固定電話の利用には電話加入権が必要です。すでに契約している固定電話の名義が故人であった場合、電話加入権はどうなってしまうのでしょうか。
今回は故人が契約していた固定電話に関する相続や名義変更の方法について解説します。
目次
1. 固定電話の契約者死亡後、相続手続きは必要?
まずは、故人が契約していた固定電話を引き続き使うために知っておきたい電話加入権や相続手続きの必要性についてご紹介しましょう。
1-1 固定電話の契約者が死亡したら相続手続きが必要
固定電話の契約者が死亡しても契約は自動的に解約されることはありません。
そのため、解約手続きをしない限りそのまま基本料金を支払って使うことは可能です。
しかし、死亡した契約者の名義のままだと不都合が生じやすいので、名義や支払い方法の変更といった相続手続きを忘れずに行ってください。
1-2 電話加入権(NTT契約)とは?
NTT東日本・NTT西日本のアナログ回線と契約する権利を電話加入権と呼びます。電話事業がスタートしたばかりの頃は、固定電話は無料で使えました。
しかし、戦後に日本電信電話公社が電話回線を引くための電柱や電線を整備するために資金調達を目的に、設置負担金の支払いを求めるようになります。
設置負担金を支払う代わりに、電話回線を引ける権利として電話加入権が与えられるようになったのです。
以前は8万円や7万2,000円と高額な価格を支払って取得できましたが、現在は固定電話の利用者が減った背景もあり、2005年3月以降は3万6,000円までに引き下げられています。
なお、NTT以外が提供している固定電話サービスやインターネット回線を用いたIP電話・光電話の場合、電話加入権は必要ありません。
また、NTTでも最近は電話加入権が不要のプランもあるので、固定電話の契約に必ずしも電話加入権があるということもありません。
1-3 電話加入権(NTT契約)は相続財産に含まれる
電話加入権は相続財産に含まれるので、契約者が死亡した後は解約以外に承継することも可能です。
承継の際は相続税の課税対象にもなります。
使用している電話の種類やプランによっては、電話加入権が不要な電話である可能性もあります。
相続手続きの前に電話加入権の設定について事業者に確認を取っておくと良いです。
電話加入権が設定されていない電話でも事業者によっては相続人などに承継できる場合があるので、そちらも確認しておきましょう。
財産評価の基準
電話加入権は相続財産となるので財産評価が可能です。
相続税法財産評価基本通達では、電話加入権の評価基準を以下のように定めています。
取引相場のある電話加入権
取引相場のある電話加入権の場合、課税時期の通常取価額に値する金額で評価されます。
取引のない電話加入権
売買実例価額等をベースに電話取扱局ごとに国税局長が定める標準価額(2020年時は全国一律1,500円)から評価されます。
一般的な電話加入権はこのケースに該当するので、標準価額を使って評価することになります。
なお、上記の取引相場のある電話加入権は取引価額からの評価が基本ですが、こちらの標準価額で評価することも可能です。
特殊番号の電話加入権
特殊番号は、42番や4989番などの良いイメージを与えない電話番号、100番、119番のような特殊な用途で用いられる電話番号が該当します。
このケースでは上記2つのどちらかを元に評価した金額を基に、売買実例価額や精通者の意見価格などを参考に増減した価額で評価します。
少額でも申告しよう
電話加入権自体は少額なので、相続税に大きく響くことはありません。
それでも財産の1つには変わりないので、たとえ1,500円の少額の評価でも申告するようにしましょう。
今までは個別に評価・申告が行われてきましたが、2021年1月1日以降は家庭用財産として一括評価が認められています。
家庭用財産とは、細かい個別財産をまとめ、5万円以下のものを一括申告する方法です。
2. 電話加入権(NTT契約)の相続で得られるメリット
最近はスマホの普及もあって固定電話を利用しない人が増えているので、電話加入権を相続するべきか悩む方も多いでしょう。
電話加入権の相続にはメリットもあるので、安易に解約するのはおすすめしません。
具体的にどんなメリットがあるのかご紹介します。
2-1 電話番号変更の旨を伝える必要がない
固定電話の番号を緊急連絡先などに登録・指定している場合、解約すると全て変更の手続きが必要です。
しかし、相続して引き続き使える状態であれば、わざわざ変更の旨を伝えたり、手続きをしたりする手間が省けます。
また、親戚や知人などの中にこちらの電話番号しか知らない相手がいた場合、解約や変更の旨が伝わらないと音信不通となり、困らせてしまう可能性もあります。
電話加入権を承継すれば、その心配もなくなります。
承継後に光電話に転用したり、別の光回線に乗り換えたりしても、固定電話で発番された電話番号は引き続き利用できるメリットもあります。
2-2 災害時の連絡手段に使える
どこからでも自由に電話できるスマホは便利ですが、災害により基地局やケーブルが機能しなくなると電波が止まり、連絡を取ろうにも取れない状態になる可能性があります。
しかし、停電対応や予備電源と接続されているアナログ式の固定電話は、災害時も安定してつながります。
ただし、IP電話など光回線を使った通話は、固定電話でもつながりにくくなる可能性があるので注意してください。
3. 固定電話で名義変更をする際の手続き方法
故人が契約していた固定電話を引き続き使いたい場合は、名義変更の手続きをしてください。
相続関係や契約形態などによって異なる部分もありますが、一般的な名義変更の流れをご紹介しましょう。
3-1 NTTに問い合わせる
まずは固定電話を契約しているNTTへ問い合わせ、契約者死亡と固定電話の名義変更を行いたいことを伝えてください。
固定電話から連絡する場合は、局番なしで116番にかけると手続きができます。
NTT東日本ではインターネットからも申し込みが可能です。
依頼内容によって手続きが変わってくるので、事前に確認した上で申し込むことをおすすめします。
3-2 必要書類を準備する
固定電話の名義変更には色々な書類の提出が必要なので、事前に用意しておきましょう。
必要な書類は以下の3点です。
・電話加入権等承継・改称届出書
電話加入権等承継・改称届出書は、NTT東日本/西日本の公式ホームページからダウンロード可能です。
ダウンロード以外の方法では、それぞれの基地局の窓口に訪れるともらえます。
・契約者の死亡の事実及び相続関係を確認できる書類(写し可)
戸籍謄本や戸籍抄本(相続関係や死亡年月日が記載されたもの)、遺言書(公正証書でない場合は家庭裁判所の検認済みのもの)、法務局発行の法定相続情報一覧図が当てはまります。
・新契約者の本人確認書類(写し可)
運転免許所やパスポート、マイナンバーカードなど公的な身分証明書の用意してください。顔つきの身分証であれば1種類で十分ですが、ない場合は健康保険証や戸籍謄本・戸籍抄本、住所記載の公共料金の領収書などを2種類用意します。
書類が揃ったらNTTが案内した住所に郵送してください。
NTT東日本でインターネットから手続きする場合はメールに画像を添付して書類を提出することも可能です。
その際は、文字がはっきりと見えるように撮影したものを送ってください。
3-3 レンタルしていた機器を返却する
電話機などNTTからレンタルしていた場合、返却を求められることがあります。
その際は、案内に沿ってレンタル機器を指定場所に返却してください。
3-4 未精算分の料金を支払えば完了
名義が変わっていない間も電話の利用料金が発生するので、未精算分の料金を支払ってください。
新契約者の口座から引き落としやクレジットカード払いにしたい場合は、名義変更とは別に支払方法変更手続きを行いましょう。
変更手続きが完了するまでは書面の請求書が届くので、支払いに対応したコンビニなどで料金を支払ってください。
4. 電話加入権(NTT契約)解約・休止の手続き方法
すでに個人で固定電話に加入しているなど、相続の必要性を感じない場合は解約が必要です。
また、NTTに電話加入権を原則5年、最長10年まで預かってもらえる休止手続きを行う選択肢もあります。
まだ方針が決まらないという方は、解約や休止の注意点や手続きのやり方も確認した上で、どうするか決めていきましょう。
4-1 一度解約・休止すると同じ番号は使えなくなるので注意
解約は電話番号を完全にストップさせる手続きとなるので、一度手続きをすれば同じ番号は使えなくなります。
権利金も返金されないので注意してください。
また、休止にした場合は、再度電話加入権利を利用することが可能です。
しかし、その際に新しい電話番号を使うことになるので、こちらも同じ番号は使えなくなり、名義変更も必要となります。
休止・再開では2,000円から1万円程の手数料の支払いが発生しますが、一から電話加入権を購入する場合よりもコストを抑えられるメリットがあります。
4-2 相続を放棄するなら勝手に手続き・支払いをしないようにする
相続放棄をする場合は、勝手に解約や料金の支払いをしないようにしてください。
契約や未払い分の料金を支払ってしまうと、単純承認したとみなされてしまい、権利義務が相続されることになります。
相続破棄をする場合は、NTTにその旨を伝えることで料金の督促を回避できます。
ただし、故人と同居していた場合は公共料金の支払いには連帯責任の義務があるため、未払いの料金の支払いが発生する可能性があることも念頭に置いておきましょう。
4-3 解約手続きのやり方
解約の流れも上記で説明した名義変更とほとんど変わりませんが、こちらはオンラインから手続きできないので注意してください。
手続きの流れは以下のとおりです。
1.NTTに連絡して契約者の死亡と解約したいことを伝える
2.NTTの案内に従って、契約者死亡の事実が確認できる書類と手続きを行う方の本人確認書類を郵送する
3.電話機などレンタル機器も返却する
4.後日、未払い分の請求書が届いたらコンビニなどで支払いを済ませる
4-4 休止手続きのやり方
休止手続きもNTTに問い合わせることで申し込みができ、インターネットからも手続き可能です。
事前に相続手続きを行った上で申し込みましょう。
休止手続きと利用を再開する際は、それぞれに工事費用が発生します。
通信機器の取り付けや取り外し工事が必要な場合は、別途で工事費用が発生する可能性もあるので、費用についてはあらかじめ確認しておいてください。
休止の場合は、利用停止期間の5年を経っても継続や再開の申し込みがないと契約解除となるのでその点にも注意してください。
5. まとめ
今回は固定電話の相続や名義変更についてご紹介しました。
NTTのアナログ回線を利用できる権利である電話加入権も相続財産となるので、契約者が亡くなった場合はどう扱うか方針を定め、必要な手続きや相続税の申告をしましょう。
そのまま使いたい場合は、名義変更をして権利を承継してください。
引き継ぐ必要がない場合は電話料金の負担もあるので速やかに解約するか、今後固定電話を使う見込みがあれば休止の手続きをしましょう。
今後の計画・見通しをよく考えて、承継するのか解約もしくは休止するのか決めてください。
また相続手続き全般のことは、司法司法書士や行政書士など相続手続きの専門家に相談することも1つの方法です。
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この記事の監修者
工藤 崇(くどう たかし)
独立型ファイナンシャルプランナー。
WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。
東京・北海道を拠点として事業展開。
株式会社FP-MYS代表。