりません。

関連記事:確定拠出年金の相続について

関連記事:NISAの相続について

 

この記事の監修者

工藤 崇(くどう たかし)

 

独立型ファイナンシャルプランナー。

WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。

東京・北海道を拠点として事業展開。

株式会社FP-MYS代表。

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