相続登記の義務化の認知は6割 罰則があることを知る人は半数以下 ~相続登記義務化の認知度調査~

更新日:2024.08.29

相続登記の義務化の認知は6割 罰則があることを知る人は半数以下 ~相続登記義務化の認知度調査~

相続した不動産の名義を変更する相続登記が2024年4月から義務になりました。相続してから3年以内に登記を済ませないと10万円以下の過料を求められる罰則があります。つぐなび事務局は6月、自分か配偶者の父母の相続経験があり、その際、弁護士や税理士、司法書士、行政書士ら専門家に相談したことがある60代以上の男女456人を対象に、相続登記の義務化について聞きました。義務化についての認知は進んでいるものの、詳しいことは相続経験者でもまだ十分理解されていないことがわかりました。

相続登記義務化を6割超が「知っている」と回答

まずは、相続登記が2024年4月から義務になったことを知っているかどうか尋ねました。結果、6割超の65.4%(298人)が知っていると答え、34.6%(158人)が知らないという結果でした。

調査対象が親の相続の経験があり、専門家に相談した経験のある人だったこともあり、多くの人が相続登記の義務化について知っていると回答しました。一方で、3割超の人が登記の義務化について知らないことがわかりました。

Q.2024年4月から不動産を相続した場合の名義変更の手続き(相続登記)が義務になりました。相続登記が義務になったことを知っていますか。

相続登記の義務化とは
土地や建物などを相続した場合に、その名義を亡くなった所有者から相続した人に変更する相続登記が2024年4月から義務になりました。

義務化の内容は、主に以下の通りです。

  • 相続と不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記する
  • 正当な理由がないのに登記しない場合には10万円以下の過料が科される


新潟県新発田市の司法書士法人三宅國澤事務所の代表、三宅浩司法書士によると、相談に来た人から「相続登記が義務になったんですよね」とご存じの方が増えた印象があります。ただ、義務化の中身まで詳しく知っている方はそれほど多くはないといいます。

三宅司法書士によると、義務化の背景には全国的に土地の所有者が亡くなって相続が発生しているにもかかわらず、相続登記がされないまま放置されている所有者不明土地が増え続けていることがあるようです。

国土交通省の地籍調査を基にした推計では、所有者不明となっている土地の面積は約410万ヘクタール以上で、九州地方の面積(約368万ヘクタール)より広くなっていると言われています。

三宅さんは相続登記が進まない理由として、次の三つを挙げています。

  1. 地方の実家や山林、田畑などを相続したものの、住んだり、活用したりする予定もなく、放置したまま次の世代へ相続が発生してしまっている
  2. 何世代にもわたって登記を放置した結果、次第に所有していることを知らない人が多くなる
  3. 相続人の数が増えすぎてしまい、いざ手続きしようとすると膨大な手間と費用がかかるため、放置が繰り返されて「所有者不明土地」となる

罰則があることや義務化前の相続も対象であることの認知は半数以下

続いて、相続登記の義務化の具体的な内容について聞きました。まず、3年以内に正当な理由がないのに登記しなかった場合に、10万円以下の罰則があることについて知っている人は46.9%(214人)と半数を下回りました。

Q.相続登記が義務になったことで、正当な理由がなく3年以内に相続登記を済ませないと10万円以下の過料を求められる罰則があることを知っていますか。

また、相続登記が義務になるのは、義務化になった2024年4月以前にあった相続も対象になることについて「知っている」と答えた人は38.2%(174人)と低いことがわかりました。

 

Q.相続登記が義務になるのは、義務化になった2024年4月以前の相続も対象であることを知っていますか。

登記の義務化は過去の相続も対象であることの認知

相続登記が義務になった背景には、登記しないまま何世代か相続が続いてしまって相続権がある相続人が増えてしまった結果、所有者がわからない不動産が増えたり、空き家が増えてしまう問題があります。

義務化になる前に相続が発生したケースでも、正当な理由がないまま相続登記をせずに放置していると、10万円以下の過料が求められる可能性があります。相続を経験した人たちの間では相続登記が義務になったことを知っている人が多い一方で、過去の相続の登記も義務であることの周知が進んでいないことがわかります。

登記を放置するリスク「売却できない」と知っている人は6割超

Q.不動産を相続した際、相続登記をしないまま放置していると、以下のようなリスクがあることを知っていましたか。知っているものをすべて選んでください。

相続登記をしないまま放置しているリスクについて聞きました(複数選択可)。リスクの中でも半数以上の人が知っていると答えたのは、正しく登記されていないと「売却できない」ことで、回答者の60.3%(275人)でした。

続いて、「所有権の証明ができない」ことで46.5%(212人)、「相続のたびに相続人が増えていく」が34.4%(157人)、「新たに登記を申請するための必要書類が集めにくくなる」が32.5%(148人)でした。

相続登記をしないまま放置すると、売却できないばかりか、その不動産の担保の設定もできません。

また、相続が起こるたびに相続人が増えるので、登記していないまま相続が繰り返されると関係者の人数が膨大になり、正しく登記をすることが困難になる恐れもあります。

また、登記の内容が正しくないと固定資産税を多く支払う可能性があるほか、相続人の中に債務がある人がいると、債権者から差し押さえられる恐れもあります。

例えば、実家の土地と建物などを残して高齢の母親が亡くなり、2人の兄弟が相続人になったとします。遺産分割の話し合いもしないまま、実家の登記を放置していたケースを考えてみます。兄には借金があり、返済が滞ってしまったため、債権者から実家不動産の相続分である2分の1の権利を差し押さえられてしまうということもあり得ます。

三宅司法書士は「不動産を未登記のまま放置することは、権利関係がとても不安定な状態のまま放っておくことになり、法的にとてもリスクがあるといえます。登記が義務になったからというわけではなく、相続で土地を取得したら必ず登記をしてください」といいます。

不動産を登記しないリスク

また、遺産分割が思うように進まなかったり、相続人の中に認知症の方がいて、すぐに遺産を分けられない場合には、不動産の相続人であることを申告する「相続人申告登記」という制度も新たに設けられました。

相続人申告登記については、以下の記事を参考にしてください。

相続人申告登記とは 必要書類や費用、登記するべき人を解説

自宅や実家の登記を把握している人は8割 把握していない人は1割超

現在住んでいる自宅や実家の不動産の登記が、誰の所有になっているか把握しているかどうか聞きました。現在の所有者になっていることを把握している人は80.3%(366人)でした。一方で、把握していない人が12.3%(56人)のほか、現在の所有者でないことを知っている人も6.4%(29人)いました。

Q.現在、お住まいの自宅や実家などの不動産が、登記簿上、誰の所有になっているか、把握していますか。

所有している不動産の登記名義

相続登記は7割が司法書士に依頼、自分で手続きする人は15%

最後に、不動産を相続して名義を変更する場合に、手続きを誰に依頼するか聞きました。登記の専門家である司法書士に依頼すると答えた人がほとんどで74.8%(341人)にのぼりました。「自分で手続きしてみる」と答えた人は15.1%(69人)でした。

Q.不動産を相続して名義を変更する相続登記をすることになった場合、相続登記の手続きを誰に依頼しますか。

相続手続きの依頼先

相続登記の義務は過去の相続も対象 不安があれば司法書士に相談を

今回、アンケートの対象者は60代以上で、相続の経験がある人だったこともあり、相続登記の義務化については6割以上の人が知っていると回答しました。一方で、その中身まで知っている人は半数に満たないことから、相続登記の義務化についてはまだ十分浸透しているとは言い切れない結果となりました。

特に、義務化は過去にあった相続も対象になります。自分が相続人になっているのに、未登記の不動産がないかどうか、確認する必要があります。

三宅さんによると、親の世代で未登記になっているケースもあるため、亡くなった親や祖父母が所有している不動産があるかもしれない人は、不動産がある市町村役場で祖父母や父母の名前で「名寄帳」を取り寄せると、名義が変更していない不動産があるかどうかわかるそうです。名寄帳は、市町村役場で手数料を支払えば発行してもらえます。

また、法務局は長年、相続登記がされていない不動産の相続人に対し「長期間相続登記等がされていないことの通知」を発送しています。この通知を受け取った場合、法務局へ行けば、どの不動産が未登記なのかがわかります。

三宅さんは「法務局から通知を受け取った場合には、登記の義務化の条件の一つ、不動産の相続人であることを知ったということになるので、それから3年以上何もしなければ過料を求められる恐れがある」といいます。

名寄帳を取り寄せて未登記の土地があったり、法務局から通知を受け取ったりした場合には、登記の専門家である司法書士に相談して、登記手続きを済ませるようにしましょう。

【アンケートの概要】
対象:全国の60代以上の男女456人
対象者の条件:自分か配偶者の父母の相続経験があり、相続の専門家に相談した経験がある人
期間:2024年6月10日~23日

 

 

この記事の監修者:三宅 浩(みやけ・ひろし)
司法書士法人 三宅國澤事務所
司法書士

三宅 浩司法書士

新潟県で最も古い司法書士事務所で、現在、三代目司法書士三宅浩が代表を務めています。

単純な相続から相続人が多かったり、相続する不動産が多かったりする複雑な相続まで、あらゆる相続に対応してきた経験と実績があります。 不在者財産管理人となり、遺産分割調停の申立てを行うなどの多数の実績があります。また、相続放棄も多数扱っています。司法書士法人 三宅國澤事務所は約80年の歴史があり、相続についての取り扱いは年200件、累計1万5,000件以上の実績があります。

三宅司法書士が代表を務める司法書士法人 三宅國澤事務所のページはこちら

この記事の執筆者:つぐなび編集部

この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
2020年04月のオープン以降、専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように
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