冠婚葬祭の儀式を行う際、六曜を気にする人は少なくありません。葬式を行う際、六曜の中の仏滅に行うのは問題ないのでしょうか。仏滅とは六曜(日本で一番有名な暦注)の1つです。ここからは、仏滅と葬式について、専門家が解説します。
目次
1. 葬式を仏滅に行うのはNG?
「大安」や「先勝」など、カレンダーに記載されている六曜が気になってしまう人は、「仏滅」にお葬式を行うことに縁起の悪さを感じてしまうかもしれません。
「仏が滅する」という字面がなんとなく負のイメージを持つのですが、果たして仏滅にお葬式をしてはいけないのでしょうか。
1-1 仏滅とは?
仏滅とは、日本で最も有名な暦注(※1)である六曜のうちの一つです。
※1: 暦注(れきちゅう)暦に記載される運勢や吉凶を表したもの
六曜とは、大安、先勝、先負、仏滅、友引、赤口の順に並ぶもので、もとは中国に始まったものです。
仏滅はそもそも「空亡」や「物滅」と呼ばれていたのですが、江戸時代後期、享和や文化年間の頃から、現在の仏滅として定着したものだと言われています。
何をやってもうまくいかない、最も運勢の悪い日とされているのが仏滅。そのため、結婚式や引越し、事業開設やお店の新規開店など、なにか新しいことを始めるには避ける方が良い日とされています。
1-2 六曜はあくまでも慣例であり、葬式を仏滅に行うことに問題はない
しかし、六曜はあくまでも民間に広がる慣例であり、仏教の教義とはなんら関係ありません。仏滅の日でも多くの人は気にせずお葬式を行っており、斎場も火葬場も通常営業をしています。
2. 仏滅よりも友引の葬式に注意!
むしろお葬式の現場で避けるべきは「友引」です。
友引も六曜のうちの1つですが、「友を引く」と考えられ、この日にお葬式をすることで周りの人たちもともに道連れにされると考えられ、友引にはお葬式をしないのが一般的です。
2-1 友引とは? 葬式との関連は??
もともと友引は「共に引く」という意味で、勝負の決着がつかない良くも悪くもない日とされていました。
友引は、「先勝→友引→先負」という順番で巡ってきますが、先勝が午前を吉、先負が午後を吉としており、その間に挟まれている友引は「引き分け」を意味したのです。
時期ははっきりしていませんが、「共引」はやがて「友引」となり、お葬式を避ける日として認識され出しました。
陰陽道の友引日(特定の日時で物事を行うと災いが起きるとされる日)や、友曳方(身近な人に災いをもたらすとされる方角)などの考え方が六曜に影響を与えたものと思われます。
友引は、仏教の教えとなんら関係ないと言われていますが、それでも人々が友引のお葬式を避けるのは、それだけ民間習俗としての広がりを見せているからです。
お葬式という非常時に、少しでもその影響がまわりの人に及ばないようにと、死の畏れから友引を気にする人が多いのでしょう。
どうしても友引にお葬式をしなければならない時には友引人形を棺の中に納めます。人形が道連れになってくれるものと考えられているのです。
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2-2 火葬場が休みのところもある
友引を休業日にあてる火葬場はたくさんあります。
本来、役所や行政は六曜などの民間習俗を取り入れないのが通例です。そんな公営の火葬場でも友引を休業にする理由には、友引の日は火葬の申し込み件数が少ないこと、火葬場を休業日にすることで施設やスタッフの休みを設けやすくなることなどが考えられます。
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3. 宗派によって仏滅の捉え方が異なる
3-1 仏式
仏教の教えの中には仏滅にお葬式をするべきではないとは説かれていません。むしろお釈迦様は「如来の法の中に、吉日良辰を選ぶことなし」と、「涅槃経」というお経の中で説かれています。
また浄土真宗の開祖である親鸞は、「悲嘆述懐和讃」の中で占いや迷信に惑わされることの悲しみを、次のように表しています。
かなしきかなや(ああ、悲しいなあ)
道俗の良時吉日えらばしめ
(僧侶も俗人も、縁起のいい時や吉い日など、時の良し悪しを選んでいる)
天神地祇をあがめつつ
(天の神、地の神をあがめながら)
卜占祭祀つとめとす
(吉凶の占いに一生懸命になっている)
仏教は、苦しみからの解放を求める宗教であり、そのためには占いや六曜などを気にするのではなく自分自身と、さらには仏と向き合うべきと説きます。仏滅を気にすることは一切ないのです。
3-2 キリスト教式
キリスト教は西洋で生まれた宗教です。中国で生まれ日本で独自に発展した民間習俗である六曜とは何の関係もありません。
3-3 神式
神社の儀式や祭礼では、さまざまな暦注との関連性が見られます。たとえば厄払いは凶とされる年に行いますし、七曜や九星を絡めて祭礼を行うところもあります。
売店に行けば、十二支にちなんだお守りなどのグッズが販売されているほどです
しかし、神葬祭(しんそうさい: 神道式の葬儀)においては、六曜などの暦注は気にせずに執り行われているようです。
4. 仏滅と葬式の関係
お葬式を避けるべきは友引とされ、仏滅には当たり前のようにお葬式が行われています。
そして何より、暦よりも大切なのは故人様を送る気持ちです。お釈迦様や親鸞聖人が説いているように、まずは故人様と向き合い、しっかりと送り出してあげることが大切です。
それでもどうしても日取りが気になってしまうという人は、遠慮なく葬儀日程をずらせばよいでしょう。
気になることを一つでも解消することで気持ちよく故人様を送り出せるのであれば、そちらの方がいいことは言うまでもありません。自分の「気」に正直になることをおすすめします。
玉川将人
1981年山口県生まれ。家族のたて続けの死をきっかけに、生涯を「弔い」に捧げる。葬儀社、仏壇店、墓石店に勤務して15年。会社員勤務の傍らでライターとして、死生、寺院、供養、終末医療などについて多数執筆。1級葬祭ディレクター、2級お墓ディレクター、2級グリーフケアカウンセラー。