【記載例あり】相続税申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)の書き方・注意点を解説

更新日:2023.12.04

【記載例あり】相続税申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)の書き方・注意点を解説

被相続人が死亡して相続が発生した際に、基礎控除額以上の相続財産があった場合、相続税が発生します。

相続税が発生すると、相続税の申告及び納付が必要になります。

それでは相続税の申告書はどのように作成すればよいのでしょうか?

相続税の申告書は第1表から第15表まであります。

第1表から順に書いていくのではなく、決められた順序に沿って作成していきます。

こちらの記事では、課税財産についての表である第11表の書き方について、詳しくご説明していきます。

目次

1. 相続税の申告で提出必須の「申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)」とは?

第11表は、相続財産を記載する明細書になります。

第11表には、亡くなった人の所有していた財産の明細について記載します。

国税庁が出している相続税申告書のロードマップでは以下の赤く囲われた位置にあり、まず全体の相続財産がどれくらいあるのか把握するために作成されます。

1-1 第11表「相続税の対象となる財産の明細書」

前述の通り、第11表は相続財産を記載する明細書です。

つまり、相続や遺贈によって取得した財産及び、相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産のうち、相続税のかかるものについての明細を記入します。

記載する内容については、種類・細目・利用区分など・所在場所など・数量・単価・価額といったその財産についての明細と、それに加えて、遺産分割があった場合の項目があります。

遺産分割があった場合の項目については、分割が確定した場合の分割して取得した人、分割して取得した財産の価額を記載します。

相続時精算課税が適用される財産がある場合は、第11表に記載せず、第11の2表に記載します。

第11表を作成後は第15表に手順を進めます。

この第15表では集計を行いますので、集計をしやすい順番で記入していくのが一般的です。

具体的には、土地→家屋・建物→有価証券→現金・預貯金といった順番になります。

この際はじめに記載する土地ですが、第11表の手順の前に、第11・11の2表の付表1〜4にて、小規模宅地等の特例を使うかどうか検討しているので、適用している場合は適用後の減額された金額を記載することになります。

記載例は以下のようになります。

1-2 第11・11の2表の付表1「小規模宅地等、特定計画山林又は特定事業用資産についての課税価格の計算明細書」

第11・11の2表の付表1~4は、小規模宅地等の特例、特定計画山林の特例などについての書類になります。

こちらは該当するもののみ、書類を作成して相続税申告の際に他の書類と一緒に税務署へ提出します。

小規模宅地等の特例などの相続税の特例は、ある一定の条件を満たした際に相続税の支払いが猶予されたり、減額されたりする制度をいいます。

小規模宅地等の特例については、個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用又は居住の用に供されていた宅地などのうち一定のものがある場合に適用されます。

一定のものがある場合、その宅地などのうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価値の計算上、国税庁から示されている区分ごとにそれぞれに対応する割合で減額されます。

2. 相続税の申告書第11表の入手方法

国税庁のホームページの相続税の申告書等の様式一覧にて、申告書をダウンロードすることができます。

申告書には申告する年度に対応した申告書を用意する必要がありますので、申告書の年度には注意が必要です。

古いものを利用した場合は、必要項目が漏れる可能性もありますので、国税庁のホームページにて該当部分をチェックしてください。

3. 相続税の申告書第11表の2表の書き方

被相続人より相続時精算課税に係る贈与によって取得した財産がある場合に、こちらの第11表の2表を用意します。

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

ちなみに、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用されることになります。

つまり、途中で暦年課税に変更することはできなくなります。

申告書についての記載項目ですが、第11表の2表には、贈与を受けた人の氏名や贈与のあった年を記入します。

記載例を挙げてご説明します。

3-1 相続税の申告書第11表の2表の記載例

相続税の申告書第11表の2表の記載例は以下のようになります。

記載順は以下の通りです。

1.①贈与を受けた人の氏名・贈与を受けた年分・贈与の申告書を提出した税務署の名前・贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)をそれぞれ対応する項目に記します。

数回に分かれる場合はそれぞれの贈与ごとに記します。

2.贈与を受けた人ごとの相続時精算課税適用財産の課税価格及び贈与税額の合計額の欄に、贈与を受けた金額を記します。

複数人いる場合は氏名の欄に続けて氏名を記し、各人の課税価格の合計額を記します。

3.相続時精算課税適用財産の明細を記します。該当項目のみ埋めて記載します。

1.にて記した番号を左端の空欄に記載します。財産が複数個に分かれる場合は、記載例のように対応させて記します。

4. 相続税の申告書第11・11の2表の付表1の書き方

相続税の申告書第11・11の2表の付表1は計算明細書になります。

こちらは小規模宅地等の特例についての課税価格の計算を記載する書類です。

相続税の申告書第11・11の2表の付表1は小規模宅地等の特例を利用する場合に提出が必要になります。

4-1 相続税の申告書第11・11の2表の付表1の記載例

相続税の申告書第11・11の2表の付表1の記載例は以下のようになります。

記載の手順は以下のようになります。

1.被相続人の氏名を記します。

2.特例の適用にあたって、小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等を取得した全ての人が特例適用について同意する場合に、宅地等を取得した全ての人の氏名を記入します。

3.選択した小規模宅地等についての詳細を記入します。

小規模宅地等の種類についての番号を記入し、特例の適用を受ける取得者の氏名、事業内容、所在地、取得者の持分に応ずる宅地面積、価額等、必要な項目を全て記入します。

4.下部の該当箇所に記入します。

(記載例では特程居住用宅地等に該当しているので、その部分のみ赤色で囲っています。)

5. 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1の書き方

相続税の申告書大丈夫11・11の2表の付表2の1は計算明細書になります。

こちらは小規模宅地等の特例、特定計画山林の特例又は個人の事業用資産の納税猶予の適用にあたって、課税価格の計算明細を記載します。

5-1 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1の記載例

相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1の記載例は以下の通りになります。

記載順については以下の通りです。

1.被相続人の氏名を記入します。

2.特例の適用にあたっての同意欄に、特例適用の対象となる宅地等を取得した者全員の人の氏名を記入します。

これは、特例適用の対象となる宅地等を取得した者全員が同意していない場合、特例の適用ができないため、同意があることを示すために記入が必要となります。

3.特例の適用を受ける財産の詳細について、特例の適用を受ける財産の明細の種類の番号を○で囲みます。

4.青色で囲われている下部については、」特定計画山林の特例」を適用し、かつ「小規模宅地等の特例」又は「個人の事業用資産の納税猶予」を適用する場合に記入します。
該当しない方は何も記入しないままで大丈夫です。

6. 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の2の書き方

相続税の申告書大丈夫11・11の2表の付表2の2は計算明細書になります。

こちらは小規模宅地等についてほ課税価格の計算明細を記載します。

6-1 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の2の記載例

相続税の申告書第11・11の2表の付表2の2の記載例は以下のようになります。

記載順は以下のようになります。

1.被相続人の氏名を記入します。

2.特例の適用にあたっての同意欄に、特例適用の対象となる宅地等を取得した者全員の人の氏名を記入します。

これは、特例適用の対象となる宅地等を取得した者全員が同意していない場合、特例の適用ができないため、同意があることを示すために記入が必要となります。

3..特例の適用を受ける財産の詳細について、特例の適用を受ける財産の明細の種類の番号を○で囲みます。

4.特定計画山林の特例の対象となる特定計画山林等の調整限度額の計算について、適用を受けたい特例の各部分の必要項目に、必要事項を記載します。

7. 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の3の書き方

相続税の申告書大丈夫11・11の2表の付表2の3は計算明細書になります。こちらは小規模宅地等についてほ課税価格の計算明細を記載します。

7-1 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の3の記載例

相続税の申告書第11・11の2表の付表2の3の記載例は以下のようになります。

1.被相続人の氏名を記入します。

2.選択した特定受贈同族会社株式等についての項目に、必要項目を記入します。

8. 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の4の書き方

相続税の申告書第11・11の2表の付表4は、特例森林経営計画対象山林又は特定受贈森林経営計画対象山林である選択特定計画山林についての課税価格の計算明細についての書類になります。

こちらは特例の対象として特定森林経営計画対象山林である特定計画山林を選択する場合、もしくは特定受贈森林

経営計画対象山林である特定計画山林を選択する場合に必要となってくる書類です。

8-1 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の4の記載例

相続税の申告書第11・11の2表の付表4の記載例は以下のようになります。

記載順は以下のようになります。

1.被相続人の氏名を記入します。

2.特定森林経営計画対象山林である選択特定計画山林の詳細について、こちらを選択した際は記入していきます。

特例の適用を受ける取得者の氏名・森林経営計画の認定年月日・所在場所・立木又は土地などの別・面積・価額・課税価格に参入する価額などの該当項目に記入します。

複数ある場合は複数箇所、必要な項目に記入します。

3.2.と同様に、こちらは特定受贈森林経営計画対象山林である選択特定計画山林を選択した際に記入していきます。

特例の適用を受ける取得者の氏名・森林経営計画の認定年月日・所在場所・立木又は土地などの別・面積・価額・課税価格に参入する価額などの該当項目に記入します。

複数ある場合は複数箇所、必要な項目に記入します。

4.特定(受贈)森林経営計画対象山林である選択特定計画山林の価額の合計額について、上記で記入したA欄+B欄の合計を記入します。

9. 相続税の申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)を作成するときの注意点

相続税の申告書を作成する際には注意すべき点がいくつかあります。

万が一、作成した申告書に誤りがある場合は再度の提出が必要になったり、また納税する金額が誤ってしまった場合は追徴課税が発生してしまったりする場合があるので、しっかり確認してから提出するようにしましょう。

また、申告書には申告する年度に対応した申告書を用意する必要がありますので、国税庁のホームページにてチェックしてください。

そのほかの重要な注意点については以下でご説明します。

注意点1.基礎控除額を計算し、相続税の申告書の提出が必要かどうか判断する

そもそも相続税の申告が必要かどうかを確認する必要があります。

相続税の申告が必要になるのは相続財産の合計が基礎控除額を上回る場合のみです。

基礎控除額は以下の計算式で算出します。

基礎控除額=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

配偶者控除や小規模宅地等の特例などといった特例を適用して相続税を軽減した場合、基礎控除額の範囲に入る額になるといった場合でも、申告は必要です。

なぜなら、相続税の申告をして、特例を適用することによって、結果として相続税が減額されたり支払う必要がなくなったりするためです。

注意点2.機械で読み取るため数字の書き方は書体例に沿って枠内に記載する

申告書の作成に当たっては、黒ボールペンを使用してください。消えるボールペンやシャーペン・鉛筆などの使用は避けてください。

また、申告書「第1表」、「第1表(続)」、「第11・11の2表の付表2の1」、「第11・11の2表の付表2の2」、「第 15表」及び「第15表(続)」は、機械で読み取ります。

そのため、書類を折り曲げないように気をつけてください。

数字の書き方については、機械が読み取れない場合があるので、枠外にはみ出したり、枠から枠に線を続けて書いたり、崩したり、傾けたりして筆記しないようにしましょう。

注意点3.相続人が別々で申告書を作成する場合は、内容が一致しているのか注意する

2人以上の相続人等がいる場合には、申告書の提出意思の有無を明らかにするため、申告書第1表及び第1表(続)には、共同して提出する人のみを記載して提出します。

共同して申告書を提出しない相続人等の人は、別途申告書を作成・提出します。

この際、申告書の内容が一致しているかどうか気をつける必要があります。

同じ被相続人で複数人から相続税の申告書が提出されている場合、税務署による調整、または税務調査が実施される可能性があります。

注意点4.申告の期限が切れた場合はペナルティが発生する

相続税には10か月の申告期限があります。

この期限を過ぎた場合、利息に当たる延滞税がかかってきます。

原則として、法廷納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
つまり1日を過ぎるごとに加算されていきますので、期限を過ぎた場合は早めに申告しましょう。

なお、延滞税は相続税そのもののみを対象としているので、加算税などには課されません。

10. 相続税の申告書は11表以外にも必須の書類があることに注意

ここまで11表について主にご説明しましたが、相続税の申告書にはもちろん他の申告書があります。

最初に挙げたロードマップに従い、申告書を作成していくと間違いないでしょう。

10-1 相続税の申告時に必須の書類

・本人確認書類

(税務署窓口で申告書を提出する相続人等は本人確認書類の添付に代えて、提示でも可能です。)

・相続税申告書

・戸籍謄本

・遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し

・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)

10-2 特例や控除などを適用する際のみに必要な書類

小規模宅地等の特例などを受ける際にはその適用を受けるために上記に加えて、そのほかに必要になる書類があります。

小規模宅地等の特例において、特定居住用宅地等又は特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・貸付業用宅地等に該当する場合、上記のものに加えて状況に対応した別のものが必要になる場合がありますので、注意が必要です。

どのようなものが必要か、例として特定事業用宅地等に該当する場合に必要な書類を挙げます。

・一定の郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等の場合には、総務大臣が交付した証明書

ご自身がお受けになりたい特例について、それぞれ、そのほか何が必要になるかは必ずチェックしてください。

11. 相続税の申告書第11表の書き方に悩んだ場合は税理士に相談

相続税の手続きは申告書の作成について計算や書類を揃えることなど、いろいろな作業が必要となります。

慣れない方が行うには大変な作業です。第11表の作成だけでも行わなければいけないことは山のようにあります。

そして適切な申告を行わなければ、後々の税務調査で払わなくてもよかったはずの税金を払うことになってしまうかもしれません。

故人が残してくれた遺産をよりよい形で相続して受け継いでいくために、そしてご自身にとって一番良い形で税金を正しく納めるためにも、未分割が予想される場合は専門家である税理士にぜひご相談ください。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。
 

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