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準確定申告、必要・不要の基準–相続税申告との関係性にも要注意!

更新日:2020.10.05

準確定申告、必要・不要の基準–相続税申告との関係性にも要注意!

通常の「確定申告」とは異なり、死亡した人の所得についての納税「準確定申告」をご存じですか。確定申告の違いや注意点、納税期限を過ぎた場合に課される税金などについて税理士が解説します。

準確定申告とは

準確定申告とは、ある人が年の中途において死亡した場合、1月1日から死亡した日までの間に生じた所得について、死亡した日から4ヶ月以内に死亡した人の相続人が深刻と納税をすることを言います。なお、納税先は、その死亡した人の住所地を所轄する税務署となります。通常の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得を計算し、その所得に対する所得税について確定申告書を提出するものなので、内容が異なります。

確定申告との違い

準確定申告は、通常の確定申告といくつか異なる点がありますので注意が必要です。

  • 準確定申告書を提出する人と提出先: 準確定申告書を提出する人は、その死亡した人の相続人となります。相続人が複数いる場合には、各相続人が連署した申告書を、相続人代表がその死亡した人の住所地を所轄する税務署に提出します。
  • 準確定申告の申告・納税期限: 通常の確定申告における申告・納税の期限はその年の翌年3月15日となりますが、準確定申告における申告・納税期限相続の開始があったことを知った日(その人が死亡した日)の翌日から4カ月以内となります。

準確定申告が不要でも、したほうがいいケースも

通常の確定申告においても、申告が不要な人、申告自体は不要だがあえて申告をすることで税金が還付されるために申告をしたほうがいい人の場合がありますが、準確定申告においても同じケースがあります。

準確定申告が不要な人

  • 死亡した人が会社員やアルバイトなどの給与所得者で、給与をもらっているのが1カ所のみの場合(その会社において年末調整がなされるため申告は不要)
  • 死亡した人が年金受給者でその年金受給額が400万円以下で、他の所得が20万円以下である場合(この場合、そもそも所得税の申告が不要とされている)
  • 申告書を提出すべき相続人が相続放棄をした場合

準確定申告が不要だが、申告したほうがいい人

前述した準確定申告が不要な給与所得者、年金受給者であっても所得税が発生して次のいずれかのケースに該当する場合には、準確定申告書を提出することで所得税の還付が見込まれるため、申告したほうが良さそうです。なお、「所得税が発生している」とは、給与や年金の源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄に数字が記載されている場合のことを言います。

  • 死亡の日までに死亡した人が支払った医療費が10万円を超えている場合
  • 死亡の日までに死亡した人が支払った生命保険料や地震保険料、小規模企業共済などがあり、まだ所得の控除を受けていないものがある場合
  • 死亡の日までに死亡した人が支払った「ふるさと納税」などの寄付金がある場合
  • 配偶者控除や扶養控除などの適用がある場合

準確定申告をする際に気を付けること

準確定申告においては、通常の確定申告と比較して異なる点や注意を要する点がいくつかあります。毎年ご自身の手で確定申告を行なっている人であっても見落としがちな点がありますので、注意してください。

青色申告は引き継がれない

死亡した人が個人で商売をしていたり、不動産賃貸をしている場合、青色申告により確定申告書を提出している場合が多くあります。たとえこの事業を相続人等が承継し、準確定申告書を提出したとしても、青色申告は自動的には引き継がれません。そのため、事業を承継した人は新たに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

ただし、準確定申告書と同じ死亡日の翌日から4カ月以内に提出すれば、継承した人の承継後の最初の確定申告から、青色申告により確定申告が可能です。準確定申告と一緒に提出するようにしましょう。

申告の期限

先述のとおり、準確定申告の申告期限は、相続の開始があった日(通常は死亡日)の翌日から4カ月以内です。その期限を過ぎた場合には、加算税や延滞税が課されることとなります。

  • 加算税: 申告自体がなされていない場合や、申告内容が適正でなかった場合に課される税金です。無申告加算税や過小申告加算税などがあり、5%~40%の税金が所得税とは別に課されます。
  • 延滞税: 納付期限(通常は申告期限)までに支払うべき税金が支払われていない場合に課される税金です。

申告と納税はセットであり、申告はしていても納税が期限までにされていなければ延滞税は課されてしまいますので、注意してください。

なお、死亡日が1月1日から3月15日までの場合は注意が必要です。その年の前年の所得について確定申告書を提出しなければならない人がその翌年1月1日から3月15日までの間に死亡した場合には、その前年分の確定申告書を死亡した日の翌日から4カ月以内に提出しなければなりません。

さらに、死亡した年の1月1日から死亡した日までの間の所得について準確定申告書の提出が必要であれば、死亡日の翌日から4カ月以内に提出しなければなりません。つまり申告書を2つ提出する必要がありますので、注意が必要です。

相続人が複数人の場合は

準確定申告は死亡した人の相続人が行いますが、相続人が複数いる場合には、各相続人の連署により、相続人代表が申告人となって申告します。準確定申告書の添付書類として「準確定申告書の付表」というものがあります。こちらに各相続人の住所や氏名、相続分や納税額をそれぞれ連署して、申告書と一緒に提出することとなります。

所得控除はどうなるか

準確定申告書においても各種の所得控除の適用が可能となります。ただし通常の確定申告と比較していくつか違いもありますので、注意が必要です。

  • 医療費控除について: 医療費控除の対象となるのは死亡した人が支払った分だけです。 準確定申告においても、支払った医療費が10万円を超えていれば医療費控除の適用が見込まれますが、ここでいう医療費は、死亡した人自身が死亡日までに支払った医療費のことをいいます。死亡後に相続人等が支払った医療費は医療費控除の対象となりませんので、注意が必要です。
  • 社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除: 医療費控除同様、社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などの対象となるのは、死亡した人自身が死亡日までに支払ったものの額となります。
  • 配偶者控除と扶養控除: 配偶者控除や扶養控除などが適用できるかどうかの判定は、死亡日の現況により判断することとなります。例えば子の扶養控除が適用できるかどうかは、その年の1月1日から12月31日までのその子の所得が103万円をこえるかどうかを死亡日に見積もって判定します。あくまで見積もりとなるため、死亡時点では予測できない所得の増加があった場合は、修正申告を行う必要はありません。

相続税申告との関係に注意

相続税の申告が必要な人にとって、準確定申告との関係性はとても重要となってきます。準確定申告の内容が相続税申告へそのまま影響してくる場合について、代表的なものを紹介いたしますので注意してください。

  • 準確定申告で納税が発生している場合: 相続税においては債務(※1)控除の対象となります
  • 準確定申告で還付が発生している場合: 相続税においては相続財産として計上する必要があります
  • 準確定申告で確定する債権債務: 債権(※2)は相続財産として計上、債務は債務控除の対象となります
  • 医療費:  死亡後に相続人等が支払った医療費は、未払医療費として相続税において債務控除の対象となります
※1 債権: 事業にかかる売掛金や未収家賃など
※2 債務: 事業にかかる買掛金や借入金、預り保証金など

準確定申告のときに準備する書類

準確定申告についての注意点をいくつか述べてきましたが、必要となる書類については基本的に通常の確定申告とそれほど大きく変わるものではありせん。ただし準確定申告においてのみ必要となる書類も一部ありますので、その点だけは注意が必要です。

確定申告書

通常の確定申告と同様、給与や年金受給者の場合が多く使用する「確定申告書A」、個人事業主や不動産所得がある場合に使用する「確定申告書B」を使用します。死亡した人の前年の申告書と同じ種類の申告書を使えば問題ないでしょう。

確定申告書付表

相続人が2人以上いる場合には、相続人の情報把握のために「確定申告書付表」の提出が必要となります。「確定申告書付表」は、各相続人の住所や氏名、生年月日など基本的な相続人の情報を連署する様式となっています。また相続分についての記載も必要です。準確定申告において所得税が発生している場合は、その所得税を相続分に分割し、各相続人がそれぞれ納付することとなります。確定申告書付表の様式は、国税庁サイト内ページにありますので確認してください。

委任状

準確定申告で還付金が発生している場合には、それぞれの相続人が振込口座を記載すれば還付金のうち自身の相続分の還付を受けることができますが、相続人代表がひとまず一括して還付を受けるケースが多くあります。その際には他の相続人からの委任状を提出する必要があります。委任状の様式は、国税庁サイト内ページをご確認してください。

マイナンバー

  • 相続人が1人の場合: 確定申告書に、相続人のマイナンバーの記入と相続人の本人確認書類の写しの添付が必要となります。
  • 相続人が2人以上の場合: 上述の「確定申告書付表」に、すべての相続人のマイナンバーの記入と、すべての相続人の本人確認書類の写しの添付が必要となります。

収入や控除などに関連する書類

準確定申告を行うためには、死亡した人が給与や年金の受給者であった場合は死亡した年の源泉徴収票が必要となります。また、個人事業者や不動産所得がある人の場合、事業に使用していた通帳、領収書や請求書といった決算に関する書類が必要となります。また、社会保険料控除や保険料控除の適用を受けるためには、控除証明などの書類も必要となってきます。死亡日の翌日から4カ月といいますが、実際はあっという間に期限が来ます。必要書類は早い段階から準備を始めましょう。

準確定申告の注意点

今回は準確定申告について見てきました。基本的にはそれまでの確定申告の短縮版といったところですが、通常の確定申告といくつか異なる点や注意点がありました。申告・納税期限とあわせてこれら注意点も押さえることが、適切な申告への一助となれば幸いです。

執筆者プロフィール
安井貴生
税理士。税理士法人に所属して活動しており、法人税決算から税務申告・税務調査立会、経営相談まで幅広く業務を行っている。最近は、相続や事業承継案件、M&Aなどの取扱いが増加中。土地や非上場株式などの財産評価を得意とするが、節税ありきではなく相続人全員が納得する相続業務を何よりも重視している。

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