「遺言」は、相続対策として広く知られていますが、遺言をきちんと準備せずに最期の時を迎えるケースもまだまだ多く……。今回は、遺言が用意されていなかったために、思わぬ相続トラブルに巻き込まれ、予想もしないような結果を迎えてしまった3兄弟のお話を漫画形式でお届けします。
目次
父が他界、財産は実家だけなのに大混乱
イラスト: にわゆり
やっぱり遺言は重要だった!
遺言とは、死後も適切な財産処分が行える行為で、生前同様故人の意思で財産処分できるようにするのが主な目的です。
遺言で何が決められる?
遺言は書面化する必要があり、さらに、その内容を実現する義務が生じるのは遺言者の死後のみです。法的効力を有する遺言で取り決められるのは、財産の処分方法に加え、子を認知して相続人に加える、相続権をはく奪といった事項も遺言者の意思で指定できます。
遺留分を無視した遺言でトラブルに?
遺言書が遺留分(相続する人である相続人が最低限相続することができる財産の割合)を無視した内容であった場合、その内容の法的効力は保たれますが、相続のトラブル化は避けられません。無視された相続人が「遺留分侵害額請求権」が行使すると、その相手方となった相続人には金銭を支払う義務が生じ、当然両者の間で激しい意見対立が始まるからです。
このような状況に陥ることを避けるため、あらかじめ遺留分を尊重した内容を指定するか、請求の優先順位の指定を行っておく必要があります。
相続トラブル回避のための遺言
自分で作成した遺言で、泥沼に!?
ここまで記事を読むと、「遺言を作成しておこう」と考える人もいることでしょう。専門家に依頼するのではなく、自分で作ってしまおうと考えるかもしれませんが、自力での作成には「書式不備・保管方法のミス」が生じやすいデメリットがあります。
そもそも相続分の取り決める際は、遺留分など民法を踏まえた配慮とともに、各種控除で税額を最適化できる分割方法を考える必要があります。
専門知識のないまま自力で遺言を作成すると、民法・税法の観点がない内容になり、かえって相続人に負担をかけてしまう可能性があります。
遺言を専門家(司法書士)に依頼する場合
遺言を専門家に依頼する場合、弁護士や司法書士、税理士、行政書士への依頼が考えられますが、ここでは司法書士のケースを解説します。4士業の中で行政書士に依頼した場合は報酬が比較的安価であり、登録者数が多いため自宅周辺で簡単に見つけられる点がメリットですが、司法書士の場合はその業務範囲に加えて遺言内容のアドバイスを得られるのがメリットです。「不動産の分割方法」についても司法書士の得意分野です。
費用感は様々ですが、7万円~10万円といったところでしょう(相続財産に不動産等の扱いの難しい資産が多い場合は追加報酬がかかる場合がある)。
財産を残された人たちにスムーズに相続できるよう、遺言作成を検討してみてはいかがでしょうか。トラブル回避のために作成した遺言書がさらなるトラブルを生まないためにも、専門家への相談をおすすめします。