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公正証書遺言とは–作成方法や費用、メリット・デメリットを解説

更新日:2020.09.09

公正証書遺言とは–作成方法や費用、メリット・デメリットを解説

「公正証書遺言」のメリットは、紛失や改ざんのリスクを避け、遺言内容の実現をより確実にできる点です。信頼性の高さに対応して作成にやや手間がかかりますが、自力でもそれほど難しくありません。ただし、遺言内容そのものの決め方や作成した書面の変更・撤回・照会については、いくつか専門家のフォローを得たほうが良いポイントもあります。

ここでは、公正証書遺言の基本的な作成の流れを踏まえ、その費用と遺言の目的を果たすためのポイントについて紹介します。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、遺言したい内容を元に公証役場に文面作成を依頼し、完成した遺言書とその作成記録を同役場で保管してもらう遺言形式です。

そもそも「公正証書」は、遺言に限らず一定の事項を公文書化したものを指します。公正証書の最大の特徴は、公権力が「一定の時期に特定の人物が作成した正しい文書」(=真正)だと証明することで、個人間の決め事でも争う余地なく「裁判上の証拠」や「何らかの請求手段」になる点です。

なお、公正証書の作成が許されているのは、法務大臣に任命された「公証人」のみです。公証人は、裁判官・司法書士など「法律の専門職」として十分なキャリアを積んだ人物から選ばれています。

公正証書遺言の作成の流れ

実際に公正証書遺言を作成する際は、下記①~⑥の順に手続きを進めます。最低でも打ち合わせ(③)と作成当日(⑤)の計2回は公証役場を訪ねることになるため、スケジュールを確認しておきましょう。

①遺言内容を決める

まずは遺言内容を検討し、その内容をまとめたメモを任意の方法で作成します。相続財産について漏れなく死後の処分を指定できるよう、メモとは別に「財産目録」もできるだけ作成しましょう。

②公証役場に連絡(来所予約)

遺言内容が決まったら、最寄りの公証役場(「日本公証人連合会」サイト内ページにて検索可)に問い合わせて遺言書作成の手続きをしたい旨を伝えましょう。役場側から来所するよう求められ、来所日のスケジュール調整や、当日の必要物について話し合います。

なお、公正証書による遺言は行けばすぐ作成してもらえるわけではありません。遺言する人のイメージと完全に合致した内容にするため、担当公証人と遺言者本人との打ち合わせをし、後日改めて作成手続きを進めます。そのため公証役場に最初に行くのは、打ち合わせを目的とするものです。

③作成前の打ち合わせ

打ち合わせ当日の所要時間は30分~1時間程度で、持ち物は特に指定がないかぎり遺言内容のメモと財産目録のみです。公証役場の面談室に入室したあとは、担当公証人から「相続人構成」や「相続財産の詳細」などについて様々な質問・確認が行われ、それに回答する形で進めます。公証人の対応可能範囲として、遺言内容の相談(相続トラブル防止策や税対策等についてアドバイスを求める内容)はできない点に注意しましょう。

公証人による一通りの確認が終わると、作成当日となる2回目の来所日のスケジュール調整に加え、持ち物や証人に関する案内があります。

④証人と必要書類の準備

公正証書遺言に効力を生じさせるため、作成当日は「証人2名を同席させて公証人が完成した文面を読み上げる」作業があります。証人は遺言する人自身で「成人かつ利害関係人でない人物」を選び(民法第974条)、下記持ち物と合わせて準備しましょう。

 

【公正証書遺言の作成時に必要な持ち物】

  • 遺言者の本人確認書類+実印+印鑑証明書
  • 各証人の本人確認書類+印鑑(実印でなくとも可)
  • 相続人との関係が分かる戸籍謄本一式(※1)
  • 相続財産の詳細が分かる資料(銀行預金なら通帳・不動産なら登記簿謄本+固定資産税評価証明書)

※1: 内縁の配偶者など、法律上相続人でない人に遺産を承継させる場合は「相続させたい人の住民票」を準備します。承継させる相手が法人である場合、住民票の代わりに「登記簿謄本」が必要です。

⑤公正証書遺言の作成

遺言書の文面は作成当日までに完成しています。必要物を提示した後は、証人2名が同席している状態で、公証人の読み上げる書面に誤りがないか確認しましょう。特に誤りがなければ、遺言する人と証人全員でそれぞれ署名捺印し、書面を完成させます。

⑥正本・謄本の交付

でき上がった公正証書遺言は、原本をそのまま公証役場で保管し、遺言した人には原本を元にした「正本」と「謄本」が1部ずつ交付されます。これで公正証書遺言は完成です。

 

【参考】原本・正本・謄本の違い

  • 原本: 公証人が読み上げを行い、署名捺印をした文面
  • 正本: 原本と同じ効力をもつ写し
  • 謄本: 原本の内容を確認するための写し

遺言執行者(遺言内容の実現を主導する人物)を決めている場合は、遺産の名義変更手続きに使用できる「正本」を渡しておくと良いでしょう。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言は、複数ある遺言形式の中でも「最も安全かつ確実に生前の最終意思を残す手段」です。具体的なメリットとして下記の3点が挙げられます。

メリット①: 紛失・改ざんリスクがない

公正証書以外の手段で作成された遺言書は「作成者自身での保管」が前提です。しかしこれでは、紛失または滅失(認知症発症や火災等の発生が原因)や、同居家族による改ざんの可能性が否定できません。

一方「公正証書遺言」は、公証役場で電子システム等を駆使して厳重に保管されるため、紛失・滅失・改ざん等のリスクはほぼありません。

メリット②: 身体に障害や怪我があっても作成できる

他の形式による遺言書作成は、「筆記用具の使用またはパソコン操作ができること」が前提です。しかし公正証書遺言は、障害や怪我が原因で手がうまく使えない人でも、意思を公証人に伝えるだけで遺言できるのです。なお、公証役場に足を運べる状況にない場合は、公証人に出張を依頼して入院先等で遺言することもできます(所定の費用要/詳細は後述)。

メリット③:死後の「検認」が不要になる

公正証書遺言の内容を死後実現しようとする際、家庭裁判所での検認(効力を生じさせるための手続き)は不要です。先で紹介したように、公正証書はその作成時点で「内容が真正で裁判上争うことができない効力」を持っているからです。

家裁での手続きを経ず速やかに遺産の名義変更(預金払戻しや相続登記)を開始できれば、その分相続人の手続き負担を軽減できます。さらに、亡くなった人の意志を相続人の一部が疑うことで生じるトラブルも、公正証書遺言なら防止できます。

公正証書遺言のデメリット

安全・確実が担保される公正証書遺言のデメリットは、そのメリットの代償である「作成ハードルの高さ」です。下記の具体的なデメリットを踏まえ、作成手続きの際は時間・予算ともにゆとりを持ちましょう。

デメリット①:手間と時間がかかる

筆記用具やパソコンですぐ完成させられる他形式の遺言書とは異なり、公正証書遺言はその作成準備で手間と時間がかかります。多忙あるいは急ぎの事情がある人にとって、自力で「必要書類収集のため市区町村役場に出向く」「公証役場とのスケジュールをすり合わせる」等に対応するのは難しいと言えるでしょう。

デメリット②:所定の費用が発生する

公正証書遺言の作成では、相続財産の価額に応じた手数料(1万6,000円~)が発生します。後から変更や撤回しようとすると、後述のように初回作成時と同じ手順で新しい遺言書を作成する必要があり、ますます手数料がかさみます。

遺言しようとする際は、少なくとも遺言内容と公正証書にする理由は明確にし、個別の相続事例(※2)に合った方法なのか見極めましょう。

※2: 死後事務等を条件に相続させる「負担付き遺言」をしたい場合や、相続人同士の不仲が原因で遺言の有効性を巡る争いが起きる恐れがある場合などが考えられます。

デメリット③:証人の確保が必要になる

公正証書遺言による生前準備の事例では、証人の確保で苦慮するケースが多数あります。その背景にあるのは「下記の立場にあたる人は証人資格がない」とする法律上の定めです。

 

【公正証書遺言の証人になれない人】

  1. 未成年者
  2. 法定相続人
  3. 遺言で相続させる予定の人
  4. 3の配偶者並びに直系血族
  5. 公証人の配偶者・4親等以内の親族・書記および雇い人

 

遺言のプライバシー性を考えると「近親者を証人にして、他の誰にも内容を知られないようにしたい」と考えるのは当然です。しかし実際には、遠縁の親族・友人や知人・専門家等から選ばざるをえません。証人確保は公証役場に任せることもできますが、所定の費用がかかる点に要注意です(詳細は後述)。

公正証書遺言の注意点/ポイント

遺言書作成の主な目的は、最終意思を財産処分に反映させることですが、それ以上に「円満かつスムーズな遺産分割」を確実に実現できることが重要です。上記を前提に、公正証書遺言の作成では以下4つのポイントを押さえましょう。

ポイント①:稀に無効になるケースがある

公正証書遺言の効力が生じないケースはほとんどありませんが、可能性はゼロではありません。「証人が離席している間に読み上げ確認を行った」等、作成ルールの逸脱による無効化リスクは少ないながらも存在します。

なるべく相続専門の司法書士や弁護士のバックアップを得て、作成手順に誤りがあればすぐフォローを受けられるようにしましょう。

ポイント②:「遺留分」への配慮が必要

「財産の全部または大部分を特定の人に相続させる」という遺言は慎重に行うべきです。そもそも、相続法には「最低限の取り分」(=遺留分)の考え方があり、配偶者など生活保障の必要性が高い法定相続人について保障されています。遺留分の権利は強く、被相続人の意思よりも優先されるため、遺言書があっても「遺留分侵害額請求」(損なわれた遺留分について金銭支払いを求める手続き)の開始を阻止できません。

遺留分侵害額請求が起きると「支払いのため不動産を売却する」等、望まない遺産の散逸を招きます。家族仲を険悪にしないためにも、できるだけ遺留分に配慮して相続分を指定しましょう。

ポイント③:公正証書遺言の照会方法

公正証書遺言の照会(検索および閲覧)は、全国の公証役場でいつでも可能です。ただし、作成者の生前は作成者本人しか照会できません。作成者の死亡後に限り、相続人および利害関係人による照会が認められます。

なお、死亡した人の公正証書遺言を照会する際は、下記すべての書類に加え、閲覧のみ手数料(200円/1回)が必要です。

 

【公正証書遺言を照会する際の必要書類】※相続開始後に相続人および利害関係人が検索or閲覧する場合

  • 遺言者の死亡の記載がある書類(除籍謄本など)
  • 照会者と遺言者の関係が分かる書類(戸籍謄本や金銭貸借契約書など)
  • 照会者の本人確認書類(運転免許証など)

ポイント④:遺言内容を変更または撤回する方法

事情により公正証書遺言の内容を変えなければならない時は、変更もしくは撤回の旨を書いた新しい遺言書を公証役場で作成します。手続きの流れや費用は初回遺言時とまったく同じです。参考として、変更または撤回時に作成する遺言の文例を紹介します。

「遺言を撤回する遺言」の文例

遺言者は、令和○年〇月〇日に法務局所属公証人○○が作成した同年第○○号遺言公正証書による遺言者の遺言を、全部撤回する。

「遺言の一部を修正する遺言」の文例

遺言者は、令和○年〇月〇日に法務局所属公証人○○が作成した同年第○○号遺言公正証書による遺言者の遺言中、第〇条で下記銀行預金を妻○○に相続させる部分を撤回し、同銀行預金を長男○○に相続させると改める。
(※銀行預金の記載)

公正証書遺言の作成にかかる費用

公正証書遺言の作成にあたっては、作成手数料のほかに遺言の状況に応じた費用がかかります。各金額については、下記で順に解説します。

作成手数料

公正証書遺言の作成手数料には①公証人手数料と②遺言加算が含まれます。なお、①・②ともに金額は一定ではなく、下記のように相続財産の評価額に応じて段階的に上昇します。

目的の価額(相続財産の評価額) 公証人手数料 遺言加算
100万円以下 5,000円 1万1,000円
100万円超200万円以下 7,000円 1万1,000円
200万円超500万円以下 11,000円 1万1,000円
500万円超1000万円以下 1万7,000円 1万1,000円
1000万円超3000万円以下 2万3,000円 1万1,000円
3000万円超5000万円以下 2万9,000円 1万1,000円
5000万円超1億円以下 4万3,000円 1万1,000円
1億円超3億円以下 4万3,000円+超過額5000万円毎に13,000円
3億円超10億円以下 9万5,000円+超過額5000万円毎に11,000円
10億円超 24万9,000円+超過額5,000万円毎に8,000円

諸手数料

作成手数料のほかには、諸手数料として「正本・謄本の発行手数料」や「原本枚数に応じた追加料金」がかかります。

 

【公正証書遺言作成時の諸手数料】

  • 遺言書原本の用紙代:4枚までは無料(5枚目から250円/1枚)
  • 正本・謄本の用紙代:各250円/1枚

その他の費用

事情により公証人の出張や証人確保を依頼する際は、下記の追加料金がかかります。

 

【公証人の出張費用】

→下記1~3の合計額

  1. 公証人手数料の上乗せ:目的価額に対応する手数料の50%分
  2. 日当:1日につき2万円(※毎日最初の4時間までなら1万円)
  3. 交通費:実費

【証人の確保費用】

→6,000円~8,000円(※公証役場により異なる)

公正証書遺言の作成を依頼するなら

公正証書遺言に関する相談先は司法書士・弁護士のいずれかです。どちらに依頼する場合でも、遺言書原案の下地(=案分)の作成を中心に「遺言内容」「公正証書の作成準備」「死後の遺言執行」の3点について、以下のような多様なサポートが得られます。

司法書士・弁護士のサポート①:「遺言内容」に関するもの

遺留分に配慮した相続分の指定方法のほか、居住用不動産の確保や事業承継を意識した対策など「相続トラブルを徹底的に防止する遺言内容」について助言を得られます。

司法書士・弁護士のサポート②:「公正証書の作成準備」に関するもの

面倒な書類収集と提出、公証人が作成した原案や見積書の確認、さらには作成当日の公証役場への同行と同席によるフォローまで、公正証書の作成準備はほぼ全て任せられます。

司法書士・弁護士のサポート③:「死後の遺言執行」に関するもの

家族仲や家族構成員の健康状態等が原因で「遺言内容通りの相続手続きができるか不安がある」というケースでは、遺言執行者として就任(もしくは適切な人物の紹介)してもらうことも可能です。

各士業の得意分野については、司法書士が「不動産登記」・弁護士が「相続トラブル全般」と違いがあります。

不動産の相続について相談したい時は司法書士、それ以外のトラブル対策(遺留分問題・事業承継・高齢の相続人が亡くなった時の備え)については弁護士と、相談したい内容によって相談先を適宜選択すると良いでしょう。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
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