「我が家の財産は実家だけ。だから相続トラブルとは無縁」。そう思っていた猫姉妹。しかし、母の死後、一族を巻き込んでの相続大トラブルへと発展してしまった「猫一族の争族」を漫画形式でお届けします。相続財産に不動産が含まれる場合、トラブルに発展しやすいのですよ……。
目次
父「この土地は俺が受け継いだ」、実は……
イラスト: 島内美和子
遺産分割協議書がとっても重要だった!
遺産分割協議とは、被相続人の全ての相続人が遺産分割について話し合うこと。相続人全員が遺産分割協議に参加する必要があり、例えば一部の相続人を除いて話し合いをした場合、遺産分割協議としては「無効」となります。
遺産分割協議の内容を書面にしたのが「遺産分割協議書」
遺産分割協議をした場合、その内容を書面として残しておかないと後々争いの種になりかねません。その書面が「遺産分割協議書」。また、法定相続分と異なる分割をした場合には、金融機関等の相続手続きや不動産の登記手続等を行う際に遺産分割協議書が必要になります。
なお、遺言書で全ての相続財産に関する分割方法が定められている場合には、遺産分割協議は不要となります、遺言書に一部の相続財産についてしか分割方法が定められていない場合は、定められていない相続財産について遺産分割協議が必要になります。
相続登記をしなかったのが原因!
相続登記とは、所有者の死亡を理由として、不動産の所有権を相続人へと移転させる手続きのことをいいます。そもそも”不動産の所有者”は、法務局で管理される「登記簿」の記載で判別されるので、所有者の死亡届が役場に提出されても登記簿の表記に変更はありません。相続が発生し、土地建物が承継人のものになった事実を第三者(売買や融資契約の相手方など)に証明するには、所有権移転の手続きを済ませて登記簿上の名義人を変えておく必要があります。
相続登記をしないと起こりうるトラブル例
死亡から相続登記までの期間が長くなるほど、二次・三次……と次々に相続権が移転していきます。こうして登記義務人にあたる人物は鼠算式に増えるため、登記申請の事前準備(遺産分割協議や戸籍謄本収集など)の手間が増えてしまいます。まさに今回の「猫一族の争族」ですね。
その他、遺言書のない相続登記の手続きでは、相続人全員が取り分に合意したことを示す「遺産分割協議書」が原則必須となるため、相続時に協議を実施していなかった場合は要注意! 相続登記までの期間が開くことにより、相続人の一部が心変わりしたり、関係性の希薄な二次相続人(※)が協議に加わったりする懸念があるからです。これも、今回の「猫一族の争族」の内容ですね……。
※ 二次相続人: 相続人の死亡によりその権利を受け継いだ、被相続人の孫や甥・姪などにあたる人物です。
さらには、登記されないままの土地を第三者が占有するトラブルも考えられます。もし不法占有者に占有されたとしても、登記簿上の名義人でない人物は明け渡しや損害賠償を求めることができません。さらには占有されたまま20年の取得時効が完成すれば、不法占有者による所有権登記まで可能になり、不動産から生じる利益がすべて奪われてしまいます。
2020年から相続登記が義務化?
相続登記は、所有権を示す重要な手続きであるにもかかわらず、これまでは実質的に任意とされていましたが、2020年のあいだに相続登記を義務とする法改正が行われます。しかし、相続登記は怠ると様々なトラブルの元となるため、義務化以前にも相続登記の申請は必須と言えるでしょう。
相続登記は専門家に任せよう
相続登記は、相続人と相続不動産の両方を調査する必要があって複雑です。スムーズに相続登記を進める上で、不動産登記の専門家である「司法書士」のサポートは欠かせません。司法書士であれば、調査からトラブル防止を意識した不動産分割の方法に加え、適切な登記申請までを一括で任せることができます。ぜひ専門家に相談し、相続人としての権利を確実に守っていきましょう。