家族葬が増えている昨今、訃報の連絡には気を使わなければなりません。
訃報は、死の事実の連絡だけではなく、葬儀の案内という役割を担っているからです。
家族葬の場合、参列してほしい人とそうでない人によって、訃報連絡のタイミングや内容が異なってきます。
どのように訃報の連絡をするべきなのか、例文も交えてご紹介します。
目次
1. そもそも訃報とは?
訃報とは、誰かが亡くなったことの知らせのことで、遺族からの直接の電話やメールに加え、知人からの口伝えや取引先や関係者からのFAX、隣近所からの回覧板での知らせ等、事実を伝えるものはすべて訃報に含まれます。
また、テレビやインターネットなどのメディアによる死亡の報道や、新聞の死亡記事や死亡広告も、広い意味で訃報と言えるでしょう。
2. 訃報は誰に連絡すべきか?
訃報は誰に向けて連絡すべきなのでしょうか。これは葬儀をどのように執り行うかによって考え方が変わってきます。
なぜなら、訃報はそのまま葬儀案内の役割を果たすからです。
もしも家族葬にしたいのであれば訃報は最小限にとどめておかなければなりませんし、社葬のような大きな葬儀にするのであれば、1人でも多くの人に訃報が行き渡るようにしなければなりません。
葬儀のスタイル、または相手との関係性によって訃報を伝えるタイミングや方法も変わってくるのです。
2-1 まずは親族
どのような葬儀であれ、まずは親族に連絡をします。
ここで言う親族は、主に「直系の血族」と「傍系の親族」に分けられます。
直系の血族とは、祖父母、親、子、孫といったいわゆる家族のことです。
こうした家族は喪主とともに葬儀を執り行う側になるので、どんなに小規模な葬儀でも訃報連絡するのが基本です。
それに対して傍系の親族とは、故人の兄弟姉妹、そしてそこから派生する叔父叔母、甥姪などがあたります。
こうした人たちへの連絡は優先順位では上位になりますが、葬儀をどのように行うかによっては伝え方を考えなければなりません。
親戚であっても声をかけずに事後報告にするケース、あるいは訃報連絡こそするものの参列を辞退するというケースも見られます。
2-2 菩提寺
菩提寺とは、先祖代々の供養をしてくれている寺院のことです。菩提寺がある場合はそのお寺の住職や僧侶が葬儀のお勤めをしてくれます。
葬儀日程を決める上でも寺院との調整が必要になるので早めに連絡しておきましょう。
また、寺院によっては枕経(ご遺体の枕元で読み上げる読経)のために自宅まで駆けつけることもあります。
2-3 故人と親しくしていた友人・知人
故人と親しくしていた友人や知人には早めに連絡しておくことが望ましいでしょう。
こうした人たちは儀礼や建前からではなく、心から故人のために参列したいと考えているからです。
とはいえ喪主が家族葬を希望する場合は、訃報連絡の時に参列を控えてほしい旨を伝えるか、事後報告のいずれかとします。
2-4 勤務先や学校にも連絡を
喪主や家族の勤務先や学校へは必ず訃報を伝えなければなりません。
なぜなら忌引き休暇の申請をしなければならないからです。
特に勤務先の場合は、進行中の仕事の引き継ぎや取引先への連絡などの業務の調整が必要な場合もあります。
申請方法は会社や学校が定める方法で行います。家族葬などで参列を控えてほしいときはあわせてその旨も伝えておきます。
2-5 最後に近隣や町内会などの地域関係者へ
普段からお世話になっている近隣や隣近所への連絡も必要です。
葬儀の後も付き合いは長く続いていくので、慣例に従った方法で連絡をしましょう。
もしも連絡方法が分からないのであれば町内会長に直接伝えます。
地域によってはいまでも回覧板による訃報連絡、隣保や隣組による参列やお手伝い、香典の手配など、さまざまな慣習やしきたりが残っています。
地域の慣習には極力沿って対応するのがよいでしょう。
3. 訃報を連絡する手段は?
家族葬が多い昨今では、訃報の連絡手段は主に次の2つに絞られます。
ひとつは電話、もうひとつはメールやSNSなどです。それぞれに利点や注意点があるので、くわしく見ていきます。
3-1 電話
電話の利点は、すばやく、直接伝えられることです。緊急かつ重要な知らせである訃報にはもっとも優れた方法と言えるでしょう。
すぐに伝えたい場合や、必ず伝えなければならない大切な人にはまずは電話で連絡をする人が多いようです。
また、訃報は身内の死という事実の伝達だけでなく、そこにさまざまな想いや気遣いが交錯します。
音声通話だからこそ感情が伝わるという側面もあります。
特に大切な人には、まずは電話で連絡しておくのが丁寧でしょう。
3-2 メールやLINE
文章として残るものなので伝達ミスが起こりにくく、葬儀の日程や場所など、事務的な伝達方法として優れています。
しかしその事務的な側面が裏目にでることもあります。
メールだけの訃報連絡が相手に違和感を抱かせることもあります。
そのほかにも、さまざまな受信メールに埋もれてしまって訃報が相手に届かないことも考えられます。
すべての人に一律で送るのではなく、相手によっては先に電話で一報を入れておくなど、臨機応変に連絡方法を選択しましょう。
3-3 その他の方法
電話やメール以外にもさまざまな方法があります。会社間の訃報連絡ではファックスが用いられることがあります。
また、大規模な葬儀になると新聞の死亡記事や死亡広告が用いられます。地域によっては回覧板や町内の掲示板や放送で知らせるところもいまだにあります。
4. 訃報の連絡で必ず伝えなければいけないことは?
訃報の連絡は簡潔に行うのが基本です。
まずは簡潔に逝去の事実を伝え、その後、葬儀の日程や場所などについて詳しく連絡しましょう。
4-1 訃報連絡で必要な5つのこと
訃報の連絡で必要なのは最低限次の5つです。いざというときに動揺しないために、メモ書きなどで事前にまとめておくとよいでしょう。
- 誰が亡くなったか(亡くなった人の名前):
まずは誰が亡くなったのかをきちんと伝えましょう。親戚が多い場合には似た名前の人と勘違いされることもあります。
- いつ亡くなったか(亡くなった日時):
正確な死亡日時は、医師に発行される死亡診断書(または死体検案書)に記載されています。
- 死因(亡くなった理由):
訃報連絡を受けた側は、どうして亡くなったのか、その理由が気になるもので、訃報連絡の際にはほぼその話題に触れます。まずは簡単に死因を伝えておきます。 - 葬儀の方針、日程や場所:
家族葬や一般葬など、葬儀の方針が決まっているのであれば予め伝えておきます。また日程や場所も同様です。未定の場合は改めて電話やメールで連絡します。
- 連絡先:
いざという時に誰に連絡するべきか、その人の連絡先を伝えておきます。
4-2 事前に伝えておくことで心構えができる
危篤の内にいつ葬儀が起きてもおかしくない旨を伝えておくことで、いざという時の訃報連絡でお互いが慌てなくて済みます。
危篤の状況下では家族も心身ともに厳しい状況にあると思いますが、可能であれば事前連絡をしておきましょう。
5. 訃報の連絡をする際の例文集【親族】
いざ訃報連絡するときに、どのような文言で伝えればよいのでしょうか。
あくまでも相手との距離や関係性、置かれている状況によって選ぶ言葉も変わってきますが、ここでは一般的に用いられる例文をまとめてみました。
5-1 電話で伝える例文集【親族】
電話は、もっとも早く確実に訃報を伝えることのできる方法です。親族など特に近い距離にある人にはまずは電話で連絡しましょう。
その際、確実に伝えておきたいのは、「自分が誰か」「誰が亡くなったか」「いつどのように亡くなったか」「葬儀の方針や日程」「連絡先」です。
突然のお電話恐れ入ります。◯◯の妻の▲▲です。実は、ずっと入院していた主人が、今朝方息を引き取りましたので、取り急ぎお知らせのためお電話差し上げました。
葬儀についてはこれから決めていくので、日程や場所など決まりましたらまたご連絡させていただきます。
5-2 手紙で伝える例文集【親族】
手紙で訃報を伝えるということは、そのほとんどは事後報告、つまり葬儀を終えた後の訃報連絡になります。さらには、喪中はがきで訃報を知らせるケースも増えています。
事後報告では、連絡が遅くなってしまったことへのお詫びを忘れないようにしましょう。
拝啓 日ごとに寒さが増してまいります。みなさまお変わりございませんか。
実は、お伝えしなければならないことがあり、筆を取らせていただきました。令和2年●月●日に主人が息を引き取りました。長い間病と闘っておりましたが、還らぬ人となってしまったのです。85年の生涯でした。
葬儀に関しましては主人の強い希望で、●月●日に家族葬にて執り行いました。
叔母様には、いち早くお伝えしたかったのですが、寒い季節で叔母様の体調も気になりますし、なによりも新型コロナウイルスが気がかりだったこともあり、主人の希望に沿う形をとらせていただきました。この時期のお知らせになってしまったこと、ご容赦くださいませ。
まだまだ厳しい寒さが続きます。くれぐれも、お体ご自愛くださいませ。
敬具
令和3年●月●日
(喪主の名前)
◯◯花子様
5-3 メールで伝える例文集【親族】
メールでの連絡の文面は基本的には手紙と同じです。葬儀の案内を兼ねる場合は以下一例です。
突然のメール、失礼いたします。昨日、主人が息を引き取りました。がんばって闘病を続けていたのですが、還らぬ人となってしましました。取り急ぎ、葬儀日程をお知らせ致します。もしも分からないことなどあれば、遠慮なく私までご連絡ください。
夫◯◯儀 かねてより入院加療中でしたが
去る令和●年●月●日 85歳にて永眠いたしました
ここに謹んでお知らせ申し上げます
葬儀は下記の通り執り行います
故 〇〇〇〇 儀 葬儀告別式
通夜 令和●年●月●日(土)18時より
葬儀・告別式 令和●年●月●日(日)11時~12時
場所 ■■■会館
東京都〇〇区▲▲町1-2-3
03-0000-0000
仏式 真言宗
喪主 ◎◎◎◎(長男)
連絡先 090-0000-0000(喪主携帯電話)
会場地図などは下記URLをご参照ください
URL http://www.■■■.com
事後報告の場合は以下一例です。
◯◯ 花子様大変ご無沙汰いたしております。そして、突然のメール、失礼いたします。
実は、令和2年●月●日に主人が還らぬ人となってしまいました。 かねてより入院加療中でしたが、85歳で生涯を閉じました。
葬儀に関しましては誠に勝手ながら、主人の強い希望に沿い、●月●日に家族葬にて執り行いました。
叔母様には、いち早くお伝えしたかったのですが、寒い季節で叔母様の体調も気になりますし、なによりも新型コロナウイルスが気がかりだったこともあり、このような形をとらせていただきました。この時期のお知らせになってしまったこと、ご容赦くださいませ。
まだまだ厳しい寒さが続きます。くれぐれも、お体ご自愛くださいませ。
(喪主の名前)
6. 訃報の連絡をする際の例文集【友人や知人、職場や学校関係者】
訃報の連絡の際にどのような言葉を選ぶかは、相手との関係性によって変わってきます。状況に合わせて臨機応変に対応しましょう。
6-1 電話で伝える例文集【親族以外】
突然のお電話恐れ入ります。いつも大変お世話になっております。わたくし、◯◯の妻の▲▲です。
実は、ずっと入院していた主人が、今朝方息を引き取りましたので、取り急ぎお電話させていただきました。
●月●日に通夜を、翌日に葬儀・告別式を執り行います。場所は◯◯寺です。
もしもなにかございましたら私のこの電話までご連絡お願いいたします。
6-2 手紙で伝える例文集【親族以外】
夫◯◯儀 かねてより入院加療中でしたが
去る令和●年●月●日 85歳にて永眠いたしました
ここに謹んでお知らせ申し上げます
葬儀に関しましては 故人の生前の強い希望にしたがい
遺族のみの家族葬で執り行いました
故人が生前に賜りましたご厚誼に厚く御礼申し上げます
本来であればすぐにでも直接ご通知申し上げるべきところ
今の時期になりましたことをご容赦くださいませ
6-3 メールで伝える例文集【親族以外】
(葬儀の案内を兼ねる場合)
突然のメール、失礼いたします
夫◯◯儀 かねてより入院加療中でしたが去る令和●年●月●日 85歳にて永眠いたしました
ここに謹んでお知らせ申し上げます
葬儀は下記の通り執り行います
故 〇〇〇〇 義 葬儀告別式
通夜 令和●年●月●日(土)18時より
葬儀・告別式 令和●年●月●日(日)11時~12時
場所 ■■■会館
東京都〇〇区▲▲町1-2-3
03-0000-0000
仏式 真言宗
喪主 ◎◎◎◎(長男)
連絡先 090-0000-0000(喪主携帯電話)
会場地図などは下記URLをご参照ください
URL http://www.■■■.com
(事後報告の場合)
突然のメール、失礼いたします
夫◯◯儀 かねてより入院加療中でしたが
去る令和●年●月●日 85歳にて永眠いたしました
ここに謹んでお知らせ申し上げます
葬儀に関しましては 故人の生前の強い希望にしたがい
遺族のみの家族葬で執り行いました
故人が生前に賜りましたご厚誼に厚く御礼申し上げます
本来であればすぐにでも直接ご通知申し上げるべきところ
今の時期になりましたことをご容赦くださいませ
7. 訃報の連絡をする際の例文集【喪主の勤務先や近隣・町内会】
職場や近隣の人たちひとりひとりに訃報連絡をするのは、とても大変なことです。
そんな時は代表にあたる人に電話連絡して、その方から訃報を広めてもらうようお願いしましょう。
代表の方とは、職場の場合は直属の上司、近隣の場合は町内会長などです。
このたび、父が息を引き取りましたので、取り急ぎお知らせさせていただきます。葬儀は近親者だけで家族葬で執り行います。
みなさまにお伝えいただけるようお願いできますでしょうか。
なお、弔問、香典、供花や供物は謹んでご辞退申し上げますので、その旨もあわせてお伝えいただければと存じます。
故人の逝去の直後にしなければならない訃報連絡。喪主ひとりで行うにはとても大変です。
家族や近親者の力を借りて、みんなで関係先に連絡するようにしましょう。
もしも少しでも余裕があれば、大切な人には危篤である旨を伝えておくこと、連絡先リストを作成しておくことで、いざという時の負担も軽減されるでしょう。
また、相続が発生している場合には、司法書士や行政書士など相続手続きの専門家に相談することもぜひご検討ください。
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玉川将人
1981年山口県生まれ。家族のたて続けの死をきっかけに、生涯を「弔い」に捧げる。葬儀社、仏壇店、墓石店に勤務して15年。会社員勤務の傍らでライターとして、死生、寺院、供養、終末医療などについて多数執筆。1級葬祭ディレクター、2級お墓ディレクター、2級グリーフケアカウンセラー。