未成年のうちに仮申告し、成人後に修正申告することで相続税を節税した事例

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相談前:【成人年齢直前の相続人の成人後に遺産分割協議をおこなったケース】

ご主人がお亡くなりになった方からのご相談。

妻とお子さん3名の合計4名が相続人。
お子さんの中に来年成人する19歳の未成年者がいる。
相続人に未成年者がいる場合、通常の相続手続きと異なることを知り、相談に来られました。
注)2022年4月1日より成人年齢は18歳に引き下げられました。

▼問題点
・相続人に親権者と共に未成年者が含まれる場合、遺産分割協議をする際に特別代理人の選任しなければならない。
・遺産分割協議に特別代理人が参加する場合、未成年者(本人)の法定相続分を確保することが原則。
・相続財産に不動産など事業関連の財産が多いため、財産が分散しないことを希望。
・妻が金融資産を多く相続し、今後の生活に支障をきたさないようにしたい。

相談後:成人年齢まであとわずかな未成年の相続人がいるときの対応

▼当事務所からおこなった提案の内容
相続手続きの遺産分割協議では、未成年の相続人がいるときは、本人の代理として親権者が参加します。

しかし、今回の事例のように、相続人に親権者と未成年者が両方含まれるときは、親子の間で利害関係が対立するため、親権者が代理人として参加することは不可能です。

このようなときは、家庭裁判所が親権者に代わる特別代理人を選任し、遺産分割協議に参加します。

この特別代理人を選任する際の申立には、未成年者(本人)が法定相続分を確保する原則に基づく遺産分割協議書案も提出しなければなりません。

これは、特別代理人が未成年の相続人の権利を守るための立場であることから、未成年者に不利になる遺産分割協議書を認めないことが理由です。

しかし、今回はこの「特別代理人が参加する遺産分割協議は、未成年者が法定相続分を確保する原則」がネックでした。

被相続人が不動産業を手掛けていたため、相続財産のほとんどが自社株式や取り扱い物件など、事業関連の財産だったからです。

法定相続分を確保すると、事業関連の財産を未成年者が相続することになります。

しかし、兄や姉たちが不動産事業を引き継ぐことは決まっており、学生である未成年者は相続しても事業経営への参加も有効活用もできない状況です。

家族としては、財産の分散を避け、事業に影響が出ないようにすることを希望しておられました。

また、被相続人は60代前半でお亡くなりになったため、妻が金融資産を多く相続し、この先安心して暮らせるようにしたいということも家族で一致した考えです。

このような状況から、当事務所では、未成年者が成人するまで相続手続きを待ち、法定相続分と無関係の遺産分割協議をすべきかとも考えました。

ところが、今回の事案は相続税の申告が必要なため10か月以内におこなわなければならず、成人するのは相続開始から12か月後であったため先延ばしにできません。

期限内に遺産分割協議を成立させて申告すると、小規模宅地等の特例や配偶者控除などの軽減特例を適用できます。

特に、今事例は、軽減特例を適用すると相続税に1,000万円以上の節税効果があることから、期限内申告を目指すべきです。

このようなときは、申告期限である10か月以内に「申告後3年以内の分割見込書」を添えて法定相続分による未分割申告(仮申告)を済ませることもできます。

3年以内に遺産分割協議を成立させ、修正申告(更正の請求)により、さかのぼって特例を適用する対応も可能です。

修正申告で差額の還付を受けられるとはいえ、仮申告では相続税を納付しなければなりませんし、仮申告と修正申告の2回手続きをおこなうための税理士報酬もかかります。

その点を当事務所と連携する税理士の間で、特別代理人を選任した場合と成人後に手続きをおこなう場合を比較、検討しました。

さらに、ご家族の将来設計も考慮した、ベストな提案をすることができました。

▼提案に対する結果
・特別代理人を選任して期限内に申告をおこなうより、仮申告の後修正申告をするほうが節税になることが、比較した結果、判明しました。
・未成年の相続人が成人する間を活用し、戸籍の収集や金融機関から残高証明書の取得を済ませ、遺産分割協議並びに相続税の申告に添付する書類を揃えました。
・相続開始から10か月までの相続税の申告期限までに、未分割申告書を提出し、相続税を納付する仮申告の手続きを完了しました。
・成人年齢である満18歳を迎えた当日に遺産分割協議に署名と捺印を頂戴し、直ちに更正の請求手続きをおこなって、相続税の還付を受けました。
・遺産分割協議成立を受け、速やかに不動産の相続登記並びに金融機関への解約手続きを代行し、業務を完了しました。

事務所コメント:未成年の相続人の年齢を考慮する際のポイント

相続開始の時点に未成年であった相続人も、遺産分割協議をおこなうときに成人年齢に達していれば、本人の意思により遺産分割協議に参加することは可能です。

成人するのを待って遺産分割協議をおこなうと、特別代理人の選任に手間を取られることもなく、遺産分割に制限を受けることもありません。

通常、相続の開始後、速やかに遺産分割協議をおこなうと思い込んでいますが、協議の開催期限にきまりはないため、相続人の同意があれば開催時期を遅らせることもできます。

未成年の相続人があと1年程度で成人する場合は、経済的な問題がなければ、待つことも選択肢の一つとして検討しましょう。

注意が必要なのは、今回のような相続税の申告義務が発生した場合は、慎重に判断してから決定します。

小規模宅地等の特例や配偶者控除などの軽減特例の適用を受けようと考えているときは、期限内に未分割申告をおこない、相続税を納めなければなりません。

修正申告によって還付が受けられるといっても、納付するときにはかなりの負担になります。

家族の状況や相続財産の内容次第では、特別代理人の選任をおこなって遺産分割協議を期限内に済ませるほうが、費用も手間も節約できることも可能です。

成人するのを待つか待たないかは、安易に判断せず、相続問題に詳しい専門家に相談しましょう。

* * * * * * * * *

この事例を解決した事務所

 

司法書士法人東京横浜事務所(東京都 渋谷区)

相続専門の国家資格者が、相続手続きをまるごとサポート。同事務所の「相続まるごとおまかせプラン」では、専門的手続きはすべて代行可能であることに加え、約100種類の手続きについても包括的にアドバイス・サポートが可能です。面倒なことは専門家に「まるごとおまかせ」できます。

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