21世紀の葬儀のスタンダードとなった家族葬。一体どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
この記事では、家族葬の費用について、内訳や内容、さらには安く抑えるコツや葬儀社選びのポイントも含め、わかりやすく解説します。
目次
1. 家族葬とは
家族葬とは、家族を中心に行う小規模葬儀のことです。
従来のお葬式では、家族だけでなく親戚やご縁のあった方々にも広く参列してもらっていましたが、核家族化や高齢化などにともない、コンパクトな葬儀が選ばれるようになり、家族葬が普及していきました。
家族葬は、家族以外は参列できないのかというとそうではなく、多くの家族葬では親戚の参列は当たり前のように見られます。
また、血縁や親戚関係になくても親交の深かった人に参列してもらうケースもあります。どこまでの人を呼ぶかは、喪主や家族の考え方次第なのです。
1-1 家族葬のメリット
家族葬には次に挙げるようなメリットがあります。
- 葬儀にかける費用を抑えることができる: 葬儀には様々な品目で費用が発生しますが、家族葬では参列者が限定されるので、おもてなしにかかる費用を大きく抑えることができます。
- 少人数でゆっくりと故人さまに向き合える: 家族葬は身内だけで行われる少人数の葬儀です。親戚や参列者への対応が不要なため、負担が軽減されます。落ち着いた環境で、ゆっくりと故人さまと向き合いながら送り出すことができます。
- 自分たちの希望の内容にできる: 参列者がいる場合は、ある程度形式にのっとった形で葬儀を行うことになります。しかし家族葬では外部の人の参列がないため、祭壇の飾りつけや式次第など、自分たちの希望の内容で葬儀を執り行えます。
- 相手にも余計な気遣いをさせなくて済む: 昨今では新型コロナウイルスの感染リスクがあるため、参列者側も参列すべきかどうか迷ってしまいます。喪主側から家族葬である旨を伝えることで、相手に余計な気遣いをさせなくて済みます。
1-2 家族葬のデメリット
一方で、家族葬には次のようなデメリットもあります。
- 葬儀後の自宅への弔問が増える: あとから訃報を耳にした人たちが、自宅に弔問に訪れることが考えられます。葬儀式場では、その場でたくさんの人の弔意をまとめて引き受けることができます。しかし自宅への弔問となると、家族はその都度その対応に追われることになり、かえって負担が増すこともあるでしょう。
- 事後報告に苦言を呈されることもある: 「最後に会って」「葬儀に参列したかった」など、事後報告に対して苦言を呈されることも考えられます。特に親戚の人たちへの呼びかけは慎重に判断しましょう。迷ったらお呼びするくらいの方があとあとトラブルにならずにすむでしょう。
- お別れ会を開催しなければならないこともある: 故人が交友関係の広い方だった場合、後日お別れ会を開催しなければならないこともあります。家族葬とお別れ会の実施で、手間や費用が2回分かかることになります。
- 香典収入が見込めない: 家族葬では一般の参列者がいないので、香典収入が見込めません。
2. 家族葬の平均費用相場
家族葬には一体どれくらいの費用がかかるのでしょうか。筆者の経験や、複数の葬儀社へのヒアリングをした上で結論を述べるなら、家族葬の平均費用相場は総額で100万円前後、もう少し幅を持たせても、80万円から120万円の中でおさまるのではないでしょうか。
葬儀費用の内訳は、葬儀の基本セット、宗教者への費用、おもてなし費用、施設使用料などに分けられます。
葬儀の規模や参列者の数によって費用は大きく増減します(詳しくはのちほど項目別に解説いたします)。なお、家族葬の平均費用相場でよく引用されるのが日本消費者協会による「葬儀に関するアンケート調査」です。
最新のデータ(第11回、2017年)では全国平均が約195.7万円とされていますが、多くの専門家や葬儀社からは、実際の相場に比べて高すぎると、この調査結果に疑問を抱く声が挙がります。
サンプル数が少なく、葬儀内容が不明瞭なため、信ぴょう性に疑いがあるのです、
3. 家族葬と一般葬にかかる費用の比較
家族葬と一般葬とでは、一般葬の方が高額になります。平均費用相場を示すのは大変難しいのですが、しいて挙げるならば150万円前後くらいではないかと言われています。
家族葬では家族や親族しか招かないのに対し、一般葬では友人や知人や会社関係など、親族以外の人にも広く訃報を流して参列を促すからです。
ただ単に料理や返礼品などのおもてなし費用が加算されるだけではなく、葬儀の基本セットの費用や、施設利用料金も高くなります。
多くの参列者が見込まれるということはそれだけの人を受け入れる広さの葬儀式場を手配しなければなりませんし、それに見合った祭壇を飾らなければなりません。
受付を設けたり、案内の看板を出したりと、葬儀の規模によって細かい品目1つひとつがアップグレードされていくのです。
どうして一般葬の平均費用相場を出すのが難しいのかというと、葬儀によって参列者の数が大きく変わるからです。
ひとことに一般葬と言っても、その定義は家族葬より広範です。
参列者が30名でも300名でも、親族以外の人が参列すれば一般葬と言えるため、明確な統計データがないのが正直なところです。
150万円よりも安価にすむこともありますし、200万円や300万円もかかる一般葬もあるのです。
4. 家族葬費用の内訳
家族葬を行うためにはどのような費用がかかるのでしょうか。まずは、葬儀費用が主に次の4つの項目に分類できることを把握しておきましょう。
- 葬儀基本セット
- 宗教者への費用
- おもてなし費用
- 施設利用料
それぞれの項目について、ひとつずつその内訳を説明します。
4-1 葬儀基本セット
葬儀基本セットは、家族葬を行うために必要な品目一式を指します。多くの葬儀社はこの部分をパッケージングしてプランを組み立てています。
「家族葬50万円セット」や「1日葬30万円プラン」などがこれにあたります。ただし、基本セットの中にどこまでのものを含むかは葬儀社によって異なりますので気を付けましょう。
基本セットに含まれるものとして、次のようなものが挙げられます。
- 祭壇: 式場の中央に飾られる祭壇。かつては白木祭壇が主流でしたがいまでは色鮮やかな花祭壇が人気です。セット費用の中で最も大きなウェイトを占めています。
- 棺: ご遺体が納まる棺です。中に敷く布団や、仏衣なども含まれます。木製棺と布張り棺があります。
- 遺影写真: 祭壇に飾る「四つ切」サイズとコンパクトな「キャビネ額」のセットが一般的です。
- ドライアイス: ご遺体の保全のためにドライアイスの手当てが行われます。葬儀までの日数によって数量が変動するため、何回分までが基本料金に含まれるかは葬儀社によって異なります。
- ご遺体搬送: 病院などのご逝去の場所から安置の場所までの搬送料金です。距離によって金額が変わるので、何kmまでが含まれるのか確認しておきましょう。
- 枕飾り: ご遺体安置の際に枕元に置かれる祭壇のことです。花立や香炉などの葬具を並べて手を合わせられるようにします。
- 後飾り: 火葬後、ご遺骨を安置するための祭壇のことです。仏壇やお墓の準備が整うまで、位牌や遺骨をお祀りして供養します。
- 手続き代行: 死亡届や火葬許可証の届けなどを葬儀社が代行してくれます。
- 運営スタッフ: 施行担当者や、式場での案内スタッフなど、葬儀にかかわるスタッフの人件費が含まれます。
4-2 宗教者への費用
宗教者への費用とは、宗教者への謝礼一式のことです。主に寺院へのお布施と思えばよいでしょう。
お布施は厳密には戒名料、通夜の読経料、葬儀の読経料、初七日法要の読経料などと区別されますが、最近ではまとめてお布施として手渡します。
また、本来は葬儀の後に宗教者用の食事の用意をしたり、寺院と葬儀会場を遺族が送迎したりしましたが、いまではこれらを「御膳料」「御車代」に代えて渡すのが一般的です。
もしも料理や送迎を手配するのであれば、これらの御膳料や御車代は不要です。
御布施の金額は実に様々です。日本消費者協会の「第11回葬儀に関するアンケート調査」では47.3万円が御布施の平均相場としています。
「戒名のランクによって金額が異なる」などともよく言われますが、必ずしもこれが当てはまるとは限りません。
菩提寺と檀家であれば、その関係性や考え方によってお布施の金額は異なります。
経済的に困窮している檀家の葬儀を安価な御布施で受けるお寺もありますし、お世話になったお寺にしっかりと供養してもらいたいと、相場よりも高額なお布施を包む人がいるのも事実です。
また、寺院との付き合いがない場合は葬儀社に紹介してもらえます。その場合は葬儀社から金額の提示があるのでそれに従うのが無難です。
そこでは戒名の違いによる相場が設定されているようです。地域性などあるので詳しくは地元の葬儀社に尋ねてみましょう。
4-3 おもてなし費用
おもてなし費用とは、参列いただいた方々へのおもてなしの料理や、会葬御礼や香典返しなどの返礼品にかかる費用のことです。参列者の人数によって数量が変動するのが特徴です。
通常、通夜のあとの食事の席(通夜ぶるまい)では寿司や煮物などの大皿料理がもてなされ、葬儀のあとの食事の席(精進御落とし)では1人1人に会席料理が用意されます。
またその席でふるまわれる飲み物や、配膳スタッフの人件費も含まれます。
最近は新型コロナウイルスの影響で、葬儀の場での会食が敬遠されるようになりましたが、持ち帰り用の弁当を用意することもできます。
また、参列者にお配りする返礼品もおもてなし費用に含まれます。返礼品は主に会葬御礼と香典返しに分けられます。
会葬御礼は参列者全員に配るもので、お茶やハンカチなど片手で持ち帰ることのできるものが選ばれており、ここに会葬礼状や清め塩を添えます。
香典返しとはいただいた香典に対しての返礼品です。本来は四十九日の報告を兼ねて贈る品物を葬儀当日にお返しするのです。
4-4 施設利用料
施設利用料とは、葬儀会館の利用料や、火葬場の休憩室料金などが含まれます。式場の広さなどによって費用が異なるため、参列者の人数によって変動しやすい項目です。
5. 家族葬を行ううえで必ずしも必要ではない費用/さらに費用を抑えるには
家族葬プランに含まれる内容は葬儀社によって異なります。プランの内容は基本的には固定されていますが、中には不要と思うものを自由に変更してくれるところもあります。
事前にプラン(見積もり)をきちんと確認し、何が含まれて何が含まれないのか。何が必要で何が不要かをしっかりと把握しておくことが、葬儀費用の節約のコツです。
5-1 おもてなし費用
おもてなし費用は、参列いただいた方々に対しての料理や返礼品のことです。しかし家族葬では、集まっているのは近しい身内だけのことがほとんどです。
一般葬のような丁寧なおもてなしをする必要はなく、料理や返礼品にかける費用が節約できます。
5-2 宗教者への費用
もしも葬儀に宗教者を招かないのであれば、宗教者への費用も節約できます。
ただし、宗教者による供養があるとないとでは、遺族のグリーフケアの観点から大きな差が生じかねません。
葬儀は無宗教葬で行ったけれど、やっぱりあとから戒名や供養の依頼をしたというケースは実に多く見られます。
宗教者への費用は葬儀費用の中でも大きなウェイトを占めますが、寺院による読経には目には見えない大切なものが込められています。
寺院を呼ぶ呼ばないの判断は慎重に行いましょう。
5-3 施設使用料
施設利用料を節約する方法には主に3つあります。
1つは、公営斎場を使用すること。地域にもよりますが、公営斎場は地域住民の税金を充てて、地域住民のために立てられた施設です。民営斎場や寺院の運営する会館よりも安価な費用で行えるところが多くあります。
次に、自宅で葬儀を行うこと。自らの自宅であれば式場利用料は不要です。
ひと昔前の自宅葬は、限られたスペースの中でたくさんの親族や参列者を迎えようとしたので大がかりでしたが、最近は家族葬が主流なので、親戚の数が多くなければ自宅での葬儀も十分に可能です。
最後に、お寺の本堂を利用するというもの。最近ではにわかに「お寺葬」と呼ばれるものが登場し始めています。寺院の本堂で葬儀をするので、祭壇の費用などが不要で、費用を比較的安く抑えられる傾向にあります。
ただし、すべてのお寺で対応しているわけではないので、事前にお寺への確認、あるいはお寺葬専用の葬儀社に連絡してみましょう。
6. 費用をさらに安く抑えるならオプション変更が大切
費用を安く抑えるのであれば、次にあげるようなオプション項目が含まれていないかどうかを確認しましょう。もしも含まれていて、必要性を感じないのであれば、省いてもらうようお願いしてみましょう。
6-1 車の手配を行わない
火葬場への出棺の際には、参列者がまとまって移動できるよう、マイクロバスなどの出棺車両を手配します。
もしも参列者が少ないようであれば自家用車を乗り合わせることで車両にかかる費用を抑えることができます。火葬場と式場の往復料金の相場は40,000円くらいです。
6-2 会葬礼状をお送りしない
会葬返礼品に添えてお配りするのが会葬礼状です。葬儀に参列していただいたことへの御礼の文章に、清め塩が挟まれているものです。
当家用に文章を印刷したものであれば、50枚や100枚単位での仕上がりになってしまいます。50枚で約5,000円、100枚で約10,000円が相場です。
7. 給付金制度や保険加入も大切
国民健康保険や社会保険には、葬儀を行った人に支給される「葬祭費」や「埋葬料」などの制度があります。
また、保険会社による「葬儀保険」もいざという時の大きな出品の助けになります。元気なうちからこうした保険サービスを利用しておくのも、葬儀費用の負担を軽減させるための方法です。
公的医療保険では、葬儀を行った人への給付金制度が設けられていますので、うまく活用しましょう。
7-1 葬祭費
葬祭費とは、国民健康保険、国民健康保険組合、後期高齢者医療制度の加入者が亡くなったときに、その人の葬儀を行った人に支給される給付金です。
国民健康保険とは、全国の市区町村によって運営されており、主に自営業の人、農業や漁業を営んでいる人、職場の社会保険に加入していない人、退職して職場の社会保険を外れた人などが主な対象者です。
給付金額は5~7万円です。住所地の市町村役場の専用窓口に申請します。
国民健康保険組合とは、建設、医師、美容などの業種ごとに設けられており、組合員が死亡した場合は10万円、家族が死亡した場合は5万円が支給されます。加入していた保険組合に申請します。
後期高齢者医療制度は75歳以上の人が加入する医療保険で、支給金額は3万円~5万円です。住所地の市区町村の専用窓口に申請します。
葬祭費の申請は、葬儀の翌日から2年以内に行います。2年を超えてしまうと権利が消滅してしまいます。
7-2 埋葬料
埋葬料とは、社会保険組合(協会けんぽ、組合健保、共済組合)の加入者やその家族が亡くなったときに支給される給付金のことです。
会社員や公務員や団体職員などのお勤めの方が対象となります。前述の自営業などの人は国民健康保険などに加入しているため対象外です(ただし資格喪失後3カ月以内であれば申請可能)。支給金額は5万円です。
埋葬料の請求先は加入している協会けんぽの都道府県支部です。故人が亡くなった日から2年以内に申請しましょう。期限を過ぎてしまうと権利が失効してしまいます。
もしも業務上の過失によって死亡した場合は、埋葬料は対象外です。労災保険の葬祭費を申請します。
7-3 扶助制度(生活保護を受給されている方)を利用する
経済的に困窮している人のために、生活保護法が定める葬祭扶助制度があります。生活保護を受給している人、または経済的に困窮していて葬儀費用の工面ができない人に、最低限の火葬費用が公費によってまかなわれます。
ただし、葬祭扶助制度で支給されるのは、「検案」「死体の搬送」「火葬または埋葬」「納骨その他葬祭のために必要なもの」に限り、上限が20万6千円と定められているため、葬祭扶助制度を活用しての家族葬は実質不可能です。
7-4 葬儀用の保険に加入しておく
最新では、少額短期保険を活用した「葬儀保険」が注目を集めています。元気なうちに月々わずかな掛け金で、葬儀費用に充てられるお金を積み立てておくというものです。
葬儀保険は保険金が少額で、保険期間も一年以内なので、審査がゆるく、誰がも手軽に加入できるという利点があります。
各保険会社はさまざまな商品を打ち出していますが、月々の保険料は数百円から2,000円程度。保証金額は30万円から300万円までです。
また、保険金請求から支払いまでが素早いのも利点として挙げられます。
8. 家族葬の費用を支払う方法
家族葬の費用はどのように支払えばよいのでしょうか。支払方法について解説します。
8-1 支払のタイミング
家族葬の支払は、葬儀を終えたその日から一週間程度です。葬儀に使用した品目の中には当日にならないと数量や金額が定まらないものもあるので、通常は3日後、遅くても1週間以内に請求されるでしょう。
早い葬儀社では葬儀当日に請求するとこともあるでしょう。
8-2 現金払い
葬儀費用の支払は現金一括が基本です。葬儀社が請求したら、現金による手渡しあるいは指定口座に振り込みましょう
8-3 クレジットカード・電子マネー払い
最近ではクレジットカード払いや電子マネーの支払に対応している葬儀社もあります。
8-4 葬儀ローンを利用
葬儀費用を今すぐ工面できないという人は葬儀ローンを利用する方法があります。 審査さえ通れば、葬儀社への支払いは信販会社が行い、喪主は分割で後払いをしていきます。
他の金融機関によるローンに比べると金利は高めですが、与信審査のスピードが圧倒的に早いのが特徴です。通常は葬儀社が提携している信販会社の葬儀ローンを利用します。
ですから、葬儀の見積もりや打ち合わせの段階で、ローンを希望していることを伝えなければなりませんし、その葬儀社がローンの対応をしているかも事前に確認しておきましょう。
見積金額が出ると、施主が葬儀ローンの審査申込書を記入します。葬儀社を通して信販会社にFAXします。与信審査の結果は長くても半日程度で葬儀社に伝えられます。
9. 家族葬を行うときに失敗しない葬儀社の選び方
家族葬の満足度は葬儀社選びによって決まると言っても過言ではありません。家族葬で失敗しないためには複数の葬儀社を比較することが大切です。
葬儀はいつ起こるかわからないので、すべての人がじっくりと葬儀社を検討するわけにいきません。しかし、もしもあなたに時間に余裕があるのであれば、早いうちに葬儀社選びを始めてみましょう。
複数の葬儀社の比較と、事前相談が、失敗しない家族葬のための秘訣です。
9-1 セットプランを比較する
家族葬のセットプランに含まれる品目は葬儀社によって異なります。
例えば、「家族葬50万円プラン」と謳うA社と、「家族葬30万円プラン」と謳うB社があったとします。
一見、A社の方が高く感じられますが、そのプランの中にどんな品目が含まれているのかを確認しなければなりません。
A社は数名分の料理代や返礼品の代金を含んでいるから高額なのかもしれませんし、B社は祭壇や棺が簡素だからこそ安いのかもしれません。
セットプランに何が含まれているか。そしてそれらは本当に自分たちが希望するものか。必要なものか。こうしたところを見極めていきましょう。
9-2 葬儀社の特徴を比較する
葬儀社の特徴もあわせて比較しておきましょう。
例えば、自社斎場を保有している葬儀社は当然そこを利用してもらうよう促します。自社の利益になるからです。
一方で自社斎場を持っていない葬儀社は、公営斎場での葬儀プランに力を入れたりします。一般的には公営斎場の方が民営斎場より安価で便利だからです。
また、互助会の会員になっているのであれば積立金があるためお得になるケースもありますし、逆に足元を見られて葬儀費用が高額になってしまうこともあります。
農家の人であればJAの葬儀事業を利用することで特別割引の恩恵を受けられることもあります。
このように、葬儀社によって特徴や得手不得手があります。そのあたりを意識しながら、相見積もりをとって比較検討するのもよいでしょう。
9-3 口コミや評判に耳を傾ける
葬儀は基本的に、そのエリアの葬儀社が行います。首都圏であれば一都三県をまたにかけるベンチャー葬儀社はたくさんありますが、地方や郊外では、そのエリアで競合する葬儀社はせいぜい5社程度です。
だからこそ地元の口コミというものが活きてきます。喪主の経験は一生で一度あるかないかのことです。
もしもあなたの身の回りに喪主を経験した人がいるのなら、可能な範囲でその葬儀社の評判を聞いてみるのもよいでしょう。
あわせてインターネット上の口コミや評価も参考にしましょう。リアルとネットのそれぞれから、多角的に葬儀社を比較検討できるのが理想です。
9-4 事前相談や会館の見学に足を運んでみる
失敗のない葬儀社選びのためには、可能な限りその葬儀社の社員と直に会うことをおすすめします。その社員の所作や話し方、気配りや心配りがその葬儀社を代表していると思ってよいでしょう。
見積もりやプランの比較などと併せて、信頼性や相性なども、葬儀社選びの大切な要因です。
家族葬にどれくらいの費用がかかるか、またその内訳はどのようになっているのか、ご理解いただけましたか。
葬儀というものは、亡き人や私たちの心といった、目に見えないものに訴えるものなので、安ければいいというものではありません。「少しお金がかかっても納得いく葬儀ができて満足した」という声があるのも事実です。
大切なのは、まずは予算計画を立てること。
自分たちが葬儀にどれくらいの費用を工面できるかをしっかり考えた上で、希望に適う葬儀社を見つけていくことで、失敗や後悔を防ぐことができるのではないでしょうか。
玉川将人
1981年山口県生まれ。家族のたて続けの死をきっかけに、生涯を「弔い」に捧げる。葬儀社、仏壇店、墓石店に勤務して15年。会社員勤務の傍らでライターとして、死生、寺院、供養、終末医療などについて多数執筆。1級葬祭ディレクター、2級お墓ディレクター、2級グリーフケアカウンセラー。