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成年後見制度の「後見監督人」とは?役割・資格・監督人報酬を解説

更新日:2021.08.24

成年後見制度の「後見監督人」とは?役割・資格・監督人報酬を解説

成年後見制度での「後見監督人」とは、要支援者のための財産管理や身上保護がきちんと行われるよう、第三者的な立場で継続してチェックする役割を担う人です。後見人の選任に家裁が関わらなかったケースや、士業など必ずしも要支援者に近しい存在とは言えない人が後見人になったケースでは、基本的に監督が開始されると考えて構いません。

本記事では「監督業務が認知症患者等の支援にどう関わるのか分からない」「監督人が付くと支援がやりづらくなってしまうかもしれない」と不安に思う人へ、後見監督人の役割・就任資格・報酬について解説します。

後見監督人とはなにか

後見監督人とは、精神等に障害を負った人を保護するための「成年後見制度」が開始された後、後見人等に就任した人を監督する立場の人です(民法第851条1号)。

後見制度で支援を受けなければならない状態(=被後見人)になると、その立場は非常に弱くなります。生活を守ってくれるはずの後見人ですら、仕事を放棄したり、権利を乱用して無駄遣いや財産の着服をしてしまったりするかもしれません。

そこで、後見人による支援を末永く適切に行ってもらえるよう、必要に応じて後見監督人をつけられると法律で定められています。

後見監督人の仕事

後見監督人に就任した人は、一般的に要求される程度の注意義務(善管注意義務/第644条の2)をもって、下記の仕事をこなさなければなりません。どの仕事もきちんと達成されることで、被後見人の暮らしが守られます。

  • 財産調査への立会い(民法第853条2項)

成年後見制度を開始すると、後見人は速やかに被後見人の資産状況を調査し、その内容をまとめた「財産目録」を作成しなければなりません。後見監督人が選ばれたケースでは、目録作成に監督人が立ち会わなければ不備扱いになります。

 

  • 債務に関する報告受領(民法第855条2項)

後見人と被後見人が利益相反関係(一方の利益がもう一方の損失となる関係)にあるのは、基本的に望ましくないと考えられています。特に問題なのは、お金の貸し借りがあるケースです。

そこで、後見監督人がつき、かつ後見人が被後見人に対して債務を負っている場合は、前述の財産調査に着手する前に監督人へと報告しなければなりません。

 

  • 後見人が欠けた時の選任請求(民法第851条2号)

後見人が辞任・解任・死亡などの理由でいなくなってしまうのは、当然被後見人にとって問題です。後見監督人がいれば、万一の時も、遅滞なく次の後見人選任を家裁に請求してもらえます。

 

  • 急迫の事情がある場合の処分(民法第851条3号)

後見人がいなくなるケース以外にも、不測の事態が起き、被後見人の生活が脅かされる可能性があります。例えば「後見人が被後見人を虐待している」「介護人かつ後見人である人が突然体調を崩してしまった」などの急を要する事態が発生した時は、後見監督人の判断で必要な処分を行ってもらえます。

 

  • 利益相反にあたる行為の代表(民法第851条4号)

後見人は基本的に、各種手続きについて被後見人を代理できます(保佐人・補助人・任意後見人は原則代理不可/詳しくは後述)。しかし、利益相反関係が生じる場合は別です。

代表例としては「家族が亡くなり、後見人と被後見人が揃って相続権を得たケース」が挙げられます。この場合、相続人全員で遺産分割協議を開かなくてはなりませんが、被後見人の代わりに後見人が取り分を主張し決定することはできません。

 

上記のようなケースでは、通常、被後見人の代理を務めてくれる「特別代理人」を探さなくてはなりません。しかし、後見監督人がいる場合は、わざわざ特別代理人を探さなくても被後見人を代表してくれます。

後見監督人には2種類ある

ひとくちに成年後見制度と言っても、利用条件等が異なる「法定後見制度」「任意後見制度」の2種類があります。どちらの制度でも必要に応じて後見監督人が選任され、監督を受ける人の仕事内容に応じ、先で紹介したようなチェック業務や緊急対応業務をこなします。

ただし、監督人について言及する必要が出た場合、利用する制度が分かるように「成年後見監督人」「任意後見監督人」とのように呼び分けます。また、監督人がつく条件に関しては、制度ごとに以下のような基準があります。

  • 法定後見制度で後見監督人がつく条件: 「家庭裁判所が必要と認めるとき」または「被後見人・親族・後見人のいずれかから請求があった場合」(民法第849条)
  • 任意後見制度で後見監督人がつく条件: 原則として無条件でつく(任意後見契約に関する法律第4条1項)

下記では、後見の基礎知識として、監督人に関する説明を交えながら制度を解説します。

法定後見制度

法定後見制度とは、判断能力が不十分になった時点で周囲の人が申立てを開始し、管轄の家庭裁判所に支援者を選んでもらう制度です。家裁に選任された支援者は「成年後見人」となり、本人に代わって金銭管理や契約締結を行う等のサポートを開始します。

本制度は任意後見制度よりも先に存在したもので、民法を根拠としています。また、法定後見制度は「後見」「保佐」「補助」の3つの制度に分かれており、どの制度にも監督人の規定があります(下記参照)。

  • 「後見」とは

判断能力が常に不十分な人のため、支援者である「成年後見人」が法律行為全般の代理を行えるようにする制度です。

本制度で選ばれた監督人は「成年後見監督人」と呼ばれます。

 

  • 「保佐」とは

判断能力が不十分な人のため、支援者である「保佐人」が本人による所定の法律行為について同意や取消しを行えるようにする制度です。必要に応じ、特定の法律行為について代理権を付与してもらうことも可能です。

本制度で選ばれた監督人は「保佐監督人」と呼ばれます。

 

  • 「補助」とは

判断能力が欠けている人のため、支援者である「補助人」が本人による法律行為を取り消せるようにする制度です。必要に応じ、所定の法律行為について事前の同意や締結後の取消を行う権利(同意権・取消権)や、特定の法律行為に関する代理権を付与してもらうことも可能です。

本制度で選ばれた監督人は「補助監督人」と呼ばれます。

任意後見制度

任意後見制度とは、まだ判断能力が低下しないうちに、本人の意志で後見の条件(支援の内容など)を決めておける制度です。先々で認知症を発症するなど判断能力が不十分になった時は、あらかじめ指定した人物が「任意後見人」となって支援を開始します。

本制度は平成11年に成立した「任意後見契約に関する法律」を根拠としており、この法律では後見開始の条件や手続きなどが規定されています。また、任意後見制度での監督人は、法定後見制度で選任された人物と区別できるよう「任意後見監督人」と呼ばれます。

法定後見制度の手続きの流れ

要支援者になってから支援を開始するまでの流れは、後見監督人がついても複雑化することはありません。ここではまず、法定後見制度の手続きについて解説します。

後見監督人がつくケース

法定後見制度で監督人がつく条件である「家庭裁判所が必要と認めるとき」に関して、具体的にどういったケースなのかは説明されていません。これまで後見が開始されたケースによれば、下記のように監督の必要性の高い状況でつけられるのが一般的です。

  • ケース1 後見人による不正リスクが高い場合: (例)第三者(士業や遠縁の親類)が後見人になる、後見人の年齢や健康状態に不安がある
  • ケース2 もめ事の可能性がある場合: (例)被後見人が資産家である、親族同士の仲が悪い
  • ケース3 後見人と被後見人が利益相反関係にある場合: (例)両親が相次いで亡くなり、その遺産分割手続きのため、知的障害を持つ子の成年後見人としてきょうだいが選任された

法定後見制度を開始する時の手続きの流れ

法定後見制度を開始するための手続きは、家庭裁判所が成年後見監督人(または保佐監督人・補助監督人)を必要と認めた場合、下記の流れで進みます。

  • Step1.「後見開始の審判」の申立て: 本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ、申立書などの必要書類に手数料を添えて提出します。
  • Step2.調査・鑑定: 後見を開始すべき状態か判断するため、担当官が本人と面談し、親族に対しても意向照会が行われます。本人の判断能力をより正確に見極める必要があると判断された場合は、精神鑑定が実施されます。
  • Step3.後見人・後見監督人の選任: Step2までに揃えた資料に基づいて審理が開始され、成年後見人と後見監督人が選ばれます。選ばれた人物の元にはそれぞれ審判書が届き、一定期間内に不服申し立てがなければ審判確定に至ります。
  • Step4.後見事務の開始: 審判確定後、後見を開始したことが法務局に登記されます。成年後見人に就任した人は、速やかに年間収支を立て、さらに後見監督人立会いの元で財産目録を作成し、家庭裁判所に提出しなければなりません。

後見監督人をつけるには

既に解説したように、法定後見制度の開始時に必要だと認めなかった場合でも、被後見人・親族・後見人のいずれかから請求すれば後見監督人をつけてもらえます。請求時は「家事審判申立書」(裁判所公式サイトからダウンロード可)に所定の内容を記入し、手数料を添えて提出しなければなりません。

また、上記申立書提出後に、なぜ後見監督人が必要なのか書面や対面などで質問される場合があります。

任意後見制度の手続きをするには

任意後見制度では、後見開始と監督人の選任が同時に実施されます。詳しい手続きの流れは以降で紹介する通りです。

任意後見制度を開始する時の手続きの流れ

任意後見人としての支援開始は、事前に「任意後見契約書」を交わしていることが前提です。支援開始時の手続き名は「任意後見監督人の選任審判」であり、この点からも原則必ず監督人がつくと理解できます。

  • Step1.任意後見契約書の作成: あらかじめ後見事務の内容や支援を開始する時期について支援者と話し合い、合意を交わして書面化します。
  • Step2.「任意後見監督人の選任審判」の申立て: 契約時に指定した支援開始のタイミング(判断能力が不十分になった時など)がやってきた時は、申立書や契約書の写しなどに手数料を添えて提出します。
  • Step3.調査・鑑定: 後見を開始すべき状態か判断するため、本人との面談・親族への意向照会のほか、必要に応じて精神鑑定が行われます。
  • Step4.任意後見監督人の選任: Step2~3で揃えた資料に基づいて審理が開始され、任意後見監督人が選ばれます。その後、監督人と任意後見人の元にそれぞれ審判書が届き、一定期間内に不服申し立てがなければ審判確定に至ります。
  • Step5.後見事務の開始: 審判確定後、後見を開始したことが法務局に登記されます。任意後見人に就任した人は、速やかに年間収支を立て、さらに後見監督人立会いの元で財産目録を作成し、家庭裁判所に提出しなければなりません。

後見監督人の権利

法定後見制度(後見・保佐・補助)と任意後見制度の共通事項として、監督人の職務をこなせるよう3つの権利が与えられます。この点について後見人や保佐人・補助人となる人も理解しておかないと、事務中にミスが指摘され、資質が再度問われる恐れがあります。

※以降では、保佐・補助・任意後見に関しても便宜上「後見監督人」と表記します。

後見事務の監督

後見監督人は、監督を受ける人に対し、いつでも事務報告や財産目録の提出を求められます。また、事務の状況や財産の調査を直接調査することも可能です(民法第863条1項・第876条の5第2項・第876条の10第1項・任意後見契約法第7条2項~3項)。

後見人の解任請求

監督人がついていても、本記事の始めで触れた「後見人が仕事を放棄してしまった」「被後見人の財産を横領してしまった」などの見過ごせない事態が起こることがあります。以上のように不適切な行動や著しい不正などがあった場合は、監督を受ける人の解任を請求できます(民法第846条・第876条の2第2項・第876の7第2項・任意後見契約に関する法律第8条)。

後見監督人の辞任

他には、後見監督人に正当な事由がある場合、その職を辞任できます(民法第844条・第852条・第876条の3・任意後見契約に関する法律第7条4項)。正当な事由の代表例としては、健康状態の悪化が挙げられます。

後見監督人にはなれない人

後見監督人のシステムは「第三者的な立場で、かつ上記権利を適切に活用できる人」が就任しないと機能しません。そこで下記のような「後見監督人の欠格事由」が設けられています。

  1. 未成年者
  2. 法定代理人や保佐人、補助人としての地位を家裁に剥奪されたことのある人
  3. 破産手続きを開始し、まだ復権していない人
  4. 被後見人に対し訴訟を起こしたことのある人
  5. 上記の配偶者および直系血族
  6. 行方の知れない人
  7. 被後見人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹

該当する人は成年後見制度全般で監督人にはなれないとされています(民法第847条・民法第850条・第876条の3第2項・第876の8第2項・任意後見契約に関する法律第7条4項)。

後見監督人の解任

また、当初資質ありと認められたにもかかわらず、後見監督人がきちんとチェック業務を実施してくれないことがあります。

上記のようなリスクに備え、後見監督人に関しても、不適切な行動や著しい不正などがあった場合は解任できるとの規定があります。(民法第852条・第876条の3第2項・第876条の8第2項・意後見契約に関する法律第8条)。

後見監督人の報酬

最後に触れたいのは、成年後見制度にかかる費用の問題です。後見監督人に関して言えば、被後見人の財産から報酬を付与できると定められています(民法第862条)。この規定は成年後見監督人に関するものですが、保佐監督人・補助監督人・任意後見監督人にも適用されます。

気になる監督人報酬の額は「報酬付与の審判」で個別に決定され、統一的な基準はありません。各地の家庭裁判所では、監督事務の難しさに配慮して「被後見人の財産の額」(=管理財産額)を基準の1つとし、後見監督人報酬の目安を、「

管理財産額5千万円以下: 月額1万円~2万円」「管理財産額5千万円超: 月額2万5千円~3万円」と取り決めています。

まとめ

後見人は本人や家庭裁判所によって資質のある人物が選ばれますが、必ずしも適正に仕事をこなしてくれるとは限りません。

そこで、法定後見制度では「家裁が必要と判断した時」・任意後見制度では「後見開始時に原則必ず」とのように条件を設け、後見監督人が選ばれます。

選任された後見監督人の主な仕事は「支援が適正に行われているかチェックすること」ですが、決して支援範囲を狭めるものではありません。また、後見人が欠けたり、要支援者の代理を務められなかったりする場面では、監督人がいるからこそ迅速なフォローが期待できます。

本記事で後見監督人について理解しても、報酬額や監督人との相性については、やはり不安が残るでしょう。個別具体的な後見を巡る不安・疑問については、士業に状況を伝えて相談してみることをおすすめします。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

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