死亡一時金は、家族が亡くなった際に受け取れる給付金の一つです。大切な家族が亡くなると、計り知れない悲しみが訪れる一方で、様々な手続きや対応に追われ、経済的な不安を感じることも少なくありません。
もし、死亡一時金の受給条件を満たしている場合には、申請することで心の負担が少し軽くなるかもしれません。
今回は死亡一時金を受け取るにはどうしたら良いのか、受給条件や申請する際の必要書類、そして注意点などを詳しく解説します。
目次
1. 死亡一時金の受給条件について
死亡一時金は、年金受給前に亡くなった場合に遺族が受け取れる給付金ですが、受給するにはいくつかの要件を満たす必要があります。
ここでは、3つある受給条件について詳しく解説します。
1-1 亡くなった人が第一号被保険者である
1つ目の受給条件は、死亡者が国民年金の第一号被保険者であることです。
これに該当するのは、国内に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者や農業漁業者、学生や無職の方とその配偶者です。
上記の条件を満たしていれば、死亡者の性別は問いません。
そのため、妻が亡くなった場合には夫が受給できます。
厚生年金保険や共済組合に加入している公務員や会社員の方など、厚生年金保険を定期用している会社に勤務している人は全て第二号被保険者となるため、受給の対象ではありません。
また、第二号被保険者の扶養に入っている配偶者の方たちは第三号被保険者となるため、同様に受給の対象とはなりません。
1-2 亡くなった人の年金納付期間が36ヶ月以上である
2つ目の条件は、死亡者が国民年金保険料を合計36ヵ月以上納めていることです。
一時的に納付免除となっていた期間も含まれますが、納付額の免除割合によって計算方法は異なります。
例えば納付額の1/2が免除されていた場合、その期間は納付していた1/2を納付期間として算入します。
1/4免除されていた場合は、3/4、1/3免除されていた場合には2/3を納付期間として算入し、合算して36ヵ月以上になれば受給対象となります。
1-3 亡くなった人が国民年金の給付を受けていない
3つ目の受給条件は、死亡者が老齢基礎年金や障害基礎年金を含む国民年金の給付を受けていないことです。
いずれかを受給していた場合には、給付金の対象外となります。
また、遺族基礎年金が支給される場合も同様です。
生計を共にしている遺族が受け取ることができ、該当者が複数いる場合には配偶者、子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順に優先順位がつきます。
2. 死亡一時金の請求手続きについて
死亡一時金を受け取るには、請求手続きを行う必要があります。
ここでは、手続きをするにあたって必要な書類や請求する窓口についてご紹介します。
2-1 必要な書類
死亡一時金を請求するにはこれから紹介する書類が必要です。
・国民年金死亡一時金請求書
住所のある市区町村役場、または年金事務所及び年金相談センターの窓口で受け取れます。
また、日本年金機構のホームページからダウンロードすることも可能です。
・死亡者の年金手帳
提出できない場合には、その理由書が求められます。
・戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し
死亡者との続柄と、請求者の氏名・生年月日を確認するために必要です。
・死亡者の住民票及び請求者の世帯全員の住民票の写し
死亡者との生計同一確認をするため必要です。
・受取先金融機関の通帳等(請求者名義)
カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載されている預金通帳またはキャッシュカード(コピー可)の添付が必要ですが、請求書に金融機関の証明を受けた場合は不要です。
・印鑑
認印は可ですが、シャチハタは不可です。
2-2 請求する窓口
必要書類を揃えたら、住所地の市区町村役場の窓口に請求書を提出します。
お近くの年金事務所または街角の年金相談センターでも手続き可能です。
書類を提出し手続きを終えてから、およそ1ヵ月で受け取れることが多いですが、書類の不備や加入記録の整備が必要になった場合には、2ヵ月ほど時間を要することもあります。
3. 死亡一時金の支給金額
支給金額は、保険料を納付した月数に応じて定められています。
36ヵ月以上180ヵ月未満¥120,000
180ヵ月以上240ヵ月未満¥145,000
240ヵ月以上300ヵ月未満¥170,000
300ヵ月以上360ヵ月未満¥220,000
360ヵ月以上420ヵ月未満¥270,000
420ヵ月以上¥320,000
付加保険料の納付済月数が36ヵ月以上ある場合には、上記金額にさらに¥8,500が上乗せして支給されます。
納付期間によって金額は異なりますが、最大で32万円受け取れます。
但し、一時金とあるように受け取れるのは一度きりです。
3-1 死亡一時金に関する注意点
死亡一時金を受給するにあたって、気を付けなければならない注意点が3つありますので、ご紹介します。
3-2 遺族基礎年金が受給可能な場合は支給されない
死亡者の配偶者に子どもがいる場合、あるいは遺族が子どもである場合には遺族基礎年金を受け取ることが可能です。
遺族基礎年金は、①国民年金の被保険者の間に死亡した時、②被保険者であった60歳以上65歳未満で日本国内に住所のある方が死亡した時、③老齢基礎年金の受給権者の方が死亡した時、そして④老齢基礎年金の受給要件を満たしている方が死亡した時の4点のうちいずれかの要件を満たしている場合に支給されます。
但し、①②に関しては、亡くなった日の前日において、保険料免除期間も含む保険料納付期間が国民年金加入期間のうち2/3以上あることが求められます。
しかし、亡くなった日が令和8年3月末日までの時には、死亡者が65歳未満の場合、亡くなった日の前日において、死亡日を含む月の先々月までの1年間に保険料の未納が無ければ良いとされています。
③④については、保険料の納付期間が免除期間も合算した期間が25年以上ある必要があります。
このいずれかの条件を満たしている場合に、死亡者と生計を共にしていた子のいる配偶者・子が受け取れます。
この場合の子とは、18歳になった年度の3月末日までにある、あるいは障害年金の障害等級1級2級のいずれかの20歳未満の子が対象です。
この遺族基礎年金を受給している場合は、死亡一時金は対象外となり受給できません。
配偶者に子どもがいない場合は、遺族基礎年金の受給対象とならないため、死亡一時金を受け取れます。
3-3 寡婦年金と死亡一時金を一緒に受け取ることはできない
寡婦年金とは、夫が老齢年金を受け取れる65歳より前に死亡した時に、妻に対してそれまで支払ってきた保険料が60歳から支給される年金です。
寡婦年金を受け取るには、夫が国民年金を10年以上納付しており、また婚姻関係も10年以上あることなどの条件を満たしている必要がありますが、内縁の妻も支給対象となります。
他にも
・死亡した夫が老齢年金や障害者年金等を受給したことがない
・死亡時の夫の年齢が65歳未満
・夫によって夫婦の生計が維持されていた
・請求できるのは夫の死亡後5年以内
などの条件が挙げられます。
寡婦年金を受給できるのは、あくまで妻だけであり、妻が先に亡くなり夫が残された場合には支給されません。
また、妻が寡婦年金を受給できるのは60歳~65歳までの5年です。
もしそれ以前に夫が亡くなった場合には、死亡一時金を選択し受給することも可能ですが、どちらも選択することはできないので注意が必要です。
ちなみに寡婦年金では、本来夫が受け取るはず予定だった老齢基礎年金の75%が受け取れます。
そのため、寡婦年金が受け取れるのであれば、そちらを選んだ方が受け取れる金額は多いです。
受け取れないケースにおいては死亡一時金を受け取りましょう。
3-4 死亡した翌日から2年以内に手続きをしなければいけない
死亡一時金を受け取る権利には時効があるため、死亡した翌日から2年以内に手続きをしなければいけません。
2年を過ぎてしまうと、受給権利を失効し請求できなくなるので注意が必要です。
但し、失踪宣告を受けた人は、この通りではありません。
失踪宣告とは行方がわからない状態が長期化した場合、残された配偶者や親族の立場を安定させるための制度です。
一定の条件を満たした場合に、行方不明者を死亡したものとして取り扱います。
但し、死亡宣告は「死亡している」という絶対的な証拠が無いにもかかわらず法律上は死んだ者としてみなすため、認められるには、「行方不明となっている者の生死がわからない状態」が「一定期間続いている」この2点を満たす必要があります。
この生死がわからない状態というのは、死亡していると判断するために重要です。
そのため、もし行方不明者が生存していると証明できる場合には死亡しているとみなすことはできません。
また、一定期間行方が分からない状態の一定期間はケースによって異なります。
失踪には「普通失踪」と「特別失踪」があります。
普通失踪では、失踪宣告が認められるまで最後に生存を確認された日から7年間が必要で、失踪期間を満了すると死亡したものとしてみなされるため、死亡日は失踪した日ではなく、そこから1年経過した日となります。
特別失踪は、災害や海難事故など死亡の原因となるような危難に遭遇し、その後1年間生死がわからない状態である場合に失踪宣告が認められるケースです。
この場合、普通失踪と異なるのは、危難が去った時に死亡したとみなされる点です。
そのため、失踪宣告を受けた人は審判の確定日の翌日から数えて2年以内が期限となり、実際の死亡とみなされた日と手続きは関係ありません。
4. まとめ
ここまで、死亡一時金を受け取れる条件や金額について詳しく解説してきました。
死亡一時金は、亡くなった方が第一号被保険者であること、36ヵ月以上の年金納付期間があること、そして国民年金の給付を受けていないことといった条件を満たしていれば、生計を共にしていた家族が受け取れる給付金です。
比較的条件は緩く受給しやすいため、もし該当する場合には期限内に忘れず申請してください。
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この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。
この記事の執筆者:つぐなび編集部
この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
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