空き家の相続税と節税法を解説|住んでいない家の相続税は高くつく?

更新日:2023.12.13

空き家の相続税と節税法を解説|住んでいない家の相続税は高くつく?

「空き家を相続するのは損になる」という情報を耳にしたことはありませんか?実際に家屋を相続する際、家屋が空き家であるとかかってくる相続税は割高になってしまいます。

この記事では、空き家の相続税の計算方法や、使える節税方法、使える控除や特例について紹介しています。

1. 空き家の相続税の計算には控除や特例は使える?

空き家の相続税について理解するための前提知識として、相続税の計算に控除や特例が使えるかどうか検討します。

大幅な税額軽減に繋がる制度は、基礎控除、そしてほかには主に配偶者控除、小規模宅地等の特例です。

制度全般に言えるのは、適用要件が定められていることです。

1-1 基礎控除や配偶者の税額軽減などは使用可能

空き家の相続では、どの場合でも基礎控除は使えます。未成年者控除、障害者控除についても、該当する法定相続人につき、他にこれといった要件を満たすことなく適用できます。

配偶者の税額の軽減(配偶者控除)も、その法定相続分に相当する分まで、必須項目を記入する申告書を提出するだけで適用できます。

1-2 小規模宅地等の特例は住んでいないと適用できない

相続税に使える「小規模宅地等の特例」は、宅地等につきその課税評価額を減額する制度です。適用できた場合、一定の面積まで最大80%の評価減があります。

ただし、小規模宅地等の特例が適用できるのは居住用家屋、もしくは店舗・事務所・賃貸物件等の事業用の建物が建っている土地だけです。

空き家である以上、例外はあるものの、特例による評価減はありません。

【関連記事】小規模宅地等の特例ついてもっと知りたい方におすすめ

>コラム:小規模宅地等の特例で最大8割減税! 対象土地ごとの要件と注意点

2. 空き家にかかる相続税の計算方法

空き家にかかる相続税の基礎になるのは、家屋部分+土地部分で別々に計算した課税評価額です。

上記に他の相続財産を加え、債務等の非課税部分を考慮した結果につき、各相続人の法定相続分に応じた税率を掛けると、控除前の課税額が分かります。

ここでは、課税額の決め手になる空き家の相続税評価額の計算方法を解説します。

2-1 空き家の家屋部分の相続税の計算方法

相続税の計算では、空き家の家屋部分につき以下の式で評価します。

空き家の建物の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0

計算式に出てきた固定資産税評価額は、毎年所有者に送付される納税通知書や、市区町村役場で交付請求できる固定資産評価証明書で確認可能です。

空き地の建物の相続税について具体的な数字で例を挙げると、固定資産税評価額が1,000万円の空き家(建物)の場合、この空き家の相続税評価額も1,000万円ということになります。

この相続税評価額に相続人に対応する税率をかけて、相続税額を算出します。

2-2 空き家の土地の相続税の計算方法

空き家の建っている土地の相続税評価額は「路線価方式」と「倍率方式」のいずれかで算出します。

①路線価方式

国税庁のホームページで路線価が確認できる土地は、以下の式で評価します。

土地の相続税評価額=路線価×各種補正率※×敷地面積

※土地の形状に応じて「奥行価格補正率」等を用います。

②倍率方式

国税庁のホームページで倍率が確認できる土地は、以下の式で評価します。

土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

固定資産税評価額が1,000万円で、郊外にある土地を想定します。この土地の評価倍率は1.1倍であったとします。この場合の相続税評価額は1,100万円となります。

この相続税評価額に相続人に対応する税率をかけて、相続税額を算出します。

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3. 空き家の相続税は人が住んでいる家よりも高額になる

「小規模宅地等の特例」が使えないことで相続税が変わってきます。相続した家屋が空き家の場合と空き家ではない場合にどれほど相続税に差が出るのか、具体的な数字で見ていきます。

3-1 相続した家屋が空き家の場合の相続税

相続した家屋が空き家の場合、小規模宅地等の特例が使えません。そのため、相続税評価額全体が課税対象になります。

例として、空き家の相続税評価額は土地+建物で2,500万円、他に基礎控除額その他の非課税枠を超える相続財産もあり、法定相続人は1人としましょう。

この状況から相続税の税率を確認すると、課税額の概算は2,500万円×15%-50万円=325万円です。

3-2 相続した家屋が空き家ではない場合の相続税

上記の例と条件が同じで、空き家ではなく被相続人と同居していた家であり、今後も居住用建物として利用する場合はどうでしょう。

この場合は小規模宅地等の特例の要件に当てはまる可能性が高く、適用できるのであれば、相続税評価額の20%にあたる500万円が課税対象です。

相続の状況から税率を確認すると、課税額の概算は500万円×10%=50万円で済みます。

同じ持ち家でも、空き家かそうでないかにより、例に挙げたもので実に6倍から7倍程度の差が課税額に出ると分かります。

4. 空き家の税金は相続税だけはない│登録免許税や固定資産税もかかる

空き家を相続の相続では、新しい所有者として管理・売却等を進めるため、登記所で相続や遺産分割を登記原因とする「所有権移転登記」(=相続登記)が必要です。

この時、固定資産税評価額の0.4%に相当する額の登録免許税を納めなくてはなりません。他にも、以下のような税金がかかります。

4-1 所有し続けた場合は固定資産税・都市計画税の課税対象となる

空き家か否かを問わず、土地・家屋を所有すると、固定資産税が毎年かかります。

市街化区域内にある場合は、固定資産税と同じタイミングで都市計画税も課税されます。

空き家等対策の推進に関する特別措置法とは

土地に建物が建っている場合の固定資産税は、200㎡までは6分の1(200㎡超の部分は3分の1)になります。

この特例を「住宅用地の特例」といいます。つまり、家屋を取り壊して更地にすると、翌年の固定資産税が約6倍に及んでしまいます。

以上の税の仕組みから、相続した家屋を長らく住人不在のままにしておくケースが多数あります。

こうして時間が経つと、空き家は次第に荒廃し、やがて地域環境を損ねるとして、多くの自治体が問題視しています。

▼空き家の抱えるリスク(一例)

  • 修繕不足による倒壊
  • 火災の発生(放火含む)
  • 不法侵入者による近隣での犯罪被害
  • 外観の損耗による景観悪化

上記のような懸念を受け、平成27年度に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。

法律の施行以降、管理不足に陥った空き家は「特定空き家」に指定され、その場合は住宅用地の特例がなくなって固定資産税が更地同様(指定前の6倍)になります。

固定資産税が6倍になる、特定空き家として指定される条件

固定資産税が6倍に跳ね上がる特定空き家とは、以下の条件に当てはまるものです。

①そのまま放置すれば倒壊などによって、著しく保安上危険となる恐れのある状態

②そのまま放置すれば衛生上有害となる恐れのある状態

③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家に指定されないようにするには、何としてでも管理維持を続けなくてはなりません。

場合によっては、業者に有料で見回ってもらう必要もあります。管理等のコストを負担できないのなら、早めに売却するしかありません。

4-2 売却した場合は所得税・住民税の課税対象となる

空き家を売却した場合には、下記の方法で計算した譲渡所得につき、所得税と住民税が課税されます。

他に媒介契約した不動産会社に支払う手数料等がかかるため、最終的にいくら手元に残るのか、しっかり計算したいところです。

譲渡所得=譲渡収入ー取得費用+譲渡費用

5. 空き家の相続税の3つの節税方法

空き家を相続する可能性がある、もしくは空き家を相続した場合に、相続税を節税する方法がいくつか存在します。

少しでも相続税を軽くするためにはどのようなことをすればよいのでしょうか?

節税方法① 空き家に住んで小規模宅地等の特例を活用する

相続開始後に出来るのは、相続した人が空き家に住み、小規模宅地等の特例の適用要件を満たせるようにする節税方法です。

老人ホーム入居等によって相続開始前から空き家になっていても、以下の基本的な条件さえ満たせば、特例による評価減は可能です。

・被相続人が生前その家に住んでいたこと

・被相続人に同居の家族がいないこと

・相続人は相続の3年前までに、自己または自己の配偶者、その他親類や特別の関係がある法人の所有する家に住んだことがないこと

・相続人は過去にその家を所有したことがないこと

・相続した宅地を相続税の申告期限まで所有すること

節税方法② 空き家を賃貸に出して小規模宅地等の特例を活用する

生前の相続税対策としては、空き家を賃貸に出し、「特定事業用宅地」として小規模宅地等の特例を適用できるようにする方法が考えられます。

特例では、上記の区分でも、面積200㎡までを上限として、土地の相続評価額を50%減額されます。賃貸経営が黒字化すれば納税資金も調達でき、まさに一石二鳥と言えます。

節税方法③ 空き家を売却して「居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を活用する

固定資産税等の問題も一緒に解決できるのは、相続開始後すぐさま売却し、その譲渡所得に居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除を受ける方法です。

本特例では、以降説明する一定の要件を満たした場合に、多額の控除を受けられます。

6. 居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは?

居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、、建築時期等の一定の条件を満たす空き家につき、その売却時に3,000万円控除ができるようになる制度です。

適用を受けるための条件は比較的厳しくなっていますが、節税効果が高い特例です。

6-1 特例で受けられる控除の内容

特別控除の対象になるのは、相続または遺贈によって取得した、被相続人の居住用財産です。

平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却すれば、その代金(=譲渡所得)について確定申告する時、最高3,000万円まで控除できます。

なお、売却する時の物件の状態は問いません。家屋を残して土地ごと売っても、家屋を取り壊して土地だけ売っても、それぞれ要件さえ満たせば特別控除の適用があります。

6-2 特例の適用条件

居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例を適用できるのは、以下3つの要件を満たしている物件です。

①昭和56年5月31日より以前に建築された

②区分所有建物登記がされている建物ではない

③相続開始直前において、被相続人以外の居住者はいないと

※被相続人自身も居住していなかった場合(=相続開始前から空き家になっていた場合)でも、老人ホーム入居等の特定の事由については、特別控除の適用対象に含まれます。

気を付けたいのは、売却するまでの利用状況も適用要件に含まれる点です。

家屋を取り壊すか否かによって異なるものの、相続開始後に活用できている物件は適用対象から外されます。

家屋+土地で売る場合の利用条件の制限

相続から売却までの間、事業・貸付け・居住のいずれの用途にも供されていない

売却時点で一定の耐震基準を満たしている(満たさない場合はリフォーム要)

▼家屋を取り壊して土地を売る場合の利用条件の制限

相続から売却までの間、事業・貸付け・居住のいずれの用途にも供されていない

取り壊しから売却までの間、建物または構造物の敷地の用に供されていない

上記の基本要件以外にも、過度な税対策を防ぐための下記要件があります。ここで説明した状況に全てに当てはまる場合のみ、特例の適用は可能です。

①適用対象の居住用財産につき、売った人が相続または遺贈により取得したものである

②相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る

③売却代金が1億円以下である

⑤他の特例の適用を受けていない(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例等)。

⑥同じ被相続人から相続又は遺贈により取得した居住用財産につき他に特例の適用を受けたものがない。

⑦親子や夫婦など、特別の関係がある人に対して売ったものでない

6-3 特例の適用手続き

特例を適用させるには以下の区分に対応した書類を作成し、申告書に添えて確定申告することが必要になります。

①相続または遺贈により取得した被相続人の住んでいた家屋、または家屋とその土地を売った場合

(a)譲渡所得の内訳書 土地・建物用(確定申告書付表兼計算明細書)

(b)売った資産の相続が確認できる書類

(c)家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたことが確認できる書類

(d)マンションでないことが確認できる書類

(e)被相続人居住用家屋等確認書

(f)耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し

(g)売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることが確認できるもの

②相続または遺贈により取得した被相続人の住んでいた家屋の全部の取り壊しなどをしら後、更地として被相続人の住んでいた家屋のあった敷地等を売った場合

(a‘)①の(a)(b)(c)(d)(g)の書類

(b‘)被相続人居住用家屋等確認書

7. 空き家の相続・相続税についての悩みは税理士に相談

空き家の相続税には「小規模宅地等の特例」が利用できず、居住中の土地家屋を相続する場合に比べて高額です。

その上、所有するだけで継続的に固定資産税等のコストがかかり、維持管理を怠れば翌年から金額が6倍に及びます。

課税の負担を軽くするため、以下のような「持て余さない・空室の状態を長期化させない」対策を早めに講じましょう。

▼空き家相続の節税のコツ

  • 相続した場合、まずは無理のない範囲で居住を検討する
  • 納税資金対策も兼ね、生前のうちに賃貸経営を検討する
  • 相続した空き家に特に使い道が見出せない場合、早めの売却がお得

故人が残してくれた遺産をよりよい形で相続して受け継いでいくために、そしてご自身にとって一番良い形で税金を正しく納めるためにも、空き家を相続する場合は専門家である税理士にぜひご相談ください。

 

監修者プロフィール
遠藤 秋乃(えんどう あきの)
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

 

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