1. 相続手続きの費用は、財産の種類によって変わる
相続手続きの費用は、相続手続きの内容によって異なります。相続手続きの費用は主に以下の4つがあります。
・不動産登記の相続手続きにかかる費用
・預貯金の相続手続きにかかる費用
・有価証券の相続手続きにかかる費用
・自動車の相続手続きにかかる費用
ここでは、これらの相続手続きの費用の内容について詳しく解説していきたいと思います。
1-1 不動産登記の相続手続きにかかる費用
不動産登記とは、引き継いだ建物や土地が誰のものなのかを主張するため、登記簿に記載することをいいます。
また、引き継いだ建物や土地の所有者の名義が変更される時に行われる不動産登記を「所有権移転登記」といい、相続手続きが行われるときにも使われます。
相続に関する不動産登記は司法書士に依頼することで解決することができます。司法書士に不動産登記の相続手続きを依頼する場合の費用は、5万円~10万円程度になります。
また、司法書士の報酬とは別に、相続手続きに関する固定資産税評価証明書の取得費用や登録免許税、登記事項証明書、郵送費用といった各種費用がかかることに注意しましょう。
1-2 預貯金の相続手続きにかかる費用
預貯金の相続手続きは、法定相続人の申請による「名義変更」によって行うことができます。名義変更を行い相続手続きを行うためには、以下の書類が必要になります。
相続手続きに必要な書類
・金融機関が用意している預金名義書換依頼書・相続届
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・互故人の預金通帳、キャッシュカード、証書
・手続きをする人の実印
・故人の届け出印
・遺産分割協議書または相続人全員の同意書、遺言書
また、名義変更の手続きは、弁護士・司法書士・行政書士に相談することで解決することができます。弁護士・司法書士・行政書士に依頼する場合の費用は、1件あたり2万円〜10万円ほどとされています。
1-3 有価証券の相続手続きにかかる費用
有価証券とは、株券や債権などの財産的価値を示す証書や証券のことをいいます。相続手続きが必要な有価証券は、大きく上場株式と非上場株式の2つがあります。
上場株式を相続する場合は、遺産分割協議書を添付し、口座振替手続きを行うことで相続手続きを行うことができます。一方、非上場株式を相続する場合は、株式発行会社に問い合わせをし株主名簿の書き換えを行うことで相続手続きを行うことができます。
また、有価証券の相続手続きの費用は1件2万円〜10万円程度で司法書士・弁護士・行政書士・税理士に相談することで相続手続きを行うことができます。
有価証券の相続手続きで悩んでいる方は、早めに費用を確認し上記の士業に相談することをおすすめします。
1-4 自動車の相続手続きにかかる費用
自動車の相続手続きでは、相続した自動車の名義変更が必要になります。自動車の相続手続きを行う際は、書類などを運輸支局に持っていき、以下のような費用を支払わなければなりません。
・移転登録手数料:費用500円
・車庫証明取得費用:費用2500円〜3500円(都道府県ごとに異なる)
・ナンバープレート代:費用1500円前後(地域によって異なる。なお、ナンバー変更がない場合は不要)
・自動車取得税:費用 車種やグレード、経過年数によって異なる
・名義変更代行料:費用 自分で手続する場合は不要
また、運輸支局は平日にしか空いていないため、予定が厳しい場合は司法書士や行政書士に依頼することをおすすめします。司法書士や行政書士に対する費用の相場は2万円〜5万円程度といわれています。
2. 相続手続きでかかってくる費用
相続手続きにかかる費用は様々な種類があるため注意が必要です。ここでは、相続手続きにかかる費用を6つ紹介したいと思います。
2-1 戸籍謄本の取得にかかる費用
戸籍謄本とは、戸籍に記録されている人の身分を証明するものであり、「戸籍全部事項証明書」と呼ばれることもあります。
戸籍謄本は、相続人の身分を証明することができるため、相続手続きに必要不可欠な書類です。戸籍謄本は、費用が1通につき450円です。
本籍地のある市区町村役場に申請することで取得することができます。
具体的な取得方法には、「郵送による自宅受け取り」・「コンビニでの受け取り」・「本籍地のある市区町村役場での受け取り」の3つがあります。
また、戸籍謄本を取得するために申請書・身分証・印鑑などが必要になるため、十分な準備をすることをおすすめします。
2-2 除籍謄本の取得にかかる費用
除籍謄本とは、結婚や離婚・死亡などによって戸籍に在籍する人がいなくなった戸籍を役所に発行してもらう際の書面のことをいいます。
除籍謄本は、費用が1通につき750円で、戸籍謄本と同じく本籍地のある市町村役場に申請することで取得することができます。
具体的な取得方法には、「郵送による自宅受け取り」・「本籍地のある市区町村役場での受け取り」の2つがあります。
郵送による自宅受け取りは、定額小為替の購入などの取得準備に時間がかかるため、市町村役場で直接受け取ることをおすすめします。
また、籍謄本は戸籍謄本と違い、コンビニでの取得ができないため注意が必要です。
2-3 戸籍の附票の取得にかかる費用
戸籍の附票とは、新しい戸籍ができて以降、住民表の移り変わりを記録した書類で、戸籍の原本と共に本籍地のある市区町村に保管されています。
戸籍の附票は、取得費用が300円または350円(市区町村によって異なる)で、本籍地のある市区町村役所に申請することで取得することができます。
具体的な取得方法には、「郵送による自宅受け取り」・「コンビニでの受け取り」・「本籍地のある市区町村役場での受け取り」の3つがあります。
また、取得する際に権利確認書類などが必要になるため、あらかじめ準備をすることを心がけましょう。
2-4 住民票除票の取得にかかる費用
住民票除票とは、他の市区町村に移転や死亡等により、住民票登録が削除された住民票のことをいいます。住民票除票は費用が1通につき300円で、亡くなった方の最後の住所を管轄する市区町村役所に請求することで取得できます。
具体的な取得方法には、「郵送による自宅受け取り」・「本籍地のある市区町村役場での受け取り」の2つがあります。
住民票除票は、自身が相続人であることを証明すれば委任状なしで取得することができます。
また、住民票除票の保存期間は150年と非常に長いですが、相続手続きが必要な方は、あらかじめ取得しておくことをおすすめします。
2-5 住民票の取得にかかる費用
住民票とは、住民の移住関係を公に証明する書類のことをいい、「氏名」「生年月日」「性別」「住所」「住民となった年月」などが記載されています。
また、「世帯主の氏名と世帯主の続柄」と「本籍及び筆頭者氏名」は住民票に記載の有無を選択することができます。
住民票は、取得費用が1通につき300円〜400円で、「コンビニでの取得」・「オンライン申請での取得」・「郵送の取得」「市町村役場での取得」の4種類で取得することができます。
住民票は、相続手続きに必要不可欠な書類のため、あらかじめ取得しておくことをおすすめします。
2-6 印鑑登録証明書の取得にかかる費用
印鑑登録証明書とは、あらかじめ役所に届けていた印鑑が、捺印した印鑑と同じかを証明する書類のことです。
印鑑登録証明書の費用は1通につき300円で、「役所やサービスコーナーでの窓口」・「コンビニ」で発行することができます。
また、印鑑登録証明書は代理人でも取得することができます。
代理人が取得する際は、委任状などが必要なく、役所の窓口に印鑑登録証をもっていき、住所や氏名を正しく記載すれば発行することができます。
印鑑登録証明書には有効期限がないため、早めに取得しておくことをおすすめします。
3. 相続の手続きを各士業に依頼する場合で解説
個人で相続手続きを行うには、時間的にも知識的にも限界があるので、相続手続きに詳しい士業に相談することが重要になります。
しかし、士業のなかでも専門としている領域が異なるため、自身の相談内容にあった士業を選ぶ必要があります。
ここでは、相談内容の例をあげながら、それにあった士業をご紹介します。
3-1 相続で揉めている(揉めそう)な場合には弁護士に
遺産相続で揉めている(揉めそう)な場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
遺産相続のトラブルを弁護士に相談する最大のメリットは、弁護士が司法書士や行政書士・税理士などの士業には無い代理権を持っているということです。
代理権とは、本人の代わりに代理交渉を行える権利のことをいいます。
この代理権のため、弁護士は裁判や遺産分割の交渉や調停などの相続トラブルの代理を行うことができます。
そのため、相続トラブルで不安や悩みを抱えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。
3-2 相続税申告が必要な場合には税理士に
相続税申告が必要な場合は、税理士に相談することがおすすめです。相続税申告とは、基礎控除額以上の遺産を相続した相続人がおこなう手続きのことをさします。
また、相続税申告の手続きは税理士、または税理士登録している弁護士にしか行うことができません。
相続税申告を税理士に相談するメリットには以下のようなものがあります。
・相続手続きの手間を省くことができる
・納税額の過不足を防ぐことができる
・税務調査に入られるリスクを下げられる
・正確な相続税申告を行うことができる
そのため、相続税申告をスムーズに進めたい方や正確な申告を行いたい方は、お近くの税理士に相談し相続をスムーズに行いましょう。
3-3 不動産や土地の名義を変える場合には司法書士に
相続する不動産や土地の名義を変える場合は司法書士に相談することをおすすめします。司法書士は、裁判所や法務局などへ提出するための書類を作成することを専門としています。そのなかでも、相続に関する不動産登記の手続きが多いため、不動産登記の専門家ともいえます。
不動産登記とは、入手する不動産や土地が誰のものか決めるための手続きのことで、名義変更を行う所有権移転登記などがあります。
そのため、不動産登記で困った時は司法書士に相談することにより、スムーズに相続手続きを行うことができます。
また、所有権移転登記を司法書士に依頼する費用の相場は5万円〜10万円ですが、相談する事務所によって金額やサービス内容が異なるため注意が必要です。
3-4 書類代行だけ依頼したい場合には行政書士に
相続関係の書類代行だけ依頼したい場合は行政書士に相談することをおすすめします。
行政書士とは相続などの法律に関する書類作成の専門家であり、書類作成の代行やアドバイスのみの場合だと他の士業に相談するよりも安くなります。
しかし、行政書士は実際に起こっている相続トラブルを解決することはできないため、相続トラブルに発展する可能性が高い場合は弁護士に相談しましょう。
このように、相続に関する書類作成で悩んでいる場合は、行政書士に依頼し、スムーズに解決することをおすすめします。
また、行政書士には、相続人調査や相続財産調査なども依頼することができるため、自身の相談内容に合わせて相談すると良いです。
つぐなび編集部
この記事は、つぐなびを運営している株式会社船井総合研究所が公開しています。2020年04月のオープン以降、「相続をもっと身近に」をコンセプトに専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように、ご希望でエリアで司法書士・行政書士、税理士、弁護士を探すことができます。