初めて喪主を務める人をはじめ、葬儀のすべてを完全に把握している人は少ないことでしょう。
ここでは、大切な身内が亡くなるという大変なタイミングで少しでもスムーズに葬儀の手配が行えるよう、葬儀の全体的な流れやマナーなどを詳細に解説します。
目次
葬儀の種類
葬儀の形式には、一般葬・家族葬・一日葬・火葬式・骨葬・密葬・社葬などがあります。
まずは葬儀の形式を紹介します。
家族葬・一日葬・火葬式(直葬)
家族葬は家族中心で行う葬儀です。一日葬は通夜を省略し、葬儀と火葬のみとする形式です。
火葬式は直葬とも呼ばれます。通夜葬儀を行わず、簡単なお別れと火葬のみを行います。
骨葬
骨葬は、あらかじめ火葬を済まし遺骨になった状態で葬儀を行う形式です。骨葬が主流の地域もあります。
密葬
密葬は著名人の葬儀の際に、良く聞く言葉かと思います。
一般参列者を招いた葬儀やお別れ会を行う前に、少人数で葬儀を行う事です。
密葬を行う事で、近親者のみで心おきなく故人に向き合う時間を作ることができます。
社葬
社葬は会社が施主を務める葬儀で、会社にとっての功績者などが亡くなったときに行われます。
なお、樹木葬や散骨葬などの自然葬は、葬儀の方法ではなく埋葬方法です。
宗教や宗派
葬儀の形式は、宗派によって異なります。日本では殆どの方の葬儀が仏式です。
主な仏式の宗派には、臨済宗、日蓮宗、天理教、天台宗、曹洞宗、真言宗、浄土真宗、浄土宗があります。
仏式以外には神式やキリスト教式(カトリック、プロテスタント)、他にも様々な宗教があります。
葬儀を行う前に決めておくべき7つのこと
もしもの時に備え、以下のことをあらかじめ決めておくと良いでしょう。
1) 葬儀社
依頼する葬儀社を決めます。あらかじめ事前相談に行くなど情報収集しましょう。費用や担当者の対応、交通の利便性から決めると良いでしょう。
2)喪主
最も血縁の深い方が喪主を務めることが多いです。親族間での話し合いによって決めます。
3)宗教
もしもの時に備え、宗教者の連絡先をメモしておくと良いでしょう。
特に付き合いのある宗教者がいなければ、葬儀社や知人からの紹介、インターネットなどで読経をお願いする先を探します。
宗旨宗派を間違えることの無いようにしましょう。無宗派で行う場合は必要ありません。
4)葬儀の形式
一般葬・一日葬・直葬など、葬儀の形式を決めます。
5)規模
親族や友人、会社関係など、どの範囲まで連絡するかを決めリストにしておくと良いでしょう。
6)予算
葬儀にかける予算を決めます。葬儀費用には、葬儀社へ支払う費用、お布施など宗教者に支払う費用、火葬場やなその他支払う費用があります。
葬儀後にも埋葬などで費用が掛かることを考慮して予算を決めましょう。
7) 遺体の安置場所
遺体を亡くなられた場所から自宅もしくは葬儀式場へと搬送し安置します。
式場で葬儀をする場合は自宅に搬送すると再度搬送が必要となり、その分費用はかかります。
亡くなってから行うこと
1)葬儀社へ連絡
葬儀社に連絡し遺体の搬送を依頼します。
2)日程の決定
葬儀式場や火葬場、宗教者のスケジュールを照らし合わせて決定します。友引の葬儀は避ける傾向が強いです。
3)訃報連絡
親族、友人、会社関係、学校関係、近隣などに連絡を行います。
4)葬儀内容の打ち合わせ
葬儀の規模、プラン内容や費用について決定します。
5)必要品の準備
遺影写真や故人の遺品など必要なものや自身の喪服を準備します。
お通夜の流れ
1)納棺の儀
お通夜の前に納棺を済ませます。故人に白装束を着せます。柩に一緒に収めたいものがあれば、納棺します。
2)式場での打ち合わせ
供花の並び順や座席の数等を確認します。司会者と、式の流れについての打ち合わせを行います。
3)受付確認
受付担当者に挨拶し、感謝の気持ちを伝えます。受付の手順や香典の受け取り方法を説明します。
4)受付
参列者や僧侶が到着しますので、遺族が迎えます。参列者には受付で名前や連絡先を記帳してもらいます。
5)通夜式
読経は30分前後です。遺族・親族・一般参列者の順番に焼香します。焼香は葬儀スタッフが案内しますので、それまで座って待ちましょう。
6)通夜終了
喪主による御礼の挨拶があり、閉式となります。地域によっては通夜振る舞いを行います。
7)通夜振る舞い
地域によってしきたりが異なります。遺族が親戚や参列者をもてなします。
葬儀・告別式の流れ
1)打ち合わせ
司会者と式の打ち合わせがあります。弔電や弔事などがある場合には順番を決めます。
2)受付
参列者や僧侶が到着し迎えます。通夜同様、参列者には受付で名前や連絡先を記帳してもらいます。会社の社長など来賓扱いの方がいらっしゃれば、上座に案内します。
3)葬儀式
遺族、親族、一般参列者の順で焼香をします。
4)お別れの儀
柩に花を手向けます。
5)出棺
霊柩車に柩を運び、出棺時の挨拶が行われます。一般参列者はここで解散となります。親族はバスなどに乗ります。霊柩車を先頭にして火葬場に向かいます。
火葬~初七日法要の流れ
1)火葬
火葬場で読経後に火葬されます。火葬には1時間30分~2時間ほどかかります。
2)収骨
遺骨を骨壺に納めます。喪主から順に二人一組で箸を使って入れていきます。
3)初七日法要
本来は死後7日目に行いますが、火葬後に行う事が一般的になっています。
4)精進落とし
会食の前に喪主の挨拶があります。親戚をもてなす場なので、喪主は下座に座ります。
葬儀の費用を抑えるために
葬儀費用の全国平均は195万円
全国の葬儀費用平均は2017年日本消費者協会によると195万円。内訳としては、飲食を含む葬儀一式が150万円、お布施など宗教者への費用が47万円でした。
費用を抑えるためには、不必要な品を注文しないことです。葬儀社から棺や霊柩車のランクアップを勧められたら、本当に必要なのかよく考えてみましょう。
葬儀社から見積もりを貰う際は、見積もり以外に追加でかかるものにはどんなものがあるか聞いておきましょう。
また葬儀規模を小さくすればするほど、費用も抑えられる傾向があります。
参列人数が減れば飲食接待費用、式場使用料、会葬御礼品にかかる費用が減り、見栄えの良い祭壇を選ぶ必要も無くなります。
「参列者が減れば香典も減り、遺族の負担が増えるのではないか」と思うかもしれません。
しかし、香典は一般参列者よりも親族の方が高額になります。参列者の人数ではなく、親族の人数によって香典総額は大きく変わってきます。
ちなみに一般葬での香典総額は30万~90万円程。香典に対して半返しをすることを考えると、香典で葬儀費用は賄えません。
見積もりのチェックポイント
大切な人が亡くなって気落ちしている状況では冷静に判断できない可能性があります。費用を抑えるためには事前に検討することが大切です。
あらかじめ複数社に事前相談に行き、見積もりを比較すると良いでしょう。
比較する見積もりは、同等の内容にする必要があります。以下の物が入っているかをチェックしましょう。
見積もり比較をする余裕がなく、1社で打ち合わせを進める際も、以下の項目が提示された見積もりに入っているかを最初に確認しましょう。
あとから追加料金を請求されないよう注意をしましょう。
- 葬儀一式(基本プラン): 祭壇・祭壇の生花・棺・霊柩車・遺影写真・骨箱・病院からの搬送料・遺体保護用ドライアイス・後飾り祭壇など必要な物が一式セットになっています。セット内容は葬儀社によって異なります。葬儀社によって生花の量が違いますので、祭壇の写真もチェックしましょう。
- 斎場(式場)使用料: 葬儀式場と控室の使用料。葬儀が日延べする場合には、別途安置料がかかる場合があります。確認しておきましょう。
- 湯灌: 故人を納棺する際に、身体を清める儀式です。省略する場合もあります。
- 飲食費用: 通夜後の振る舞いや、精進落とし料理など。
- 会葬御礼品: 通夜葬儀に来られた方に渡す御礼品
- 火葬料金: 葬儀社によって、見積もりに入れる場合と入れない場合があります。比較時に注意しましょう。
- ハイヤー: 火葬場へ向かう際に親族が利用するバスやタクシーなど。自家用車を使用する場合には不要です。
- その他: 葬儀社によって、別途サービス料がかかる場合等があります。
喪主としてのふるまい方
通夜
参列者の席順や、供花の配置・弔電を読み上げる順番などを指示します。参列者が到着する時間になったら、受付近くで迎えます。
通夜式の前に宗教者に対して挨拶を済ませます。読経中のふるまい方は宗派によって異なりますが、参列者の焼香の際に立礼の役を行う場合が多いです。
読経後に親族代表としての挨拶を行います。通夜振る舞いの席では、故人に代わって弔問や生前のお礼をして回ります。
葬儀・告別式
葬儀式前は、通夜同様に参列者や寺院を迎え、閉式後には御礼の挨拶をします。喪主は霊柩車まで柩を先導して歩きます。
霊柩車まで柩に手を添える役目は、故人と親しかった親族が行います。喪主は位牌を持って霊柩車に乗り、火葬場まで向かいます。
精進落とし
精進落としの開始時に挨拶を行います。無事に葬儀を終えることができたことのお礼を伝えましょう。
食事が始まったら、遺族一人ひとりに挨拶して回ります。親族が帰る際には見送りをします。
葬儀のマナー: 遺族編
服装(男性)
男性は黒のフォーマルスーツに白無地のシャツ、黒無地のネクタイです。
タイピン、カフスなどは着けません。靴下や靴、ベルト、カバンなどの小物は全て黒で統一します。
喪主の葬儀の正装はモーニングですが、通常の喪服でも構いません。
服装(女性)
女性は黒のスーツやアンサンブルに黒ストッキング、黒のパンプスを着用します。
光沢のあるものや目立つものは控えます。できるだけ露出を控えた物を選びましょう。
アクセサリーは何もつけないのがマナーですが、真珠であれば身に着けても問題ありません。
参列者への声掛け
参列者に対しては、参列していただいたことや生前お世話になったことの感謝を伝えましょう。
タブーとされる言葉
「たびたび」「かさねがさね」などの重ね言葉は、不幸が重なることを連想させるためNGです。
「死亡」「自殺」など直接的な言葉や「四」「九」など縁起が悪い数字も避けた方が良いでしょう。
席順
祭壇に向かって右側、一番前の内側の席が喪主の席です。故人との血縁関係の濃い順に座ります。焼香順が決まっている場合は焼香順に座ります。
葬儀のマナー: 参列者編
本記事は遺族向けの記事となっていますが、念のため参列者のマナーにも触れておきます。
服装
男性であれば黒のフォーマルスーツ・白シャツ・黒無地のネクタイ、女性であれば黒のスーツやアンサンブルに黒ストッキングを着用します。
光物や派手な物を身に着けるのはマナー違反です。ただし、急な知らせを聞いて駆け付けた場合にはこの通りでなくとも構いません。
遺族への挨拶
遺族に挨拶する際には手短に弔意を伝えるようにしましょう。
故人の思い出話などをするのは通夜葬儀では大切なことですが、遺族に時間があることを察してからするようにしましょう。死因にはあまり触れない方が良いです。
お悔やみの言葉
お悔やみの言葉は、小さい声で短めにしましょう。例えば「この度はご愁傷さまでございます」や「心からお悔やみ申し上げます」といった言葉でお辞儀をします。
香典
香典は故人との関係などを考えて額を決めましょう。友人関係であれば3,000~1万円、近隣の方であれば3,000~5,000円あたりが相場です。香典袋は不祝儀袋を使用します。
表書きには仏式であれば「御仏前」や「御香典」、キリスト教であれば「献花料」や「御花料」、神式の場合には「御玉串料」や「御榊料」と書きます。お札の枚数は奇数になるようにし、新札は使用しません。
数珠
108個の玉があるものが正式と言われていますが、略式数珠が一般的です。数珠の色に決まりはありません。房が下になるように左手に持ちます。
受付係
受付係は遺族に代わって参列者をお迎えする係です。この係になった場合は、早めに場に到着しているようにしましょう。
参列者に対して「この度はお忙しい中ありがとうございます」などと来ていただいたお礼を伝えます。
現金を預かることになるので、事前に遺族から対応の仕方を聞いておきます。化粧室や駐車場の場所なども把握しておくと良いでしょう。
弔辞、弔電
忌み言葉や重ね言葉を使用しないように気を付けましょう。弔電は読み上げる順番を決める手間を考慮し、なるべく早めに届くように手配しましょう。
焼香
焼香の前に、遺族に一礼します。数珠を左手にかけ、右手で抹香をつまみ額におし頂いてから、香呂の炭の上に静かにくべます。
合掌後、遺族に一礼します。焼香の回数作法は宗派によって異なります。
参列する葬儀の宗派を事前に調べることは難しいので、親族や寺院の焼香を見て同じ回数行いましょう。気持ちを込めてお参りすることが大切です。
会食
会食には故人への供養や、遺族からのお礼の気持ちが込められています。
誘われたら断る理由がない限り参加するようにしましょう。故人の思い出話などするのが良いでしょう。
お清めの塩
お清めの塩は、帰宅時に自宅に入る前に使用します。ひとつまみを胸、背中、足元にかけ、手で払います。この考え方は宗派によって異なっています。
浄土真宗では「死は穢れではない」と考えるため、お清めの塩が用意されないこともあります。
葬儀終了後にやるべきこと
挨拶回り
僧侶、世話役、故人の恩人、来賓、受付担当者などに挨拶回りを行います。
現金の整理
引き継いだ香典を確認します。また、世話役などお世話になった方に、現金立替がなかったかを確認しましょう。
香典やお供えの整理
香典や供花、盛篭、その他お淋し見舞いなど、誰からどんな心遣いをもらったか整理します。
各種事務手続き
年金の停止、死亡保険金の請求、相続の申述、社会保険の埋葬料請求、医療費還付金などを行います。
忌明けに向けた準備
香典返し、本位牌や仏壇の準備等が必要です。
以上、葬儀や関連する手続き等をまとめました。遺族は大切な人が亡くなった直後から、やらなければいけないことが盛りだくさんとなります。
これらの項目を詳細に覚えておく必要はありませんが、全体的な流れをざっくりと頭に入れておくと、そのタイミングが来てもパニックにならずに済むのではないでしょうか。
澤田ゆか
葬祭ディレクター技能審査1級。大手互助会系の葬儀社にて9年勤務し、管理者の経験を経て退職。フリーの葬儀アドバイザーとして葬儀や終活相談、葬儀スタッフの育成を行っています。