×

生前葬は”生きている間のお葬式”–メリットや費用、参加者側の注意点も解説

更新日:2020.11.25

生前葬は”生きている間のお葬式”–メリットや費用、参加者側の注意点も解説

生前葬とは、文字通り生きている間に本人自身が行う葬儀のこと。まだ日本ではなじみの薄い生前葬ですが、ここでは生前葬のメリットやデメリット、費用感を解説します。

生前葬とは

生前葬とは、元気なうちに自分自身の葬儀を執り行うことです。晩年を迎え、お世話になった人やご縁のあった人を招待し、感謝の気持ちや別れの言葉を告げるために設けられる場です。通常であれば葬儀の主催者(喪主)は配偶者や子が務めますが、生前葬では本人が主催します。

生前葬が果たす社会的な役割

葬儀には様々な役割があります。故人をあの世へ送り出す宗教儀礼としての役割や、家族や遺族の悲しみをケアする心理的な役割。そして、対外的に付き合いのあった人たちとの最後のお別れ場としての社会的な役割が挙げられます。

ただでさえ晩年は周囲の人との交流が少なくなりがちで、生前に会えないどころか、葬儀に参列できずにお見送りすらできなかったというケースも少なくありません。「亡くなる前に一度でも会っておけばよかった」「最後にひとこと伝えたいことがあった」という後悔は、亡くなる側にも遺された側にも起こりうることです。

生前葬をしておくことで、こうした後悔は軽減でき、遺された人たちの悲しみのケアにも大きく貢献できるものと思われます。しばらく疎遠だった人の訃報をいきなり聞かされるよりも、生前葬で顔を合わせて言葉を交わしていた方が、死の知らせをより受けとめやすくなるでしょう。

お別れ会とのちがい

生前葬によく似たスタイルにお別れ会があります。宗教性を排し、自由度の高いセレモニーとしての縁故者の集まりの場という点では変わりはありませんが、生前葬と何が違うのでしょうか。

お別れ会は、あくまでも葬儀のあとに設けられる故人を偲ぶための場です。通常は、逝去直後の通夜や葬儀は家族だけで執り行い(密葬)、日を改めて対外的に交流のあった人たちのためにお別れ会が行われます。本人が亡くなっているので、必然的に配偶者や家族、あるいは故人が所属していた企業や有志の団体が主催します。

一方で、生前葬は本人が主催者となって元気なうちに行います。故人を偲ぶために行うのではなく、本人に直接会い、感謝や別れのことばを告げます。

生前葬のメリット

生前葬を行うことで、本人に、そして家族や参列者にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

直接会って思いを伝えることができる

生前葬のメリットは何よりも元気なうちに直接お世話になった人に会えることです。「会社を定年退職してからは疎遠になった」「体調を崩してからだれとも連絡をとっていない」などの事例は多く、久しぶりに知らせが届いたら訃報だったというのは少なくありません。生前葬を行うことで、久しく会ってなかった人とも会うことができ、お互いの思いを伝え合えます。

儀式の内容を自分で決められること

生前葬であれば、儀式の内容を自分で決められます。祭壇のデザイン、料理の内容、場内に流れるBGMや進行など、希望通りのものが実現できます。一般的な葬儀では、その内容は遺された家族に任せるほかありません。仮に生前契約や生前予約を葬儀社と結んでいたとしても、いざ葬儀を実施する家族が契約内容通りに行うかどうかは不明瞭です。

家族の負担が少なくなること

生前葬を行うことで事前にご縁のあった人たちを招いておもてなしができます。つまり、いざ本人が息を引き取った時は家族葬で済ませられるのです。生前葬にかかる費用を本人が負担しておくことによって、遺された家族の葬儀費用の負担を少しでも減らすことができます。

時間的制約がないこと

生前葬では時間の制約がありません。いつ開催しても構いませんし、準備や案内も余裕を持って行えます。一般的な葬儀では、いつまでも遺体をそのままにしておくわけにはいかないため、通常、逝去の翌日や翌々日には通夜を行うのが慣例です。

明るい雰囲気で行える

本人がまだまだ元気なので、明るい雰囲気の中で行えます。送る側にとっても「明るい雰囲気の中で最後に会えてよかった」と、そして主催者本人も「生前葬をしたおかげでたくさんの人にあいさつを述べることができた」と満足できるでしょう。

生前葬のデメリット

一方で、生前葬にもデメリットがあります。まだまだ社会に広く認知されているわけではありませんし、開催のためにはそれなりに高いハードルを超えなければなりません。

認知度が低く家族の賛同が得られにくいこと

生前葬はまだまだ認知されていません。前例がないため、どのように行えばいいのか、誰を呼べばいいのか、費用がどれくらいかかるのかなど、まったく見当がつかず、そのため賛同を得にくいケースが多いようです。

実際に亡くなったときにも葬儀を行うため、二度手間になること

生前葬を行ったからといって、すべてが完結するわけではありません。本人がいざ亡くなった時には、改めて、葬儀をし、僧侶を招いて供養してもらわなければなりません。家族からすると二度手間になってしまいます。

結果的に費用がかさむ可能性がある

生前葬をしたからといって、その後の葬儀費用を抑えることができるとは限りません。トータルとして2回に分けて葬儀を行うわけですから、結果的に費用がかさむ可能性は十分に考えられます。

どれだけの人が集まるかわからない

いざ生前葬の案内をしたところで、どれくらいの人が集まってくれるかは蓋を開けてみないとわかりません。生前葬は多くの場合は晩年を迎えた人たちが執り行います。そのため、先方も高齢になり、体力の低下や病気などの理由で参加できないというケースも十分に起こりえます。

生前葬はこんな方におすすめ

ここまで生前葬のメリットとデメリットを見てきましたが、では生前葬はどんな人におすすめなのでしょう。次の4つが挙げられます。

知人に高齢者が多いので元気なうちに会っておきたい

自分が高齢になると、周りの人たちも高齢になっていきます。年を重ねて老いや病気が切実になってくると、会いたくても会えない状況になってしまいます。そうならないためにも生前葬を開くことで、元気なうちに会っておくことができます。

疎遠になっている人に直接お礼を言うためのきっかけがほしい

久しく交流がなく、疎遠になっている人にいきなり連絡をとるのは勇気がいることです。そんな人も、生前葬の開催をきっかけにすることをおすすめします。きっかけができることで声をかけやすく、直接お礼を伝えることができるでしょう。

楽しくお別れをしたい人

葬儀はしめやかに執り行われるものですが、生前葬であれば本人も元気であるため、明るく楽しい雰囲気の中で開催できます。

自分の希望する葬儀をしたい

自分の葬儀にこだわりがある人は生前葬がおすすめです。どんなに希望する葬儀を望んでいても、それを遂行するのは遺された家族ですし、自分自身が自分の葬儀を見届けることはできません。生前葬だからこそ、自分の希望する内容で、最後のお別れを述べることができます。

生前葬をするべきか悩む人が考えるべき3つのこと

生前葬をすべきかどうか悩んでいる人は、まずは次の3点を考えてみましょう。

考えるべきこと①: 家族の理解を得られるか

生前葬は、まだまだなじみが薄く、元気なうちから葬儀を行うことを縁起でもないと考える人もいます。まずは家族の理解が得られるかどうかが大切です。もしも反対するのであれば、その理由や家族の思いをきちんと受け止め、その上であなたの思いを伝えてみましょう。

考えるべきこと②: 予算計画は慎重に

生前葬をしておくことで、いざ葬儀を行うときの家族の費用負担が軽減されると思いがちですが、実際にはそうばかりとは限りません。葬儀には葬儀で費用はかかりますし、もしも不要の負担軽減のために生前葬を検討しているのであれば、葬儀費用信託サービスを活用するなど、別の方法もあります。生前葬とその後の葬儀でどれくらいの費用がかかるのかをまずは把握し、慎重に予算計画を組み立てていきましょう。

考えるべきこと③: 招待される側の戸惑いを理解する

招待客の多くは、生前葬への参列がはじめてだという人がほとんどなので、その戸惑いを十分に理解しましょう。招待客が迷うことがないよう、きめ細かい案内や配慮が求められます。

生前葬の費用

生前葬の費用相場は、会場や規模によって大きく変わります。30万円前後で行うことも可能で、場合によっては100万円を超えることも考えられるでしょう。細かい内訳を考察してみます。

まずは会場費はホテルや葬儀式場など様々ですが、小規模でも5万円前後、大規模になると30万円近くかかると言われています。

次に料理や飲み物にかかる費用です。通常の葬儀では、一人あたりの精進料理は5,000円前後の会席膳が出されますが、生前葬では、会食や歓談の時間が重要となってきます。1人あたりの飲食費は10,000円から20,000円くらいで考えておいたほうがよいでしょう。参列者にお配りする引き出物を用意する場合、1人あたり3,000円から5,000円くらいが相場でしょう。

こうした会場費やおもてなし費用に加えて、では会場内をどのように装飾するのか。祭壇、生花装飾、スライドショーの上映機材などの費用がかかります。

ここにあげた内訳を参考に、自分たちがどれくらいの規模の人数を招待したいのか、また会場内をどのように準備したいのかを具体的にイメージした上で、葬儀社に相談してみましょう。

生前葬の流れ

生前葬の具体的な流れは、主催者が自由に決められます。以下、一例としてご参考ください。

  1. 開式(司会者による進行)
  2. 主催者あいさつ(主催者より、招待客に向けて挨拶をします)
  3. スライドショーや動画の上映(これまでの半生をふりかえります)
  4. 来賓(招待客の中から数名に挨拶をしてもらいます)
  5. 会食・歓談(食事を楽しみながらこれまでの感謝を伝えあいます)
  6. 友人スピーチ(主催者と特に親しくしていた友人にスピーチしてもらいます)
  7. 演奏・余興(音楽の生演奏や、ゲームやカラオケなど、さまざまな余興で場をなごませます)
  8. 閉式(招待客1人ひとりをお見送りします)

本人の挨拶

生前葬の中では、主催者が招待客に挨拶を述べる場面があります。挨拶では、感謝の気持ちを伝え、堅苦しい挨拶は避けて明るい雰囲気で行うのが望ましいでしょう。生前葬はあくまでも区切りの儀式であり、そのあともそれぞれの人生は続いていくわけです。残された余生をより充実したものになるような挨拶をしましょう。

参加する際に気を付けたいこと

この章では、生前葬に招待された側の立場に立って、どのような点に気をつけるべきなのか、服装や香典などのマナーについてご説明いたします。

服装やアクセサリー

会場の雰囲気や主催者の以降に沿った服装が望ましいでしょう。一般的な会食パーティーに参加するときのようなフォーマルな服装が参考になります。男性はスーツやジャケットスタイル、女性はスーツやアンサンブルやワンピースが望ましいでしょう。

通常の葬儀では喪服を着用しますが、生前葬ではまだ不幸は起きておらず、喪に服すわけではありません。喪服での参列は控えるようにしておきましょう。

香典

生前葬では、会費制を採用していることが多く、相場は10,000円から20,000円くらいです。香典の持参については判断が分かれるところですが、決して本人が亡くなっているわけではないので、生前葬という場にはそぐわないでしょう。会費や香典についての取り扱いは、ケースバイケースによるところが大きいので、自分一人の判断で進めるのではなく、主催者や葬儀社に相談することをおすすめします。

まとめ

いかがですか。生前葬はまだまだ現代の日本社会ではなじみの薄く、普及しているとは言いがたいのが実情です。それでも、主催する側と招待された側の双方が、元気なうちに顔を合わせておけるのは、よき死、よきグリーフケアのためにも意味のあることだと思われます。

もしも元気なうちに会っておくことが目的であるなら生前葬以外にも直接連絡を取るなどの方法もありますし、葬儀の費用を抑えるためなら別の選択肢も考えられます。

しかし、そんな中でも生前葬という方法を選択することで、ご縁のあった人たちと食事を交わしながら、これまでの半生を振り返り、残された人生をより前向きに過ごすきっかけとなることでしょう。やがてやってくる「死」を中心に、つながりのあった人たちが集まるところに、ただの同窓会や会食とは異なる、生前葬の意義があるように思えます。

執筆者プロフィール
玉川将人
1981年山口県生まれ。家族のたて続けの死をきっかけに、生涯を「弔い」に捧げる。葬儀社、仏壇店、墓石店に勤務して15年。会社員勤務の傍らでライターとして、死生、寺院、供養、終末医療などについて多数執筆。1級葬祭ディレクター、2級お墓ディレクター、2級グリーフケアカウンセラー。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
・本記事は、本記事執筆時点における法令(別段の言及がある場合を除き日本国におけるものをいいます)を前提として記載するものあり、本記事執筆後の改正等を反映するものではありません。
・本記事を含むコンテンツ(情報、資料、画像、レイアウト、デザイン等)の著作権は、本サイトの運営者、監修者又は執筆者に帰属します。法令で認められた場合を除き、本サイトの運営者に無断で複製、転用、販売、放送、公衆送信、翻訳、貸与等の二次利用はできません。
・本記事の正確性・妥当性等については注意を払っておりますが、その保証をするものではなく、本記事の情報の利用によって利用者等に何等かの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことはできません。
・本サイトの運営者は、本記事の執筆者、監修者のご紹介、斡旋等は行いません。
…閉じる