この記事では相続税申告を税理士に依頼した場合の費用相場やメリット、税理士を選ぶ時のポイントを紹介します。
税理士に相続税申告を依頼した場合、相続相談内容に応じて報酬が発生します。税理士報酬には基本報酬と追加報酬があり、その合計を税理士に相続税申告を頼んだ場合の報酬とする事務所がほとんどです。
目次
相続税申告の税理士費用の相場は?
税理士報酬が一律の金額であると認識している方がいるかと思いますが、税理士報酬既定の改定により税理士報酬の自由化が進みました。相続税申告を税理士に依頼する際の基本的な知識と相場についてここでは説明をします。
以前の認識を持っている方は、税理士報酬規程の改定が行われたことを念頭に税理士へ相談を行うことが必要です。
税理士へ払う費用の種類は?
税理士報酬には基本報酬と追加報酬の2種類があります。
ここからは、基本報酬と追加報酬の内容を詳しく解説するとともに、それぞれの相場をご紹介します。
下記の内容を理解し、税理士に依頼することで相続税申告をスムーズに行うことができます。
基本報酬の相場は?
相続税申告を税理士に依頼する場合、税理士報酬の基本報酬は財産額の〇%という形で定義されます。
事務所によって違いはあるものの、税理士報酬の基本報酬の割合に関しては、財産額の0.8〜1.0%とされています。
一般的に税理士報酬の基本報酬は以下の内容が含まれている場合がほとんどです。
①財産評価及び財産目録の作成
②節税を加味した遺産分割の提案
③遺産分割協議書の作成
④相続税申告書の作成、提出
相続税申告の基本報酬の一般的な相場を以下のようにまとめました。
相続財産の総額 |
相続税申告の基本報酬 |
---|---|
5000万円以下 |
25万円~50万円 |
5000万円~7000万円 |
25万円~70万円 |
7000万円~1億円 |
35万円〜100万円 |
1億円~3億円 |
50万円〜300万円 |
3億円~5億円 |
150万円〜500万円 |
しかし、これらの相続税報酬内容はあくまで一般的な相場のため、相続税申告の基本報酬と相続財産の総額は依頼する税理士事務所や税理士によって異なります。
また、税理士事務所によっては、「不動産のみの相続財産なら申告の報酬金はいくら」という固定のパッケージを準備している税理士事務所もあります。
これらのことから税理士事務所を選ぶ際は、相続税申告の内容と相続する財産総額を把握し、税理士事務所を調査することで、自身にあった税理士を選びましょう。
いずれも、税理士事務所ごとに詳細を設定しているため、一度税理士事務所の公式ホームページなどを活用して、具体的な税理士報酬を確認することをお勧めします。
追加報酬が発生するケースとは?
相続税申告の加算報酬とは、イレギュラーな条件や個別の条件があった場合、先ほど解説した基本報酬に加えて支払わなければならない追加料金のことをいいます。
また、相続税申告の加算報酬の有無は依頼する税理士や事務所によって異なります。
ここからは、実際に相続税申告の加算報酬が発生する場合を7つご紹介したいと思います。
■相続税申告の加算報酬①:相続人が複数の場合
相続税申告の加算報酬が発生する1つ目は、遺産を相続する相続人が複数いる場合です。
この場合は、相続人の数が一人増えるごとに、基本報酬の10〜15%を報酬として加算するということが多いです。
例えば、100万円の基本報酬で、相続人が2人いる場合は、加算報酬として10〜15万円を加算報酬として税理士に支払う必要があります。
また、税理士費用は誰が負担してもかまわないため、相続する代表者が全額負担することもできますし、相続人で等分することも可能です。
■相続税申告の加算報酬②:相続財産に特殊な土地が含まれている場合
相続税申告の加算報酬が発生する2つ目は、相続財産に特殊な土地が含まれている場合です。
特殊な土地を相続する場合は、適切な土地評価ができないため、不動産鑑定士に依頼する必要があります。
依頼費の相場は、約20万円〜となっています。
また、鑑定料は相続する土地によって異なるため、別途の見積書を作る必要があります。
相続財産に特殊な相続土地が含まれている場合は、税理士に相談することでスムーズに相続税申告を行いましょう。
■相続税申告の加算報酬③:相続財産に非上場株式が含まれている場合
相続税申告の加算報酬が発生する3つ目は、相続財産に非上場株式が含まれている場合です。
上場していない企業の株式を相続する場合は、株式の正当な評価を決めるために時間と調査が必要になります。
この場合の一般的な相場は、会社の規模や保有する資産によって異なりますが、一株あたり15万円程度と考えられます。
これらのことから、相続財産に非上場株式が含まれていて困っている方は、税理士に相談することをおすすめします。
■相続税申告の加算報酬④:税理士法第33条の2の書面添付
相続税申告の加算報酬が発生する4つ目は、税理士法第33条の2の書面添付を行う場合です。
税理士法第33条の2の書面添付とは、根拠資料と相続税を算出した経緯を記載した書面を相続税申告書に添付することをさします。
これを行うことで税務調査に選ばれる確率をさげることができます。
税理士法第33条の2の書面添付は、基本報酬の20%程度が一般的な相場になります。
また、税理士法第33条の2の書面添付を行っている税理士事務所は少ないため、慎重に事務所選びをする必要があります。
■相続税申告の加算報酬⑤:農地等の納税猶予の特例の適用
相続税申告の加算報酬が発生する5つ目は、農地等の納税猶予の特例を適用する場合です。
農地等の納税猶予の特例とは、農地などの土地を相続する場合に農地にかかる相続税や贈与税に対して猶予を与えるという制度です。
しかし、この制度は相続人が農業を行う場合もしくは、農業を行う人に農地を貸す場合にしか利用することはできません。
農地等の納税猶予の特例を適用する場合の相場は、基本報酬の20%前後となっています。
また、農地等の納税猶予の特例を行っている税理士事務所が少ないため、事前に事務所の内容を確認することをおすすめします。
■相続税申告の加算報酬⑥:相続税の申告期限まで3ヵ月未満の場合
相続税申告の加算報酬が発生する6つ目は、相続税の申告期限まで3か月未満の場合です。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月間となっています。
申告期限まで3ヶ月未満で税理士に依頼する場合は、急いで手続きを行わなければならないため加算報酬が発生します。
また、このケースの一般的な相場は、基本報酬の20〜50%となっています。
これらのことから、加算報酬を支払いたくない方は早めに手続きすることをおすすめします。
■相続税申告の加算報酬⑦ 遺言書作成をサポートする場合
相続税申告の加算報酬が発生する7つ目は、遺言書の作成をサポートする場合です。
遺言書を作成することで、肉親間での相続税トラブルを未然に防ぐことが期待できます。
税理士に遺言書作成のサポートを依頼した場合の一般的な相場は、10万円〜となっています。
また税理士に遺言書作成のサポートを依頼する事はメジャーではないため、慎重に事務所選びをする必要があります。
相談は無料の事務所もある
税理士に相続税申告の相談をする場合、相談料がかかります。相場として1時間1万円程度の価格設定をしている税理士事務所がほとんどです。
しかし、税理士事務所によっては初回相談を無料で行っている場合があります。初回相談を無料で行っている税理士事務所に相談した場合、税理士報酬や内容など概要をよく理解した上で、税理士に相続税申告の依頼ができます。
つぐなび掲載の多くの税理士事務所は初回相談を無料で行っているため、一度お近くの税理士事務所に相談することをお勧めします。
相続を税理士に依頼するべきケースとは?
相続に関する手続きや税務申告には、多くの場合、専門的な知識や経験が必要となるため、税理士に依頼することが望ましいです。
税理士事務所に相談することで、税理士から相続財産の評価や相続税申告書の作成、相続財産の分割方法のアドバイスを得ることができます。
また、相続に関する手続きや申告書類の作成には、時間と手間がかかる場合があるため、税理士に依頼することでスムーズかつ正確に相続手続きを進めることができます。
ただし、相続財産や相続人の状況によっては、税理士以外に弁護士や司法書士など他の専門家に依頼することが適切な場合もあります。
税理士に依頼するほうが良い場合とは
相続において基礎控除額以上の相続財産がある場合、相続税が課せられます。
基礎控除額は年々改定されますが、相続によって異なり、相続人の関係や相続財産の評価額によっては基礎控除額以上の相続財産が生じることがあります。
基礎控除額以上の相続財産がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。税理士事務所に相談することで、税理士から相続財産の評価や相続税申告書の作成、相続財産の分割方法のアドバイスを得ることができます。
また、税理士は専門的な知識を持っているため、相続税の支払いを最小限に抑える方法についてもアドバイスしてくれます。
基礎控除額以上になるかどうかわからない場合でも、税理士に相談することをおすすめします。
税理士は相続財産の評価や相続税額の算出方法に詳しく、適切なアドバイスをしてくれます。税理士に相談することで、相続税に関するリスクを回避することができます
税理士に依頼するメリットとは
相続税申告は、専門性や難易度が高く、また重要な手続きの1つです。相続税申告を税理士に任せることで、相続人自身が行う場合と比較して、申告書の作成や税務調査対策などを適切に進めることができます。
また、専門的な知識を持った税理士による的確なアドバイスを受けることができるので、自分でやる場合と比較して、相続税を多く払うリスクを回避することもできます。
税理士は相続財産の評価や、特例適用で節税の効果を見込めることなど、相続税に関する専門知識を持っています。そのため、相続人自身が気づかなかった節税の方法を教えてもらえる可能性もあります。
さらに、税理士は、土地評価や不動産評価など、評価額に関する専門的な知識を持っているため、公平な評価額を算定することができ、適切な相続財産の分割方法を提案してもらえます。
また、二次相続を念頭にしたアドバイスも受けることができるため、相続後のトラブルや税務上の問題を回避することができます。
以上の理由から、相続税申告を税理士に依頼することは、相続人にとって多くのメリットがあると言えます。
相続に強い税理士を見極めるポイント
相続に強い税理士は、相続に関する税金や法律に精通しており、相続手続きを円滑に進めるために必要な知識や経験を持っています。
税理士は相続税の申告や評価、相続財産の調査や分割、遺言書の作成などの業務に精通しており、相続税や贈与税の節税の方法や、税務調査に対する対応策なども提供することができます。
相続に関する問題や疑問を持つ方は、税理士事務所に相談することで、相続に強い税理士からサポートを受けることができます。
ポイント | 捕捉 |
---|---|
専門領域として相続があるか | すべての税理士が相続に精通しているわけではないので、見極めが重要 |
相続の解決実績があるか | トラブルにつながりそうな相続などにも経験があるか |
税務調査率が低いか | 申告書類に不備があると課税となることがあるので、税務調査が入らないか |
費用は明確か | 後に高額な費用が発生することがないような料金体系になっていないか |
専門領域として相続があるか
相続に強い税理士を選ぶ際には、専門領域として相続があるかどうかが重要です。
税理士は、様々な分野に精通していることが多いため、相続に関する知識や経験が豊富でなければ、適切なアドバイスやサポートを受けることができません。
相続に関する税金や法律は、複雑かつ多岐にわたるため、相続に強い税理士は、相続税や贈与税に関する法律や規制、相続財産の調査や分割、遺言書の作成や公正証書遺言の取り扱いなどに精通していることが求められます。
相続に関する問題や疑問を持つ場合、税理士事務所の相続に強い税理士に相談することで、相続手続きをスムーズに進めることができます。
相続に強い税理士を選ぶ際には、専門領域として相続があるかどうかを重視することが大切です。
相続の解決実績があるか
相続に強い税理士を選ぶ際には、相続の解決実績があるかどうかが重要です。
相続には遺産分割協議や遺留分減殺、遺産分割裁判など、問題解決に向けた様々なトラブルが発生することがあります。
解決実績があるということは、遺産分割協議の交渉や調停、遺産分割裁判など、様々なトラブルに対処する経験がある税理士が在籍していることを示しています。
また、実績がある税理士事務所は、顧客から信頼を得ている可能性が高く、安心して税理士に相続手続きを任せることができます。
税理士事務所の相続解決実績を確認する方法としては、税理士事務所の公式ホームページやブログ、実績紹介ページなどを確認することが挙げられます。
実際に相続の手続きを依頼した企業・個人が書き込んで切る税理士の口コミも参考になります。
また、直接税理士に相談してみて、具体的な手続き方法や解決方法についてのアドバイスをもらうことも、解決実績を知る上で役立ちます。
税務調査に入られる率が低いか・書面添付制度を利用しているか
相続に強い税理士を選ぶ際には、税務調査に入られる率が低いか、または書面添付制度を利用しているかも重要です。
税務調査に入られると、その申告書類や帳簿の正確性が問われるため、相続に関する申告書類や帳簿に不備があると、税金の不足や過剰な課税となる可能性があります。
税務調査に入られる率が低い税理士は、申告書類や帳簿の作成において正確さや適法性を徹底しており、相続に関する税務申告書類や帳簿の作成においても、高い信頼性があります。
また、書面添付制度を利用している税理士も、相続においては適切な申告書類や帳簿を作成する上で重要なポイントです。
書面添付制度とは、税務署に提出する申告書類や帳簿に必要な書類や説明書類を添付することで税務署が必要とする情報を明確にする制度で、税務署からの追加の質問や調査を防ぐことができ税務申告書類や帳簿の正確性を高めることができます。
見積もり、費用は明確か
相続に強い税理士を選ぶ際には、見積もりや費用についても注意が必要です。
相続に必要な税理士報酬や手数料について明確に提示されていない場合、後に高額な費用が発生することもあります。
そのため、初回の相談や見積もりの際に、必要な手続きや申告書類の内容、それに伴う費用や手数料について明確に説明してもらうことが大切です。相続に強い税理士を選ぶ際には、料金体系についても確認しておくことが望ましいです。
実際にかかる費用や手数料が見積もりよりも高額になる可能性があるため、よく確認する必要があります。
相続で税理士を選ぶ際には、見積もりや費用について十分に確認し、必要な手続きや申告書類の内容、それに伴う費用や手数料について明確に把握することが大切です。
これにより、予期せぬ費用の発生や相続トラブルを未然に防ぐことができます。
この記事の執筆者:つぐなび編集部
この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
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