相続税の申告は自分でできる|必要書類・手続きの流れ・メリット/デメリットまでご紹介

更新日:2023.11.29

相続税の申告は自分でできる|必要書類・手続きの流れ・メリット/デメリットまでご紹介

相続税の申告は、自分で申告書を作成して税務署へ提出することもできます。

ただし相続税の申告には色々と決まりごとがあり、添付すべき書類も状況によって異なるため、不慣れな方にとっては大変な作業かもしれません。

自分で相続税申告を行う際には、判断基準や注意点など気を付けるべきポイントが複数あり必要書類なども多岐にわたるため難易度が高いです。

また相続する資産が現金だけなら計算が単純ですが、不動産などの土地も含まれると評価が難しくその場合は複雑な計算が必要になります。

今回は、相続税の申告を自分で行うメリットとデメリット、また相続税の申告を自分で行う場合の手順についてご紹介します

相続税の申告が必要な人とは?

相続が発生したからといって、必ず相続税の申告をしなくてはいけないわけではありません。

相続税の申告が不要な人もいます。

相続が発生した際には、まずは相続税を申告する必要があるかどうかを判断しましょう

相続税の申告が必要かどうかの基準は「基礎控除額」

相続税の申告が必要かどうかは、課税対象財産の合計額が基礎控除額以下であるかどうかで判断します。

相続税の基礎控除とは、相続税の課税が免除される遺産の上限額を意味します。

相続税の課税遺産総額を求めるには、課税対象財産の合計額から基礎控除額を引きます。

そして残った金額が0以下、課税遺産総額が基礎控除額以下であった場合、相続税は非課税となり、原則として相続税申告は不要です。

逆に残った金額がプラス、つまり課税遺産総額が基礎控除額を超える場合、相続税申告をする必要があります。

基礎控除額は、以下の計算式で計算します。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数※)

相続放棄をした者も含みます。また養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までカウントできます。

つまり基礎控除額は、誰でも同じ金額になるわけではなく、法定相続人の数によって金額が決まります。

なお、課税遺産総額が基礎控除額以下の場合でも、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用を受ける場合や、相続時精算課税制度の適用を受けている場合などには、相続税申告が必要です。

相続税の申告は自分でできる?

出典:財務省「令和2年度 国税庁実績評価書」

税理士関与割合

年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
相続税の税理士関与割合 85.0% 85.7% 86.1%

相続税申告における税理士関与割合は、令和2年度のデータで86.1%です。

逆算すると、相続税申告が必要になった人のうち、税理士に依頼せずに自身で相続税申告した割合は、13.9%と比較的少数であることがわかります。

相続税申告を自分で行うことができるかどうかは、相続財産等の状況や、税理士に依頼する場合との比較等を十分考慮して判断する必要があります。

相続税の申告を自分でするかどうかの判断基準

相続税の申告を自身で行うことができるのか、それとも税理士に依頼した方がよいのかを判断する際には、以下のポイントを考慮するとよいでしょう。

・相続人が一人か複数人か

・遺産金額が高額かどうか

・不動産や未公開株式が含まれているかどうか

・小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用するかどうか

判断基準のうち、ひとつでも申告書作成に向かないとされる場合がある際には、税理士に依頼した方がベターです。

相続人が一人か複数人か

相続人が一人しかいない場合、相続税を支払うのは自分だけなので、税額の計算も比較的シンプルです。

これに対して、相続人が複数の場合は、相続税の計算が煩雑になりがちで、ミスが生じる可能性も上がります。

そのため、相続人が複数いるケースでは、相続税申告を税理士に依頼するのが無難でしょう。

遺産金額が高額かどうか

相続財産が高額の場合も、自分で相続税申告を行うのは避けた方がよいです。

もし相続税の計算を間違えた場合、課税遺産総額が高額である分、多額の追徴課税を受けてしまうおそれがあります。

ミスの可能性を最小限に抑えるためにも、税理士に依頼して相続税申告をした方が、追徴課税のリスク回避に繋がります。

不動産や未公開株式が含まれているかどうか

相続財産が現金・預金の場合、相続財産の金額は一義的に定まるため、相続税額も計算しやすいです。

これに対して、不動産や未公開株式の価値は一義的でないため、個別の価値評価が必要になります。

価値評価の方法は複雑かつ複数存在し、どの方法を選択するかによって、相続税額が大きく変わる可能性があります。

そのため、不動産や未公開株式の相続税評価は、税理士依頼することをおすすめします。

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用するかどうか

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、相続税額を軽減する制度の適用を受けたい場合、適用要件を満たしているかどうかをチェックする必要があります。

確実に特例等の適用を受けるためには、税理士に税務上の検討や申告書の作成等を依頼するのがよいでしょう。

相続税の申告を自分で行うメリット

相続税の申告を自身で行うメリットは、第一に費用を抑えられる点が挙げられます。

一般的に、相続税の申告を税理士に依頼した場合、報酬額は遺産金額の0.5〜1%となるケースが多いです。

仮に遺産総額が1億円であった場合、税理士報酬は50〜100万円程度が相場です。

自身で相続税の申告を行えば、税理士報酬を支払う必要がありません。

相続税の申告を自分で行うデメリットや注意点

・相続税の申告を自身で行う場合、以下のデメリットが存在します。

・申告方法を地道に調べながら対応しなければならない

・相続税の計算ミスが生じる可能性がある

・必要書類に不備が生じやすい

申告方法を地道に調べながら対応しなければならない

相続税の申告には、税法上の専門的知識が必要です。税理士等の専門家でなければ、その都度調べながら申告書の作成等を進める必要があります。

不慣れな相続税申告について、地道に情報を調べながら対応すると、時間と労力がかかるうえに、ミスも発生しやすくなります。

相続税の計算ミスが生じる可能性がある

税理士に依頼する場合に比べると、自分で相続税申告をするケースでは、税額の計算ミスが発生しやすくなることは避けられません。

相続税額を過剰に申告・納付してしまうと、本来であれば支払わなくてよかった税額を余分に支払うことになってしまいます。

また、逆に相続税額が足りなかった場合は、過少申告加算税などのペナルティを課されてしまう可能性もあります。

必要書類に不備が生じやすい

相続税申告の添付書類は多岐にわたるため、自分で相続税申告を行うケースでは、書類の不備はどうしても発生してしまいます。

提出書類に不備があると、税務署から何度も出し直しを求められるなど、非常に面倒な事態になってしまいかねません。

 

相続税の申告を自分で行う方法・手順

相続税の申告を自分で行う場合の方法と手順は以下の通りです。

・相続人の確定

・相続財産を調査・確定し、遺産目録を作成する

・遺産分割協議書を作成する

・税務署もしくは国税庁のホームページで相続税申告用紙を入手する

・相続税の申告に必要な書類を揃える

・相続税額を計算し、相続税申告書の作成をする

・税務署に申告書を提出して納税する

1. 相続人の確定

相続税申告までに遺産分割を完了できれば、後の修正申告や更正の請求が必要ないため、手間を省略できます。そのため、まずは遺産分割に関する検討に着手しましょう。

遺産分割を行う前提として、最初に相続人を確定する必要があります。

亡くなった方の家族状況により法定相続人の数・範囲は変わってくるため、まずは戸籍謄本を取り寄せて確認しましょう。

また、遺言書が存在する場合には、どのような財産が誰に対して遺贈されているのかも確認します。遺言書によって遺贈された財産は、遺産分割の対象から

外れる点に留意しましょう。

2. 相続財産を調査・確定し、遺産目録を作成する

相続人の確定が済めば、次は相続財産を確定します。

被相続人の遺産・遺品を整理し、相続財産を遺産目録に漏れなくまとめておきましょう。

遺産目録は、遺産分割や相続税申告に必須の書類ではありませんが、一覧的に遺産の内容を把握できるので便利です。

遺産の把握に漏れがあると、遺産分割がやり直しになってしまうことがあるので注意しまししょう。

3. 遺産分割協議書を作成する

相続人が複数いる場合は遺産分割協議を相続人間で行い、誰がどの財産を相続するのかを話し合います。

そして遺産分割協議の結果をもとに、遺産分割協議書の作成を行います。

遺産分割協議書は相続税申告の際に必要書類となりますので、必ず作成します。

遺産分割協議書に決められた書式はありませんが、相続人全員が署名して実印を押印する必要があります。

なお、遺産分割の方法について、相続人間で揉めてしまった場合には、弁護士に遺産分割の仲介を依頼することが有効な解決策です。

4. 税務署もしくは国税庁のホームページで相続税申告用紙を入手する

遺産分割が完了したら、相続税申告の準備に着手しましょう。

まずは相続税の申告書の用紙を入手する必要があります。

相続税申告用紙は最寄りの税務署に直接取りに行くか、もしくは国税庁のホームページからダウンロードして手元に用意します。

税務署に郵送を依頼することも可能です。このとき、返信用封筒に切手を貼って同封することを忘れないようにしましょう。

また、「相続税の申告のしかた」という手引きの冊子があり、その中に相続税の申告をする際に必要な情報がまとまっていますので、併せてチェックしましょう。

なお遺産分割が、後述する相続税申告の期限までに終わりそうにない場合には、暫定的に法定相続分に従った相続税申告を行う必要があります。

この場合は、遺産分割の完了を待たず、早めに相続税申告の準備を始めてください。

5. 相続税の申告に必要な書類を揃える

申告用紙を用意した後は、それ以外の必要書類を揃えます。

全ての書類を揃えるには1〜2か月かかるケースが多いので、余裕を持って早めから準備しましょう。

相続税申告の際、共通して必要となる主な書類は以下の通りです。

・本人確認書類(マイナンバーなど)

・相続人がわかる戸籍謄本

・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し

・相続人全員の印鑑証明書

など

上記以外の必要書類は、相続財産の内容によって異なります。

例えば不動産が含まれる場合は、登記事項証明書や、固定資産税評価額がわかる書類などが必要になります。

6. 相続税額を計算し、相続税申告書を作成する

出典:国税庁「相続税の申告のしかた(令和3年分用)」

税法で定められた相続税の計算方法に沿って、実際の相続税額を計算し、その内容を申告書に記載します。

計算方法や申告書の記載方法については、国税庁のホームページや「相続税の申告のしかた」などに記載されています。

「相続税の申告のしかた」に示されているロードマップに従い、申告書の表の記載の必要な部分を埋めていきましょう。

なお、不動産や未公開株式などの相続税評価も、この段階で必要になります。

7. 税務署に申告書を提出して納税する

相続税の申告・納付には期限があり、相続人の被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内にしなくてはなりません。

相続税の納付の期限も申告期限と同じであることに注意してください。

また2人以上で複数の相続人がいる場合、共同して相続税申告書を提出することができます。

その場合は申告書第1表及び第1表(続)に共同して提出する者の氏名を記載します。

申告書を別に出したい相続人がいる場合は、別途申告書を作成、提出する必要があります。

少しでも不安や疑問を感じたら税理士に相談しよう

相続税の申告を自分で行うことは可能です。

ただし、自分で相続税申告を行う場合、以下のデメリットがあるのが難点といえます。

・申告方法を地道に調べながら対応しなければならない

・相続税の計算ミスが生じる可能性がある

・必要書類に不備が生じやすい

相続税額の計算を間違えてしまうと、税金を払い過ぎて損をしたり、過少申告加算税などのペナルティが課されたりすることがありますので注意が必要です。

また申告期限を過ぎてしまった場合も、延滞税や無申告加算税などのペナルティを課される可能性があります。

相続税の申告は、実際に申告書を作成してみると思ったよりも複雑で、手間も時間もかかるケースが多いです。

もし相続税申告に少しでも不安がある場合には、税理士等に相談されることをおすすめします。

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この記事の監修者:阿部 由羅

ゆら総合法律事務所・代表弁護士(税理士法51条1項に基づく国税局長への通知により、税理士業務も行う)。

西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。

ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

各種webメディアにおける法律・税務関連記事の執筆にも注力している。

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