相続に強い税理士の選び方|8つのポイントを解説

更新日:2024.06.21

相続に強い税理士の選び方|8つのポイントを解説

相続税申告が必要な場合、相続を専門とする税理士へ依頼することは非常に重要です

しかし税理士に馴染みがない場合には、どのような方法で選べば良いのかわからないことも多いでしょう。

そこで今回は相続に強い税理士の選び方について解説します。

目次

1.相続税申告は相続税に強い税理士を選ぶべき

相続税は、他の税法と比較しても特に専門性の高い税法です。

そのような背景から、相続税申告をどの税理士に依頼するかによって、税理士報酬や納税額に差が出る可能性もあります。

したがって相続税申告に関しては、相続に強い税理士へ依頼するようにしましょう

そもそもどのようなケースでは相続について税理士に相談するべきか知りたい方はこちらの記事でより詳しく解説しています。

1.1.すべての税理士が相続税に強いわけではない

税理士であれば、相続税を含むすべての税金に精通していると思われがちですが、実際にはそうではありません。税理士としてのこれまでの経験や実績、所属する税理士事務所の特色などによっても得手不得手は異なります。

1.2.税理士によっても各自専門性がある。

税理士には専門領域があり、一般的な事務所では個人事業主や中小企業を対象とした所得税や法人税業務を中心としています。そのような事務所の場合、年間で数件程度の相続案件しか受注しないケースや、そもそも相続は専門外として請け負っていない事務所もあります。

1.3.相続税の知識がない税理士もいる。

税理士試験では全11科目のうち5科目を選択して受験するため、相続税法に合格せずに税理士となるケースも多々あります

もちろん受験科目として選択しなかったからといって、相続税の知識や経験が不足しているとは限りませんが、中には相続の経験が浅く、充分な知識を有していない税理士もいることでしょう。

2.相続税申告を税理士に依頼するときの選び方

適切な判断基準を持たずに、相続に強い税理士を選ぶことは容易ではありません。

そこで以下の内容をひとつの判断基準として、税理士探しを行うことをお勧めします。

2.1.相続税申告の実績数

一般的には相続税申告の実績が多いほど、税理士事務所や各々の税理士にノウハウが蓄積されていると考えられるため、年間の申告実績が判断基準となります

具体的には年間50件程度の申告実績があれば安心であるため、ホームページなどで確認しておくと良いでしょう。

2.2.相続税を専門(得意)としているか(法人税や所得税ではなく)

先述のとおり、税理士事務所の中には個人事業主や中小企業を顧客として活動する事務所も多く、相続については専門外であるケースも少なくありません

近年では多くの税理士事務所がホームページを設けているため、相続専門の事務所かどうかあらかじめ確認するようにしましょう。

【関連記事】国税OBの税理士についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:国税OBの税理士は税務調査に強い?|税務調査に強い税理士の条件とは

2.3.税務調査に入られる率が低いか

相続税申告を行った場合において、その後税務調査が行われる可能性は10%前後といわれています。

そのような背景から、相続専門の税理士として税務署から一定の信頼を得ている場合には、税務調査に入られるリスクも自ずと減少するものと考えられます。

また後述する書面添付制度を活用している税理士事務所についても、一般的に税務調査のリスクは減少します。

2.4.税理士報酬は明確か

相続税申告に対する税理士報酬については、一般的な相場としては遺産総額の0.8~1%程度といわれています。

しかし基本料金に加え、遺産に宅地や非上場株式の評価などが含まれる場合や税務調査対応が必要なケースでは、追加料金が発生することも多いです。

そのため見積もりを依頼する場合には、単に提示された料金だけでなく、そこに含まれるサービス内容にも注意しましょう。

2.5.相続税の納付金額と税理士報酬を合算して考慮する(税理士報酬だけで選ばないこと)

相続税申告を依頼する税理士を選ぶ際、税理士報酬だけで選ぶことは得策ではありません

なぜなら相続税は誰がやっても同じ結果となるものではなく、税理士としての知識や経験によって納税額が大きく変わる可能性のある税金だからです。

つまり税理士報酬が安いという理由だけで選ぶことで反対に納税額が増えてしまい、結果的にたくさんのお金を支払うことも充分に考えられます

したがって税理士報酬の大小だけで選ばないようにしましょう。

2.6.手続きも考慮した提案をしてくれるか

相続手続きは相続税申告だけでなく、遺産分割協議や不動産登記など多岐にわたります。

相続専門の税理士であれば、他士業と連携してひと通りの手続きに対応できる体制を整備していますが、中には申告のみを請け負って他の業務について一切関知しない税理士もいるようです。

したがって申告だけでなく、それ以外の手続きも含めた包括的な提案をしてくれるかどうかについても確認しましょう

2.7.自分でもできる内容をいかに深く網羅的に代行してくれそうか

相続手続きについては、税理士などの専門家へ依頼するだけでなく、依頼者が自ら行うことも可能です。

依頼したい手続きの範囲は依頼者によって異なるため、自身のニーズに応じた手続きを網羅的に代行してくれることも重要な基準となります

2.8.相続税申告を税理士に相談する際の選び方のその他の基準

これまで解説した判断基準よりは多少重要度が劣りますが、この他にも決して軽視できないポイントがあります。

以下の内容のみで税理士を選ぶことはあまり適切ではありませんが、先述した判断基準と合わせてご確認ください。

2.8.1.話をしっかり聞いてもらえる

遺産分割協議のように相続手続きにおいては複数の選択肢が存在するケースも多く、それらを決定する際には相続人の意思が最も重要です。

相続税を安くすることや申告を完了させることがすべてではなく、普段からコミュニケーションがしっかりと取れ、気持ちを汲み取ってくれるような税理士を選びましょう

2.8.2.丁寧に理解できるまで説明してくれる

依頼者側は相続手続きに馴染みのないケースが大半であるため、税理士としては相続税計算の流れや特例制度、必要な手続きなどについて依頼者へわかりやすく伝えることも重要な職務です

したがって税理士選びでは、こちらが理解できるまで丁寧に説明してくれるかどうかについても重要なポイントです。

2.8.3.できないことはできないと答える

専門家といっても、税理士として対応できない業務は存在します。相談内容に対して曖昧な回答はせずに、対応の可否について明確な回答が得られることも重要といえるでしょう。

2.8.4.費用(料金表)が明確、事前見積もり

ホームページなどで料金体系が掲載されているケースもありますが、個々の相続事例で税理士報酬は変動するため、税理士へ依頼する際には必ず事前見積もりを取るようにしましょう

2.8.5.アクセスが良いか

相続においては数ヵ月間にわたって手続きを進めるため、何度も税理士との打合せが必要となります。

したがってあまりにも遠方の場合やアクセスが不便なケースでは、不都合が生じる可能性がありますのでご注意ください。

2.8.6.レスポンスや、報連相がしっかりしているか

相続税申告には期限があるため、税理士側のレスポンスが遅い、報連相がないなどの問題はできる限り避けたいものです。

したがって正式な依頼を行う前に、事務所や担当者のレスポンスに不安がある場合には注意しましょう。

2.8.7.相談は無料か、土日や平日夜間でも相談できるか

土日や平日夜間しか時間が確保できない場合には、そのような日時でも対応可能かどうか、税理士側へ確認しましょう。

また初回相談料については無料と有料のどちらのケースもありますが、一概にどちらが好ましいとは言えません。

実績が少ないからこそ無料としている可能性もありますし、有料でも集客できるほどの実績を有している場合もあります。

したがって有料、無料で判断せずに、選択肢を広げて相談することをお勧めします。

2.8.8.オンラインの相談を実施しているか

仕事や育児で時間を確保することが難しい場合には、zoomなどを利用したオンライン面談が可能な事務所を探してみるのも良いでしょう。

オンライン面談が可能であれば、正式に依頼した後でも有効活用することができます。

3.その税理士が相続税申告に強いかどうかの見極め方

相続に強い税理士を見極める場合、具体的には以下の観点から判断することをお勧めします。

3.1.不動産の評価を合法的に下げられるか(節税)

宅地や家屋などの相続税評価額を算定する場合には、用途によって評価方法が変わります。また不動産の実地調査により、測量や周辺の環境を調査することで評価額が下がる場合もあります。

3.2.税制上の特例を活用して節税できるか

相続税の計算においては、配偶者の税額軽減や贈与税額控除、相次相続控除、障害者控除、未成年者控除、小規模宅地等の特例などの制度が設けられています

これらはいずれも納税額を減少させるものであり、適用漏れがあれば余分な相続税を支払うこととなるため、これらの制度を利用した節税提案の有無が重要です。

3.3.二次相続も見据えた提案、サポートができるか

相続税のシミュレーションを行う場合、二次相続まで加味しなければ相続税が増えてしまうケースがあります。

また、税金面以外でも、子供や孫世代に財産を承継することを想定し、依頼者の意向も確認しながら今後の相続計画を立てる必要があります。

今回の相続手続きだけでなく、将来を見越したサポートを受けられるかどうか重視しましょう

3.4.税務調査のサポートができるか(書面添付制度があるか)

申告から数年後に税務調査が実施された場合に、税理士が調査に同席し、必要に応じて修正申告を行ってもらえるのかどうか、正式な依頼を行う前に確認しましょう

また書面添付制度を活用することにより、税務調査に入られるリスクを減らすことができます。

書面添付制度とは、税理士が税務署に対し「この申告書は適正である」というお墨付きを与える制度をいいます。

しかしその内容に誤りがあれば税理士として業務停止処分が科されるため、書面添付制度を利用する税理士はさほど多くないのが実情です。

しかし相続に強い税理士であれば自信を持ってこの制度を利用できるため、書面添付制度の利用状況もひとつの指標となります

3.5.相続に関する書籍出版(歴)

相続に関する知見や実務経験の指標として、書籍の出版経験を参考にするのも良いでしょう。

一般向けの内容だけでなく、専門家向けの書籍の出版や情報発信をしている場合には、さらに信頼性が高まります。

3.6.相談実績、申告実績

相続専門の税理士事務所では、ホームページに相談実績や申告実績を記載するケースも多いです。

「申告実績」が実際に相続税申告を行った件数であるのに対し、「相談実績」は電話やメールなどで相談を受け、最終的に受注しなかったものも含まれているためご注意ください。

また事務所全体の「申告実績」は多くても、税理士1人あたりの実績は少ないケースもあります。

相談の際には、担当者個人の「申告実績」をヒアリングするようにしましょう。

4.このような場合は税理士にまず相談を

相続が発生した場合でも、すべてのケースにおいて税理士に相談が必要ということはありません。

以下のいずれかに該当する場合には、一度税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

なお相続について税理士へ相談すべきケースについては、別記事で詳しく解説していますので、こちらの記事をご参照ください。

4.1.相続税がかかるかどうか知りたい

まずは生前のうちに、将来相続税が発生するかどうか確認したい場合です。

将来の相続税をシミュレーションすることにより、生前贈与などの効果的な相続対策を実行できます。

4.2.初めての相続税申告で手続きがわからない(忙しくて時間がない)

相続手続きは煩雑であるため、仕事や育児などで時間を確保することが困難な場合には、早めに税理士へ相談することをお勧めします

【関連記事】相続税申告の準備・注意点についてもっと知りたい方におすすめ
>コラム:【税務署に相談できる!】相続税申告は税務署に相談可能!相続相談前に準備したい3つのことや注意点を紹介

4.3.相続税がかかるかわからない(かかりそう)

原則として相続税が発生する場合には申告手続きが必要となりますが、相続財産が多い事例では、遺産総額を計算するには財産ごとの相続税評価額を算定する必要があるため、申告義務の判定も複雑なものとなります。

4.4.相続税申告が必要になりそう

相続税申告は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヵ月以内に申告しなければなりません。

また相続税においては「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」など、申告しなければ適用できない特例制度があるため、申告が必要な場合には早めに税理士へ相談してください。

4.5.相続税がかかるだろうとほぼわかっているが、申告額を安く押さえたい

相続税の計算においては様々な特例制度が設けられています。

そのため税理士へ相談する事例としては、単に自分で申告手続きを行うことが不安な場合だけでなく、相談することで節税に繋がることを期待するケースも多いです。

4.6.相続財産が多い

相続財産が多い場合には、相続人の見落としなどの理由によって一部が相続財産から漏れてしまうケースも頻発します

そのため相続財産が多い場合には、申告漏れのないように専門家からの助言を受けることも検討してください。

4.7.相続財産の中に不動産がある(1つでも価額によっては&多数ある場合は税申告の可能性も)

不動産についてはその用途によっても評価額が変わるため、その算定が難解なケースも数多く存在します。

仮に評価額に誤りがあれば、納税額が過大または過少となってしまうリスクもあるのでご注意ください。

4.8.税務署からの書面(お尋ね/お知らせ)が届いた

相続発生日から半年程度経過した段階や申告期限から数年が経過した段階で、税務署から「相続税申告が必要ではありませんか?」という内容のお尋ね文書が届くことがあります。

そのような税務署からのお尋ね文書にはきちんと回答することが望ましいため、必要に応じて税理士へ相談しましょう

5.税理士に依頼するメリット・デメリット

相続手続きを税理士へ依頼するメリットやデメリットについては、主に以下の項目が挙げられます。

5.1.相続相談を税理士に依頼するメリット①:相続税申告を代行してくれる

税理士へ依頼することにより、複雑な相続税の申告手続きを代行してもらうことができます

相続税申告は多くの人々にとって馴染みのない手続きであるため、そこから解放されることは単に時間的コストが削減されるだけでなく、心理的ストレスの軽減にも繋がります。

5.2.相続相談を税理士に依頼するメリット②:二次相続を念頭に置いた手続きをしてもらえる

相続対策においては、目先の相続での税金を安くすることばかりに執着してしまうと、将来の相続まで加味した場合にかえって全体の納税額が増えてしまう場合もあります。

税理士へ依頼することにより、そのような二次相続も含めたアドバイスを受けることができるため、効果的な相続対策を実行しやすくなります

5.3.相続相談を税理士に依頼するメリット③:各種制度を利用して節税してくれる

先述した配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例だけでなく、相続税の計算においてはいくつもの特例制度が用意されており、適用が漏れてしまえば納税額が過大となってしまいます。

税理士へ依頼することにより、個々の相続事例に照らし合わせ、適用可能な特例制度をしっかりと用いることで納税額を減らすことができます

5.4.相続相談を税理士に依頼するデメリット①:税理士報酬がかかる

当然ですが、税理士へ依頼することによって税理士報酬が発生します

相続税申告の場合には、財産額によって料金が変動するケースが多く、一般的には遺産総額の0.8~1%程度が相場となります。

5.5.相続相談を税理士に依頼するデメリット②:完璧なシミュレーションはできない

生前の相続対策や将来の二次相続に関しては、あくまで現行の税法に則ってシミュレーションを行います。そのため、その後の税制改正によってはシミュレーション結果が変わってしまい、計画の見直しが必要となる可能性があります。

5.6.相続相談を税理士に依頼するデメリット③:相続に弱い税理士もいる

内科や外科、精神科などの専門分野に分かれる医師と同様に、税理士にも専門領域があります

個人事業主や法人業務を中心とする税理士も多く、相続税手続きにはあまり精通していない税理士も少なくありません

したがって誤った税理士に依頼してしまうと、高額な報酬を請求される、充分な節税を行ってもらえないなどの不利益を被る可能性があるためご注意ください。

6.税理士に支払う料金と相場

相続手続きに関して税理士へ依頼する場合の料金としては、一般的には財産額の0.8~1%程度が相場であると言われています

ただし基本料金のほかに、相続財産に宅地や自社株などが存在する場合や、申告後の税務調査対応が必要となった場合など、状況に応じて追加料金が発生する場合もあります。

なお税理士に支払う料金に関しては、別記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらの記事をご覧ください。

執筆者プロフィール
服部大税理士事務所 税理士・中小企業診断士 服部 大
2020年2月、30歳のときに愛知県名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界内で数少ない若手税理士として、同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘中。単発の税務相談や執筆活動も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。
 

この記事の執筆者:つぐなび編集部

この記事は、株式会社船井総合研究所が運営する「つぐなび」編集部が執筆をしています。
2020年04月のオープン以降、専門家監修のコラムを提供しています。また、相続のどのような内容にも対応することができるように
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