×

遺族年金、受給条件とは—改正により父子家庭も受給対象に

更新日:2021.01.19

遺族年金、受給条件とは—改正により父子家庭も受給対象に

遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、それぞれ受給条件が異なります。ここでは配偶者の条件と子の条件を確認し、受給額も解説します。

遺族年金とは?

遺族年金とは、家族を養ってきた方が亡くなり、残った家族の生活を守るためのもので、国が設けている給付制度の1つです。遺族年金は、死亡した方の職業に関係なく受けられる「遺族基礎年金」と、死亡した方がサラリーマンや公務員であった場合に受けられる「遺族厚生年金」があります。この2種類の遺族年金についてまずは解説します。

遺族基礎年金

遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者であった方、または、老齢基礎年金の受給資格のある方が死亡したときに、その亡くなった方によって生計を維持されていた「18歳到達年度の年度末までの子(障害のある子の場合は20歳未満)がいる配偶者、または、その子」に支給される年金のことをいいます。

ただし、下記のような条件がありますので注意が必要です。

  • 配偶者である妻が死亡してその夫が遺族基礎年金を受給する場合には、妻の死亡時に夫の年齢が55歳以上であることが必要です。
  • 「18歳到達年度の年度末までの子(障害のある子の場合は20歳未満)がいる配偶者」と「その子自身」を対象としているため、対象の子がいなければ受けることができません。

遺族厚生年金

遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者が死亡したときに、亡くなられた方によって生計を維持されていた遺族に支給される年金のことをいいます。

遺族厚生年金は、該当者が遺族基礎年金の対象者でもある場合には、遺族基礎年金と合わせた額が支給されます。

遺族年金を受給できる条件は?

では、遺族基礎年金、遺族厚生年金を受けられるための要件、対象者などについて解説していきます。

遺族基礎年金の受給条件

遺族基礎年金を受給するための要件は以下の通りです(参考: 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」)。

  1. 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある方が死亡したとき
  2. その際に、死亡した方の保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が加入期間の3分の2以上あること
  3. 令和8年4月1日前に死亡した場合には、死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの保険料を納付しなければならない1年間に保険料の滞納がないこと

次に、遺族基礎年金を受けることができる人の要件は、死亡した人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」(なお、子については「18歳到達年度の年度末を経過していない子」または「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子」)に限ります。

遺族厚生年金の受給条件

遺族厚生年金を受給するための要件は以下の通りです(参考: 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」)。

  1. 被保険者が死亡したとき、または、被保険者期間中の傷病がもとで初診日から5年以内に死亡したとき(ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した人について、死亡日の前日において保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が国民年金加入期間の3分の2以上あること)(※1)
  2. 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある方が死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる方が死亡したとき
※1: ただし、令和8年4月1日前に死亡した場合には、死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの保険料を納付しなければならない1年間に保険料の滞納がないこと

次に、遺族厚生年金を受けることができる人の要件は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の方となります。

  • 妻(※2 ※3)
  • 子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない方、または、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の方)(※3)
  • 55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金の受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる)

※2: 子のない妻(30歳未満に限る)は、5年間の有期年金になります。

※3: 子のある配偶者、子(18歳到達年度の年度末を経過していない方、または、20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の人に限る)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。

遺族年金を受給できる条件を満たしていた場合、いくら受給できる?

ここでは、遺族基礎年金、遺族厚生年金がどのくらい受けられるかについて見ていきましょう。

遺族基礎年金の受給金額

遺族基礎年金の受給額は、一律で781,700円(令和2年4月以降)となっています。これに加え、子が2人までは1人あたり224,900円、3人目以降は1人あたり75,000円が加算されます。一方、子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は第2子以降となり、具体的な計算例は以下の通りです。

子の人数 配偶者が受給する場合の受給総額 子が受給する場合の受給総額
1人 781,700円 + 224,900円 = 1,006,600円 781,700円
2人 781,700円 + 224,900円 × 2 = 1,231,500円 781,700円 + 224,900円 = 1,006,600円
3人 781,700円 + 224,900円 × 2 + 75,000円= 1,306,500円 781,700円 + 224,900円 × 2 = 1,231,500円
4人 781,700円 + 224,900円 × 2 + 75,000円 × 2= 1,381,500円 781,700円 + 224,900円 × 2 + 75,000円= 1,306,500円

遺族基礎年金の改正で、父子家庭も対象に

平成26年3月まで遺族基礎年金を受給できる人は、「子がある妻」「子」に限られていました。つまり、夫は受給の対象外でしたが、男女差を解消しようということで「子がある妻」から「子のある配偶者」に変わったため、父子家庭も受給できるようになりました。

遺族厚生年金の受給金額

遺族厚生年金の受給額は老齢厚生年金の3/4の金額で、下記【1】の式で計算した額となります。なお、【1】の式で計算した額が【2】の式で算出した額を下回る場合には、【2】の算出額が報酬比例部分の年金額になります。

  • 【1】報酬比例部分の年金額(本来水準)
    [(平均標準報酬月額 × 7.125 / 1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数) + (平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 平成15年4月以後の被保険者期間の月数)]× 3 / 4

 

  • 【2】報酬比例部分の年金額(従前額保障:平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したもの)
    [(平均標準報酬月額 × 7.5 / 1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数) + (平均標準報酬額 × 5.769 / 1000 × 平成15年4月以後の被保険者期間の月数)]× 1.002(※4) × 3 / 4
※4: 昭和13年4月2日以降に生まれた人は 1.000

平均標準報酬月額とは、平成15年3月までの被保険者期間の各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額です。

平均標準報酬額とは、平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額(賞与を含めた平均月収)です。

これらの計算にあたり、過去の標準報酬月額と標準賞与額には、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じます。

※前述した「遺族厚生年金を受給するための要件」の1及び3に基づく遺族厚生年金では、被保険者期間が300月(25年)未満の場合は 300月とみなして計算します。※ 前述した「遺族厚生年金を受給するための要件」の2に基づく遺族厚生年金の場合、計算式の1000分の7.125及び1000分の5.481については、死亡した方の生年月日に応じて経過措置があります。

この金額は、被保険者の給与や賞与の金額をもとに算出される平均標準報酬月額(賞与を含めない平均月収)と平均標準報酬額(賞与を含めた平均月収)などで決まります。そのため、亡くなる前の給与の額が高い方が遺族厚生年金の金額は多くなるといえます。

遺族厚生年金の年間支給額の目安(厚生年金被保険者期間が平成15年4月以降の場合・計算方法は、上記【1】を参照)

収入額
(平均標準報酬額)
厚生年金保険に加入していた期間
25年 30年 35年 40年
30万円 369,968円 443,961円 517,955円 591,948円
40万円 493,290円 591,948円 690,606円 789,264円
50万円 616,613円 739,935円 863,258円 986,580円

注意したいのが、上記の遺族厚生年金を受けられる人の中で、合わせて遺族基礎年金を受けられる場合があることです。

遺族基礎年金をもらえない場合

遺族基礎年金は、子どもを育てるための年金です。なので、子どもがすでに自立している場合や子どもがいない場合は受け取ることができません。しかし、国民年金は国民全員が加入する制度なので、子どもが自立していたり子どもがいなかったりする場合で夫が年金受給前に亡くなると、保険料の払い損になるのでは? と考える人もいることでしょう。
そういった保険料の払い損を防ぐため、第1号被保険者限定の救済として「寡婦年金」と「死亡一時金」という2つの制度があります。以降、寡婦年金、死亡一時金について解説します。

“つなぎの年金”である寡婦年金

寡婦年金とは国民年金第1号被保険者独自の給付制度で、第1号被保険者としての保険料納付期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある夫が亡くなったときに、その夫によって生計を維持され、かつ、夫との婚姻関係が10年以上継続していた妻に対して夫の代わりに支給される年金です。受給期間は60歳~65歳までです。このように、寡婦年金は受給できる期間が設けられている有期年金で、妻が自身の年金を受け取れるようになるまでの「つなぎの年金」とも呼ばれています。

寡婦年金まとめ

  • 寡婦年金の年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3になります。
  • 亡くなった夫が障害基礎年金の受給権者であった場合、また、老齢基礎年金を受けたことがある場合には寡婦年金は支給されません。
  • 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合は、寡婦年金は支給されません。

遺族年金と別に給付される死亡一時金とは? 給付条件は??

死亡一時金とは、死亡日の前日において第1号被保険者としての保険料納付月数(※5)が36月以上ある人が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その人と生計を同じくしていた遺族(※6)に支給される給付制度です。

※5: 4分の3納付月数は4分の3月,半額納付月数は2分の1月,4分の1納付月数は4分の1月として計算
※6: 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番でその優先順位の高い方

死亡一時金まとめ

  • 死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
  • 付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、死亡一時金の額に8,500円が加算されます。
  • 遺族が遺族基礎年金の支給を受けることができるとき、死亡一時金は支給されません。
  • 寡婦年金を受けられる場合は、寡婦年金か死亡一時金のどちらか一方を選択します。
  • 死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から起算して2年です。

まとめ

大黒柱が亡くなり、遺族の生活を守るための給付制度である遺族年金。令和2年4月以降の場合で、配偶者が受け取ることができる遺族基礎年金の額は一律で781,700円(令和2年4月以降)と決して少なくはない額と言えます。万が一の時に備え、基本的な知識は頭に入れておきたいものです。

執筆者プロフィール

山本 務

特定社会保険労務士。理系大学卒業後、プログラマー・SEを経て上場企業人事部で人事労務管理業務を約10年経験し、2016年に独立。独立後も2020年3月まで労働局の総合労働相談員として200件以上のあっせん事案に関与。労働相談は労働局の電話相談も含めて1,000件以上の対応実績あり。これまでの知識と経験を活かし、各種サイトでの人事労務関係に関する記事の執筆や監修も積極的に行っている。
オフィシャルサイト: やまもと社会保険労務士事務所

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
・本記事は、本記事執筆時点における法令(別段の言及がある場合を除き日本国におけるものをいいます)を前提として記載するものあり、本記事執筆後の改正等を反映するものではありません。
・本記事を含むコンテンツ(情報、資料、画像、レイアウト、デザイン等)の著作権は、本サイトの運営者、監修者又は執筆者に帰属します。法令で認められた場合を除き、本サイトの運営者に無断で複製、転用、販売、放送、公衆送信、翻訳、貸与等の二次利用はできません。
・本記事の正確性・妥当性等については注意を払っておりますが、その保証をするものではなく、本記事の情報の利用によって利用者等に何等かの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことはできません。
・本サイトの運営者は、本記事の執筆者、監修者のご紹介、斡旋等は行いません。
…閉じる