お斎(おとき)とは?お斎と精進おとしの違いや挨拶方法、マナーについても徹底解説

更新日:2024.02.09

お斎(おとき)とは?お斎と精進おとしの違いや挨拶方法、マナーについても徹底解説

「お斎(おとき)」という言葉をご存じでしょうか。

ここでは、混同しがちな精進落としとの意味の違いや、お斎の予算感、喪主・施主のための挨拶文例、参列者の心得などを解説します。

1. お斎(おとき)とは

お斎(おとき)とは、葬儀や法事などの際に開かれる食事の席の総称です。もともと「斎」という言葉は、神仏をまつる場所や、斎場に出るために身を清めることを指しました。

こうした仏事では特別な食事をとり、その時の食事そのものを「斎」と呼び、これらが転じていまでは法要の際の食事のことをまとめて「お斎」と呼ぶのです。

お斎は民俗学でいうところの「神人共食」や「共同飲食」の役目も果たします。同じ神仏(あるいは故人)のために遺されたものたちが同じ場所で同じものを飲食することで、神仏(故人)と人、あるいは人と人同士のつながりが強くなるのです。

昨今の葬儀や法事でのお斎は、喪主や施主が参列者をもてなし、感謝の意を伝える場として開かれます。

1-1 お斎と精進おとしの違いとは

葬儀の中で行われる食事に「精進落とし」があります。お斎と精進落としはどのように違うのでしょうか。お斎は、通夜や葬儀、または故人の年忌法要やお寺で行われる法要など、仏事のあとの食事の総称で、精進落としもお斎に含まれます。

一方、精進落としとは、葬儀や火葬のあとに開かれる会食の席のことを指します。

それでは、精進落としという呼び方にはどのような意味があるのでしょうか。精進落としとは、もともとは四十九日の忌明けを迎えた家族が食べる食事のことでした。

昔は身内に不幸があると、家族は四十九日間喪に服して故人の供養に専念しました。肉や魚を断ち、殺生をしない料理、いわゆる精進料理を食べて身を慎んだのです。

四十九日の忌明けとともに通常の食事に合わせたことから、四十九日法要で出されるお斎を「精進落とし」と呼ぶようになりました。

現在は四十九日間身を慎むという風習はなくなり、葬儀や火葬を終えたあとの食事のことを精進落としと呼ぶようになりました。

精進落としは、葬儀の最後の行程である火葬を終えた後に行われ、通夜と葬儀の2日間、最後まで立ち会ってもらった親族たちに感謝の意を込めて精進落としをふるまいます。

2. お斎は必ず必要なのか

お斎は必ずしなければならないものではありません。最近では家族葬が一般化し、葬儀も法事も家族だけで行うケースも少なくありません。久しぶりに会う親戚をもてなすわけではないので、こうした場合はお斎というかしこまった会食は不要でしょう。

また、葬儀の進行上お斎の開始が午後の3時や4時などの中途半端な時間になることもあります。こうしたケースではお斎を省略することが多いようです。

ただし、お斎は参列者への感謝を伝える場であるだけでなく、中にはお斎を開くのが当たり前と考える親戚もいるかもしれません。

お斎をするしないの判断は慎重に行ない、しないのであれば事前にその旨を伝えておくのが賢明です

2-1 お斎をしないとき

お斎をしないのであれば、必ず事前に案内に記載しておくなどの配慮が求められます。お斎があるとないとでは、その日の動きだけでなく、参列者が包む香典金額も異なります。

お斎をしない場合は、持ち帰り用の弁当とお酒を用意し、引出物と一緒に渡すとより丁寧です。

また、お斎は本来はお坊さんにも同席してもらい、飲食でもてなしました。しかし近年は同席しないケースが増えており、お布施とは別に御膳料を包んで渡します。費用の相場は5000~1万円程度です。

2-2 お斎をするときの費用

お斎の席では会席料理がふるまわれます。仕出し料理店では法要のための会席料理を予算別に用意しており、費用相場は5000円程度ですが、安いもので3000円、高いもので1万円くらいと幅広いメニューの中から選べます。

内容は、ごはん、汁物、刺身、天ぷら、焼き物、煮物、和え物など10品前後のものが揃います。1人に一膳のお弁当の形式のものが用意されますが、コース料理にすることも可能です。

お通夜のあとの通夜ぶるまいでは、大皿料理が出されます。お通夜の席にどれくらいの人数が参列するか分からないためで、寿司や煮物やオードブルなどを複数人で囲んで食べます。

通夜ぶるまいでは1人ひとりに食事が用意されるわけではないため正確な費用相場は判別しにくいですが、1人あたりに換算すると2000円前後でしょう。

お斎の席では飲み物もふるまわれますので、ビールや日本酒、お茶やジュースなどの費用も考えておかなければなりません。

2-3 お斎をするときの開催場所や注意事項

お斎の場所にはいくつかのパターンがありますが、葬儀や法事が行われた場所で開催するケースが最も多いでしょう。

葬儀のあとのお斎(精進落とし)では、葬儀会館から火葬場に向けて出発したあと、再び葬儀会館に戻ってお斎の席を設けます。地域によっては火葬中に火葬場で食事をとるところもあります。

一周忌や三回忌などの法事のあとのお斎は、法事をした場所(お寺の座敷や自宅)のほか、近くのホテルや料亭を利用する人も少なくありません。お寺や自宅でお斎を行う場合には、仕出し料理店にお斎の料理を運んでもらいます。

もしもホテルや料亭などの法要料理を取り扱う料理店を利用する場合は、その場所まで移動しなければなりません。送迎のサービスを行ってくれるところも多いので、事前に確認しておきましょう。

料理店には、法要が始まる前に正確な料理の数を伝えておきましょう。また、参列者の中に子どもがいる場合は、その人数もチェックして伝えておきましょう。

3. お斎のあいさつ

お斎では、まずは喪主や施主が参列者に対しあいさつをします。あいさつでは、ご参列いただいたことの御礼を伝えます。その他、故人との思い出についてなど、その場の空気に合わせて話すと良いでしょう。

次に、参列者の代表(親族の中の本家や長老格、故人と特に仲良くしていた人など)から「献杯」の発声をいただきます。

故人を偲ぶ席では「乾杯」ではなく「献杯」をしてお斎を始めますが、その際にも簡単なあいさつをいただくのが慣例です。献杯者は喪主が紹介します。

3-1 はじまりの挨拶(精進落としの場合)の文例

ここで、お斎で活用できるあいさつの文例を紹介します。

皆様、昨日のお通夜と本日の葬儀告別式、ならびに火葬と、お忙しい中にかかわらず、最後までまでお立会いいただき、誠にありがとうございます。皆様のおかげで、故●●の葬儀を無事に終えることができましたこと、深く感謝申し上げます。これだけたくさんの方々に見送っていただき、故人もさぞよろこんでいるかと思います。

ささやかではございますが、精進落としのお食事をご用意させていただきました。故人との思い出話をお話頂きながら、ごゆっくりお召し上がりくださいませ。本日はありがとうございました。

次に献杯のご発声を●●様よりいただきたいと思います。●●様、よろしくお願いいたします。

3-2 はじまりの挨拶(一周忌などの法事)の文例

次に、一周忌等法事の挨拶文例を紹介します。

本日は、亡き●●のためにお集まりくださり、誠にありがとうございました。皆様のおかげで一周忌法要を滞りなく済ませることができました。深く御礼申し上げます。ささやかなおもてなしではございますがお斎の席をご用意させていただきました。故人様との思い出話をして頂きながら、ごゆっくりお召し上がりくださいませ本日はありがとうございました。

次に献杯のご発声を●●様よりいただきたいと思います。●●様、よろしくお願いいたします。

3-3 献杯の挨拶文例

ここでは、喪主等に紹介された献杯発生時の挨拶文例を紹介します。

本日は皆様、ありがとうございました。さきほどご紹介に預かりました●●と申します。故人とは小学生以来の仲で、長らく親しくさせていただいておりました。これだけたくさんのご親戚や友人に囲まれて、故人もさぞ喜んでいるかと思います。献杯のご唱和をいたしますので、グラスをお手にしてください。故人のご冥福を祈り、献杯させていただきます。献杯。

3-4 終わりの挨拶文例

最後に、お斎実施時に喪主や施主が行う終わりの挨拶文例です。

最後に、本日は皆様、お忙しい中最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございました。思い出話は尽きないかと存じますが、そろそろお時間となりましたので、このあたりでお開きにさせていただきます。どうぞお気をつけてお帰りください。本日はありがとうございました。

4. お斎の席

お斎の席はどのように準備すれば良いのでしょうか。席順や会場の準備、返礼品について解説します。

4-1 席順

お斎は参列者をおもてなしする場なので、席順は「参列者が上座、親族が末座」が基本です。僧侶がいる場合は僧侶を一番上座にし、その他、親族の中でも本家や長老格にあたる人から順に座っていただきます。

遺族は末座に座りますが、僧侶や親戚の方をおもてなしするために、喪主やそれに近い人たちが上座に座ることもあります。

4-2 セッティング

お斎の席のセッティングは、料理店や配膳人などがいる場合はある程度任せておけば良いでしょう。

最も上座にあたる場所には、故人の遺影、位牌、遺骨などを並べて、影膳(参列者が食べるものと同じお膳)をお供えします。また、参列者に配る引き出物は、配りやすい場所に置いて準備しておきましょう。

5. 返礼品

参列者には返礼品(引き出物)を配ります。基本的には参列者全員に配りますが、同一世帯に1つでもよいとされています。

配り方は様々です。お斎の席がある程度落ち着いた頃に、1人ずつあいさつに回りながら手渡す、あるいは帰り際にあいさつをかねて手渡すなど、渡すタイミングはその状況によります。

直接手渡すのが丁寧ですが、参列者が多いなどの理由で直接手渡すのが困難な場合は、あらかじめお膳や座布団の横に置いておくという方法もあります。

もしも施主が1人ひとりに配って回るのであれば、僧侶から順に、上座から末座へと順番に手渡していくのが良いでしょう。

6. 参列する人が気をつけること

参列者は、お斎の席でどのようなことに気をつけなければならないのでしょうか。服装や香典についてまとめました。

6-1 服装のマナー

お斎は葬儀や法事のあとに行われるので、参列した時の服装、いわゆる喪服のまま臨みます。

とはいえ、法事での緊張を解き、飲食をしながら故人との思い出を語り合う場なので、上着を脱ぐ程度のことは差し支えないでしょう。周囲の雰囲気に合わせて判断しましょう。

6-2 香典

お斎の食事に対して香典と別にお金を渡す必要はありません。お斎はそもそも施主側によるおもてなしだからです。もしも気になるのであれば、香典金額を5000円から1万円程度多めに包みましょう。

6-3 欠席する場合は

法事には参列するけれど、その後のお斎は欠席しなければならない場合、必ず事前に施主に伝えておきましょう。

お斎の料理の個数は前日までに料理店に伝えておかなければならず、直前のキャンセルができないからです。施主が困らないように配慮が求められます。

最近ではお斎を省略するケースが増えていますが、葬儀や法事を行う上でとても大切な場です。お斎の席は、施主は参列者に感謝の意を込めて料理でもてなし、参列者は飲食しながら故人との思い出を語り合うために設けられます。

同じ場所で同じ食事をとることで、故人とのつながり、遺されたもの同士のつながりを再確認できます。マナーや注意点を押さえ、周囲への配慮は忘れずに、お斎の席に臨みましょう。

 

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執筆者プロフィール
玉川将人
1981年山口県生まれ。家族のたて続けの死をきっかけに、生涯を「弔い」に捧げる。葬儀社、仏壇店、墓石店に勤務して15年。会社員勤務の傍らでライターとして、死生、寺院、供養、終末医療などについて多数執筆。1級葬祭ディレクター、2級お墓ディレクター、2級グリーフケアカウンセラー。

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