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遺言書の正しい開封方法とは–勝手に開封されない方法も解説

更新日:2020.09.14

遺言書の正しい開封方法とは–勝手に開封されない方法も解説

遺言書(公正証書遺言を除く)の内容を死後確認する際は、未開封であるとを確認するための「検認」が必須です。万一検認前に開封してしまうと、最悪の場合は相続人としての資格を失う事ことあります。ここでは、相続法で定められる死後の遺言書の扱い方を解説した上で、無断開封を防ぐため遺言者自身でできる事を紹介します。

遺言書は勝手に開封してはいけない

封印された遺言書を作成者の死後発見したときは、原則として家庭裁判所で開封しなければなりません(下記条文参照)。未開封であり内容に改ざん等が加えられていないと確認するとともに、遺言の状態(形状・訂正・作成日付・署名など)の記録を残して後日不正がないようにするためです。

民法1004条(遺言書の検認)

封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

上記の定めにも関わらず発見者がその場で遺言書を開封してしまうと、法律に抵触しペナルティが発生します。

遺言書を開封してしまった場合

万一検認期日を待たずに遺言を開封してしまった場合のペナルティは、下記で紹介する通りです。中でも最も重いのは、偽造・変造・破棄を疑われる(あるいは実際にしてしまう)ケースです。

勝手に開封すると5万円以下の過料に処される

先で紹介した検認を定める条文の次に、無断開封者を5万円以下の過料に処すると定める条文があります(下記参照)。

民法1005条(過料)

3.前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

法律上のペナルティは上記過料に関するものだけで、他に何らかの重い刑事罰があるわけではないのが現状です。以上の点だけを考慮すると、過料を承知の上で開封しようとする共同相続人が現れることもあるでしょう。

しかしこのことを軽視すると、後述のように経済的利益と信頼関係を大きく損ねることになります。

遺言書の変造や偽造を疑われる

遺産承継は大なり小なり利益につながるため、どの相続人も不正行為には敏感です。特定の相続人だけで検認前に開封してしまうと、悪意がなかったとしても「内容が改ざんされたり一部破棄されたりしているのではないか」と他の相続人に疑われてしまいます。

疑いが強くなると「遺言の無効主張」がなされ、有効だと判断されて相続手続きを進行できるようになるまで、数カ月ないし1年単位で時間を費やさなければなりません。

遺言に手を加えると相続権を失う

もしも「内容に納得できない」等の理由で遺言書に手を加えてしまった事実が明らかになると、法令により相続人の資格を失います(下記条文参照)。

民法891条(相続人の欠格事由)

5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

法令で定める「相続人の欠格事由」にはいくつかあり、遺産承継等が目的で遺言者に危害を加えることのほか、上記のように「遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿」も事由のひとつとされています。さらに、いったん相続人の資格を失うと、欠格事由がないと証明するまで遺産を承継できません。

無断開封しても遺言が無効になるわけではない

遺言を無断開封してしまっても開封者本人にペナルティがあるだけで、遺言内容の有効性そのものは(偽造や変造等がないかぎり)保たれます。遺言の執行や効力を定める法令に「家庭裁判所以外の場所で開封されたものは効力を失う」という条文はないからです。ただし、「秘密証書遺言」(後述)に限っては、原則として開封した時点で効力を失う点に注意しましょう。

【種類別】遺言書の開封方法

封印された遺言書の中身を確認しようとする際は、下記のように「検認」を遅滞なく家庭裁判所に申し立てるべきと定められています。

民法1004条(遺言書の検認)

1.遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

なお、個別ケースでの検認の申立て先は「亡くなった人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所です。これから中身を確認しようとする人は、手始めに裁判所のサイト内「管轄家庭裁判所の検索」ページで管轄裁判所を調べましょう。

ここからは、遺言書の種類(自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の計3種類)ごとに、開封のため手続きする「検認」の方法について解説します。

自筆証書遺言の開封方法

自筆証書遺言とは、亡くなった人が文面を手書き(自筆)で作成し、封印も自ら行われた遺言書を指します。発見時は「検認」の申立てのため下記書類を揃え、記入済の申立書(ダウンロードはこちら)に添えて提出しましょう。提出した書類に不備がなければ、1週間~2週間程度で相続人全員に検認期日の通知書が届きます。

 

【検認申立て時の必要書類】

  • 遺言者の戸籍謄本(出生時から死亡時まで全て必要)
  • 相続人全員分の戸籍謄本
  • 収入印紙800円分

ただし、下記のケースでは、必要書類が追加されます

  • 直系尊属が相続人に含まれる場合: 「直系尊属のうち亡くなっている人の死亡の記載がある戸籍謄本」を追加提出
  • 相続人が配偶者のみor兄弟姉妹および甥や姪のみor相続人不存在の場合: 「父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍」と「直系尊属・兄弟姉妹・甥や姪のうち、亡くなっている人の死亡の記載がある戸籍」を追加提出

期日当日は①未開封の遺言書②印鑑(実印推奨)③検認済証明書の交付手数料(遺言書1通につき150円)の3点を準備し、申立人が家裁を訪れて開封手続きを行います。検認済証明書はその後行う遺産の名義変更手続きに必須であるため、大切に保管しましょう。

なお、先述の条文は「相続人又はその代理人の立会い」が必要としていますが、実際の運用では申立人以外の相続人が立ち会うかどうかは自由だとされています。足腰が弱っている、あるいは遠方在住といった事情があれば、申立人だけでも開封できます。

秘密証書遺言の開封方法

秘密証書遺言とは、亡くなった人自ら内容を作成したものの、封印は公正証書役場で行われた遺言書を指します。開封の際はやはり「検認」の申立てが必須ですが、その手続きの流れや必要物は自筆証書遺言と全く同じです。

なお、秘密証書遺言と自筆証書遺言は封書の形状が良く似ていますが、公証役場で検索可能である点や、封紙に証人と公証人の各署名捺印がある点で判別できます。

公正証書遺言の開封方法

公正証書遺言とは、公証役場(依頼を受けて公文書作成を行う役場)で作成と原本保管がなされている遺言書です。

結論を述べると、公正証書遺言は検認を要しません(民法1004条第2項)。亡くなった人もしくは遺言執行者(※)が原本の写しである「正本」を保管しており、その正本で遺言内容の確認や遺産の名義変更手続きを直接行うことができます。

※遺言執行者: 遺言内容を実現するための権利義務を持ち、相続人の代理人として遺産の名義変更手続き等を主導する人物です。公正証書遺言の場合、多くは亡くなった人自ら人選しています。主に選ばれるのは弁護士や司法書士などの士業の他、信託業者(相続関連サービスを提供する金融機関)です。

遺言を開封されないようにするためには

遺言書の無断開封は、法律上のペナルティより「相続人同士の対立」を招く点のほうが深刻です。結果的に最もダメージが大きくなるのは、円満な相続手続きを願って準備したはずの被相続人自身でしょう。

そこで下記のように、遺言書を作成する時点で十分な対策をとっておく事が重要です。

公正証書遺言で意思を残す

費用と手間はかかるものの、初めから「公正証書遺言」で生前の意思を残せば、無断開封を心配する必要はありません。公正証書遺言には、他にも下記2点のメリットがあります。

  • 公正証書遺言のメリット1「安全に保管される」作成した遺言書の原本は、公証役場で紛失・滅失がないよう厳重に保管されます。
  • 公正証書遺言のメリット2「無効になる可能性が極めて低い」文面作成は公証人(法務大臣に任命された法律文書作成のプロ)が行い、さらに証人2名の前で文面を読み上げる形で最終確認が行われます。このプロセスを踏むことで、文面のミスや記載漏れが原因による遺言の無効化をほぼ確実に防げます。

「自筆証書遺言書保管制度」を利用する

「自筆証書遺言書保管制度」とは、本来は亡くなった人の手元で保管する自筆証書遺言書を法務局の保管所に預け、全国から照会が行えるようにする制度です。前年成立した「遺言書保管法」を背景に2020年7月に新設された制度で、保管所にある遺言書は検認不要である旨が規定されています(第11条)。

自筆証書遺言に起こりがちな紛失(もしくは滅失)トラブルの防止にもつながるため、積極的に利用を検討しましょう(参考:法務局サイト内ページ「自筆証書遺言書保管制度について」)

遺言書を二重で封筒に入れる

自筆証書遺言または秘密証書遺言で作成する場合、封印後の遺言書をさらに別の封筒にいれておく手が考えられます。外側の封筒には「家庭裁判所に検認するまで開封しないように」とメモを添えましょう。

こうしておくと、発見時の勢いにまかせてうっかり外側の封筒を開けてしまっても、正しい開封手順へと誘導できます。

まとめ

公正証書遺言を除き、封印された遺言書を死後開封する際は「検認」の手続きを取らなければなりません。検認期日を待たずに無断開封した場合、5万円以下の過料に処される他、偽造・変造・破棄などを疑われ、最悪の場合は相続権を喪失してしまいます。これから遺言書を作成しようとする人は、遺言書の種類・保管方法・封印の仕方に注意し、無断開封を徹底的に防ぐよう心がけましょう。

遺言書の扱い方については、相続専門の司法書士や弁護士に相談できます。「生前準備して円満な相続を実現したい」「亡くなった家族について最初に何をすべきか分からない」と悩んだ時は、まず専門家に相談してみましょう。

執筆者プロフィール
遠藤秋乃
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年に司法書士資格・2016年に行政書士資格を取得。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

「つぐなび」の運営は、1970年創業の株式会社船井総研ホールディングス(東証1部上場、証券コード:9757)の経営コンサルティング事業を担う株式会社船井総合研究所が行っています。…もっと見る

船井総合研究所は、相続分野において700事務所にものぼる全国の弁護士・税理士・司法書士といった士業事務所のコンサルティングを行っており、その長年のノウハウをもとに「つぐなび」を2020年に開設いたしました。
現在、全国的に高齢人口の急速な増加を続けており、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年まで増え続けると予測されています。それに伴い、相続財産をめぐるトラブルも増加、複雑化していることが喫緊の課題となっており、さらに、問題を未然に防ぐための遺言や民事信託などの生前対策のニーズも年々高まっています。 「つぐなび」では、相続でお困りの皆様が、相続の”プロ”である専門家と一緒に相続の課題解決をしていけるようサポートいたします。

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