任意後見制度とは?【老後の備えに】|任意後見制度の仕組みを解説

更新日:2024.06.21

任意後見制度とは?【老後の備えに】|任意後見制度の仕組みを解説

「任意後見制度」とは、認知症や高次脳機能障害の診断が下りた後の生活を支える制度の1つで、本人と支援者との間であらかじめサポートの条件を決められるものです。

いったん判断能力が低下すると、資産管理や支援内容に本人の意志を反映させることが難しくなります。また、必要に迫られて任意後見制度を活用しようとしても、速やかに支援が開始されるとも限りません。

あらかじめ「誰に支援してほしいのか」「どんな仕事をお願いしたいのか」を細かく決めて任意後見契約を結んでおけば、体調悪化とともにできなくなる身の回りの管理をスムーズにバトンタッチできます。

本記事では、任意後見の仕組みや手続きのポイントなど、認知症対策で制度を検討する時のポイントとなる情報を詳しく解説します。

1. 任意後見制度とは

任意後見制度とは、まだ健康なうちに本人と支援者との間で契約を結び、判断能力の低下が進んだ時に家庭裁判所の審判を経て支援を開始する制度です。

ここで言う支援とは「介護を受けるための手続きをする」「預貯金や居住用不動産を管理する」など、本人が生活を維持し療養看護を受けるための手続きをしながら、財産管理を代わって行うことを指します。

以降でも紹介するように、支援者や支援の内容について本人の意志を最大限反映できる点が、任意後見制度の最大の特徴です。

1-1 成年後見制度の種類

判断能力が低下した人に対する支援制度(後見制度)には、民法でルール作りされている「法定後見制度」と平成11年から始まった「任意後見制度」の2種類があります。

2つの制度で最も目立つ違いは、法定後見制度が「判断能力が低下した時に」周囲の申立てで後見人選びが開始されるのに対し、任意後見制度は「判断能力が低下する前に」本人の意志で後見人選びができる点です。

また、法定後見制度はさらに「後見」「保佐」「補助」の3つに細分化されており、後見人に与えられる権利の違いに伴って支援範囲が異なります。後見制度の違いで押さえておきたいポイントをまとめたのが下記表です。

比較項目 任意後見制度 法定後見制度
後見 保佐 補助
後見開始のタイミング 契約内容しだい 判断能力が常に不十分 判断能力が著しく不十分 判断能力が不十分
後見開始の方法 任意後見契約の締結 後見開始の審判 保佐開始の審判 補助開始の審判
支援者を選ぶ権限 本人 家庭裁判所 家庭裁判所 家庭裁判所
後見開始に関する本人の同意 原則必要 不要 必要 必要
代理権 あり(※契約で決めた範囲) あり(※法律行為について全面的に代理する) 原則なし 原則なし
取消権 なし あり(※日常生活に関する行為を除く) あり(※原則、民法第13条1項各号で定められる行為のみ) あり(※民法第13条1項各号のうち家裁が認めた行為のみ)
同意権 なし なし(※後見人が法定代理人になるため) あり(※原則、民法第13条1項各号で定められる行為のみ) あり(※民法第13条1項各号のうち家裁が認めた行為のみ)
追認権 なし あり あり あり

2. 任意後見制度が必要な理由

信頼できる人に万一の時の支援を任せ、自分で立てた老後のライフプランを健康状態に関わらず実行し続けるには、任意後見契約が必須です。

その理由として第一に、判断能力の低下の度合いは周囲の人すら判断しにくく、必要な時にすぐ後見開始の審判を申立ててもらえるとは限りません。第二に、後見人はその仕事上「本人とのコミュニケーションを通じて意志をしっかり汲める人」が適任ですが、法定後見制度では本人とほとんど接点のない人が選ばれる可能性すらあります。その後の支援も、法定後見人では「財産を減らさない範囲で」かつ「客観的に見て本人のためになる」ものに限られるため、本人が自分で行っている生活管理とはかけ離れたものになりがちです。

任意後見制度が創設された目的は、以上のような法定後見制度の問題点を踏まえ「本人の気持ちや考えを支援に最大限反映させられるようにすること」です。

当然、その生涯の間に判断能力に影響する病気を経験しない人も多いため、任意後見契約のための費用が無駄になってしまう恐れもあります。しかし、誰にどんな支援をしてもらいたいかをあらかじめ決めておき、いざという時に法的に制限されることなく支援を実行できるようにしておくことは、どんな人にとっても「万一の備え」として重要です。

3. 任意後見人の支援内容とは

任意後見人の支援内容は大きく分けて、「財産の管理」「介護や生活面の手配」の2つです。個別具体的な支援の方法や内容については、すでに触れた通り、当事者が合意できる限り柔軟に取り決められます。以降では、制度利用を検討する時の材料となるよう、任意後見人による支援内容を詳しく解説します。

3-1 財産の管理

任意後見人が行う基本的な仕事の1つが「本人の所有資産の管理」です。下記のような仕事は法定後見制度でも行われますが、例えば「生活費はどの口座から送金するか」「不動産の改築や増築を任意後見人が自由に行えるようにするか」などの具体的な方法は、任意後見契約のみ指定できます。以下、任意後見契約で後見人に任せることができる仕事の一例です。

  • 不動産・預貯金・年金などの管理
  • 老人ホームへの生活費送金
  • 税金や水道光熱費の支払い
  • 医療費の支払い

法定後見ではなく、任意後見契約だからこそできる支援内容としては、資産状況に応じて重要性が増す下記のようなものが挙げられます。

  • 収益用資産(株式や賃貸アパートなど)を管理する
  • 相続税や遺産分割の対策として、老人ホーム入居後の空き家になった家を売却する

3-2 介護や生活面の手配

療養看護(介護や生活面での手配)に関しては、下記のような手続きを任意後見人に任せられます(一例)。

  • 介護福祉サービスを受けるための行政手続き
  • 老人ホームやデイケアの契約締結

本来は本人しか受理してもらえない内容ですが、任意後見人であることの証明(後見の登記事項証明書など)を提示することで、本人が関わることなく手続きできます。

また、任意後見制度だからこそできるものとして健康だったときに希望していた介護サービスや医療の手配をしてもらう」といった支援が挙げられます。療養看護で本人の希望を尊重してもらえることで、健康状態に関わらず「生活の質」を保てます。

4. 任意後見人になれる人とは

任意後見人になるための条件は特に設けられていません。下記で紹介する「不適格事由」(任意後見契約法第4条各号)さえなければ、弁護士や司法書士などの特別な資格がなくても任意後見人になれます。任意後見人になれない人とは以下の通りです。

  • 未成年者
  • 法定代理人あるいは保佐人・補助人としての資格を剥奪されたことのある人
  • 破産者(※破産手続き中でまだ債務の免除が確定していない人)
  • 本人(被後見人)に対して訴訟を起こした人
  • 本人(被後見人)に対して訴訟を起こした人の配偶者や直系血族
  • 行方が分からない人
  • 不正な行為や著しい不行跡(※素行不良など)、その他任意後見人が任務にふさわしくない事由がある人

5. 任意後見制度手続きの流れ

任意後見人をに支援を受けられるようにする時は、法律で決められた契約方法に従う必要があります。以下では、任意後見契約の締結から支援を開始してもらう時までの流れを解説します。

5-1 任意後見受任者を決める

契約の段階では、支援者を「任意後見受任者」と呼びます。まずは任意後見受任者を誰にするのか決めますが、この時「相手が引き受けてくれそうか」「頼みたい支援が相手にとってどのくらい負担になりそうか」を慎重に検討する必要があります。

また「今後受任者の状況が変わる可能性がある」点も重要です。例えば、配偶者など既に高齢の人を受任者にした場合、支援が開始されるタイミングで支援者自身が判断能力に不安を抱えてしまっている可能性があります。その他の家族でも、転勤や転職、結婚や出産などで忙しくなり、後見人としての仕事に集中できなくなる場合があります。

以上の点を踏まえて、受任者になってくれそうな人とよく話し合い、慎重に決めましょう。なお、支援者になれるは1人だけとは限りません。家族や友人が協力して支援にあたれるよう、代表者を決めて複数の人を「任意後見受任者」に指定することも可能です。

5-2 任意後見受任者にしてもらいたいことを決める

任意後見受任者が決まったら、必要な支援の内容を細かく取り決めます。支援内容は基本的に当事者の話し合いで自由に決められますが、任意後見契約で合意できる範囲は「財産の管理」と「本人の介護や生活に関する手配」に限られる点に注意しましょう。それ以外の支援も希望する場合は、任意後見契約とは別に「準委任契約」を結ぶ必要があります。具体的には、以下が任意後見契約の支援範囲に含まれないものの一例です。

  • ペットの世話
  • 日々の食事作り
  • 後見人による自宅介護

必要な支援の内容や量には個人差があります。あらかじめライフプランを作成して「任意後見受任者に何をしてほしいか」が一覧で分かるようにしておくと、話し合いや契約手続きがスムーズに進みます。

5-3 公証人役場で任意後見契約を結ぶ

任意後見契約を締結する時は、当事者の合意内容をまとめた「公正証書」を作成します(任意後見契約法第4条)。公正証書とは、契約書の一種で、法務大臣から任命された「公証人」が作成することで訴訟の判決に匹敵する効力を持つ文書です。作成する際は、必要書類と手数料を準備し、本人と任意後見受任者がそろって最寄りの公証役場で手続きします。下記表では、公正証書を作成するための持ち物(必要書類+手数料を一覧にしています。

公正証書作成時の持ち物 本人 任意後見受任者
任意後見契約書の原案(支援内容など合意事項をまとめた用紙)
公正証書の作成費用 1契約につき15,790円~
本人確認書類(有効期限内の運転免許証など)
実印+印鑑証明書(印鑑証明書は発行3か月以内のもの)
住民票(発行3か月以内のもの)
戸籍謄本(発行3か月以内のもの)

5-4 公正証書を作成する時の費用内訳

任意後見契約書の原案と手数料は、本人の手元で準備するのが一般的です。公正証書の作成費用の内訳は下記の通りです。

  • 公証役場の手数料: 1契約につき1万1千円(※証書枚数が5枚以上になる場合は1枚につき250円加算)
  • 法務局に納める印紙代: 2,600円
  • 法務局への登記嘱託料: 1,400円
  • 書留郵便料: 540円程度(※地域により異なる)
  • 正本謄本の作成手数料: 250円×枚数

必要な持ち物のうち、最も準備が難しいのは「任意後見契約書の原案」です。公証人に合意内容が正確に伝わるよう、法律解釈を理解しながら慎重に作成しなければなりません。準備の際は、できるだけ弁護士や司法書士などの契約文書のプロに任せましょう。

5-5 任意後見監督人選任の申立て

判断能力の低下が進んできたと感じたら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所で「任意後見監督人選任の審判」の申立てを行うことで、契約内容に沿った支援が始まります。

監督人選任の申立人になれる人は、本人や、本人と特定の関係にある人となり、詳しくは以下の通りです。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族
  • 任意後見受任者

原則上は申立てに「本人の同意」が必須ですが、認知症などの症状が自力で意志を伝えられない程度まで進んでいる場合、同意なしでも手続きを受理してもらえます。

5-6 任意後見の開始

「任意後見監督人」が選任されると、法務局に登記されて支援が開始されます。この時点で、契約の受任者は「任意後見人」と呼ばれるようになります。

後見開始の際に監督人が選任されるのは、家庭裁判所が間接的に後見人の仕事ぶりをチェックするためです。選任される人は公平かつ中立な立場が求められるため、契約当事者の配偶者・直系血族・兄弟姉妹は選任されません(任意後見契約法第5条)。また、任意後見監督人に選ばれた人は、下記の義務(任意後見契約法第7条)を負います。

  • 任意後見人による支援を監督すること。
  • 任意後見人による支援に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
  • 急迫の事情がある場合、任意後見人の代理権の範囲で必要な処分をすること。
  • 任意後見人またはその代表者と本人の利益が相反する行為(※)について、本人を代表すること。
※「利益が相反する行為」:  「どちらか一方の利益がもう一方の損失に繋がる行為」を法的に表現したものです。分かりやすい具体例として、家族の一員が亡くなり、任意後見人と本人がどちらも相続人として遺産分割に参加することになったケースが挙げられます。

5-7 任意後見契約の終了

任意後見契約は民法で規定する「委任契約」の1つであり、委任について定める第653条各項のいずれかの条件を満たした時に後見は終了します。具体的には、以下の通りです。

  • 本人または任意後見人の死亡した時
  • 本人または任意後見人が破産手続開始の決定を受けた時
  • 任意後見人が後見開始の審判を受けた時

5-8 任意後見人の解任

万が一任意後見人に「不適格事由」があると分かった場合は、本人・本人の親族・任意後見監督人・検察官のいずれかの請求で解任されます。解任されたことそのものが不適格事由や欠格事由になるため、一度処分された人が再び後見人になることはできません。

6. 任意後見制度でかかる報酬の目安

任意後見契約を結ぶ時に規程を設けた場合に限り、支援の対価である「後見人報酬」が発生します。また、後見開始時に選任される任意後見監督人には、本人の資産状況に応じて「監督人報酬」を必ず支払わなくてはなりません。

それぞれに支払うべき報酬額は、法律上特に規定されていません。以降では、一部地域の家庭裁判所が公開している「成年後見人等への報酬額のめやす」を元に、任意後見人や任意後見監督人の報酬相場を紹介します。

6-1 任意後見人の報酬

家庭裁判所では後見人報酬の目安を下記のように紹介していますが、個別のケースでは当事者が話し合って無理のない金額を定めます。実際に任意後見制度が活用されているケースの多くは、親族や友人が支援を引き受けるケースであれば月額3万円以内、弁護士や司法書士などの専門家が引き受ける場合は月額3万円~5万円程度が後見人報酬の相場です。

【表】任意後見人の報酬相場(※専門家が受任する場合)

管理財産額(被後見人の資産額) 報酬目安
1千万円未満 月額2万円
1千万円~5千万円 月額3万円~4万円
5千万円超 月額5万円~6万円

親族や友人が任意後見人になる場合は、報酬規程が契約書にないと無償扱いになる点に要注意です。あいまいにしたり口約束にしたりせず、報酬に関することはしっかりと話し合い、有償であれば必ず契約書に規定を設けるようにしましょう。

6-2 任意後見監督人の報酬

任意後見監督人への報酬は、契約に報酬規程があるかどうかに関わらず家庭裁判所が決定します。また、監督人報酬の目安も、管理財産額に応じて変動します。

【表】任意後見監督人の報酬相場

管理財産額(被後見人の資産額) 報酬目安
~5千万円 月額1万円~2万円
5千万円超 月額2万5千円~3万円

7. 任意後見契約の変更や解除の方法

締結した任意後見契約を変更または解除したくなった時は、所定の手続きが必要です。ここでは、契約内容の変更もしくは解除から順に手続き方法を解説します。

7-1 任意後見契約を解除したい場合

契約解除の手続きは、本人と支援者のどちらからでも可能です。手続き方法に関しては、後見がすでに開始されているのかどうかで違いがあります(任意後見契約法第9条各項)。

  • 任意後見監督人の選任前(※後見がまだ開始されていない時)に解除したい場合: 当事者が合意し、公証役場で沿って「公証人の認証」を得る手続きをします。
  • 任意後見監督人の選任後(※後見が開始された後)に解除したい場合: 本人または任意後見人から家庭裁判所に申し立て、許可が得られれば手続き完了です。この際、当事者の合意は必須ではありません。申立て手続きの際は、例えば「任意後見人の体調が悪化した」などの正当な事由を伝える必要がります。

7-2 任意後見契約を変更したい場合

任意後見契約の変更については、後見が開始されているかどうかに関わらず、当事者が合意して「公証人の認証」を得れば手続きが完了します。公証人の認証を得る際は「元々の契約のどの部分を変更するか」を具体的に伝えなければならない点に注意しましょう。

8. 任意後見制度には3つの利用形態が

任意後見制度の利用状況は個別に異なりますが、大きく「将来型」「移行型」「即効型」の3形態に分けられます。状況に合わせて使分けられるよう、最後に利用形態について解説します。

8-1 将来型

将来型とは、任意後見契約の締結後も引き続き自力で生活管理を行い、万が一判断能力が不十分になった場合は契約の効力を持たせる(=任意後見監督人を選任してもらい支援を開始する)利用形態です。

一見すると備えとして十分であるように思えますが、任意後見監督人の選任まで支援を全く受けられない点が心配です。通常、認知症などの疾患による判断能力の低下は少しずつ進みます。「判断能力が不十分」と本人や周囲の人が自覚するまでの間に、生活上必要な手続きに関する判断ができなくなり、トラブルに遭ってしまうかもしれません。

8-2 移行型

最も多く普及しているのが、将来型の任意後見契約に様々な委任契約を付帯させる「移行型」です。付帯させる契約の種類としては、下記のようなものが挙げられます。

  • 見守り契約: 支援者が定期的に訪問し、本人の健康状態や生活状況を確認する契約
  • 任意代理契約: 「○○銀行の預金を下す権限」とのように、財産管理の一部または全部の代理人として支援者を指定する契約
  • 死後事務委任契約: 「死亡届の提出」「葬儀の手配」「スマートフォンやパソコン内のデータ処分」など、死後必要な手配を支援者に任せる契約

移行型のメリットは、判断能力が不十分になる前から、段階的かつ長期間に渡って支援できる点です。

任意後見契約の締結直後は、付帯させた「見守り契約」で判断能力の低下状況を細かくチェックしてもらえます。生活に支障を感じた時は「任意代理契約」により、支援者に簡単な金銭管理を任せられます。さらに判断能力の低下が進行した時は「任意後見契約」に沿った本格的な支援が始まり、後見が終了した後も必要な処理を実行してもらえます。

8-3 即効型

即効型とは、任意後見契約を締結と同時に「任意後見監督人の選任」を申立て、すぐに支援を開始してもらう利用形態です。すでに軽~中程度の高次脳機能障害や認知症などを発症しており、急激に症状が進行する恐れがあるケースで選ばれています。

任意後見契約が「当事者の合意」に基づくものである以上、即効型の利用はあまりおすすめできません。本人が制度について十分理解できる状態でないと、不利な内容の契約に合意してしまったり、後から合意内容を巡って支援者とトラブルになったりする恐れがあるからです。

9. まとめ

認知症や精神疾患、あるいは高次脳機能障害などは、絶対にならないとは誰もが言い切れないものです。健康に自信があっても、自活できなくなった時に備えて「誰に、どんな支援をしてもらいたいのか」を話し合っておくと安心です。

本人と支援者の間で合意した内容を元に「任意後見契約」を締結しておくと、健康状態が悪化しても、本人に必要な財産管理や療養看護に関する手配をスムーズにバトンタッチできます。本記事で紹介した任意後見制度を検討する時のポイントをまとめると、下記の通りです。

9-1 任意後見制度の利用のポイント

  • 任意後見受任者は慎重によく話し合って決める
  • 「見守り契約」などを付帯させる移行型がおすすめ
  • 後見人報酬(月額6万円以内)と後見監督人報酬(月額1万円~3万円)がかかる
  • 契約内容の変更や解除はいつでもできるが、後見開始後に解除する場合は家裁への申立てが必要

老後のライフプランを自由に反映させられるのが「任意後見制度」のメリットですが、強みを生かすには当事者の合意内容を契約書文面に落とし込むスキルが必要です。また、契約内容に過不足が出ないようにするため、後見の実例を多数扱う専門家に制度活用の方向性を決めてもらうと安心です。

まだ健康に自信がある間に「要支援者になった後の生活」を想像するのは困難です。まずは弁護士や司法書士に相談し、必要な手配についてコンサルタントしてもらいましょう。

 
執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

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