法人へ遺贈・寄付があるときの相続税申告書の書き方|計算方法や譲渡所得税も解説

更新日:2023.12.08

法人へ遺贈・寄付があるときの相続税申告書の書き方|計算方法や譲渡所得税も解説

もしもの際、遺言書によって法定相続人ではない人へ資産を提供することを「遺贈」と呼んでいます。

本人が亡くなった後の、老人ホームを運営する法人への遺贈は、故人が果たせなかったこころざしを引き受けて家族が手続きを踏む制度です。

遺言書を理由として財産を受け取る人は受遺者と称され、被相続人の相続開始時に存命中の者に制限されますが、法人でも受遺者になることが許されています。

寄付をした際に相続税の申告に加えて、家族はどういった手続きを踏まなければならないのでしょうか。

1. 法人への遺贈があったときの相続税はどうなる?

遺贈寄付には、遺言によるものと相続財産によるものがあり、前者は遺言書で寄付される宛先が特定されるため、寄付者は被相続人となります。

後者は相続で資産を私有財産化した相続人が寄付者となるため、双方の課税関連は大きく異なっています。

1-1 相続税は個人に対してのみ課税、原則法人は相続税が課税されない

相続税は、相続または遺贈によって資産を私有財産化した個人に対してのみ課税され、原則として、遺言によって寄付された法人は、相続税を不正に減少させるために行われたものでない場合は課税されません。

これは、一般社団法人・一般財団法人・法的に拘束力があり有効であると認められていない非営利活動法人であるとしても同様で特別な手続きも不要です。ただし株式会社の場合、相続税は課税されずに法人税が課税されます。

しかし、寄付を受けたのが個人・法人格を有しない団体であった場合は、原則として相続税が課されることになります。

ただし、公益的な事業である場合には課税されない場合があります。要するに寄付を受けたのが法人の場合と個人の場合では原則と特例が反対になるのです。

 

遺言による寄付の相続税の扱い

 

原則

例外

法人に寄付

相続税は課税されない

租税回避とされる場合は
相続税が課税される

個人(任意団体を含む)
に寄付

財産を取得した個人に
相続税が課税される

公益的な事業とされる場合は相続税が課税される

 

相続税は、相続や遺贈により取得した資産の総計額から基礎控除額を差し引いて計算しますので、遺言によって寄付することで相続税が課税される財産が減るために相続税が少なくなります。

また、遺言による寄付である場合の寄付先が認定非営利活動法人・特定公益増進法人といった場合には、被相続人が準確定申告することで寄付金控除を受けられるのです。

1-2 相続税対策としての遺贈の場合は課税されることもある

遺贈を受けた人が、被相続人との血縁関係がないもしくは血縁関係の薄い人である場合は納税額が増加します。

遺言で資産をもらい受けた人が孫・友人・内縁の妻であった場合は、次に挙げる大切な点をしっかり理解しておく必要があります。

  • 相続人以外は基礎控除額・非課税枠の計算に含まれない
    相続税には遺族の生活保障を見たり考えたりする立場から、基礎控除、死亡保険金・死亡退職金の非課税枠といった、一定額まで非課税となる制度が設けられており、計算式は次のようになっています。
  • 基礎控除額
    3000万円+600万円✕法定相続人の数
  • 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠
    500万円✕法定相続人の数

    この計算式の中での「法定相続人」は民法で規定されている相続人のことです。
  • 相続税が2割増しになる
    資産を私有財産化した人が、被相続人の配偶者と一親等の親族以外である場合、相続税は2割増しとなります。

    孫・兄弟姉妹・友人が受遺者の場合は納税額に注意する必要があります。ただし代襲相続をした孫は2割増しとはなりません。

  • 特定遺贈は控除ができない
    故人の資産を私有財産化すると、借金・未払費用・葬式費用を資産額から控除でき、相続だけでなく遺贈においても同様です。ただし包括遺贈であることが条件となります。
  • 死亡保険金の非課税枠が使えない
    相続人が死亡保険金を受け取ったとしても、非課税枠である「500万円✕法定相続人の数」までは課税されませんが、相続人以外の人が受け取った場合は全額に対して相続税が課せられます。
  • 未成年者控除・障害者控除・相次相続控除は利用できない
    相続財産を私有財産化した人が未成年や障害者に該当する場合や、過去10年以内に生じた相続において相続税を納めていた場合は、相続税から一定額を控除できます。

    ただし、対象となるのは相続人だけで、相続人以外の人が遺贈で財産を私有財産化したとしても控除を利用できません。

1-3 遺贈した財産は非課税となり、所得税も寄付控除の対象となる

相続人による相続財産の寄付は、相続人がいったん資産を私有財産化しますので、相続人に相続税が課税されます。

ただし相続税の申告期限に、国・地方公共団体・特定の公益法人へ寄付した際は非課税になります。

「特定の公益法人」とは、独立行政法人・社会福祉法人・一定の学校法人・公益社団法人・公益財団法人・認定非営利活動法人といった、限定された法人で、一般社団法人・一般財団法人・認定を受けていない非営利活動法人・宗教法人は対象外です。

相続人が相続財産を寄付した際の非課税措置は特例措置であるため、相続税申告書に措置を事例にあてはめて用いる意図を記載して、定められた書類を申告書に添付する必要があります。

また、相続財産寄付は相続人によるものとなるため、国・地方公共団体・特定の公益法人への寄付は、相続税が非課税となるとともに所得税においても寄付金控除を受けられるため、大きく評価できるポイントとなります。

 

相続人による相続財産の寄付の税金の扱い

 

相続税

所得税

特定の公益法人等に寄付

相続税の申告期限までに
寄付をすれば、相続税非課税

寄付金控除の対象になる

上記以外の法人、個人
(任意団体を含む)に寄付

寄付をしても相続税課税

寄付控除の対象にならない

 

1-4 相続人以外への遺贈は基礎控除額の計算人数には含まない

相続人以外の人へ遺贈する場合、相続税の基礎控除には遺贈を受ける人は含まれません。

その一方、相続税を振り分ける場合、相続人以外の人も含めて税額が決定されます。すなわち、次に挙げる点を注意して相続税を計算する必要があります。

  • 遺贈における相続税算出の注意点
  • 相続人以外の人が遺贈を受ける際、基礎控除額の計算人数として含めずに基礎控除額を算出
  • 相続財産の割合に比例して相続税を配分する際、相続人以外の人も含めて税額を決定

2. 法人への遺贈があったときの相続税申告書の書き方

相続や遺贈によって私有財産化した資産を相続税の申告期限までに、国・地方公共団体・公益を目的とする事業を行う特定の法人・認定非営利活動法人に寄付した場合、特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は相続税申告書に記載することになります。

被相続人の財産を公益法人へ寄付した場合に記載をします。特例の適用を受ける際は申告期限までに受領書・証明書の添付が必要となります。

 

特例のどの項目に当てはまるかの選択

適用を受ける特例番号に◯印

寄付(支出)年月日

寄付をした日付を記載

寄付(支出)した財産の明細

種類・細目・所在場所・数量・価額を記載

公益法人等の所在地・名称
(公益信託の受託者及び名称)

寄付先の所在地・名称を記載

寄付(支出)をした相続人等の氏名

寄付した財産の相続人名を記載

合計

価額の合計額を記載

 

2-1 国、地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄付した場合の特例を使う場合

特例の適用を受ける際、次に挙げる要件のすべてに当てはまっていることが必要です。

  1. 寄付した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること。相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
  2. その取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄付すること。
  3. 寄付した先が国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人であること。

    (注)特定の公益法人の範囲は独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており、寄付の時点で既に設立されているものでなければなりません。

上記1.に挙げられた特例の適用を受ける場合

  1. 国、地方公共団体又は特定の公益法人の特例の適用を受けようとする財産の贈与を受けた旨、その贈与を受けた年月日及び財産の明細並びにその法人のその財産の使用目的を記載した書類
  2. 特定の公益法人である場合には、その特定の公益法人に該当する旨の地方独立行政法人法第6条第3項に規定する設立団体又は私立学校法第4条に規定する所轄庁の証明書類

2-2 特定の公益信託の信託財産とするために支出をした場合の特例を使う場合

特例の適用を受ける際、次に挙げる要件のすべてに当てはまっていることが必要です。

  1. 支出した金銭は相続や遺贈で取得したものであること。相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
  2. その金銭を相続税の申告書の提出期限までに支出すること。
  3. その受託者が信託会社(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律より同法第1条第1項に規定する信託業務を営む同項に規定する金融機関を含みます。)であり、その公益信託が、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められるなど一定のものであること。

上記2.に挙げられた特例の適用を受ける場合

  1. 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭の受領をしたその特定公益信託の受託者のその受領をした金銭がその特定公益信託の信託財産とするためのものである旨、その金銭の額及びその受領した年月日を証する書類
  2. この特例が適用される特定公益信託であることについての主務大臣の認定に係る書類(その認定をした年月日の記載のあるものに限ります。)

2-3 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄付した場合の特例を使う場合

特例の適用を受ける際、次に挙げる要件のすべてに当てはまっていることが必要です。

  1. 寄付した財産は、相続や遺贈で取得したものであること。相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
  2. 取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄付すること。
  3. その認定非営利活動法人が行う特定非営利活動促進法第2条第1項に規定する特定非営利活動に係る事業に関連する寄付すること。

上記3.に挙げられた特例の適用を受ける場合

  1. 認定特定非営利活動法人の特例の適用を受けようとする財産の贈与を受けた旨、その贈与を受けた年月日及び財産の明細並びにその認定特例非営利活動法人のその財産の使用目的を記載した書類

3. 法人への遺贈があったときの相続税の計算方法

遺贈があった際に納める相続税の算出方法は、普通の相続があった際に納める相続税の算出方法と基本的な相違はありません。現実の場において遺贈があった際の算出方法について、具体例で確かめておきましょう。

  • 法定相続人でない人が遺贈を受けた場合、法定相続人の人数に含めない
  • 実際に財産を取得した割合に応じて分与する場合、法定相続人でない人も含める
  • 遺贈を受けた人が配偶者・一親等の親族でない場合、2割加算される

遺贈があった場合の相続税の計算について解説していきます。

【具体例】

被相続人の遺産総額

2億円

  • 預貯金:5,000万円
  • 自宅土地:6,000万円
  • 自宅建物:1,000万円
  • 賃貸土地A:4,000万円
  • 賃貸土地B:2,000万円
  • 有価証券2,000万円

法定相続人

合計3人

  • 配偶者
  • 子供
    • 長男
    • 長女

遺言書により引き継ぐもの

配偶者

  • 預貯金と賃貸土地A(9,000万円)

長男

  • 自宅土地と自宅建物(7,000万円)

長女

  • 有価証券(2,000万円)

孫(長男の子供)

  • 賃貸土地B(2,000万円)
  • 相続財産の評価額を算出する
    相続税を算出するうえで最も大切なことは、相続財産を余すこと無く多くの中から選び出して適切な相続税評価額を算出することです。

    どれほど細かい部分まで配慮が及んでいる算出をしたとしても、資産すべてを正しく捉えられていないことによって、判断がかたよっていない遺産分割ができなくなるのです。

    この例においては、預貯金・不動産・有価証券が相続財産となっていますが、他にも生命保険やゴルフ会員権などといった相続財産に該当するものは数多くあるため、何も欠けずに揃っているようにしましょう。

  • 基礎控除の額を算出して課税対象の額を求める
    基礎控除の額は「3,000万円+600万円✕法定相続人の数」で算出されます。今回の例において、孫については資産を継承したものの、法定相続人ではありませんので、含めることのないように気をつける必要があります。

    よって、遺産を引き継いだ人は4人いますが法定相続人は3人になることによって、基礎控除の額は「3,000万円+600万円✕3人=4,800万円」となるため、「2億円-4,800万円=1億5,200万円」が課税対象となります。
  • 法定相続分に分割して相続税の総額を求める
    課税対象となる金額を求めた後に相続税を算出します。まず課税対象となる資産の額を法定相続分に分割すると、配偶者は「1億5,200万円✕0.5=7,600万円」、長男・長女はそれぞれ「1億5,200万円✕0.5✕0.5=3,800万円」となります。法定相続分に分割した後で相続税の速算表を利用して相続税を算出します。

 

相続税の速算表

法定相続分に応じた取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

 

  • 実際に取得した資産で税額を基準に応じて割り振る
    各相続人が納付する相続税の額は、取得した資産の割合に応じて決定されるため、相続税の合計額2,700万円を各々の相続人が実際に取得した資産の額を基準に応じて割り振ります。

    この例では、配偶者は「2,700万円✕9,000万円/2億円=1,215万円」、長男が「2,700万円✕7,000万円/2億円=945万円」、長女と孫が「2,700万円✕2,000万円/2億円=270万円」となります。

  • 相続人ごとに加算や軽減を算出する
    配偶者や一親等の親族でない人の相続税については2割加算で算出し、配偶者については税額軽減が適用されます。この例において、配偶者が無くなる一方で孫は2割加算となるため「270万円✕1.2=324万円」となります。

遺贈の際に贈与税が生じるものと間違って理解していると、事実上生じる税額が予想とは大きな隔たりのある結果となってしまいます。

相続税が課されることを意識して記憶しておいたうえで、前もってだいたいの見当をつけるために計算しておくといいでしょう。

また、遺贈された際は相続税の2割加算となる場合が多くなってしまうため、かなり負担が大きくなることを理解したうえで、遺産の分割案を検討して遺言書を作成するべきです。

4. 法人への遺贈があったときの相続税の申告書は誰が提出する?

相続税の申告書を提出しなかった場合、言うまでもなく納税に関連する処理は行われないことによって、滞納となり相続人全員に対して延滞税がかかってしまうため、どんなことがあっても誰かが提出しなければなりません。

  1. 提出義務者
    法律によって相続税の申告書を提出するといった拘束を課せられた人については、相続税基本通達27-1で規定されています。それによると、「相続や遺贈によって試算を取得したもの」となっています。つまり、相続人や受遺者といった全員が義務を負うことになるのです。
  2. 課税対象がない場合
    基本的に課税対象がない場合には申告書を提出する必要がありません。しかし、優遇措置によって相続税がかからなくなってしまう場合は、申告書の提出義務が生じますので気をつける必要があります。現在、優遇措置には以下のようなものがあります。

    配偶者の税額軽減
    ・小規模宅地の評価減
    ・国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等

こういった優遇措置を受けるために必要な根本的な前提として、相続税を申告する必要があります。

5. 法人への遺贈をした財産に譲渡所得税はかかる?

土地や建物といった不動産を譲渡した場合、譲渡所得の「確定申告」が必要となります。

無意識のうちに課税対象となるイメージはありますが、どういった譲渡が生じた際に該当するのか、詳細についてを認識している人は少ない可能性があります。

そこで、資産の譲渡所得の対象となるものについてを紹介するとともに、確定申告しないときの罰則についても詳しくみていきます。

被相続人から相続するプラスとマイナスの資産すべてが相続財産に該当します。最も分かりやすいよくある例として、不動産・預貯金・借金といったものがあります。

しかし、「相続財産の範疇に含まれるのか」「遺産分割できるのか」といった判断がつきかねるものも存在しますので、相続財産に含まれるものと含まれないものについて紹介していきます。

5-1 譲渡所得税の対象となる財産

譲渡所得とは、「資産」となる土地・建物・株式といったものを譲渡した際に生じる所得です。

しかし、「譲渡」の定義は有償か無償かによって、決定的な影響を受けないことが注目すべき点となります。

それゆえに、一般的な売買はもちろんのこと、法人に対する現物出資も譲渡所得となるために課税されますので、心に留めておく必要があります。譲渡所得の対象となる資産は次の通りです。

  • 土地、借地権、建物
  • 株式等、金地金
  • 宝石、書画、骨董
  • 船舶、機械器具
  • 漁業権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権
  • 土石(砂)など
  • 貴金属や宝石など

相続財産は、形のあるものと形のないものを問わずに多くの資産が内包されていると同時に、プラスの資産だけでなくマイナスの資産も含まれます。

要するに、金銭的な価値に関係するものすべてが含まれるため、相続が開始されると同時に簡単な分類する必要があるのです。

  • プラスの相続財産(積極資産)
    相続財産といってまず思い浮かべるのがプラスの資産ですが、意外に多くの人に知られていないものが多数存在します。
  • 不動産と不動産上の権利
    宅地・農地・建物・店舗・居宅・借地権・借家権
  • 現金・有価証券
    現金・預貯金・株券・貸付金・売掛金・小切手
  • 動産
    自動車・家財・船舶・骨董品・宝石・貴金属・美術品
  • その他
    ゴルフ会員権・著作権・慰謝料請求権・損害賠償請求権
  • マイナスの相続財産(消極資産)
    いわゆる借金や税金もマイナスの資産として承継されます。
  • 負債
    借金・買掛金・住宅ローン・小切手
  • 税金関係
    未払いの所得税と住民税・その他未払いの税金
  • その他
    未払い分の家賃・未払い分の地代・不払い分の医療費

5-2 譲渡所得税の対象とならない財産

譲渡所得には、土地・建物といった不動産や株式はもちろんのこと、一部の権利関係や土石などといったものも含まれてしまうため、気をつけなくてはなりません。

なお、貸付金や売掛金といった金銭債権は対象外となります。

相続財産は、被相続人に属していたすべての権利義務を意味しますが、例外的に被相続人に属していたとしても、相続によって承継されない権利義務についてをまとめてみました。

  • 被相続人の一身専属権(民法896条)
    相続財産に、被相続人の一身に専属していた権利義務(一身専属権)は含まれません。一身専属権とは、定められた人だけが有することができ、定められていない人は有することができない権利義務です。

    ただし、自分と相対する人物をがっかりさせないようまたは相手の意向を無視して利益を与えないように、一身専属権の領域は限られています。

一身専属権の具体例

帰属上の一身専属権

当事者の個人的信頼関係を基礎とする法律関係

代理権

使用貸借権

労働者である地位

身元保証人である地位

扶養請求権

生活保護受給権

国家資格

親権

罰金

信用保証人である地位

根保証債務

行使上の一身専属権

行使するか否かを

本来の権利者個人の意思に委ねるのを適当とする権利

離婚請求権

精神損害に対する慰謝料請求権

 

  • 生命保険の保険金等(相続人固有で取得する権利)
    相続財産に内包される否かに関してよく問題が波及するのが生命保険金や死亡退職金です。

    生命保険金等は受取人固有の資産であると結論を導き出されているため、仮に受取人が相続人だとしても、相続財産には内包されないと配慮するのが一般的です。

    ただし、相続税との関係において、受取人が相続人である際は課税対象となる相続財産に内包されることがあります。

  • 祭祀に関する権利(民法897条)
    祭祀に関する権利とは、神や祖先を祭ることを執り行うための系譜(家系図)・祭具(仏壇・位牌)・墳墓(墓地・墓石)といった資産のことですが、こういった権利は主催者に承継されます。

6. 法人への遺贈に不動産がある場合は「含み益」に注意

法人に不動産を遺贈寄付する際に含み益があると課税されることを「みなし譲渡課税」と呼ばれれており、所有権が移動した時点において利益や損失を計算するという概念です。

不動産を寄付しようと意識している方は、どのようにするかについて前もって対策しておく必要があります。

みなし譲渡課税は含み益のある不動産等に課税される制度です。定められた要件に合致していると、非課税になる制度(租税特別措置法40条)が規定されています。

不動産を売却して税金を納めたたうえで金銭を寄付する清算型遺贈や、遺贈を受けた団体がみなし譲渡の税額を引き受ける旨を遺言で書き記するといった対策が考えられます。

7. 相続税申告書の書き方に悩んだら税理士に相談

申告書の書き方はわかりやすいのですが、そこに至る算出プロセスにはただならぬ労力と経験や知識を必要とします。そこでおすすめしたいことがひとつあります。それは「税金の試算」です。

試算するということは生きている間に財産の整理ができます。生前に対策をおこなっておくことによって、余計な税金を払わなくてすみます。

「資産」について話し合うというよりは、税金の試算を通して「将来の節税」について話し合ってみることが大切です。

正しく節税することによって余分な税金を納めることなく、多くの財産を次世代へ残せます。

わずかでも自らの力だけでは全くできる気がしないものに対峙した際は、相続税の申告経験の多い「相続税専門の税理士」に相続税の申告を任せたほうが得策です。

相続人になった場合だけでなく、まだ見ぬ未来の相続人に遺産を正しい方法で引き渡すためにも、相続に熟達している税理士とタイアップして正しく節税と申告することをおすすめします。

遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

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