相続税の税務調査が来た!時期や流れ、調査時の5つの注意点、質問例を確認して税務署の調査に備えよう

更新日:2023.12.11

相続税の税務調査が来た!時期や流れ、調査時の5つの注意点、質問例を確認して税務署の調査に備えよう

相続税の手続きを進めているものの、申告漏れをしてしまい税務署の税務調査が入るのではと不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。

ほかにも、昨年相続税の申告をした後、税務署から調査を行う旨の連絡があり、調査内容や準備について知りたい方もいるでしょう。

そこで、相続税の税務調査の内容、調査が行われる確率やタイミングについて紹介します。

また、税務調査が行われる可能性が高いケースや、税務調査の流れなども合わせて確認しておきましょう。

目次

1. 税務署による相続税の税務調査とは?

相続税の税務調査とは、相続発生の有無や提出された相続税申告書を基に、相続人に直接ヒアリングする等して正確に税申告しているか確認するためのものです。

調査は無作為ではなく、事前に銀行口座の入出金記録や生前の所得等を確認し、この時点で過小申告や無申告の可能性がある場合に税務調査が入ります。

税務調査はほとんどの場合「任意調査」と呼ばれる方法で行われます。

調査対象に対してあらかじめ税務署から連絡が入り、調査日時を調整し、当日も相続人の協力の元で事情を聞く方法です。

対する「強制調査」は、任意調査を頑なに拒んだ場合や極めて高額の申告漏れ、その他によほどの悪意が疑われる場合に行われる方法です。

一般的な相続事例で行われるケースはほとんどありません。

2. 税務署による相続税の税務調査のお尋ねが来やすい時期はいつ?何年後まで?

税務署による相続税の税務調査は、相続税の申告を行った1年後から2年後の間に「お尋ね」と呼ばれる封書が届き、これをきっかけに始まるケースが多数派です。

税務署には毎日多くの相続税申告書が提出されており、毎日審査をするため、申告した直後には税務調査を行えません。

税務調査が始まる季節としては、署内・庁内の人事異動が終わる8月から11月頃に注意したいところです。

3. 税務調査には期限がある(相続税の時効)

相続税の税務調査は、申告後3年目以降も5年目(正確には被相続人の死亡の翌日から5年と10か月後)まで行われる可能性があります。

以降は、国税庁及び税務署にある正しい課税額を確定させるための「賦課権」の除斥期間が経過しているため、調

査されたり修正申告が必要になったりすることはありません。

ただし、遺産隠し等の悪意のあるケースでは、除斥期間が2年延長され、計7年と10か月になることに注意しましょう。

4. 税務署から相続税の税務調査が来る確率・割合

税務調査に来る確率は、令和元年度の申告実績と調査等の状況を比較してみると10%、被相続人10人につき1人と高めです。

さらに、相続は何回も行うものではなく、申告に慣れていないケースが多いことからミスが発生しやすいことも、税務調査が行われやすい理由のひとつです。

税務調査が行われると、およそ8割が申告漏れと判断され、追徴課税を請求されます。

つまり、税務署からの相続税の税務調査が来るのは来るケースは多く、申告ミスをする方も多いため注意が必要です。

5. 相続税の税務調査はどこ・誰に、来るの?

相続税の税務調査は基本的に任意調査が多いため、被相続人が住んでいた自宅へ調査に訪れます。

また、税務調査では相続人に対して連絡が来ます。

任意調査は被相続人が亡くなるまで住んだ自宅で行われることが多く、相続人が全員調査に立ち会う、もしくは全員が難しい場合でも可能な限り相続人が立ち会うことが大切です。

当日は、税務署の担当職員が相続人に対して質問をしたり、土地の権利書や通帳といった書類をチェックしたりします。

他人に見られたくない場所を無理やり捜査されることはないものの、適正申告だと主張したいのなら、できるだけ多くの資料及び資産状況を用意しておくべきでしょう。

なお、自力での対応に不安がある場合は、税理士に立会いを依頼することも可能です。

6. 相続税の税務調査はどこまで調べるの?調べられやすい場所や物品とは?

税務署では、最初にデータベースから情報を確認し、申告ミスが疑われる場合には自宅で税務調査が行われます。

どのような物を調べるのか、部屋の中をすべて見られるのか不安を覚える方も多いでしょう。

そこで、税務調査で調べられる可能性が高い物や場所を紹介します。

6-1 税務署が承諾なしで調査できる情報

税務署の税務調査は、データベースを利用した調査から始まります。

申告書の第1表はスキャナーで読み取って計算ミスを確認し、次に被相続人の遺産を確認するという流れです。

税務署では被相続人の相続税の申告内容や法定調書などをチェックできるほか、被相続人の生前の所得や不動産登記、固定資産税の課税、保険金の状況を確認することが可能です。

ほかにも、被相続人と家族の銀行口座の残高は過去5~10年分の入金履歴を確認し、申告内容に誤りがないかを確認します。

申告をしなければならないにも関わらず申告をしていなかったり、申告内容に誤りがあり納付税額が少なかったりしたときには、相続人に対して税務調査を実施します。 

6-2 被相続者の持ち物で調べられやすいもの

税務署は、被相続人の通帳から出入金履歴をチェックします。

相続した際には、5~10年間の履歴を調査することが一般的です。

税務調査では被相続人の銀行口座の出入金履歴は必ず確認するため、金額が大きい出入金がある場合は、何に使われたものなのか確認しておく必要があるでしょう。

被相続人の銀行口座の履歴については、税務調査が行われた際に質問される可能性が高いです。

さらに、税務署は被相続人の家族についても確認します。

例えば、被相続人から入金があった場合は贈与と判断されたり、相続開始前の3年間の贈与は相続財産とされたりするのです。

また、名義預金がある場合も被相続人の財産だと判断されます。

相続税の申告のなかでも現金や銀行口座の残高についてはミスが多いため、通帳は入念に確認されるでしょう。

現金や銀行口座のほか、有価証券についても注意が必要です。

土地や物件といった不動産と比較して、金融財産は税務調査の対象になりやすいでしょう。

有価証券については、被相続人の家族の行動もチェックされます。

6-3 相続者の持ち物で調べられやすいもの

相続者の持ち物は通帳や不動産、資産や土地の権利書などの資料、認印が調べられることが多いです。

また、申告していない預金やタンス預金がないかを確認するために銀行を調べるほか、絵画や骨董品といった高価なものがあるかどうか、金融機関の粗品やトロフィーなどもチェックされます。

金融機関の粗品は申告していない金融機関があるかを確認するために、トロフィーはゴルフ会員権があるかどうかを確認するために調べられます。

税務調査の連絡が来た!相続税の税務調査はどのような流れで行われるの?

税務調査を行う前に、税務署から電話がかかってきます。

スケジュール調整をして、当日に税務調査官が自宅を調査する流れです。

税務調査が行われることが決まった場合、当日にどのような流れで調査が行われるのかを具体的に紹介します。

STEP① 電話でスケジュール調整を行う

税務調査の連絡が来た場合は、電話でスケジュールを調整します。

また、すぐにスケジュールを調整できない場合には一度電話を切り、かけ直して日程を伝えても問題はありません。

税務調査が行われる前に、相続人と税理士が打ち合わせをすることも大切です。

税務調査は多くの場合10時から開始されるため、9時半には税理士が自宅を訪問してどのように税務調査が行われるのか、どのように対応すれば良いのかをアドバイスしてくれます。

複雑な案件の場合は、税務調査の当日だけではなく数日前に打ち合わせをすることも多いです。

税務調査当日は、調査員が確認しやすい場所や資料を税理士がチェックします。

例えば、銀行印や通帳、保険証券が入っている金庫やタンスの中、骨董品や美術品が置いてある納戸が挙げられます。

隅々まで自宅の中を捜索しなくても良いよう、通帳や印鑑、保険証券といった確認される資料はあらかじめ保管している場所から調査が行われる部屋に移動させておく方法が有効です。

たとえ申告ミスや遺産隠しがなかったとしても、調査員に自宅の中を隅々まで見られたくないと考える方が多いでしょう。

STEP② 税務調査官が訪問して現物確認調査を行う(半日〜2日程度)

税務調査官は10時頃に訪問し、相続人に対しさまざまな質問をします。

被相続人の職歴や趣味、生い立ち、財産のほか、相続人の職業や収入などのヒアリングをします。

基本的に税務調査官は2人で訪れ、1人が質問して1人はメモを取ることが多いです。

また、調査は夕方まで行われますが、昼食は用意しなくても問題ありません。

税務調査官の昼食を用意しても、調査先の自宅で食事を取ることは絶対にないため、相続人の分だけ食事を用意しましょう。

STEP③ 調査資料を精査する 

相続財産の確認が終わった後は、調査資料を精査します。

税務調査が終わった後、税務調査員が相続人に対する質問内容や回答をまとめて署名捺印を求めます。

質疑応答記録書と呼ばれる書類であり、内容をチェックして問題がないのであれば署名捺印すると、これをもって調査は一旦終了となります。

STEP④ 調査の結果を報告される

調査員のなかには、相続財産以外の所有財産書類を渡し、記入して後日提出するように求める場合があります。

相続財産以外の所有財産書類は任意で提出するものですが、スムーズに調査を終了させるために提出した方が良いでしょう。

相続人は自分名義の財産が多いと疑われるのではと不安を抱き、財産を少なく記入することがあります。

しかし、相続財産以外の所有財産書類に記入しなかったものは相続人が把握していないということであり、被相続人の財産だという証明になってしまいます。

そのため、相続人名義の財産は必ず記入しましょう。必要書類を手渡し、15時~17時には終了するでしょう。

STEP⑤ (問題があった場合は)修正申告を行う

相続税を申告したもののミスがあった場合には、後日税務署に対し修正申告を行います。

足りなかった税額は納付期限の翌日から計算して延滞税を支払わなければなりません。

7. 税務調査官が相続税の税務調査に来たときに注意したい5つのこと

税務調査が入った際には、税務調査官から質問をされます。しかし、不用意に話すと疑惑を持たれることがあるため注意しなければなりません。

そこで、税務調査官とのやり取りの内容やポイント、注意点を紹介します。

注意点① 申告書の内容や、財産の再確認をしておく

税務調査官が来ると確定した時は、申告書のミスや申告漏れがないかどうか再確認することが大切です。

財産評価や相続財産の申告漏れ、税額計算などは何度か見直しておくと安心でしょう。

また、相続財産の内容や、金額を確認できる資料も用意します。

銀行口座のお金については残高証明書、不動産の登記簿謄本、固定資産税評価証明書などを用意します。

相続税の申告ミスは申告時に被相続人の財産を確認できていなかったために起こるケースが多いです。

そもそも、被相続人の財産を確認しておけば、相続税の税務調査も避けられるでしょう。

しかし、被相続人の財産を生前や亡くなった後に全て調べるのは困難な場合もあります。

生前に財産目録を作成するか、家族が作成を促す方法が有効です。

注意点② すでにわかっていることもあえて質問をすることがある

税務調査官は、相続人や被相続人の情報を確認しています。

申告漏れがある部分も把握したうえで、確認できていないフリをしながら質問をすることが多いです。

質問に嘘の回答をすると、悪意があると判断されるため注意しましょう。

注意点③ 余計なことは話さない

税務調査では、被相続人のことはもちろん、相続人に対しても確認や質問が行われます。

質問の仕方は穏やかで、時として世間話を振られたような印象も受けますが、虚偽の回答や事実を伏せる素振りはしっかり把握されているため、注意が必要です。

質問されたことにだけ回答することや嘘をつかないこと、調査に協力する姿勢を見せることが大切です。

分からないことは、税理士に聞いてから回答することもポイントです。

税務調査員は、資料や申告内容、相続税などの確認のために税務調査を行い、申告ミスがあればペナルティを科し

ますが、心証もある程度影響します。

そのため、余計なことは話さず、敵対心を持たずに接することが大切です。

注意点④ よく聞かれる質問への準備をしておく

税務調査では、調査の際の対応方法や質問への回答で調査後の流れが変わるケースも珍しくありません。

税務調査官は他の税務調査も行う必要があるため忙しく、全項目を確認するわけではないのです。

税務調査で質問される内容に対し、どのように回答するか準備をしておくことが大切です。

よく聞かれる質問への回答を準備していても、必ず準備した通りの質問がされるわけではありませんが、心の準備ができるため落ち着いて税務調査に臨めるでしょう。

注意点⑤ 税理士に立ち会いを依頼する

準備不足による不用意な回答や資料提出漏れを防ぐため、事前に税理士に連絡をして、立ち会いを依頼するのがベターです。

申告書の作成・提出を税理士に依頼せずに税務署の税務調査のみ依頼しても、多くの場合快く対応してくれます。

相談では、改めて相続税の計算をやってもらった上で、過少申告や無申告が指摘されるのか、今からでも修正申告できるのか等の回答が得られます。

なお、調査当日に税理士に立ち会ってもらう際は、上手く回答出来ない部分をフォローしてもらうといったイメージです。

8. 税務調査官が相続税の税務調査に来たときにする質問例

税務調査官が質問をする内容は、ある程度決まっています。

質問されることが多い内容や、なぜ質問をするのか、理由もチェックしておきましょう。

8-1 被相続人や、相続人の生い立ち

被相続人や相続人の生い立ちは、どの程度の収入があったのか、いくらの年収が何年あったのかなどを確認する目的で聞かれます。

所得税の申告内容から税務調査官が把握できていることもありますが、数十年前の記録は税務調査官が確認できないため、相続人に確認する必要があるのです。

また、住んでいる場所に金銭がないかどうかや、最後まで働いていた職場や退職時の状況についても質問されます。

転勤があると証券口座、銀行口座を新しく作ることが多いため、どこに住んでいたのか、引っ越しをしているのかなどを質問されます。

さらに、退職金は数千万円にのぼるため、退職金が何に使用されたか、いつ頃支給されたかをチェックする目的で仕事に関する質問をされることが多いです。

8-2 被相続人の趣味 

趣味は、ゴルフや骨董品収集、ギャンブルなど一人ひとり異なりますが、ゴルフが趣味だった場合はゴルフ会員権の計上ミスや、骨董品を財産とした場合の申告漏れかないかどうかを確認する目的で質問されます。

また、骨董品についてはいくらで購入したのかについても質問されることが多いです。

ギャンブルが趣味だった場合には収入に対して貯金が少ないことがあるため、現金が少ない場合には質問されることがあるでしょう。

さらに、交友関係についても質問されることがあります。

交友関係が広い場合は生前に交際費を使っているケースがあり、財産が少なかったとしても不自然ではないためです。

8-3 被相続人が亡くなる直前の状況

被相続人が亡くなる直前、いつ頃まで会話ができたか、認知症の症状がなかったか、入院していた場合は退院後の財産を誰が管理していたのかを質問されます。

いつ頃まで会話ができたかどうかについては、亡くなる前に相続人以外に生前贈与をしていた際に、会話ができない状態だったのであれば贈与が成立していない可能性が高いため、贈与財産を相続財産に含めなければなりません。

また、認知症だった場合は財産の処分ができないことから、認知症か否かから、生命保険の契約不動産の購入などができたかを判断します。

そのため、退院した後に自分で財産を管理できていたかどうかを確認されます。 

8-4 日記や家計簿の確認

日記、家計簿、スケジュール帳には、被相続人の銀行口座の出入金に関する情報が記載されていることがあり、税務調査で確認されることが多いです。

例えば、子供が名義になってる銀行口座から現金が引き出された日に、被相続人の手帳や日記から当日銀行に行った記録があった場合、現金を引き出したのは名義になっている子供ではなく被相続人だったと判断できます。

子供名義の銀行口座でも被相続人が管理していた場合は、銀行口座の預金は被相続人の財産だと判断される可能性が高いです。

8-5 印鑑の印影の確認

税務調査が実施された際に住宅の中にある印鑑を全て出すように求められ、印鑑を税務調査官に手渡すと、「印影を頂戴します」と言って印影を取ります。朱肉を使用せず、印影を取ることが特徴です。

朱肉を使用せずに印影が取れた際には、数日以内に印鑑が使用されたのだと判断できます。

税務調査は、相続が発生後2年程度経過してから実施されます。故人の印鑑は、亡くなった後に使用することはないものです。

しかし、亡くなった方の実印が使用されたということは、契約書をバックデートしたのはと疑念を持たれます。

バックデートとは、もともと契約書があったかのように見せかける方法であり実際には日付を偽装して契約書を作るという方法です。

もともと贈与の契約をしていたと見せるための偽装方法であり、税務調査が行われる前に契約書を作る(偽装する)ケースがあるため、印影で確認が行われます。

8-6 貸し金庫の確認

相続人や被相続人が貸金庫を契約しているのであれば、銀行まで税務調査官と一緒に行って貸金庫の中をチェックします。

貸金庫の開扉記録は税務調査官が確認できるため、税務調査が行われる前に開扉しているのであれば、なぜ開扉したのかを質問されるでしょう。

9. 相続税の税務調査が来やすい人の11の特徴

税務署の税務調査が入りやすい傾向があるのは、高額な資産がある方や骨董品のコレクションがある方などが挙げられます。

ほかにも、税務調査が入りやすい方にはいくつかの特徴があるため、それぞれ確認を行い、税務調査が入らないように対策をしましょう。

9-1 相続額が高額な場合

相続額が大きく、目安として遺産総額が1億円以上に及ぶケースでは、税務調査が行われる確率が高くなります。
財産が多いと申告漏れやミスが起きやすくなります。

例えば、計算間違いだけではなく、有価証券や不動産、骨董品の評価間違いや、財産の見逃し、財産を隠蔽するといった可能性があります。

9-2 高収入にも関わらず申告されている相続財産が少ない場合

故人が確定申告や源泉徴収額から見て高所得者だった場合、相続をする際に相続財産として申告された金額が低いと「収入の余剰分=相続財産が相応にあるはずなのになぜ申告額が低いのか」と疑念を持たれます。

財産の隠ぺいは税務調査の修正項目のため、税務調査が実施される可能性が高いでしょう。

9-3 社会的な地位が高い場合や高収入な職業の場合

被相続人が弁護士や医師、大手企業の重役や社長など社会的地位が高い方や、収入が高い職業だった際には、税務署で厳しく確認されます。

必然的に高所得者で相続財産が多額に及ぶと考えられる上に、事業者であれば、自社株式や事業用資産について申告ミス・申告漏れが起きやすくなるからです。

9-4 相続人に多額の預金残高がある場合(名義預金)

被相続人の家族の銀行口座だった場合でも、収入に対して残高が多いと税務調査が来る可能性が高いです。

理由は、相続税対策で生前のうちに相続人名義の口座を作り、実質的な生前贈与をした可能性があるためです。

このような資産管理の方法を、一般に「名義預金」と言います。

贈与した際に贈与税が納められていれば調査されても良いですが、申告ミスがあると追徴課税の対象になるため注意が必要です。

9-5 海外資産が多い場合

相続した財産のうち、海外資産が多いと税務調査が来やすいでしょう。

外国債や海外の金融商品、投資をするなど資産運用を行う方も多いため、税務署では海外資産をチェックしています。

1回で100万円以上の入金や送金をしていると、金融機関から税務署へ情報が送信されるため、申告内容と資産の金額が合っていないと税務調査が来ます。

9-6 美術品や骨董品のコレクションがある場合

美術品や骨董品はお金に変えられるため、相続財産として判断されます。

美術品や骨董品は時価で判断され、購入した際には5万円でも時価評価で50万円であれば、50万円の財産になるのです。

価値が低下するケースもあるため、専門家が鑑定をする必要があります。

美術品や骨董品は、基礎控除内であれば相続税を支払う必要はありません。

しかし、基礎控除を超えると脱税疑惑を持たれることもあります。

価値がある美術品や骨董品のコレクションがある場合には、鑑定をしておきましょう。

9-7 葬儀後から相続税の申告までに多額のお金の引き出しがある場合

故人の葬儀に必要な費用は、相続財産から支払っても良いため、葬儀費用を引いた金額で相続財産を算出することは可能です。

しかし、葬儀が終わって相続税の申告・納付をするまでの期間に多額のお金の引き出しをしていると、税務調査で修正の指摘が入ることがあります。

例えば、葬儀を終えてから相続税を申告するまでのお金の引き出しのなかで、何に使用したのかを説明できないと、相続財産に加算したうえで申告し直すように指摘されることがあります。

9-8 休眠口座や、過去に購入した不動産がある場合

被相続人の預金口座が、長らく入出金取引のない「休眠口座」だった場合でも、残高があれば相続税申告の対象です。

税務署は被相続人の不動産や銀行口座の残高など出入金や財産を全て把握しているため、申告された内容と実際の内容が異なる場合には財産の隠蔽や申告ミスが疑われるでしょう。

9-9 税理士に依頼していない場合

税理士に相談せずに自分たちで申告をした場合も、税務調査が来ることが多いです。

相続の申告は相続人が自分で行うことは可能ですが、税務の専門家でない以上、大なり小なり計算ミス等による申告漏れが発生しやすいと考えられるためです。

特に、地形や場所ごとに異なる土地の評価額は判断が困難です。

そのため、相続人自ら申告をすると税務署から計算ミスや判断ミスを疑われる確率も高くなります。税理士が申告書を作成すると署名が入り、信用度が高くなるため、税務調査が入る可能性が低くなるのです。

9-10 申告書に不備がある場合

相続財産の金額申告書の記入ミスや計算ミス、必要な書類がない場合は税務調査が入ります。

税務署は、被相続人の不動産や預貯金など財産の内容を把握しているため、記入ミスや計算ミスがあると「故意に財産を隠そうとしているのでは」と疑われるでしょう。

また、必要な書類が足りていないと、当然指摘されます。

9-11 無申告(申告をしていない)の場合

相続税を計算して、相続税が発生しないため申告をしない、無申告であった場合でも、税務署調査が行われることはあります。

課税額ゼロでも「小規模宅地等の特例」等と言った申告書の提出が必須となる税制があるところ、誤解して申告書を出さなかったような場合です。

さらに、相続財産そのものを見落としており、見落としていた分を合わせると相続税が発生することもあります。

申告の必要がないと判断していても、実際には申告が必要であり、税務調査が行われることがあります。

10. 税務調査で相続税の誤りを指摘された場合の対応

税務署の税務調査で申告ミスや申告漏れを指摘された場合には、すぐに対応しなければ高額な追徴課税を支払うことになります。

税務調査で指摘された際の対処方法を確認しておきましょう。

10-1 修正申告・期限後申告を行う

相続税を納付したものの足りていない場合には、税務署に対して修正申告を行わなければなりません。

申告期限を過ぎて修正申告書を提出する行為は、期限後申告と呼ばれます。

納付していなかった分に関しては、本来納付しなければいけない期限の翌日から計算し、延滞税がかかるため注意が必要です。

計算間違いがある場合には、可能な限り早めに修正申告をしましょう。

相続税の申告後、税務調査が行われる確率は5件に1件であり、うち8割で申告ミスを指摘されています。

なお、相続税は、相続が発生した日から10か月以内に申告しなければなりません。

10-2 追徴課税を仕払う

修正申告を行って相続税を追加で支払う場合は、延滞税が加算されます。

延滞税は「追加で支払う税額×延滞税の税率×日数÷365」で算出します。

つまり、延滞税は日々加算され、増え続けることになります。

これに加え、過少申告加算税または無申告加算税と呼ばれる、課税額に対する割合で一定の「追徴課税」も支払わなければなりません。

過剰申告加算税は「追加で支払う税額×過少申告加算税の税率」で算出します。

ただし、税務調査で指摘される前に修正申告をした際には免除されることが特徴です。

11. 相続税の税務調査されないためにしておきたい3つのこと

税務調査が来た際には慌てずに対応することが大切ですが、税務調査が入らないように対策をすることが大切です。

被相続人が生前に行える対策や、相続人が行うべき対策を紹介します。

11-1 相続・贈与に関する内容はすべて残しておく

被相続人と相続人間で相続に関するやり取りがある場合には、口約束ではなく内容を全て記録することが重要です。

遺産分割の際に、誰が何をもらうか、いくらもらうかなど、相続人ごとに相続税額が異なります。

さらに、相続税対策で生前贈与を行い、子供や配偶者に財産を分けて相続財産を少なくするといったケースもあります。

生前贈与をした記録を全て残しておきましょう。

例えば、手渡しで現金を渡すと贈与をした証明ができません。

多額のお金が引き出されていても、贈与であったことが証明できないと税務署に不信感を持たれ、税務調査が入る確率が高くなります。

贈与の場合は、贈与契約書を作成する、入出金明細で確認できるようにしておくなど証拠を残しましょう。

証拠を残しておけば税務署から疑われる確率が低くなるうえに、税務調査が行われても納税額が正しいことを証明できます。

11-2 亡くなる前に財産の確認をしておく

相続税の申告ミスは、基本的に被相続人の財産を相続人が把握できていないことが原因で起こります。

配偶者も把握していない銀行口座や骨董品がある、知人と金銭の貸し借りがある、被相続人名義で家賃収入があるなど、相続人が確認できていない財産を持っているケースは少なくありません。

相続財産を確認するのは非常に難しく、見落としや確認ミスが起こる確率も高くなるでしょう。

生前にどのような財産を持っているのか、銀行口座はいくつあるのかなど、相続人が財産を確認しておけば申告ミスを予防できます。

11-3 申告漏れや計算ミスがないように税理士に依頼する

相続税を相続人が申告することは可能ですが、税理士に依頼すると税務調査が入る確率が低くなります。

税理士が計算ミスや申告ミスをする可能性は極めて低いためです。

しかし、税理士には専門分野があり、相続税の申告をした経験が少ない税理士も存在します。

そのため、相続税の申告経験が多かったり、相続税を専門分野にしていたりする税理士に依頼しましょう。

12. 相続税の税務調査が来た場合は税理士に相談

税務調査が来る確率を下げるためには、税理士に申告をしてもらったり相続財産を把握したり、計画的に申告書を作成したりすることが大切です。

しかし、どれほど対策をしていても税務調査が入ることはあります。

相続税を申告すれば終了ではなく、税務調査が入った場合に備えて準備をすることも重要です。

相続税の申告や計算、税務調査が来ることになった場合には、税理士に相談してスムーズかつ正しく対応しましょう。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

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