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相続放棄にかかる費用の目安は? 高くても専門家に任せるべき理由

更新日:2020.11.27

相続放棄にかかる費用の目安は? 高くても専門家に任せるべき理由

相続放棄にかかる最低費用は数千円程度ですが、弁護士や司法書士に任せた場合、最低でも3万円程度の「専門家報酬」が上乗せされます。専門家の強みは、手続き期限が過ぎた後の相続放棄や、家庭裁判所に受理されるまでの財産の扱いについて熟知している点です。「少しでも安く済ませたい」との思いから専門家に全く頼らず手続きすると、手続きの受理を拒否されてしまうかもしれません。

本記事では、費用対効果を考えながら相続放棄の方法を選べるよう、手続きのルールと専門家依頼時の費用目安を紹介します。

相続には3つの種類がある

家族が財産を残して亡くなった場合、相続人は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかから手続きが選べます。

遺産の名義変更手続きをしたり、亡くなった人の借入先に相続人が返済を行ったりした場合には、改めて手続きするまでもなく「単純承認」扱いになります。しかし相続事例の中には、あらかじめ多額の借金があると分かっているケースなど、相続財産をもらい受けることがかえって負担になる場合もあるでしょう。このような場合は、家庭裁判所に状況を伝えて「限定承認」か「相続放棄」の手続きを受理してもらうことで、遺産の一部または全部を手放せます。

相続の方法 内容 家庭裁判所での手続き
単純承認 債務を含む遺産全体のうち、相続分をもらい受ける 不要
限定承認 まず債務を清算し、清算後に遺産の余りがある場合は相続人全員で分割する
相続放棄 相続権を手放し、一切の遺産を受け取らない

上記3つのうち「限定承認」はあまり選ばれません。債務清算の手続きに時間がかかる上、利益になる相続財産が債務を上回るとあらかじめ分かっているケースでは、手続きしても「相続放棄」と同じ結果になるからです。

以上の点を踏まえ、本記事では相続放棄の費用について解説しています。

相続放棄の手続きには期限がある

相続手続きには「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」があります(民法第915条)。この期限は「熟慮期間」とも呼ばれ、死亡の届出や心の整理をしながら相続方法を決められるよう設けられています。しかし実際のところ、「3か月あれば十分」とは言えません。相続放棄する場合、まず遺産と相続人の状況を調べ、次に家庭裁判所に提出する書類を集める……とのように、段階を踏んで準備する時間が必要になるからです。

期限後の相続放棄はできるのか

期限を過ぎれば相続放棄できないというわけではありませんが、手続きが遅れた理由を「事情説明書」にまとめて家庭裁判所に提出し、やむを得ない理由があったと認めてもらわなくてはなりません。事情説明書の作成ではハイレベルな法律知識が必要になり、かつ専門家に任せても「確実に相続放棄できる」とは言えないのが現状です。

相続放棄の方法は早めに決める必要あり

熟慮期間ぎりぎりになって相続放棄の準備を始めると、期限に間に合わなくなります。特に家族関係が複雑になっているケースでは、家庭裁判所に提出する戸籍謄本の数が増え、役場への請求で手間取りがちです。こうした準備期間を考え、亡くなってから3か月以内には家庭裁判所に必要書類を提出できるようスケジュールを組まなくてはなりません

自分で手続きするのか、それとも専門家に任せるのか、できるだけ早い段階で決めておきましょう。

相続放棄に掛かる費用は誰に依頼するかによって異なる

相続放棄の手続きは、弁護士もしくは司法書士に任せられます。こうした資格職に任せた場合、裁判所に納める費用とは別に「専門家報酬」がかかります。また、専門家報酬は司法書士より弁護士のほうが高額になるのが一般的です。

以下では、自力で手続きする場合にかかる費用(相続放棄の最低費用)から順に、手続き方法別の費用目安を紹介します。

自分で相続放棄の手続きを行う場合の費用

自力で相続放棄する場合「①裁判所に納める費用」「②書類収集にかかる費用」だけで済み、多くとも総額で1万円を超えないのが一般的です。相続人全員が放棄しようとする場合、申立て件数は相続人1人に1件と数えられるため、裁判所に納める手数料が人数分加算される点に注意しましょう。

【相続放棄の費用内訳①】裁判所に納める費用

裁判所に納める手数料: 手続きする人1人につき800円

返送用の郵便切手代: 1,500円程度(管轄裁判所により異なる)

【相続放棄の費用内訳②】書類収集にかかる費用

被相続人の戸籍謄本の交付手数料: 1通につき450円(除籍謄本や改製原戸籍は750円)

被相続人の住民票除票の交付手数料: 1通につき300円

相続人の戸籍謄本の交付手数料: 1通につき450円

費用内訳のうち、最も費用が高額になるのは「戸籍謄本の交付手数料」です。

被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本は、出生から死亡までの連続した記録が分かるよう揃えなければなりません。戸籍上の個人記録は結婚・離婚・法改正などのタイミングで異動するため、年齢や再婚歴に応じて必要な謄本の枚数が増えます。また、本来の相続人が先に亡くなったことで孫・甥・姪などが相続人になる「代襲相続」でも、すでに亡くなった相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

必要な戸籍謄本が欠けて交付請求が二度手間になったり、不必要な戸籍謄本まで請求して費用が無駄になることがなったりすることがないよう、事前に必要な謄本を整理してから交付請求を始めなければなりません。

司法書士に相続放棄の手続きを依頼する場合の費用

司法書士に相続放棄を依頼する場合の費用は、相続人が2人以下であれば総額で3万円~5万円3人以上であれば4万円~6万円が目安です。「相続人の数が多い」「相続人の一部と連絡がとれない」等の複雑なケースでは、報酬が上乗せされる可能性がある点に注意しましょう。

【司法書士に依頼する場合の費用目安】※筆者調べ

相談料: 0円~5千円/60分

書類作成代行費用: 3,000円~5,000円

相続放棄申述の代行費用: 2万円~4万円

その他: 実費(自力で手続きする場合の費用総額)

弁護士に相続放棄の手続きを依頼する場合の費用

弁護士に相続放棄を依頼する場合、費用は6万円弱~10万円となるのが一般的です。

司法書士よりも高額になる一方で、ある程度複雑なケースでも追加報酬なしで任せられる場合が大半です。ただし「熟慮期間が過ぎた後の相続放棄」に関しては、特別対応の報酬として1万円~2万円程度上乗せされる場合があります。

【弁護士に依頼する場合の費用目安】※筆者調べ

相談料: 0円~5千円/60分

相続放棄申述の代行費用: 5万円~10万円(書類作成代行費用含む)

その他: 実費(自力で手続きする場合の費用総額)

相続放棄の費用が司法書士と弁護士で異なる理由は

専門家報酬の差は「依頼に対応できる範囲」に理由があります。弁護士の業務範囲は、他の相続人に対する連絡や交渉、さらに亡くなった人の債権者からの督促された時の対応など、相続放棄に関連する手続きのほとんどをカバーしています。一方で司法書士に対応できるのは、基本的に申立書類の準備のみです。

特に「熟慮期間後の相続放棄」と「債権者対応」に関しては、弁護士にしか扱えません。家庭裁判所に提出する事情説明書は「同様事例に関する判例知識」、債権者対応では「訴訟代理権」(※依頼人に代わって交渉や訴訟対応を行う権限)がそれぞれ必要になり、どちらも弁護士だけが持つものだからです。

 

【表】資格者ごとの対応可能範囲

相続放棄関連の手続き 弁護士 司法書士
申立書の作成
添付書類の収集
他の相続人への連絡&交渉 ×
期限後の相続放棄 ×
債権者対応 ×

例えば、単に仕事や家庭の事情で書類を集める時間がとれない、申立書の書き方が分からないというだけなら、司法書士に依頼するだけで問題ありません。しかし「熟慮期間ぎりぎりになって多額の借金が判明した」「債権者から督促されたがどう対応していいのか分からない」「連絡のとれない家族がいる」といった事情がある場合は、迷わず弁護士に相談して適切な対応を取ってもらうべきです。

相続放棄をした場合の葬儀費用は?

相続放棄で迷いやすいポイントの1つに「葬儀費用の扱い」があります。葬儀費用は通常、亡くなった人名義の財産を使って支払われるものです。問題は、相続が開始した後に遺産を処分すると「単純承認したもの」とみなされ、原則上は相続放棄できないとされている点です(民法921条1号)。

結論として、葬儀費用を遺産から支払った場合でも、その金額が「社会通念上相当」であれば相続放棄は可能です(東京地昭和11年9月21日控訴審判決・大阪高裁平成14年7月3日判決など)。ただし、どの程度の金額が社会通念上相当かは、亡くなった人の社会的地位や経歴などによって違います。お葬式の予算を組む時は、なるべく事前に専門職に確認しておきましょう。

相続放棄の手続き費用、相続財産から払うのはOK?

相続放棄で迷いやすいポイントの2つ目は、「相続放棄の手続き費用」も遺産から支払っていいのかどうかです。

結論として、相続放棄の手続き費用を遺産から支払うことはできません。お葬式の費用とは異なり、相続放棄は亡くなった人のためではなく、相続人自身のために行うものだからです。

手続き費用だけでなく、相続放棄が受理されるまでにかかる全体の費用で「亡くなった人の財産から支払っていいのか分からない」と迷うことがあれば、すぐに弁護士や司法書士に相談しましょう。なお、民事法律扶助制度の利用に対応する専門家に依頼した場合、所定の収入要件に当てはまれば法テラスで費用を立て替えてもらえます。

相続放棄は撤回不可、慎重な判断を!

いったん家裁に受理された相続放棄は、どんな理由があっても撤回できません(民法第919条の1)。

手続きで一番重要なのは、事前にきちんと相続財産の調査を行い、本当に放棄してもいいのか判断することです。下記のような失敗やトラブルを避けるため、明らかに遺産をもらい受けるべきでないケースでも、ひとまず専門家にアドバイスをもらうことをおすすめします。

 

【一例】相続放棄を後悔するケース

  • 借金がネックで相続放棄したが、後から残債をはるかに上回る多額の預貯金が見つかった。
  • 親類に勧められるがまま相続放棄したところ、何年か経ってから「当の親類が多額の相続財産を独り占めしている」と知った。

まとめ

相続放棄の費用目安は「自力で行う場合」と「専門職に依頼する場合」とで大きな違いがあります。特に弁護士は、関係者への連絡や交渉、さらに期限後の相続放棄も扱える分、専門家報酬が高額です。

【相続放棄の費用目安】

自力で手続きする場合: 高くとも1万円程度

司法書士に依頼する場合: 3万円~6万円(相続人の人数や状況により上乗せされる場合あり)

弁護士に依頼する場合: 6万円弱~10万円(期限後の手続きは上乗せされる場合あり)

注意しなければならないのは、相続放棄には3か月の期限がある点です。この間に相続財産の調査や書類収集を済ませる必要があり、期限ぎりぎりになってから着手しても間に合いません。かといって、焦って自己判断で進めると「放棄せず遺産をもらい受けるべきケースだと気付けなかった」「遺産を処分したものと見なされて、相続放棄手続きを受理してもらえなかった」などの失敗に繋がります。

専門家による手続きは自力でやる場合よりもはるかに迅速ですが、やはり最低限の準備期間は必要です。相続放棄が必要になりそうな場合は、余裕をもって進められるよう、できるだけ早く弁護士または司法書士に相談しましょう。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

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