
司法書士藤井真司事務所の代表、藤井真司司法書士は、相続の現場に40年以上携わってきました。
年間200件を超える相続案件を手がける中で、「家族の絆こそが最大の財産」という思いを強くしてきたといいます。その原点には、学生時代の壮絶な闘病体験がありました。
今回は、相続の専門家としての歩みと、家族の絆を深める相続の在り方について話を伺いました。
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結核が導いた「人との向き合い方」
~司法書士という天職との出会い~
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―40年のキャリアの原点は、学生時代の入院体験だったと伺いました。
当時の経験から、人の生死とどのように向き合うようになられたのでしょうか。

私は大学生の時、麻雀にのめり込んで不規則な生活を送っていました。アルバイトと徹夜の麻雀を繰り返し、食事も満足に取らない日々が続いたある日、突然の喀血を経験したんです。検査の結果、「結核」と診断され、9ヶ月の入院を余儀なくされました。
実は私の家系では、祖父と叔父が同じ病気で亡くなっています。父は「自分の子どもまで結核になってしまった」と心配して駆けつけてくれました。当時の結核は、薬の効果と病気の進行の競争でした。数日前まで同じ病室で話をしていた方々が、亡くなっていくのを目の当たりにしました。20歳そこそこの私にとって、それは人の死がとても身近にある現実を突きつけられた経験でした。
その後、外出許可が出た際に近くの書店に行く機会がありました。専門書のコーナーで、黄色く光る背表紙の本が目に留まりました。そこには「司法書士」という4文字が書かれていて、パラパラとページをめくった瞬間、「これになろう」と直感的に思ったんです。
―司法書士の資格を取得されてから、なぜ相続分野に特化されたのですか。
当初から相続専門を目指していたわけではありません。しかし、相続の仕事を通じて、戸籍を扱う機会が多くなり、おのずと戸籍をたどっていくと、その方が生まれてから亡くなるまでの人生が見えてくることに魅了されていきました。直接お会いしたこともない方の結婚、お子さんの誕生、離婚、転居など、人生の節目が浮かび上がってくるんです。
遺言作成の仕事も増えていき、公正証書遺言を作成する際の証人として多くの方と関わるようになりました。遺言があることで相続争いを防げるケースもありましたが、一方で遺言があっても揉めることもあり、その難しさも実感しました。

印象深い経験があります。ある時、「長男に全ての財産を相続させる」という女性の遺言を巡って、相続人である4人のお子さんから「偽物だ」と問い詰められました。2時間近く正座して説明を続けた末、長女が「母の意思だと分かりました」と理解を示してくれたのです。
このような経験を重ねる中で、相続は単なる財産分けではなく、故人の遺志を伝え、残された家族の関係を考える重要な機会なのだと実感するようになりました。
相続争いは、相続人それぞれが自分の要求を際限なくし続ければ、遺産の総額を超えてしまいます。相続で大切なのは譲り合いの精神。それこそが、相続を円満に進めるカギなのです。
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"家族写真"が語る本当の財産
~相続の現場から見えてきたもの~
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―相続は家族の絆を深める機会にも、逆に家族をバラバラにしてしまう原因にもなり得ます。先生は相続を通じて、どのような家族のあり方を伝えていきたいとお考えですか。
相続の相談でお宅に伺うと、必ずと言っていいほど、昔の家族写真が飾ってあるんです。若いご両親と、子どもたちが笑顔で写っている。その写真を見ると、家族みんなが幸せそうで、未来に希望を持っている様子が伝わってきます。
でも、いざ相続となると、中には相続財産ばかりに目を向けて、その写真に写っている「家族の絆」という本当の財産を失いかねないような主張をする方が少なくありません。権利の主張に終始してしまうと、写真に写る笑顔の家族が希望を持っていた未来という、本当の財産を失ってしまう。
私はいつもその写真を指さして「これが本当の財産だったのではないですか」とお伝えするんです。

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絆を守るための新しい挑戦
~バスツアーから始まる家族の対話~
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―藤井先生は、バスの中で親子で終活について語りあえる『終活バスツアー』を主催されていますが、どのような方に参加していただきたいとお考えですか。
具体的には5つのケースの方に特にお勧めしています。2度以上結婚されている方、前の結婚で子どもがいらっしゃる方、不動産をお持ちの方、おひとりさまの方、そして相続に不安を感じている方です。
終活バスツアーで最も印象的なのは、見知らぬ参加者同士が自然と打ち解けていく様子です。最初は皆さん遠慮がちですが、2時間ほどバスで走っているうちに、次第に会話が弾んでいく。被相続人となる親世代同士、相続人となる子ども世代同士が出会うことで、参加者の方々が安心感を得られるんです。
日々の生活では、なかなか親子で相続の話をする機会がありません。子が親に話を切り出すと「私の財産を狙っているの?」と誤解されたり、親が子に話を持ちかけると「まだ先の話でしょう」と避けられたりする。そんな中で、このバスツアーは親子の対話のきっかけになればと考えています。
セミナーや相談会はもちろん、写真撮影や美味しいお弁当など、楽しい企画も用意しています。リラックスした雰囲気の中で、自然と相続について考えていただければ幸いです。
―司法書士藤井真司事務所では『相続相談は何回でも無料』という方針を掲げていらっしゃいますが、この決断に至った背景をお聞かせください。

相続の相談というのは、簡単には本質が見えてこないものです。例えば30分や1時間と区切って「では本題を手短に」とお願いしても、実は一番大切なことが最後まで出てこないことが多い。言いづらかったり、恥ずかしかったり、変に思われるのではないかと躊躇されるんですね。
ですから、時間を区切らずに、ご相談者の方が本当に話したいことを話せる環境を作ることが大切だと考えています。確かに、相談料を取らないというのは思い切った決断かもしれません。でも、問題の本質を理解し、最適な解決方法を見つけるためには、こうした姿勢が必要です。
時には弁護士さんへの相談を提案したり、他の専門家と連携したりすることもあります。大切なのは、目の前にいらっしゃる方の問題を解決すること。そのためには、まず十分にお話を伺うことから始めたいと思っているんです。
―最後に、相続でお悩みの方々へメッセージをお願いできますか。

相続というと、どうしても財産の分け方や手続きの話に目が向きがちです。でも、本当の相続とは、お金や不動産だけでなく、家族関係を受け継いでいくことです。
皆様の家に飾ってある家族写真を見ると、みなさん笑顔で写っている。その頃は誰もが、家族の未来に希望を持っていた。その描いていた未来の家族関係こそが、本当の意味での"財産"です。ですから、相続で悩まれている方は、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。家族の絆という何物にも代えがたい財産を、どう守り、次の世代に伝えていくのか。
エンディングノートや遺言書の作成から具体的な相続の手続きまで、ご家族の状況に応じて一緒に解決方法を考えていきたいと思います。まずは気軽にご相談ください。必ず道は開けるはずです。
