確定拠出年金の相続|受け取る前に死亡したら【無駄になる!?】

更新日:2023.12.08

確定拠出年金の相続|受け取る前に死亡したら【無駄になる!?】

老後のお金を準備することを目的とした「確定拠出年金」は、60歳にならなければ引き出すことができません。

もし、加入者が運用中に亡くなってしまった場合、確定拠出年金はどうなるのか気になる方も多いでしょう。

今回は、確定拠出型年金に加入していた人が死亡した場合の相続や遺産分割について解説します。

故人が確定拠出型年金を利用していた、または自分がもし死亡したらお金はどうなってしまうのか知っておきたいという方はぜひ参考にしてみてください。

1. 確定拠出年金の基礎知識

現在の日本の年金制度は3つに分かれていて、建物に例えられ「年金の3階建て」と呼ばれています。

1つ目は、日本国民全員が加入しなければいけない「国民年金」2つ目は働いている職業に合わせて上乗せされる「厚生年金」で、これらは公的年金と呼ばれています。

3つ目は、団体や企業などによって運営されている「企業年金」で、これらに分類されるのが確定拠出年金・厚生年金基金・確定給付企業年金などです。

本記事では企業年金に含まれる確定拠出年金の基礎知識や仕組みについて詳しく説明していきましょう。

1-1 確定拠出年金とは?

確定拠出年金とは日本の年金制度の1種で、加入者自らが資産を運用し、その運用結果によって将来もらえる年金の金額が変わる制度です。

多くの人に馴染みのある国民年金や厚生年金などは将来国からもらえる金額も決まっています。

確定拠出年金の特徴としては、上記で説明した内容以外にも「年金資産が個人ごとに分かれていて、残高はいつでも確認可能」「確定拠出年金の制度の間でも年金資産を持ち運ぶことが可能」「掛けていたお金を拠出する時、運用時または給付時に税制面で優遇を受けられる」などの点も挙げられます。

確定拠出年金の税遇面での優遇は、「掛金は全額所得控除」「運用して得た利益は非課税」「給付の種類によっては非課税・控除対象」という点です。

掛金、運用、給付の3段階において、税制面の優遇を受けることができます。

1-2 企業型確定拠出年金

確定拠出年金の中でも、掛けていたお金を拠出する先が企業か個人かによっても種類が変わってきます。

企業型確定拠出年金では、企業がそこで働いている人のために掛金を拠出します。

方法としては、企業が掛け金を毎月拠出してくれるので、従業員自身が年金資産の運用を行います。

企業型確定拠出年金は、そこの企業に勤めていれば自動的に加入している場合と加入するかどうかを自分で選ぶことができる場合があります。

ここで掛けているお金は加入者自身で運用することが可能で、資産配分を決めることや金融商品を選ぶことができます。

企業によっては、加入者が掛金を上乗せして拠出できる「マッチング拠出」などが認められているところもあります。

60歳になるまで引き出すことはできないので、定年退職を迎える頃に掛金を一時金として受け取るか年金形式で受け取ることができます。

1-3 個人型確定拠出年金(iDeCo)

iDeCo(イデコ)と呼ばれる個人型確定拠出年金は、個人で加入して掛金を拠出していく制度です。

公的年金に上乗せして給付が受けられる制度で、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は加入できます。

掛けているお金の拠出先が違うということ以外は、企業型も個人型の内容は大体同じです。

関連記事:iDecoの相続|60歳になる前に亡くなったら【無駄になる!?】

2. 確定拠出年金を受け取る前に加入者が亡くなったら?

年金資産を運用中かつ60歳になるまで引き出せないお金であるため、どうなるのか心配になる方もいるでしょう。

次に、確定拠出年金に加入している人が死亡した場合、掛けていたお金はどうなるのか説明していきます。

2-1 企業型でも個人型でも「死亡一時金」を遺族が受け取れる

結論を言うと、加入者が亡くなったとしても確定拠出年金がなくなるということはありません。

加入者が死亡した場合、遺族が死亡一時金として受け取ることができます。

加入者が掛けていたお金は個人の財産となるので、死亡した場合は遺族に受け取る権利があるのです。

死亡一時金として支払われる場合は、年金としてではなく「一括」で支払われると決まっていて、確定拠出年金では加入者によって違う金融商品を個別管理しているので、それらの個人で分かれている資産を全て売却し、現金に戻した上で遺族に支払われます。

投資性があるものは売却時の相場状況などの影響で金額が変化する場合もあります。

2-2 年金を既に受給している人が亡くなったらどうなる?

年金を受給している人が死亡した場合、年金を受給し終えるまでの未払い年金残高が遺族に支払われます。

2-3 死亡から5年経過すると死亡一時金が受け取れなくなる!

確定拠出年金の死亡一時金をほかの家族に優先して受け取ることができる期限は相続を開始して5年間と決まっています。

期限である5年を越えた後は死亡一時金ではなく、「相続財産」として遺産分割の対象となるので注意してください。

この場合は、相続人から請求されることによって支払いを受け取ることができます。

3. 死亡一時金の相続順位は民法と異なる!

確定拠出年金の死亡一時金を受け取る人には、相続順位が決まっています。

この順位は民法の相続順位とは違っていて、確定拠出年金法という法律で定められています。

民法との違いは以下の通りです。

3-1 民法における相続順位

民法で決まっている相続の順位は1位が配偶者、2位は子ども、3位は直系尊属(父母・祖父母)、4位は兄弟姉妹と決められています。

配偶者は正式な婚姻関係を持つ必要があり、事実婚や内縁のパートナーだと相続人になれないため注意が必要です。

3-2 死亡一時金における相続順位

死亡一時金を受け取る人の順位は1位に「配偶者(内縁も可)」2位に「死亡した人の収入で生計を立てていた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」3位に「2位に入らない人で死亡者の収入で生計を立てていた親族」4位に「2位に入らない子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」と決められています。

民法と死亡一時金の相続順位を比べてみても、どちらも1位は配偶者であることは同じですが、2位以降には大きな違いがあります。

これらを見ると、死亡一時金では「死亡した人の収入で生計を立てていたかどうか」が重要視されていることが分かります。

民法の相続順位では受け取る権利がなかったような人でも、確定拠出年金ではお金を受け取る権利があるのです。

例えば、相続順位2位に挙げられる「死亡した人の収入で生計を立てていた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」の場合、この中で同じ順位となる人が何人かいる時は列で挙げられている順番の早い人が優先となります。

同じ順位である子が複数いる場合では、死亡一時金を割った額を一人ひとりが受け取ることができます。

実務上では代表の1人に支払われるので、遺族の中で割り振らなければいけません。

3-3 死亡一時金は受取人を事前に指定できる

ここまで、加入者が受取人を指定していない場合の相続順位についてご紹介してきましたが、受取人を指定している場合は指定された人が最優先で死亡一時金を受け取ることになります。

受取人として指定ができるのは、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。

事実婚の場合でも、パートナーを受取人として指定することも可能です。

自分で決めた人に受け取ってほしいという場合は、受取人をあらかじめ決めておくと良いでしょう。

受取人を指定していたのかどうか分からないという場合は、勤務先や金融機関、保管会社などに確認してください。

4. 死亡後の手続きの進め方

確定拠出年金の死亡一時金は、自動に支払われるものではないので「死亡一時金の裁定請求」という手続きが必要になります。

加入者が死亡した後の手続きの進め方は以下の通りです。

4-1 運営管理機関へ死亡した旨を伝える

加入者が死亡した際の手続きは、遺族と運営管理機関でやり取りを行います。

まずは、運営管理機関に加入者が死亡したということを連絡してください。

4-2 裁定請求書の記載と必要書類を提出

次に、運営管理機関から「死亡一時金の裁定請求書」という書類が送られてきます。

この裁定請求書に必要書類を添えて提出します。

必要書類は、「受取人の印鑑証明書」「受取人のマイナンバーが確認できる書類」「加入者が死亡した事実が記載された戸籍謄本など」「加入者と遺族の関係がわかる戸籍謄本など」

代表受取人選任届(受取人が複数の場合に必要)」「生計維持の関係を証明する書類(生計維持関係にあった方が請求する場合に必要)」です。

加入者等の死亡届をインターネットで請求できる運営管理機関も中にはあります。

そういった場合は、亡くなった人の基礎年金番号を記載する欄があるのであらかじめ確認しておくと良いでしょう。

死亡した人と遺族の関係性によってはこれ以外にも書類が必要な場合もあります。

詳しい内容に関しては、運営管理機関に問い合わせてください。

4-3 資産売却後に死亡一時金が口座へ振り込まれる

書類を提出した後、不備などがなければ1~2ヶ月程度で受取人の指定した口座に入金されます。

資産売却などのタイミングは遺族が決めることはできないので、運営管理機関で決められた予定に従って売却されます。

投資先が海外などの場合はさらに時間がかかることもあるので、その点は頭に入れておいてください。

5. まとめ

ここまで、確定拠出年金の基礎知識や相続方法、遺産分割の詳細についてご紹介しました。

確定拠出年金は税制面でも優遇を受けることができるので、将来のためにも加入しているという方も多いでしょう。

60歳まで引き出すことができない確定拠出年金ですが、加入している人が亡くなった場合でも無くなってしまうということはありません。

これらの手続きは、確定拠出年金に加入していたということを家族が分かっているという前提です。

そもそも家族が確定拠出年金に加入しているということを把握していなければ、手続きもできません。

日頃から自分が確定拠出年金に加入していることを伝えるか、家族から確認するようにしましょう。

 

 

 

この記事の監修者

工藤 崇(くどう たかし)

独立型ファイナンシャルプランナー。

WEBを中心にFP関連の執筆・監修多数。セミナー講師・個別相談のほか、「相続の第一歩に取り組む」ためのサービスを自社で開発・提供。

東京・北海道を拠点として事業展開。

株式会社FP-MYS代表。

相続コラムを探す×
カテゴリを選ぶ
お近くで相続に強い専門家をお探しの方は おすすめ検索
専門家を
お選びください
地域を
お選びください
相談内容を
お選びください

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
・本記事は、本記事執筆時点における法令(別段の言及がある場合を除き日本国におけるものをいいます)を前提として記載するものあり、本記事執筆後の改正等を反映するものではありません。
・本記事を含むコンテンツ(情報、資料、画像、レイアウト、デザイン等)の著作権は、本サイトの運営者、監修者又は執筆者に帰属します。法令で認められた場合を除き、本サイトの運営者に無断で複製、転用、販売、放送、公衆送信、翻訳、貸与等の二次利用はできません。
・本記事の正確性・妥当性等については注意を払っておりますが、その保証をするものではなく、本記事の情報の利用によって利用者等に何等かの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことはできません。
・本サイトの運営者は、本記事の執筆者、監修者のご紹介、斡旋等は行いません。
・情報収集モジュール等に関する通知・公表
当社は、本サービスの提供にあたり、利用者の端末に保存された情報を外部サーバーに送信するクッキー、コード、又はプログラム等(以下総称して「情報収集モジュール等」といいます。)を利用します。
当社が利用する情報収集モジュール等の詳細は、以下の通りです。

【情報収集モジュール等の名称】
TETORI
【送信される情報の内容】
https://adm.tetori.link/manual/view/realtime_user
【情報送信先となる者の名称】
グルービーモバイル株式会社
【当社の情報の利用目的】
サイト分析
【送信先での情報の利用目的】
https://www.groovy-m.com/privacy

…閉じる

お近くで相続に強い専門家をお探しの方は おすすめ検索
専門家を
お選びください
地域を
お選びください
相談内容を
お選びください

閉じる

閉じる

早期解決や相談先のヒントに! 解決事例検索
テーマを
お選びください

閉じる

閉じる

相続について広く理解を深めたい方は コラム検索
カテゴリを
お選びください

閉じる

閉じる