家族が亡くなった時、遺品整理をするにあたって、クレジットカードの処理でつまずいてしまう方は多いです。クレジットカードは金銭に関わるものであるため、なるべく早く処理したいと考えるはずです。
しかし、本人以外に解約手続きが可能なのか?という疑問を持つでしょう。実は、クレジットカードは家族や相続人であれば簡単に解約手続きを済ませることができるのです。
クレジットカードの処理は意外に簡単なので、焦らず慎重に行ってみてください。
今回は、家族が死亡した時のクレジットカードの解約について解説していきます。クレジットカードの処理方法はもちろん、クレジットカードに関する相続について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. クレジットカード契約者が亡くなった際の注意点
1-1 引き落とし口座を凍結してもクレジットカードの解約にはならない!
クレジットカードは、引き落とし口座が凍結しても自動的に解約されることはありません。引き落とし口座の解約を行った場合も、別途でクレジットカードを解約する手続きをする必要があります。
まずは、家族が死亡した時にどうしたらよいのか、解約方法にはどのようなものがあるのかなどを解説していきます。
1-2 死亡した人が契約者となるクレジットカードを把握しておこう
どのようなクレジットカードを持っていたのかを把握するために、財布やカードケースをチェックしましょう。他にも、通帳の引き落としから確認する方法などがあります。
一目でクレジットカードだと判断できないカードも数多く存在するため、早急に解約しておきたいという場合は注意が必要です。
以下のようなカードには、クレジット機能がついていることもあるため、見落とさないように注意しましょう。
・銀行のキャッシュカード
・デパートの会員カード
・スーパーやドラッグストアのポイントカード
・ガソリンスタンドのカード
・電車など交通系のICカード
・航空会社のマイルが貯まるカード
一例としては、
・T-card
・高島屋
・イオンカード
・マツモトキヨシ
・Pontaカード
・ENEOS
・JR西日本
・ANA
・JAL
などが挙げられます。
クレジット機能の有無を見分ける時は、カードにVISAやJCB、MASTER CARDなどのマークを確認すると分かりやすいのでおすすめです。
1-3 カード会社へ連絡しよう
使っていたクレジットカードが把握できたら、1枚ずつ解約手続きを行いましょう。契約者が死亡した時は、ほとんどの場合、電話での解約手続きが可能です。クレジットカードの裏面を見ると、電話番号が記載されているので、そのお問合せ先に連絡してください。
ちなみにクレジット会社側が受付に対応できるのは、家族など法定相続人のみとなっています。確認のために戸籍謄本や除籍謄本、死亡診断書などの提出が必要になることもあります。
場合によっては、書類の記入などを求められるケースも存在するなど、各カード会社によって対応が異なるので、それぞれ確認してみてください。
ここで注意しておきたいのは、クレジットカードの未払債務についてです。もし未払いの利用料金があった場合は、引き落とし口座から引き落とされたのを確認してからカードの解約を行うのが前提となります。
2. クレジットカードを放置するとどうなる?
次に、クレジットカードを放置するとどうなってしまうのか見ていきましょう。
2-1 カードが止まることはない
先ほどもご紹介した通り、クレジットカードを解約するには手続きを行わなければカードが止まることはありません。どれだけ放置し続けたとしても、手続きを行うまで契約した状態となります。
クレジットカードが自動的に解約されることはありませんが、契約者が死亡した場合、クレジットカードを解約しなければならないという決まりはありませんので安心してください。
2-2 クレジットカードの相続(名義変更)は不可
クレジットカードは相続の対象にならないため、相続人が亡くなった家族などのクレジットカードを名義変更して利用することはできません。もちろん、貯めていたポイントなどの相続も不可能です。
契約者が死亡した後に相続人など家族がカードを使ってしまうと、利用停止や強制解約になるなどのトラブルが発生するので注意しましょう。
ただし、ANAマイルやJALマイルの相続は可能なので、マイルが余っている場合は各会社で手続きを行ってください。
また、海外旅行傷害保険が自動付帯されているについてもよく確認しましょう。海外旅行傷害保険は保障内容によって、旅行中に病気になったり怪我をしたりして死亡した場合に支払われる保険金です。
カードの契約者が死亡した時は、相続人に保険金が支払われることになります。海外旅行傷害保険がついているのは、ゴールドカードやプラチナカードです。
まれに年会費が無料のクレジットカードにも付帯されているので、しっかりとチェックしておくと良いでしょう。
3. 放置によりお金が発生する場合も
放置することで罰則などが与えられることがないとはいえ、無駄なお金がかかってしまうこともあるので注意が必要です。
3-1 年会費に注意しよう
特にクレジットカードには、年会費がかかるものも存在します。カードによっては数万~数十万円の年会費がかかるカードもあるため、できるだけ早めに把握することが大切です。
解約するべきクレジットカードを全て把握するためには、個人信用情報機関を利用するのも1つの方法です。
日本信用情報機構(JICC)、貸金業法指定信用情報機関(CIC)、全国銀行個人信用センター(JBA)の3つが主な個人信用情報機関です。
個人信用情報機関は、クレジットカードの契約者との関係が確認できる戸籍謄本や本人確認書類などと引き換えに、情報を開示してくれます。
とはいえ、闇金や個人間での貸し借り、連帯保証契約などの情報は把握できないため、注意してください。
3-2 有効期限も要チェック
年会費が引き落とされる前に解約したい場合、有効期限をチェックするのもおすすめです。
年会費は原則、1年に1度の引き落としとなるため、クレジットカードに記載された有効期限を見れば年会費が引き落とされる月を把握できます。解約を焦らなくても、記載されている月までに解約手続きを行えば、年会費を支払わなくて済むのです。
ちなみに、年会費がかかるカードが放置された場合、名義人の引き落とし口座の残高がゼロになるまで引き落とされ続けるので注意してください。
4. 残債が残っていた場合はいったいどうなるの?
使用した分の料金が支払われていた場合はそのまま解約できますが、支払われていなかった場合は、2つの選択肢からどのようにするかを決めなければなりません。
ここではその2つの選択肢について詳しく解説していきます。
4-1 相続人に返済義務が移動する
残債が残っていた場合の1つ目の選択肢は、「その支払を引き継ぐ」というものです。基本的には相続人が支払いを引き継ぐことが多くなっています。
そのクレジットカードの引き落とし口座に利用料を支払える額が入っていればそのまま引き落とされるので、問題ありません。
しかし、引き落とし口座に貯蓄がなかった場合は、振り込みなどで対応する必要があります。
4-2 相続放棄を行う
2つ目の選択肢として、「相続放棄」が挙げられます。多くの債務が残っている場合は、手続きを行うことで全ての相続を放棄することが可能になります。
契約者が死亡した場合、クレジットカードの未払い額は、基本的に相続人が一括で返済しなければなりません。
あまりにも多額となると、相続放棄せざるを得ないこともあるでしょう。
しかし、相続放棄の手続きを行ってしまうと、プラスとなる遺産も手放さなければなりません。
プラスの遺産とマイナスの遺産を合わせた時、最終的にプラスになる場合は「限定承認」を選択するのがおすすめです。
限定承認とは、相続したプラスの遺産からマイナスの遺産を返済し、余ったプラスの遺産をそのまま相続するという方法です。
ちなみに、相続パターンは相続放棄と限定承認の他に、「単純承認」というものもあります。
単純承認では、プラスやマイナス関係なく全ての遺産を相続するものです。
5. 家族が把握していないクレジットカードがある場合は?
家族が死亡すると、やるべきことが多く、忙しくなりがちで、クレジットカードを全て把握するのも簡単なことではないでしょう。何度も言うように、契約者が死亡した場合、クレジットカードをすぐに解約しなければならないという決まりはないため、そこまで神経質になる必要はありません。
また、全てを把握していなくても、カードの存在に気付くキッカケも多くあります。例えば、未払いの利用料があった場合、数か月以内に督促状が届きます。督促状を見て、初めてクレジットカードの存在に気づくケースも多くあるのです。
他にも、カード更新時期に新たなカードが届いたり、銀行口座の年会費の引き落としで気づいたりと、きっかけは様々です。全てのカードを把握できないということはよくあることなので、ある程度整理ができている場合は気にし過ぎないようにするのも大切です。
6. まとめ
今回は、家族が死亡した時にクレジットカードを解約する際の注意点をご紹介してきました。
クレジットカードは解約手続きを行うまで、解約されることはありません。しかし、契約者が死亡してしまったクレジットカードについては、放置しても罰則が与えられることはありません。
とはいえ、無駄なお金がかかってしまうため、年会費のかかるクレジットカードには注意してください。
年会費のかかるクレジットカードでも、有効期限をチェックすることで解約時期などを遅らせることも可能です。家族が死亡すると忙しい時期が続くため、あまり考え込みすぎないようにするのも大切です。
スムーズに解約手続きを進めていきたい場合は、個人信用情報機関を利用してみるのも良いでしょう。
債務が残っている場合、相続人に支払い義務が生じることについても覚えておいてください。相続パターンを慎重に選ぶことによって、相続人の負担を軽減できるため、しっかりと考えてみてください。
また、司法書士や行政書士など相続手続きの専門家に相談することも1つの方法です。ぜひご検討を。
この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。