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法定後見制度とは?後見・保佐・補助の違いと手続き方法を徹底解説

更新日:2021.08.24

法定後見制度とは、判断能力が不十分な人について「お金の管理」と「医療・介護・居住環境等の確保に関する手続き」を支援するための制度です。支援方法には後見・保佐・補助の3類型があり、本人の状態により「法律行為全般を代理する」「重要な手続きだけ代理したり取り消したりできるようにする」とのように支援の幅を変えられます。

実際に法定後見制度を検討するケースは、認知症等の症状が重くなってしまった影響で預貯金が下せなくなるなど、緊急性の高いものが多く見受けられます。そのため、支援者(後見人等)として選ばれるための条件や権利義務などについて、理解しないままになる恐れがあります。本記事では、法定後見制度の仕組み・利用条件・手続きの流れと共に、成年後見人等が選ばれた後に家族が意識したいポイントを解説します。

目次

法定後見制度とは

法定後見制度とは、認知症などの影響で判断能力が低下した人を保護するため、お金の管理(=財産管理)と生活上必要な手続き(=身上監護)について支援者をつける制度です。制度の詳細は民法で定められており、要支援者本人やその家族から家庭裁判所に申し出ることで開始されます。

制度が開始されると、支援者である後見人等には様々な権限が与えられ、本人に代わって役場や銀行で諸手続きをしたり、本人が誤って結んでしまった契約を取り消したりできるようになります。これら法定後見制度内での支援内容は、実務家の間で「後見事務」(保佐事務・補助事務)と呼ばれています。

法定後見制度が必要になる理由

法定後見制度が必要になるのは、自力で生活できない人を保護しようにも、同居する家族ですらできることは限定的であることが理由です。

判断能力が低下してくると「預金の下ろし方が分からなくなる」「不要な高額取引をしてしまう」などの不都合が日常的に発生します。周囲の家族が対応してあげようしても、強力に保障されている財産権がかえって仇となり、手続き窓口や取引相手に「本人か代理権を証明できる人でないと対応できない」と断られてしまいます。また「悪徳商法のターゲットになりやすい」という点も無視できません

以上のような状況から要支援者を保護するには、支援者の権限を付与し、対外的に様々な法律行為をできるようするのが最も良い方法です。もちろん、権限を付与される人が「本人の意志を尊重できるかどうか」も改めて問い直さなくてはなりません。

そこで、最大限生活に配慮できると認められた支援者を選び出し、必要十分な権限を付与する制度として「法定後見制度」が設けられています。

法定後見制度はどんな人に必要なのか

法定後見制度は「精神や認知機能に問題があり、金銭管理や対外的な手続きに支障をきたしている人」であれば、誰でも必要とします。典型的な症例は下記の通りです。

  • 認知症と診断された人
  • 先天性の知的障害
  • 中~重度の精神疾患(統合失調症など)
  • 事故による中~重度の後遺障害(高次脳機能障害など)

以上のような弱い立場に置かれる人を守るための「法定後見制度」ですが、欠点がないわけでもありません。その欠点とは「すでに判断能力に一定レベルまで低下している人」だけが対象になる点です。言い換えれば、法定後見制度を「先々で健康状態が悪化した時の備え」として活用することはでき来ません。

そこで、まだ元気な人が自分の意志で後見等の仕組みを活用できるよう、平成11年に「任意後見制度」が創設されました。

法定後見制度と任意後見制度の違い

判断能力を低下する人を支援する制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類です。2種類の制度は、まとめて「成年後見制度」と呼ばれます。

各制度の決定的な違いは、法定後見制度が「判断能力が不十分になった時」でないと後見人等が決定されないのに対し、任意後見制度は「まだ判断能力が健全な時」に開始時期を含めて本人自ら支援条件を指定できる点です。この点を踏まえると、法定後見制度を利用するのは、基本的に「任意後見制度の準備がないまま健康状態が悪化したケース」だけだと言えます。

その他の細かい違いについては、下記表で重要なポイントのみ比較しています。

比較項目 法定後見制度 任意後見制度
後見等を開始するタイミング 「判断能力が不十分になった」と家裁が認めた時 本人が事前に指定(例:判断能力が不十分になった時)
後見等を開始する手段 後見等開始の審判 事前に締結した任意後見契約
後見人を選任する人 家庭裁判所 本人
後見等開始に関する本人の同意 原則必要(本人の判断能力が常に不十分と認められる場合を除く) 原則必要(本人が意思表示できない場合を除く)
後見人等に与えられる権利 代理権・同意権・取消権・追認権(後見の種類により範囲等に制限あり) 代理権(契約で定める行為に限る)

状況により法定後見制度に移行することがある

任意後見制度は「本人の意志をより忠実に支援に反映させる」ことをコンセプトとしています。それゆえに生じるデメリットとして、法定後見制度に比べて支援者の権限が小さいことが挙げられます。

問題は、判断能力の低下を引き起こす疾患(認知症など)は基本的に進行性であり、時間が経つにつれて当初の任意後見契約にない支援が必要になることも当然考えられる点です。そこで、任意後見契約に関する法律では「本人の利益のため特に必要があると認めた時」に、法定後見制度へと移行できるとしています(第10条各項)。

法定後見制度で付与される権限

それでは、法定後見制度で実際にどんな支援ができるようになるのでしょうか。上記を理解するには、予備知識として「支援者に付与される権限の種類」を押さえる必要があります(下記参照)。

  • 代理権:法律行為(届出などの各種手続き)を代理する権限
  • 同意権:本人が希望する法律行為について事前に賛成する権限
  • 取消権:本人の法律行為を後から取り消す権限
  • 追認権:本人の法律行為に後から賛成する権限

注意したいのは、上記4つの権限が必ずしも全て付与されるわけではない点です。実際に支援者が獲得できる権限の内容は、法定後見制度で定められる支援方法のうちどれを選ぶか(家庭裁判所に支援開始を認めてもらえるか)により異なります。

法定後見制度の3つの類型(後見・保佐・補助)

法定後見制度の支援方法は「後見」「保佐」「補助」の3種類です。支援者に付与される権限は「後見」が最も大きく、次いで「保佐」「補助」の順に小さくなります。

3つの支援方法の共通項としては、追認権があることと、支援開始後に職業制限を受けることが挙げられます。各支援方法について解説する前に、支援の開始条件・後見人等に与えられる権限・職業制限について、下記表で分かりやすく一覧化します。

比較項目 後見(成年後見人・成年被後見人) 保佐(保佐人・被保佐人) 補助(補助人・被補助人)
開始条件 判断能力が常に不十分 判断能力が著しく不十分 判断能力が欠けている
本人の同意 不要 必要 必要
代理権 △(特定の行為について審判で付与 / 審判は本人の同意要) △(特定の行為について審判で付与 / 審判は本人の同意要)
同意権 × △(所定の行為のみ / 所定の行為以外は審判で付与) △(所定の行為の一部を審判で付与)
取消権※ △(所定の行為のみ / 所定の行為以外は審判で付与) △(所定の行為の一部を審判で付与)
死後事務 できる(家裁の許可が必要) できない できない
追認権
被後見人等の職業制限 会社役員・士業・医師など 同左 同左

※後見・保佐・補助のどれでも、日常生活に関する行為(日用品の購入など)は取り消せません。詳細は「後見人等にできないこと」の章で解説します。

後見とは

後見とは判断能力が常に不十分な人」を保護するため、支援者に法定代理人としての地位を与える制度です(民法第7条~第10条・民法第838条~第875条)。この前提から、後見を開始する際に「本人の同意」はなくても構わないとされています。

後見人には「代理権」「取消権」「追認権」の計3つの権利が与えられ、法律行為全般を代理できるようになる他、本人が誤って結んだ契約から損失が生じないよう保護できます。

なお、以下で紹介する他の支援方法とは異なり、成年後見人に「同意権」は付与されません。代理権や取消権さえあれば、わざわざ本人がやろうとする契約等に事前の同意を示す必要はなく、そもそも本人の状態から見て自力で契約等の意志を示すことはないだろうと考えられるためです。

許可があれば「死後事務」もできる

法定後見は要支援者の死亡で終了するため、亡くなった時の手続きまで代理することは原則不可能です。具体例として「お葬式の手配」や「医療費や施設利用費の支払い」が挙げられます。

この点について、2016年10月に改正法が施行され、成年後見人のみ家裁の許可があれば下記行為ができるようになりました(民法第873条の2)。

  • 弁済期が到来した債務の弁済: (例)医療費の支払い、老人ホーム入居費の支払い
  • 火葬または埋葬に関する契約の締結: (例)葬儀社との契約、葬儀費用の支払い
  • 相続財産全体の保存に必要な行為: (例)消滅時効の完成が迫っている債権の回収手続き、債務を弁済するための預貯金の払い戻し、不動産の修繕

補足として、これらの行為について家裁の許可を得る時は「行為に必要性がある」「相続人が遺産を管理することのできる状態に至っていない」「相続人の意思に反しない」の計3つの条件を満たしている必要があります。

保佐とは

保佐とは「判断能力が著しく不十分な人」を保護するため、重要な手続きのみ支援者が代理人を務められるようにする制度です。(民法第11条~第14条・民法第876条の1~5)。後見とは違い、ある程度まで本人の力で生活できる状態にあることから、その意志を尊重するため保佐の開始時は「本人の同意」が必須です。

以上のような制度趣旨から、保佐人に与えられる権限は、原則として「民法第13条1項で定められる行為」の同意権と取消権、さらに法律行為全般の追認権のみです。上記所定行為以外の同意権と取消権、さらに代理権を付与してもらうには、どんな法律行為について必要か特定して付与審判を申し立てる必要があります。なお「民法13条1項で定められる行為」とは、具体的に下記のようなものを指します。

民法第13条1項で定める行為(保佐人に同意権+取消権が与えられる行為)とは…

  • 金銭貸借に関すること: (例)元本の返済を受ける・お金を借りる・保証人になる
  • 資産管理に関すること: (例)不動産等の重要な財産の購入or売却
  • 不動産に関すること: (例)新築・リフォーム・賃貸借契約
  • 紛争解決に関すること: (例)訴訟の提起・相手方との和解・仲裁
  • 相続に関すること: (例)生前贈与・遺産分割協議への参加・相続放棄・贈与の拒否

補助とは

補助とは「判断能力が欠けている人」を保護するため、必要最低限の支援を行えるようにする制度です(民法第17条~第19条・民法第876条の6~10)。保佐よりもさらに本人の生活能力が高い状態にあることから、補助を開始する時も「本人の同意」が必須です。

以上の点から、補助人に与えられる権限は、基本的に「追認権」に限られます。このままだと支援できる内容があまりにも狭いため、補助開始と同時に「特定の法律行為に関する代理権」と「民法第13条1項で定められる行為のうち指定したものの同意権+取消権」のうち、両方もしくはいずれかを審判で付与してもらう必要があります。

「後見・保佐・補助」の対象となる人とは

後見・保佐・補助のどれを開始するかは、当事者の判断に委ねられます。今後これらの支援が必要になった時は、本人の状態から「支援者としてどんな関わり方がいいのか」からベストな方法を見定めましょう。法定後見制度の選び方の参考となるように、以降では各支援方法の対象になる人を具体的に紹介します。

後見の対象となる人

後見の対象になる人は「日常生活に必要な買い物等がまったくできない人」です。分かりやすく言い換えれば、身体的には健康であるものの意思疎通はほとんど図れず、身の回りの世話のほぼ全てを他人に任せなければならないような状態です。

より状況を具体化するなら、

  • 訪問販売を全く断れず、不要な高額商品を何度も買ってしまう。
  • すぐ自宅をゴミ屋敷にしてしまったり、過度に乱れた服装で外出したりしてしまう。
  • 疾患の影響で周囲とトラブルを起こしやすく、ほとんどつきっきりで支援する必要がある。

以上のようなケースは「後見」を積極的に検討すべきです。

保佐の対象となる人

保佐の対象になる人は「日常生活に必要な買い物等はある程度までできるが、金銭の借り入れ・賃貸借契約・不動産などの高額取引に関しては、自分で良し悪しを判断することができない人」です。意思疎通は一定程度図れるものの、身の回りの世話のほとんどをサポートしてもらわなければならない状態をイメージとしています。

同じく状況を具体化すると、

  • 日常会話はこなせるが、契約内容を説明されてもあまり理解できない。
  • 過度な浪費癖があり、家族が傍についていないと不要に高いものを買ってしまう。

以上のようなケースは「保佐」である程度まで自立を見守るべきだと言えます。

補助の対象となる人

補助の対象になる人は「日常生活に必要な買い物等はできるものの、金銭の借り入れ・賃貸借契約・不動産などの高額取引に関しては不安がある人」です。意思疎通が十分に図れる状態であり、必要最低限の支援だけで自立できるような状態をイメージとしています。

より具体化すれば、

  • 1人でも家事や身支度はきちんとできるが、役場や銀行で手続きする時は付添いが必要。
  • 軽い浪費癖があり、買い物する時はなるべく周囲の人の意見を聞くようにしている。

以上のようなケースは「補助」を利用して見守り中心の支援としても良いでしょう。

法定後見制度を申し立てる動機

法定後見制度の実情として、判断能力が一定程度まで下がれば利用できるところ、利用を開始するのは「支援中に困り事が生じてから」になるケースが多いようです。

2019年5月に行われた第3回成年後見制度利用促進専門家会議(リンク)では、後見等開始の審判を申し立てた動機について家事事件の記録を集計した結果が公表されており、中でもよくある動機として下記5つが挙げられています。

1.預貯金の管理・解約のため

後見等の申立ての動機として最も多いのは「要支援者の預金口座から代理で出金したい」というものです(上記集計結果の42%)。

どの銀行でも、預金保護の観点から、出金は本人(もしくはその法定代理人)からの申請しか受け付けてくれません。近親者が出向いて「本人はもう認知症が進行していて手続きできない」「老人ホーム入居費などまとまった額がすぐ必要」といった事情を説明しても、特別対応はなかなかとってもらえないのが現状です。

実は、上記のような経緯で「認知症患者の預金が事実上ロックされてしまう問題」について、近親者であることを証明することで出金できるよう、窓口対応を変えようとする動きもあります(全国銀行協会公式サイトより)。ただし、最終的にどう窓口担当者が対応するかは銀行ごとにまちまちで、仮に出金対応してくれた場合でも一時的なものに過ぎません。

要支援者の口座から継続的に生活費等を下ろすには、やはり後見登記(後見等が開始されていることに関する公的記録)の証明を持ち込むこと以外に確実な方法はないのです。

2.身上監護のため

申立ての動機として2番目に多いのは「要支援者の生活を整えたい」というものです(上記集計結果の20.5%)。

入院や老人ホームの入居、居宅の賃貸借契約などは、基本的に要支援者本人の名義で行います。これらの手続きは、本人が意思表示できる状態でないと、後々のトラブルを懸念して対応してもらえません。また、手続きに必要な書類(住民票など)を代理で請求する場合も、基本的には本人が作成した委任状が必要になります。

判断能力が低下すると、ささいな事で事故に遭ってしまうリスクが高くなります。その人にあった環境を整えることは緊急性の高い課題で、支援者の権限を広げるべき重要な理由になります。

3.介護保険契約のため

申立ての動機として3番目に多いのは「本人の代わりに介護保険の手続きをしたい」というものです(上記集計結果の9.8%)。

介護保険でケア等にかかる自己負担を減らすには、要介護認定を得なければなりません。認定申請は基本的に本人が手続きしなければならず、介護保険要介護(要支援)認定書などの書類が必要になります。言うまでもなく、すでに判断能力が不十分になった人が自分で対応するのは困難ですが、かといって近親者等が代理しても「委任状を書いてもらえず手続きが進まない」などの理由で申請手続きがストップしてしまいがちです。

以上のような理由から、生活環境を整える前の段階で「保険制度を活用するために後見人等の地位が必要」と認識されるケースが比較的多く見られます。

4.不動産の処分のため

申立ての動機として4番目に多いのは「要支援者所有の不動産を代わりに売買したい」というもの(上記集計結果の9.3%)。

少額資産ならともかく、持ち家や収益物件(経営中のアパートなど)の高額資産についてリフォームや売却をしたい場合、本人か法定代理人でないと契約を結べません。特に不動産は、いつまで経っても適切に処分できないとなると「管理が滞りがちになって荒廃してしまう」「持ち家以外にめぼしい資産がないため要支援者の生活費を確保できない」などの困った事態を招きます。

適切なタイミングですぐ処分行為をしなければならない不動産の性質から、本人の判断能力が低下している時は、すぐに後見等を検討しなくてはなりません。

5.相続手続きのため

申立ての動機として他に多いのは「要支援者が相続人になったことで、相続手続きが進まなくなった」というもの(上記集計結果の8.4%)。

遺言書がない場合の相続手続きでは、共同相続人全員が集まって話し合い(=遺産分割協議)、相続財産の取り分について合意しなければなりません。この時、遺産分割協議の参加者の中に意思能力を失っている人がいると、取り決めた内容が無効になります(民法第3条の2)。また、意思能力のない相続人を参加させなかった場合も、同じく合意内容は無効です。

遺言書がある場合の相続手続きでも、意思能力のない相続人が遺産を自分の名義に変えようとする時の問題があります。近親者などが代わりにやってあげる必要があるところ、手続きの窓口である銀行や法務局は、基本的に本人からの申請しか受け付けてくれません。

亡くなった人の財産は、家族全体の経済的基盤になるものです。相続手続きが進まないと、要支援者ごと共倒れになってしまう恐れがあります。そこで、意思能力のない要支援者が相続人になった場合は、早急に後見人等の「相続手続きで本人の代理をしてもらえる人物」を用意しなければなりません。

後見人等にできないこと

後見人等の権限は広く、一般に「本人のためならどんなことでもできる」と考えられがちです。しかし実際には、下記7つの行為は後見事務に含まれないとされています。

いずれも本人の意志が尊重されるべき事項(または代理になじまない行為)と考えられており、後見人等が関与すれば、かえって本人の利益を損ねてしまいます。

  1. 日用品購入に関する同意や取消し
  2. 医療行為への同意(患者本人やその親族に求められるもの)
  3. 食事や排泄の解除・自宅の清掃・送迎・付添い等(=事実行為)
  4. 身元保証人や身元引受人、入院保証人等になること
  5. 本人の住む場所を指定すること(=居住指定権)
  6. 婚姻・離婚・養子縁組・離縁・子の認知などの代理(=身分行為)
  7. 遺言書の代筆

上記以外にも、後見等が被後見人等の死亡によって終了する以上、要支援者が亡くなった後に必要な手続きは不可能です。ただし、既に解説した通り、成年後見人のみ「相続財産を保存に必要な行為」までであれば許可を得て実施できます。

後見人等になれる人とは

法定後見制度では、後見人等を選ぶ権限は家庭裁判所にあるとされています(民法第843条1項・第876条の2第1項・第876条の7第1項)。しかし、まったく希望を出せないわけではなく、審判の申立て時に候補者を立てることが認められています。

なお、候補者資格や家裁に選任されるための条件は、特に指定されていません。弁護士や司法書士などの資格を持たない人でも、本人の心身の状態と生活状況に配慮できる(=身上配慮義務が果たせる)のであれば、成年後見人等に就任できます。

後見人の欠格事由

後見人等になるための資格は不要とされる一方で、下記いずれかにあたる人は就任できません(後見人の欠格事由/民法第847条)。

  • 未成年者
  • 法定代理人、保佐人、補助人としての地位を家裁に剥奪されたことのある人
  • 破産手続きを開始し、まだ復権していない人
  • 被後見人に対し訴訟を起こしたことのある人
  • 上記の配偶者および直系血族
  • 行方の知れない人

その理由としては、立場上不正や職務放棄のリスクが高いと考えられるからです。

候補者が必ず後見人等になれるわけではない

念のため補足すると、後見人候補者が必ず選任されるわけではありません。候補者が後見人等にふさわしいかどうかは、個別かつ客観的に判断されるからです。

特に、高齢者、自身の健康面で不安を抱える人、過去に家庭内トラブルを起こした経験のある人は、後見人候補者として名乗り出ても選ばれない可能性が高いと言わざるを得ません。

親族が後見人等になる場合の3つの注意点

本人の意思をくみ取りながら後見事務をこなせるのは、同居家族などの親族だと考えられています。実際に、2019年3月の第2回成年後見制度利用促進専門家会議では、できる限り「ふさわしい親族等の身近な支援者」を選任するのが望ましいと最高裁から提言されました。

一方で、親族が成年後見人等になった場合、仕事をこなす上での心構えや義務関係の理解が不足しがちである点が問題になります。今後、法定後見制度で家族を支えることになる人は、以下3つに十分留意しましょう。

1.公的任務であることを自覚する

成年後見人・保佐人・補助人といった立場は、法令で定められる公的なものです。基本的なルールは「委任契約」もしくは「準委任契約」を定める法律(民法第643条~第656条)で決められており、特に「法律上要求される一定の注意を払う義務」(=善管注意義務)を負う点には注意しなければなりません。

また、後見人等の仕事の範囲を定める法令も別途設けられています。

以上のように法的責任を負う立場であることを理解し、本人のためになるなら……と権利を濫用することのないよう注意しなければなりません。

2. 財産を減らす可能性のある行為は相談する

財産を減らす可能性がある行為に関しては、たとえ代理権があっても、家庭裁判所もしくは後見監督人等に相談しなければなりません。具体例として、金銭を貸しつけたり、価格が下落する前に有価証券等を現金に換えたりする行為が挙げられます。

特に「居住用不動産の処分」に関しては、本人の生活環境をたちまち損ねる恐れがあるため、家庭裁判所の許可を得なければならないと規定されています(民法第859条の3)。

3. 事前に親族内で話し合う

後見人の仕事は、適正にこなしていても「本当に本人のために必要なことなのか」「実は遺産の使い込みをしているのではないか」と他の親族に疑われる恐れがあります。結果、悪意なく仕事を妨害されたり、将来相続トラブルに発展して遺産分割が難航したりする可能性も捨てきれません。

以上を踏まえ、あらぬ誤解からもめ事に発展しないよう、後見人等に選任される前から親族とよく話し合っておくべきです。

第三者が後見人等になる場合の3つの注意点

「後見人等の選任は親族等が優先される」と紹介しましたが、法定後見制度を利用するケースの4分の3以上で第三者が選任されているのが実情です(平成30年度の調査より)。そういったケースの背景には、近親者と言える人がいなかったり、勤務先や年齢の都合で後見事務をこなすのが難しかったりする等の事情があります。

上記のような事情で第三者が後見人等になる場合、基本的に士業(専門職)が選ばれます。同時に、できるだけ本人やその家族と繋がりのない人物が選任される傾向にあり、士業と言っても「見ず知らずの人」が選ばれるケースが多々あります。

そのため、後見人に選ばれなかった家族は、どうしても「本当にちゃんと仕事をしてくれるのか」という不安を抱きがちです。以降では、第三者後見人等に不安なく仕事を任せるために知っておきたい注意点を紹介します。

1.「本人の利益」のために動く

まず理解しておきたいのは、後見人は本人の利益保護に繋がる仕事しかできない点です。周囲の親族の生活や、近い将来に起こる遺産相続に関しては、一切配慮してくれません。

本人や家族が「収益用不動産を運用してほしい」「本人に代わって株取引してほしい」といったことを望んでも、財産を目減りさせる可能性が高いことから、後見事務としては認められないのです。

2.後見事務の記録は基本的に開示されない

また、後見は非公開の手続きです。たとえ血縁関係の近い家族であっても「どんな仕事をしているのか」「費用はいくらかかっているのか」などの情報は開示されません。

親族として後見事務の状況について知りたい時は、家庭裁判所に記録の閲覧・謄写申請し、許可を得る方法があります。注意したいのは、申請に対して必ずしも許可が下りるわけではない点です。また、閲覧等を許可するかどうかを検討する時間があるため、結果連絡は申請から数日程度はかかります。

3.第三者の後見人とのコミュニケーションは大切

最後に、後見人を信頼して仕事を任せきりにするのもNGです。第三者という立場上、本人の意志を汲める範囲には限界があり、さらに「財産の使い込み」などの不正が行われる恐れすらあるからです。

親族としてできるだけこまめに後見人とコミュニケーションをとり、身近な人しか知らない情報(本人の性格傾向等)を共有しつつ、本人の様子を聞くなどして状況をチェックするよう心がけましょう。

法定後見制度の申立てができる人

法定後見制度を利用する時は、まず家庭裁判所での「後見開始の審判」(保佐開始の審判・補助開始の審判)の申立てが必要です。この時に申立人になれるのは、後見について定める法令で下記いずれかだとされています。

  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 保佐人・保佐監督人
  • 補助人・補助監督人
  • 未成年後見人・未成年後見監督人
  • 任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人
  • 検察官

後見人等を利用する場合の流れ

それでは「後見開始の審判」(保佐開始の審判・補助開始の審判)はどんな流れで手続きが進むのでしょうか。以降では、後見開始までの手続きを7ステップに分けて解説します。

1.後見(保佐・補助)開始の審判の申立て

まずは「家事審判申立書」(後見・保佐・補助開始申立書)に申立ての理由など必要事項を記入し、戸籍謄本などの必要書類を添付して家裁に提出します。申立書類の提出先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所(リンク)です。

既に述べた通りですが、保佐または補助の開始を本人以外から申立てようとする場合、必ず本人の同意を得なくてはならない点に注意しましょう。

2.後見開始に向けた調査

申立書類が家裁に到着すると、後見等の審判を行うため以下2つの調査が行われます。

  • 申立人と後見人候補者に関する調査: 申立書の調査から始まり、対面での予備審問、電話等での簡単な聞き取り、書面による親族への意向照会などが必要に応じて行われます。
  • 本人に関する調査: 調査官が対面し、本人の健康状態をチェックします。必要であれば、家裁から医師へ「鑑定」の依頼が行われます。

なお、本人に関する調査で鑑定が必要になった場合、10万円~20万円を目安に申立人が費用負担しなければなりません。

3.審判の開始

上記の調査結果が揃った段階で、いよいよ後見人を選任するための審判が行われます。審判の際は、必要に応じて下記事項も決定されることがあります。

  • 監督人の選任: 後見人だけで職務を達成できるか不安が残るケースでは、収支状況等をチェックする役割の「後見監督人」(保佐監督人・補助監督人)が置かれます。同時に、後見事務の難しさ等に応じて監督人報酬(月額1万円~2万5千円)が定められる場合もあります。
  • 後見制度支援信託・後見制度支援預貯金の利用推奨: 被後見人等が資産家であるケースでは、通常使わない財産を信託業者や銀行で保管する「後見制度支援信託」あるいは「後見制度支援預貯金」の利用が推奨されます。

4. 審判の確定

申立書等に不備がない場合、申立てから1か月~2か月程度で後見開始の条件等について決定が下り、後見人等とその監督人に「審判書」が送付されます。審判書が届いてから2週間以内に不服申立てをしなければ、家裁の決定事項に法的効力が生じます(=審判の確定)。

5. 後見の登記

審判確定後、その内容が法務局に登記されます。後見事務(各種届出や銀行への出勤申請など)で必要になった場合は、つど法務局に登記事項証明書を請求し、手続き先の窓口で提示しなければなりません。

なお、家裁や法務局で行われる事務の都合上、登記事項証明書が取得できるようになるまで約1か月程度かかります。

6. 後見事務の開始

審判が確定すると、後見人は速やかに(目安として1か月以内)に年間収支を立て、財産目録と共に提出しなければなりません。その後に関しても、年1回程度のペースで家庭裁判所(もしくは後見監督人)に定期報告義務が生じます。

7.後見人報酬の付与

成年後見人等は、審判で報酬を付与してもらうこともできます(民法第862条・第852条)。報酬額の決定は家庭裁判所が個別に行い、被後見人等の財産の額に応じて月額2万円~6万円が目安となります。

法定後見制度の申立て時に必要なもの

後見開始(保佐開始・補助開始)の審判を申し立てる時は、原則として下記一式を提出します。

裁判所の運用やケースによっては提出物が増減することもあるため、事前に士業や管轄家裁に相談することをおすすめします。

申立人に関するもの 家事審判申立書(後見・保佐・補助開始申立書) / 申立書附票 / 親族関係図
本人に関するもの 戸籍謄本(全部事項証明書) / 戸籍附票または住民票 / 後見登記されていないことの証明書 / 医師の診断書 / 障害者手帳など健康状態が分かるもの(あれば)
後見人候補者に関するもの 戸籍附票または住民票
本人の財産に関するもの 財産目録+財産状況が分かる資料(以降、財産状況が分かる資料の一例: 通帳の写しまたは残高証明書 / 不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書 / 債務に関する書類(ローン契約書の写しなど))
本人の収支に関する資料 収入が分かるもの(年金額決定通知書、給与明細、確定申告書、家賃や地代の領収書など) / 支出が分かるもの(入院費、老人ホームの利用料、健康保険料等の決定通知書など)
申立て費用 申立て手数料(申立て手数料800円+代理権または同意権付与の審判1件ごとに800円を収入印紙で納付) / 登記手数料(2,600円を収入印紙で納付) / 連絡用郵便切手(金額は審判の種類や管轄裁判所により異なる)

後見人等を解任したい場合

家庭裁判所に資質を認められて後見人等に就任した人でも、不正な行為・著しい不行跡・その他後見の任務に適しない事由があれば解任されます(民法第846条)。万が一後見人等を解任したくなった時は、家事審判を申し立てなければなりません。なお、解任請求できるのは以下の立場にある人です。

  • 被後見人
  • 被後見人の親族
  • 後見人等の監督人
  • 検察官

成年後見制度を利用する際の相談先

成年後見制度は複雑で、十分理解したつもりでも戸惑うことが多くあります。そのような場合は、下記機関で相談してみましょう。

  • 法テラス: 資力やその他の状況に関わらず法的トラブルを解決できるよう、法的支援の中心的機関として運営されています。経済的理由で成年後見制度の利用が難しいケースは、民事法律扶助による費用立て替えについて相談できます。
  • 日本公証人連合会・公証役場: 権利関係や事実の公文書化を目的とする「公証事務」を扱う機関です。成年後見制度に関しては、任意後見契約書の作成を行う都合上、ある程度まで知識を集積しています。任意後見制度の利用手続きについて気になることがあれば、相談してみましょう。
  • 社会福祉協議会・成年後見センター: 各地の自治体でも、社会福祉協議会(もしくは成人後見センター)で成年後見制度に関する相談に応じています。保険制度など地域で受けられる支援を一括で案内してくれるのが特徴ですが、法律知識は十分とは言えません。成年後見制度などの福祉支援をすぐ受ける必要があり、かつ資産管理や家庭事情にあまり複雑さがないケースでの相談先となります。
  • 後見分野に詳しい士業: 成年後見制度の利用条件等に関する一般的なアドバイスだけでなく、書類作成・交渉・訴訟対応などの手続きを一括で行える点が強みです。必要に応じ、要支援者が亡くなった後の相続トラブルや遺産分割を見据えたサポートもしてもらえます。

まとめ

法定後見制度は、判断能力が不十分な人について「金銭管理」や「生活上必要な手続き」を支援できるよう、家庭裁判所がふさわしい人物を選任して権限を与える制度です。支援方法には後見・保佐・補助の3類型があり、本人の状態に合わせて「必要最低限の支援のみ行う」という方針で利用することもできます。

法定後見制度のデメリットとしては、判断能力が一定程度まで低下するまで支援を開始できない点です。そのため、事前の対策にはなり得ず、活用の実例でも「家族では預金が下せないと知って申立てに踏み切った」など困り事が生じてから申立てに踏み切るケースが多数見受けられます。

また、後見等を開始した後も、不正や親族間トラブルなどには十分警戒しなくてはなりません。

後見等を利用する可能性があるケースでおすすめする相談先は、後見と相続の両方に詳しい士業です。任意後見制度の活用・遺言書の作成などを含めた多角的なアドバイスが得られる他、後見事務に関する悩みにも寄り添ってもらえるのが士業のメリットです。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

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