【相続財産開示】弁護士が財産調査を行った事例

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相談前:【相続代表者が相続財産を開示しないため財産調査を依頼されたケース】

ご両親がここ数年の間にお亡くなりになられた方からのご相談。

現段階は相談者と兄の2名が相続人。
お母様が1年前にお亡くなりになり、同居の兄が手続きをおこなっているはずだが、進んでおらず、相続財産の内容や進捗状況を尋ねても答えてくれない。
父が亡くなったのは数年前であるが、その際は母が全財産を相続したと聞いているが、今では確かめようもない。
両親の相続財産について兄を介さず調査したいとの相談に来られました。

▼問題点
・1年前に亡くなった母の遺産分割をおこなうための相続財産開示を兄がおこなわない。
・自分だけで相続財産の調査をおこなおうとしたが、通帳などの資料が手元にない。
・取引のあった銀行や信用金庫などは、被相続人の地元だけにしか支店がないケースもあり、遠方に住んでいる相談者が直接出かけるのは困難。
・父の相続手続きが完了しているかを調査したいが、今からでも可能かを知りたい。
・公平な遺産分割にするため、使途不明金がないか預貯金の出勤履歴の確認を希望。

相談後:財産開示をおこなわない親族への対応

▼当事務所からおこなった提案の内容
遺言を残さずにお亡くなりになった場合、すべての相続人で遺産分割協議をおこない、相続財産の分配を決めるのが基本的な進め方です。

遺産分割を公平におこなうためには、分割する相続財産を隠すことなく開示して、すべての相続人が知ることが重要になります。

しかし、特定の相続人が預金通帳などの資料を管理していたときは、他の相続人に漏れなく開示しないことも珍しくありません。

今回の事例がこの状況にあり、数年前の亡き父の相続も、「自分がしておく」といって、開示も手続きの終了も通知を受けていない状況です。

このようなときは、相談者から金融機関に対して全店照会を実施すると、預貯金の口座の有無の確認ができます。

調査によって口座があることを確認した場合、残高証明書を請求すると、お亡くなりになった時点の預貯金残高の把握が可能です。

このとき、想定した金額より大幅に残高が少ないと感じたときは、取引履歴の紹介を金融機関に対しておこない、相続開始前後の入出金の記録を入手できます。

使い道がわからない出金が判明したときは、すべての相続人の間で情報を共有し、適切な処理を検討するなどの対応を協議しなければなりません。

預金口座の有無の確認の他、金融機関に対する残高証明書や取引履歴の請求は、取引のあった金融機関の名称を把握するだけで誰でもできる調査です。

金融機関は帳簿保存義務が10年間あるため、相続手続きが完了した後も10年前まではさかのぼって調べることはできます。

また、遠方にお住まいのため、金融機関に直接出かけるのが難しいときは、事情を説明すると、ほとんど断られることはなく、郵送により対応可能です。

今回は、父の遺産分割協議書は見つかっていたことから、母の取引先もおおよその見当はつきました。

しかし、手続きに不慣れな方が、金融機関に対しての事情説明や書類の発行依頼をおこなうのは、それほど簡単ではありません。

そのうえ、金融機関では、残高証明書や取引履歴の発行手数料は1通につき数百円程度かかりますが、支払いは店舗の窓口かその他の口座(別投預金口座)への振り込みです。

原則として、別投預金への振り込みは窓口だけの対応になるため、遠方にお住まいの方や仕事で平日に時間が取れない方には厳しい作業になります。

その他、郵送で請求する場合、手続きの進め方の確認や書類に不備などがあった場合についての問い合わせは、電話のみの対応です。

金融機関の営業時間に電話をかかることも難しい人は多く、専門用語のためわかりにくいこともあり、想定以上に時間がかかってしまいます。

そこで、当事務所から思い当たるすべての金融機関に対して問い合わせ、講座の有無の他、残高証明書と取引履歴を請求し、結果をまとめた財産目録の開示を提案しました。

▼提案に対する結果
・取引があると思われる金融機関すべてに全店照会をおこない、預金口座の有無を確認しました。
・把握した預金口座の残高証明書および取引履歴の請求をおこない、相続開始における預金残高と入出金記録の確認を実施しました。
・調査により判明した結果を基に作成した財産目録を相談者に引き渡しました。
・取引履歴の確認作業により、多くの不明な入出金が判明し、使い込みの可能性があるため、今後の対応を助言しました。

事務所コメント:財産調査に弁護士を依頼する際の注意点

今回の事例では、相談者の手元に預金通帳などの資料が一切ない状況でしたが、数千万円の財産があることと、多くの使い道がわからない出金が調査により把握できました。

これまでの経緯を考えると、兄が使い込みを認めて相談者との話し合いをするとは予想できず、当事務所は、弁護士とともに交渉する方法をアドバイスしました。

相談者自身が検討された結果、まず、自分から兄に対して話し合いを持ち掛け、進展しないようであれば弁護士に相談するとの返答でした。

遺産分割協議において、他の相続人が相続財産を開示しない場合、躊躇することなく弁護士に依頼するのも打開策です。

とはいえ、依頼者の利益保護をおこなうのが弁護士の業務であるため、相手方と対立することになります。

このような展開になると、相手方も弁護士をつけて対応することになり、長期化することもやむを得ません。

また、当事務所に相談が寄せられた経験から申し上げますが、弁護士は交渉するのが仕事であり、金融機関の調査には不慣れな方もいらっしゃいます。

そのため、依頼しても調査が進まないことや、調査は相談者がおこなう条件で引き受けるケースもありました。

ところが、財産の開示を受けられない相続人が、ご自身で相続財産を調査して相手に話し合いを求めると、意外とスムーズにまとまることもあります。

相手が対決姿勢を鮮明にしてから弁護士に依頼しても間に合うため、まず、相続手続きを熟知した専門家に相談して財産調査をおこなうなど、円満な解決を目指しましょう。

* * * * * * * * *

この事例を解決した事務所

 

司法書士法人東京横浜事務所(東京都 渋谷区)

相続専門の国家資格者が、相続手続きをまるごとサポート。同事務所の「相続まるごとおまかせプラン」では、専門的手続きはすべて代行可能であることに加え、約100種類の手続きについても包括的にアドバイス・サポートが可能です。面倒なことは専門家に「まるごとおまかせ」できます。

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