税理士に相続税申告を依頼する場合、税理士報酬が発生します。
その際、「相続税の申告にかかる税理士費用は誰が払うべきなのか」と疑問に思う方が多くいます。
相続人の数が増えるにつれ、費用の負担について気になるものです。
また法律上、誰が支払わないといけないか決まっているのか不安に思う人もいるかもしれません。
本記事では税理士に相続税申告や遺産分割協議、相続手続きを依頼した際に誰が支払うべきか?支払いに決まりごとがあるかなどについて解説します。
また、相続税申告の税理士費用を誰が支払うのが適切かや、無税になる相続税申告の方法についても解説します。
目次
1. 相続税申告の税理士の費用は誰が払うべき?
相続税申告の税理士費用を誰が払うという法律上の決まりはありません。
そのため、税理士費用を代表者がまとめて支払ったり、相続人全員で分担して負担したりしても問題はありません。
税理士費用の負担方法に明確な正解がないため、他の相続人に負担方法について強く主張してしまうと、相続人間で揉めてしまうこともありますので注意が必要です。
複数の相続人で1つの申告書を作成した場合は、相続税の申告にかかる料金は、相続人の人数に関わらず申告書1つ分の料金となります。
しかし、相続人全員で分担して負担する場合、多くの税理士法人では1人がまとめて払う必要があるため、代表者が各相続人の費用をまとめて支払うこととなります。
2. 税理士に支払う費用の料金例
相続税申告の税理士報酬の相場は、概ね遺産総額の0.5%から1%と言われています。
この場合の遺産総額は、財産評価額を減額できる特例や非課税、債務控除を考慮する前の金額です。
例えば、遺産総額が1億円であれば、50万円から100万円が概ね適正な報酬であると言えるということになります。
そのほかの事務所事例として以下のパターンがあります。
・「相続財産の総額に対して〇%」とパーセンテージで計算する
・相続財産の総額を何段階かに分けて、「~1,000万円の場合の報酬は〇円、~5,000万円の場合は報酬は〇円」と決まっている
・基本報酬が上記のどちらかの計算方法で、さらに相続する土地の人数や相続人の人数などで「加算報酬」が追加される
このように税理士費用はそれなりにまとまった金額になるので、税理士費用を誰がどのくらい払うべきかについては、相続人間で少なからず話し合う必要があります。
2-1 相続税申告で税理士に支払う料金の加算料金例
かつては税理士報酬規定により税理士報酬は固定されていましたが、平成14年に撤廃されて以降、税理士報酬は自由化されており、現在では税理士事務所によって異なる料金体系を設定することが可能です。
そのため一般的な相場を捉えることは難しくなっています。
ただし近年では多くの事務所がホームページを開設したため、ホームページを通じ各事務所の料金体系を確認できます。
したがって税理士を探す際には、まずはインターネットを活用した情報収集から始めると良いです。
事務所によっては以下の場合に加算報酬が発生する場合があります。
・申告書の作成が煩雑だった場合や、多額の節税ができた場合は、後から「成功報酬」を加算
・土地の評価単位1区分につき加算
・非上場株式の評価1社につき加算
・書面添付制度を利用した申告書の作成は、別途見積もりの上、加算
・過去5年間の預金履歴の資金移動表作成が必要な場合、1口座につきを加算
・相続人が2名以上の場合には、1名増すごとに基本報酬×10%相当額を加算
2-2 相続税申告の税理士の費用は誰が負担すると良い?
相続人が被相続人(亡くなった人)の配偶者と子供(配偶者と子供は親子関係)という組み合わせの 相続の際は、配偶者が全額負担するとよいでしょう。
配偶者は、多くの場合、「配偶者の税額軽減」(相続税の配偶者控除)の適用を受けることで相続税がかかりません。
また、二次相続(亡くなった人の配偶者が亡くなったときの相続)になった時に配偶者の財産を少しでも減らすことが相続税対策になるからです。
このことについてはこの後解説します。
理由①:配偶者の税額軽減が適用されることによって配偶者は無税(0円)となることが多いため
相続税は、配偶者に対して税額控除の優遇制度が設けられています。
この「配偶者の税額軽減」とは配偶者が遺産分割や遺贈により得た遺産額から、配偶者の法的相続分相当額か1億6,000万円のいずれか大きい方の金額を差し引いた残額のみ課税するという制度です。
要するに、法定相続分の範囲内で遺産分割や遺贈を受ける分においては、配偶者が相続税を負担することはありません。
1億6,000万円までは課税されないため、ほとんどの家庭では課税されないということになります。
なお、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。
親が遺産分割協議の際に税理士費用分を余分に相続しておき、費用を負担することによって、子供が負担する税の額が少なくなります。
このため、税理士費用を負担する分、親が法定相続分をより多く相続してもよいでしょう。
理由②:親(被相続人の配偶者)の遺産が減ることで二次相続時の子の税負担が軽減されるため
子供の立場から見ると、相続は父親が亡くなった時と、母親が亡くなった時の2回発生するのが一般的です。
例えば、先に父親が亡くなったときは、その時の相続を一次相続といい、次に母親が亡くなったときはその相続を二次相続といいます。
つまり、二次相続では親世代の財産が全て子の世代に引き継がれることになります。
一次相続時に節税だけに集中して相続税対策を間違えると二次相続の際に相続税が高額になってしまいます。
例えば、先ほどの「配偶者の税額控除」を一次相続の際に利用した場合、配偶者の取得分が1億6,000万円までであれば配偶者には相続税がかかりません。
しかし、一次相続で配偶者が多くの遺産を取得していると、配偶者自身の財産に一次相続の相続財産が加わって二次相続での税率が高くなります。
つまり相続税対策は一次相続の時点から二次相続のことまで考慮して行うほうが良いと言えます。
3. その他、司法書士や弁護士に依頼する場合の費用は誰が払うべき?
相続手続きを行う上で税理士以外の弁護士や司法書士に依頼をする場合、依頼した費用は基本的には依頼した人が負担します。
しかし、税理士と同様に相続人間で話し合って分担して負担することも可能です。
相続トラブルで揉めている場合や揉めそうなときなどは費用分担のコミュニケーションもうまくいきづらいので、話し合いや相談をせず勝手に依頼してしまうと、費用を負担することでトラブルが発生してしまう可能性があります。
このようなトラブルを回避するために、専門家に見積もりをとってもらってから依頼前に相続人に相談していきましょう。
相続登記は司法書士などの代理人が行うことも可能です。その際に発生した報酬も依頼をした人が負担するのが一般的です。
4. 不動産の名義変更(相続登記)の費用は誰が負担するべき?
相続登記の司法書士費用は、相続人の中の誰が支払っても問題はありません。
相続人の代表者が司法書士費用を全額負担したり、相続人全員で均等に分担して負担したり、さまざまなケースが考えられます。
相続登記の手続きは不動産を相続した人が行うため、相続登記の際に発生する登録免許税も不動産を相続した人が負担するのが最も一般的です。
相続登記の方法によっては、他人が代わりに負担してしまうと贈与になる可能性もあるので注意が必要です。
相続登記の手続きは専門家でない限り、不慣れな方が多いと思います。
相続登記手続きの疑問や不安の解消や時間短縮のために、司法書士事務所に相談するのが有効です。
5. 遺産分割にかかる費用は誰が負担するべき?
遺産分割協議書の作成費用を誰が負担するかという決まりはないため、相続人同士で話し合って分担して負担しても問題ありません。
遺産分割協議はすべての相続人が参加して行う話し合いのため、遺産分割協議の際に発生した費用は相続人間で等分にして分担して負担することが一般的です。
話し合いで決まらない場合は、相続分に応じて負担するのが平等だと考えられます。
遺産分割協議を行うこと自体に費用は発生しませんが、弁護士に依頼した場合や遺産分割協議書の作成を専門家に依頼した場合は報酬が発生します。
そのため、誰が費用を負担するかは依頼をする前に相続人間で話し合っておく必要があります。
なお、遺産分割協議書の作成費用は、相続税の計算時に控除することはできません。
この記事の執筆者:つぐなび編集部
この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
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